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介護サービス・制度

2023-03-20

介護保険制度とは?介護給付や介護保険サービス利用について解説します

介護保険制度は、介護保険サービスを受けるうえで必要な制度です。日本の法律では、40歳以上の方は介護保険の加入が義務付けられており、万が一介護が必要になったときでも、保証されている制度です。

 

しかし、介護保険制度については、詳しく知らない方も多いでしょう。

 

この記事では、介護保険制度の概要と介護保険サービスの内容・自己負担額について解説しています。

 

介護保険制度について理解しておけば、突然介護が必要になったときに慌てることも減るでしょう。自己負担軽減制度も紹介しているため、費用を抑えて利用できるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。

介護保険について

介護保険制度は、平成12年4月からスタートし、市町村が運営している制度です。日本では高齢化が進んでおり、令和4年の時点で総人口1億2,550万人に対して、65歳以上の人口は3,621万人です。全体で高齢者が占める割合(高齢化率)は、28.9%となっています。

高齢化が進むにつれ介護の必要性が高まり、大きな社会問題となっています。また、核家族の増加に伴って、親の介護のために離職する「介護離職」も課題の1つです。

介護保険制度は家族の負担を軽減し、介護が必要な高齢者を社会全体で支える制度です。

介護保険サービス要介護認定を受けた方が利用できます。要介護認定は、65歳以上の方は介護が必要となった場合、だれでも申請可能です。また、40歳から64歳の方は、特定疾病の診断を受け、介護が必要となった場合に申請できます。

介護保険サービスを利用するには、ケアプラン(介護サービス計画書)の作成が必要です。

介護保険制度の概要

介護保険は、40歳以上の方が加入対象です。65歳以上の方を第1号保険者、40歳から65歳未満の医療保険加入者を第2号被保険者と定められています。

介護保険料は、満40歳の誕生日の月から支払いが開始され、医療保険料とあわせて徴収されます。満40歳とは、厳密には40歳を迎える誕生日の前日を指し、1日生まれの方は前月の末日のことです。例えば、2月1日生まれの場合、1月31日が起算日となるため、1月から徴収が始まります。

一方、65歳以上の方は原則年金から天引きする普通徴収が一般的です。

ただし、他の市町村から転入したときや年度途中で保険料が減額した方は、天引きではなく口座振替や納付書で支払うこともあります。

介護保険サービスが使用できる人

介護保険を使って介護保険サービスを受けられる方は、次のとおりです。

第1号被保険者
(65歳以上の方)
要介護認定を受け、要介護または要支援に認定された方
第2号被保険者
(40歳から65歳未満の方)
若年性認知症や脳血管疾患などの特定疾病を受傷された方で要介護または要支援に認定された方

介護保険サービスを受ける際は、市町村に申請し要介護認定(または要支援認定)を受ける必要があります。

特定疾病とは

特定疾病は、心身の健康状態の悪化と医学的な関連性が認められ、加齢を伴う身体的・精神的な変化により、要介護状態の原因となる割合が高い疾病です。

・がん(末期)
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症
・後縦靭帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・初老期における認知症
進行性核上性麻痺
・大脳皮質基底核変性症
パーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症
・多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

特定疾病の範囲を明確にし、要介護認定を受けやすくするため上記の16種類に限定されています。

介護保険証はどこで受け取れるの?

介護保険証は、65歳の誕生日の月に発行され、お住まいの市町村から郵送で届きます。

40~64歳の方は、特定疾病を受傷し、要介護認定を受けた方に限り介護保険証が発行されます。

介護サービスの種類

介護サービスは、大きく介護給付予防給付に分けられています。介護給付を行うサービスは、要介護1~5の方が受けられるサービスで、予防給付をおこなうサービスは、要支援1~2の方が受けられます。

それぞれの介護サービス内容の一例を以下のとおりです。

サービスの種類サービス内容
介護給付をおこなうサービス居宅介護サービス訪問入浴
訪問看護
通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション(デイケア)
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護 など
施設サービス介護老人福祉施設
介護老人保健施設
介護療養型医療施設 など
地域密着型介護サービ認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
夜間対応型訪問介護 など
予防給付をおこなうサービス居宅介護支援介護予防訪問入浴介護
介護予防福祉用具貸与
介護予防通所リハビリテーション
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ) など
地域密着型介護予防サービス介護予防認知症対応型通所介護
介護予防小規模多機能型居宅介護

(参考:介護保険制度の概要|厚生労働省老健局

上記の介護サービスは、介護度によって使える回数が異なります。また、介護保険サービスは、歩行の杖や車いすなどのレンタルや購入にも使えます。

介護保険サービスはそれぞれの状況にあったサービスの選択が可能です。ただし、介護保険サービスを受ける際には要介護認定を受け、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらう必要があります。

要介護認定とは

要介護認定は、要介護状態や要支援状態にあるかどうか、どの程度支援に時間が必要かで介護区分を決定します。認定までの流れを詳しく見ていきましょう。

要介護認定の申請方法

介護認定を受けるには、介護が必要な方が住んでいる市町村の窓口で申請します。

介護認定を申請する際は、次のものを準備しておきましょう。

・介護保険被保険者証(65歳以上の方)
・健康保険被保険者証(65歳未満の方)
・要介護、要支援認定申請書
主治医の連絡先、名前、医療機関名が分かるもの(診察券など)
・本人以外の方が申請する場合は、委任状や印鑑、代理人の身分証明

ただし、市町村によって必要になるものは異なるため、インターネットや窓口で確認が必要です。

介護認定申請後は、市町村からの依頼で「主治医意見書」が作成されます。主治医がいない場合は、市町村の指定医の診察が必要です。

要介護認定の申請後、対象者の自宅または入院先などに訪問し、健康状態や身体機能、精神面などを聞き取りします。家族や支援者の同席も可能です。認定調査は、全国統一の評価シートを使って、客観的に評価します。

認定調査後は、主治医の意見書や認定調査の結果をコンピュータで判定する一次判定と、保健・医療・福祉の学識経験者による二次判定で協議され、介護度が決定します。

利用開始までの流れ

要介護認定を申請してから介護サービスが受けられるようになるまで、約30日かかります。認定の有効期間は新規の場合で原則6か月(状態により3~12か月)で、有効期間が満了するまでに更新申請が必要です。

介護度が決まれば、決定通知が郵送で自宅に届きます。その後は、市町村の指定を受けた居宅介護支援事業者のケアマネージャー(介護支援専門員)に、ケアプランを作成してもらいましょう。

ケアマネージャーは、要介護者や家族の要望、要介護者の心身の健康状態などを考慮して、介護サービスの内容や利用回数を提案します。

要支援者は、地域包括支援センターまたは、委託を受けた居宅介護支援事業所のケアマネージャーがケアプランを作成し、介護予防サービスの利用ができます。

介護度の違い

介護度は、要支援1~2・要介護1~5・非該当の8段階あります。

それぞれ、介護度別に目安の状態を次の表にまとめました。

非該当日常生活や身の回りのことは自立している。
要支援1日常生活の基本動作はほぼ自立している。
起き上がりや歩行など、機能低下を防ぐため適切な介護予防サービスが必要な状態。
要支援2日常生活で見守りがあれば生活できる状態。
要介護状態にならないように、介護予防サービスの利用が必要。
要介護1掃除や洗濯・服薬管理など、手段的日常生活動作をおこなう能力が低下している。
日常生活において、部分的な介助が必要な状態。
要介護2要介護1状態に加え、日常生活動作にも部分的な介護が必要な状態。
要介護3要介護2状態と比較して、手段的日常生活動作・日常生活動作がさらに低下している。
日常生活において、ほぼ全面的に介護が必要な状態。
要介護4要介護3の状態に加え、介護なしでは日常生活を送ることが困難な状態。
要介護5要介護4の状態に加え、介護なしでは日常生活を送ることがほぼ不可能な状態。

(参考:介護保険制度における要介護認定の仕組み|厚生労働省

介護保険による給付の概要

介護保険には、次の3種類の給付があります。

介護給付介護度1~5の方が対象
予防給付要支援1~2の方が対象
市町村の特別給付介護給付や予防給付以外の配食や移動サービス など

介護保険サービスの自己負担は、1~3割です。介護が必要な方の所得によって割合は異なります。介護保険施設を利用する場合、自己負担額のほかに、食費や日常生活費、居住費の負担も必要です。

ただし、所得の低い方には「負担の軽減措置」の制度が使用できます。

介護度による支給限度額

居宅サービスを利用する場合、介護度によって利用できる支給限度額が異なります。1か月あたりの支給限度額は、次の表にまとめています。

要支援150,320円
要支援2105,320円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

(参考:介護事業所・生活関連情報検索|厚生労働省

支給限度額の範囲内で利用した場合、1割(所得により2~3割)の自己負担ですが、限度額の範囲を超えた場合は、超えた分から全額自己負担となります。

介護保険施設を利用した場合における1か月の費用負担の目安は以下のとおりです。

施設サービス費の1割約27,900円
食費約43,350円
日常生活費約10,000円
居住費約60,180円
合計約14,430円

(参考:介護事業所・生活関連情報検索|厚生労働省

上記の目安は、介護度5の方がユニット型個室を使用した場合における、1か月の自己負担額です。介護保険施設によって費用は変わるため、利用する際は利用料金を十分に確認しておきましょう。

利用者の負担が軽減される制度

介護保険サービスを利用する際、利用者の負担になり過ぎないように、所得に応じて負担軽減措置がとられています。

負担軽減措置には次のようなものがあります。

・特定入所者介護サービス費補足給付
・高額介護サービス費
・高額医療・高額介護合算制度

どの制度も、所得によって支給される金額が異なります。また、支給を受ける場合は、市町村や医療保険者などの窓口へ申請が必要です。

まとめ:介護保険制度を知って適切な介護サービスを受けよう

この記事では、介護保険制度の概要や介護サービスの内容・負担軽減制度について紹介しました。介護保険は40歳の誕生日を迎えた月に加入し、保険料の支払いが開始されます。

被保険者は、65歳以上の方を第1号被保険者、40歳~64歳の医療保険加入者を第2号被保険者と定められています。第1号被保険者は原則年金から介護保険料が支払われ、第2号被保険者は医療保険と合算して徴収されます。

介護サービスを利用するには、介護認定を受けケアプランを作成して初めて利用可能です。第2号被保険者の場合は、特定疾病の方に限り、介護保険サービスが受けられます。

介護保険料は、市町村や介護が必要な方の所得によって異なります。万が一、利用料の自己負担が大きいと感じる方は、市町村や医療保険者などの担当へ相談し、給付が受けられるか相談してみるとよいでしょう。

今回の記事を参考に、介護保険の理解が深まれば幸いです。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。