介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 資格・就職・転職 訪問介護現場の苦労とほっこりエピソード|ケアトーク〜介護の声を聞く〜 Vol.2

資格・就職・転職

2024-09-26

訪問介護現場の苦労とほっこりエピソード|ケアトーク〜介護の声を聞く〜 Vol.2

介護福祉士は、介護施設の利用者の身体介護や生活援助を行い、日常生活をサポートする仕事です。一方で、待遇面や仕事の大変さが理由で、深刻な人材不足が浮き彫りとなっており、介護福祉士に興味があっても自分の職業にするか迷われる方もいるのではないでしょうか。

 

そこで、現役の介護福祉士のBさんに、目指したきっかけや訪問介護業務のリアル、心温まるエピソードなどをうかがってみました。

訪問介護とは?

訪問介護とは、利用者が可能な限り自宅での生活を継続できるよう、利用者宅へ訪問し、身体介護生活援助を行うサービスです。介護福祉士介護職員の初任者研修、実務者研修などの資格を持ったスタッフが利用者の自宅を訪れ、オムツ交換や清拭、掃除・洗濯のサポート、買い物代行などを行います。

ご家族だけで介護をしていると身体的・精神的な負担が大きくなりがちです。訪問介護は、自宅での生活を支える上でなくてはならないサービスといえるでしょう。

また、要介護者のなかには、住み慣れた自宅での生活を希望する方もいるため、訪問介護を利用しながら自宅生活を続けられるのが、訪問介護の特徴です。

現役介護士にインタビュー

デイサービスやグループホームのキャリアを重ね、訪問介護の業界に飛び込んだBさん。介護福祉士を目指したきっかけや訪問介護業務のリアル、やりがいについてきいてみました。

―はじめに、Bさんが介護士になろうと思ったきっかけをお聞かせください。

大学で就活をしていたとき、いくつかの内定をいただきましたが、そのなかに介護の会社がありました。飲食やリフォーム関連の営業職なども考えていたのですが、介護の仕事はほかの仕事と比べてより直接的に人の役に立てる仕事です。それに惹かれる形で介護業界を選びました。ヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)の資格を取得する際に、現場実習をし、そこで介護の仕事をしたいという思いがさらに強くなりましたね。

―最初はどこで介護の仕事を始めたのですか?

最初の勤務先は、東京都内のデイサービスです。約1年半にわたり、入浴や食事介助など一連の業務を経験しました。印象的だったのは、普通のお風呂だけでなく機械浴があったことですね。ADL(※)の低下している方や床ずれのある方もいらっしゃっていたので、入浴に携わる業務にも携わっていました。その後、グループホームの勤務を経て、介護士3年目あたりで訪問介護の業界に転職する運びとなったのです。

(※)ADL:Activities of Daily Livingの略称であり、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」を指す。

―デイサービスと訪問介護の違いはなんですか?

一番の違いは、勤務場所です。デイサービスは自分の慣れた環境で仕事ができますが、訪問介護となると利用者さんのご自宅に出向くので、最初は非常に抵抗がありました。ご自宅となると各家庭でルールが違うので、訪問業務に慣れるまでは戸惑いましたね。

また、デイサービスでは、身体機能の維持を兼ねたゲームや体操といったレクリエーションなどの活動もありますが、訪問介護ではあくまでも生活に必要な支援が中心です。訪問介護の方が、身体支援でより深く介入が必要になるかと思います。

―訪問介護の業務内容について詳しく教えてください。

訪問介護の主な業務は、排泄介助、食事介助、身の回りの整理です。1時間ほど滞在する場合は、食事から身の回りの整理まで対応します。それ以外にも買い物代行や掃除代行などもすることがありますね。

―それ以外にも特徴的な業務はありましたか?

亡くなったご家族の書類や不用品の整理を頼まれたこともありました。また、ゴキブリがたくさん出るご家庭は荷物が多く、掃除し、整理するだけで大変だった記憶があります。介護士が担う身体介護や生活援助の項目は、明確に決められているのですが、利用者さんのご事情に応じた対応も必要だと思います。

ほかにも緊急で発熱した利用者さんを病院へお連れするために救急車を呼び、私自身はタクシーで搬送先へ向かったことがありました。

―訪問時のコミュニケーションで気をつけていることはありますか?

まずは相手の様子をよく観察し、どんな方なのかを見極めるようにしています。挨拶したときの反応で、大体の特徴が分かるのですが、声のトーンや話し方など、その方に合わせたコミュニケーションを取ることが大切です。

―コミュニケーションを取りやすいと思える利用者さんの特徴などはありますか?

もともと家族関係が良好という方は、コミュニケーションが取れていらっしゃるので、私たちのサービスに柔軟に受け入れていただける傾向がありますね。ただ、生活環境もそれぞれ異なるので、「○○だからコミュニケーションが取れている、取れにくい」というものは、一概に言い切れない部分があります。利用者さんの個性を尊重し、これまでの生活環境と特性を考えながら、柔軟にコミュニケーションを交わしています。

―訪問介護ではどのような職種と連携することが多いですか?

主に管理者を通じて看護師やケアマネジャーと情報共有することが多いと思います。直接やり取りする場合、床ずれや関節が硬くなってしまっている利用者さんのケアについて、看護師からアドバイスをもらうことがありますね。また、在宅酸素療法を行っている方の酸素ボンベの取り扱いや、インスリン注射の確認なども看護師と連携しながら対応しています。

ーほかにも連携が必要な場合はありますか?

服薬確認や薬の管理も重要な業務のひとつなので、飲み忘れがあった場合や、服薬のタイミングについて判断が必要な際は、看護師に確認します。

トイレや入浴の介助が物理的に難しい場合は、訪問介護事業所の管理者に手伝ってもらうこともありますね。

―2024年4月に介護報酬の改定がありました。実際に影響は出ているのでしょうか?

大きな影響を受けています。改定によって、生活援助の報酬はプラスになりましたが、訪問介護の項目が引き下げになりました。全体の項目を見ると「±0」のように見え、マイナスがなさそうに見えますが、ほかの項目でもマイナスになっている項目が多いですね。その影響で、特に小規模の訪問介護事業所は収入が減っていると思います。介護士の人材を確保するのも負担となり、慢性的な人材不足に陥っているのが現状です。

―そのような課題に対して対策は講じていますか?

転職サイトなどを活用して求人を掲載していますが、なかなか採用につながりません。介護士が少ないうえに高齢化も進んでいますから、ケアマネジャーからの依頼も泣く泣く断わらざるを得ないときがあるんです。そのため、現在はリファラル採用(※)に力を入れています。転職サイトは掲載に絡んだ手数料が高く、採用費にコストが割かれてしまうので、なるべく個人の紹介で採用できるよう考えています。

(※)リファラル採用:自社の社員または社外の信頼できる人脈を通じて、自社にふさわしい人材(=採用候補者)を紹介してもらう採用方法

―訪問介護の仕事で特に苦労したことはありますか?

一番大変なのは業務量の多さです。最大で1日17件ほどの訪問介護があり、朝7時から夜11時まで働いていたことがありました。介護福祉士を続ける理由のひとつが、給料が比較的高かったことですが、正直、かなり厳しい労働状況ですよね。

―ほかにも苦労したことがありましたら、教えてください。

利用者さんとのコミュニケーションで難しさを感じることも幾度かありました。例えば、非常に丁寧な対応を求める方がおりまして、こちらが丁寧にしているつもりでも、不十分だと指摘されることがあります。

ほかのスタッフの話ですが、コミュニケーションが理由でクレームにつながってしまい、担当を変更せざるを得ないケースもありました。私もその方を担当したことがあるのですが、終始緊張しながらケアに入らせていただいた記憶があります(笑)。

―仕事をしていてうれしかったエピソードはありますか?

やはり、利用者さんに温かく迎えてもらったり、感謝の言葉をいただいたりすると、うれしいですね。

特に印象に残っているのは、台風の前の大雨が降った日のこと。そのとき、私は終日訪問介護を続けていました。最後の訪問先の大きなお屋敷で、心身ともに疲れ切った私に「家のなかに入ってほしい」と声をかけてくださったのです。実際にお屋敷のなかに入ってみると、タオルを渡されました。悪天候のなか、訪問した私を気遣ってくださった気持ちが伝わり、本当にうれしかったですね。

お屋敷にお住まいの方の介護業務を終えて帰ろうとしたところ、訪問先の方から「ちょっと来てください」と呼び止められました。呼ばれた方へ向かうと、キッチンに温かいコーヒーが用意されていて「帰る前に飲んでいってください」と言われたんです。そのお心遣いに感動しました。

―素敵なエピソードですね!最後に、訪問介護に興味を持っている方へメッセージをお願いします。

訪問介護は、社会に必要とされている仕事です。つらいときもあると思いますが、直接感謝されることも多く、頑張って続けているとやりがいを感じる場面に多く巡り合えます。

これから介護福祉士を目指す方は、適切に休息を取りながら、自分自身のケアも忘れずに業務に取り組んでほしいと思います!

―本日はありがとうございました!

大変な仕事ですが、やりがいもある素晴らしい職業だということがよく伝わってきました。

まとめ

現役介護士からお話をうかがうことで、インターネットや本では知り得ない、リアルな訪問介護の仕事や苦労、やりがいなどを知ることができました。

今後、訪問介護の業界に進んでみたいと思っている方は、Bさんのリアルな声をぜひ参考にしてみてくださいね。