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介護士試験

2023-03-28

介護福祉士国家試験にはどんなものが出題される?過去問から傾向を解説!

「介護福祉士国家試験の勉強って、過去問を解くだけでもいい?」「受験するなら、1回で合格したい」と考えることはありませんか?

 

介護福祉士は、介護の専門知識と技能を習得し、介護の現場で活躍できる唯一の国家資格です。介護福祉士の資格を取得して、現場で力を発揮したい人もいるでしょう。

 

この記事では、介護福祉士国家試験の過去に出題された問題例や勉強方法について解説しています。

 

介護福祉士国家試験の過去問題を解くことで、国家試験の出題形式に慣れ、試験の傾向もわかるでしょう。介護福祉士国家試験に合格するためにも、ぜひ参考にしてください。

介護福祉士国家試験とは?

介護福祉士国家試験は、介護福祉士の資格を取得するために必要な国家試験のことです。年齢や性別などの制限はなく、受験資格があれば何度でも受験可能です。

介護福祉国家試験は、厚生労働大臣の指定を受けた指定試験機関・指定登録機関である「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」が、介護福祉士国家試験の実施・登録をおこなっています。

毎年1月下旬に筆記試験が実施され、合格者は3月上旬に実技試験の受験ができます。ただし、実技試験は一定の条件を満たした場合、免除されます。

介護福祉士国家試験の受験資格

介護福祉士国家試験の受験資格は、次の4つのルートがあります。

・養成施設ルート
・実務経験ルート
・福祉系高校ルート
・経済連携協定(EPA)ルート

養成施設ルートは、高等学校卒業後に介護福祉士養成施設(大学や短大、専門学校など)を卒業することで、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。

※「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正により、平成29年度(第30回)から、養成施設ルートが介護福祉士国家試験の受験資格となりました。なお、養成施設を令和8年度末までに卒業する方は、卒業後5年の間は、国家試験を受験しなくても、または、合格しなくても、介護福祉士になることができます。

この間に国家試験に合格するか、卒業後5年間続けて介護等の業務に従事することで、5年経過後も介護福祉士の登録を継続することができます。令和9年度以降に養成施設を卒業する方からは、国家試験に合格しなければ介護福祉士になることはできません。

実務経験ルートでは、実務経験3年(1,095日)以上、かつ従事日数540日以上の経験を有し、実務者研修もしくは介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修を修了した方が介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。

福祉系高校ルートでは、平成21年度以降に福祉系高校に入学し、指定の単位を修めて卒業した方が介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。

※平成21年度以降に福祉系高校に入学された方について、実技試験は免除となります。
※平成20年度以前の場合は、介護技術講習を受けることで実技試験は免除となります。

経済連携協定(EPA)ルートは、経済連携協定(EPA)に基づいて一定の要件を満たして入国され、受け入れ施設において介護福祉士の資格を目指して研修しながら就労している外国人の方をEPA介護福祉士候補者と呼びます。

EPA介護福祉士候補者となり、実務経験3年以上で介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。

現在のところ対象国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国のみです。

介護福祉士国家試験の出題科目

介護福祉士国家試験は、午前に「人間と社会」「介護」の領域から、午後に「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」「総合問題」の領域から出題されます。

午前

領域試験科目
人間と社会(計16問)・人間の尊厳と自立(2問)
・人間関係とコミュニケーション(2問)
・社会の理解(12問)
介護(計52問)・介護の基本(10問)
・コミュニケーション技術(8問)
・生活支援技術(26問)
・介護課程(8問)
合計:68問

午後

領域試験科目
こころとからだのしくみ(計40問)・発達と老化の理解(8問)
・認知症の理解(10問)
・障害の理解(10問)
・こころとからだのしくみ(12問)
医療的ケア(計5問)医療的ケア(5問)
総合問題(計12問)総合問題(12問)
4領域から事例形式で出題。
合計:57問
午前:68問・午後57問・総合計:125問

上記の表にあるように、試験科目は13科目ですが、「人間の尊厳と自立(2問)」と「介護の基本(10問)」、「人間関係とコミュニケーション(2問)」と「コミュニケーション技術(8問)」の5領域・2科目ずつを1科目群としてまとめて扱うため、科目群としては11科目群です。科目によって問題数は異なりますが、11科目群のうち1科目でも得点しなかった場合、合格できません

そのため、どの問題もまんべんなく解き、自分の苦手科目を重点的に学習しておくことも大切です。

合格基準・難易度

介護福祉士国家試験は、午前68問・午後57問、合計125問出題されます。1問に1点加点され、総得点は125点です。

総得点の60%以上が合格基準となっており、72点以上あれば、合格できると考えられています。ただし、問題の難易度によって調整されるため、必ずしも72点以上で合格できるわけではありません。

また、筆記試験合格者は、実技試験の受験資格が得られます。実技試験は「介護等に関する専門的技能」を見ます。実技試験は100点満点中60%以上で合格ですが、課題の難易度によって合否がわかれるでしょう。

※現在においては、ほとんどの方が実技試験免除になっています。

次の表は、令和4年の介護福祉士と他の福祉資格の合格率です。

国家資格受験者数合格者数合格率
介護福祉士83,082人60,099人72.3%
社会福祉士34,563人10,742人31.1%
介護支援専門員54,406人10,328人19.0%

(参照:第34回介護福祉士国家試験合格発表第34回社会福祉士国家試験合格発表第25回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省

他の福祉資格と比較してみても合格率は高いため、難易度はあまり高くないと言えるでしょう。

介護福祉士国家試験合格後の手続き

介護福祉士国家試験に合格後、資格登録が必要です。必要書類をそろえ、簡易書留で公益財団法人社会福祉振興・試験センターに提出してください。

試験センターで審査後、受理されると登録簿に登録され約1か月後に登録証が交付されます。

必要書類は以下の5点です。

・登録申請書
・登録免許税「収入印紙」の原本
・貼付用紙
・登録手数料「振替払込受付証明書(お客様用)」の原本
・戸籍謄本の原本

登録免許税は、郵便局で9,000円分の収入印紙を購入してください。また、登録手数料として、3,320円が別途必要です。

戸籍謄本の原本以外に「戸籍の個人事項証明書」の原本、または「本籍を記載した住民票」の原本でも構いません。

また、介護福祉士養成施設卒業者や外国籍の方は、提出する書類が追加されるため、社会福祉振興・試験センターで確認しておきましょう。

介護福祉士国家試験の過去問はどんなもの?具体例を紹介

介護福祉士国家試験の試験問題がどのようなものか知りたい方は、社会福祉振興・試験センターで見ることも可能です。過去3年間の試験問題が科目ごとに確認できます。

次に、問題数の多いものや難易度が高い科目の一例を紹介しています。

人間の尊厳と自立からの出題具体例

人間と社会の領域の「人間の尊厳と自立」から出題します。この科目は、福祉の歴史や人物が出題される傾向です。

問題数が少なく難易度が高いため、必ず押さえておきたい科目です。

【問題】第31回(2018年度)出題

問題2
『夜と霧』や『死と愛』の著作であるフランクル(Frankl,V.)が提唱した価値の説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1.公民運動により差別を解消すること。
2.生命が制限される状況において、いかなる態度をとるかということ。
3.最低生活水準を保障すること。
4.ライフサイクル(lifecycle)を通じたノーマルな発達的経験をすること。
5.アパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃すること。

【解答】2.生命が制限される状況において、いかなる態度をとるかということ。

【解説】
フランクルは、人生を意味で満たす3つの価値(創造価値、体験価値、態度価値)を提唱した。創造価値とは、自分自身が何かを創り出し、それを世の中に与えることに生きる意味を見出すというもの、体験価値とは、さまざまな体験を通して、世の中から何かを受け取ることに生きる意味を見出すというものである。そして、3つ目の態度価値とは、自己の死や不治の病、障害といった運命に直面し、創造価値も体験価値も得られない状況に立ち至っても、その苦難の中で、人はどのような態度をとるかによって、人間としての尊厳や生きることの意味を見出せるというものである。
従って、フランクルが提唱した価値(態度価値)の説明として、選択肢2が適切である。
(引用:介護の仕事にスグ効くメディア|We介護

生活支援技術からの出題具体例

次は、介護領域の「生活支援技術」からの出題です。この科目は、介護領域の中で最も問題数が多いため、得点しやすい科目です。

【問題】第34回(2021年度)出題

問題41
スライディングボードを用いた、ベッドから車いすへの移乗の介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.アームサポートが固定された車いすを準備する。
2.ベッドから車いすへの移乗時には、ベッドを車いすの座面より少し高くする。
3.ベッドと車いすの間を大きく空け、スライディングボードを設置する。
4.スライディングボード上は、臀部(でんぶ)を素早く移動させる。
5.車いすに座面を安定させ、からだを傾けずにスライディングボードを抜く。

【解答】2.ベッドから車いすへの移乗時には、ベッドを車いすの座面より少し高くする。

【解説】
不正解 1.アームサポートが固定された車いすを準備する。
スライディングボードは、ベッドから車いすの座面に渡して使用する。このため、アームサポートが固定されたタイプの車いすを用意すると、スライディングボードを車いすに渡すことができない。アームサポートを跳ね上げられるタイプか、取り外せるタイプの車いすを準備する。

正解 2.ベッドから車いすへの移乗時には、ベッドを車いすの座面より少し高くする。
ベッドから車いすへ移乗する際には、ベッドのほうが少し高いと高低差を利用して移動しやすくなる。

不正解 3.ベッドと車いすの間を大きく空け、スライディングボードを設置する。
ベッドと車いすとの間を大きく空けると、スライディングボードが不安定になり利用者が転落する可能性がある。ベッドと車いすの間は、できるだけ空けないようにする。

不正解 4.スライディングボード上では、臀部(でんぶ)を素早く移動させる。
臀部を素早く移動させると、勢いよく滑ってしまい危険である。2段階程度にわけて、ゆっくりスライディングボードの上を移動する。

不正解 5.車いすに座位を安定させ、からだを傾けずにスライディングボードを抜く。
介護福祉職がからだを傾けずにスライディングボードを引き抜くと、利用者が車いすの上で不安定な姿勢になる。介護福祉職は、からだを傾け、利用者の臀部を浮かせながらスライディングボードを引き抜く。
(引用:介護の仕事にスグ効くメディア|We介護

障害の理解の出題具体例

最後に、こころとからだのしくみ領域の「障害の理解」からの出題です。介護福祉士の試験には障害についても出題されるため、違いを理解しておきましょう。

【問題】第34回(2022年度)出題

問題95
障害者が障害福祉サービスを利用するために相談支援専門員が作成する計画として、正しいものを1つ選びなさい。

1.地域福祉計画
2.個別支援計画
3.サービス等利用計画
4.障害福祉計画
5.介護サービス計画

【解答】3.サービス等利用計画

不正解 1.地域福祉計画
地域福祉計画は、社会福祉法に基づいて市町村および都道府県が策定する(努力義務)。

不正解 2.個別支援計画
個別支援計画は、障害福祉サービス事業所に配置されているサービス管理責任者が作成する。

正解 3.サービス等利用計画
サービス等利用計画は、都道府県知事、市町村長の指定を受けた相談支援事業所などに配置されている相談支援専門員が作成する。

不正解 4.障害福祉計画
障害福祉計画は、障害者総合支援法に基づいて、厚生労働大臣が策定する基本指針に即して、市町村および都道府県が定める。

不正解 5.介護サービス計画
介護サービス計画はケアプランのことで、介護サービスを利用する要介護者ごとに、介護支援専門員が作成する。
(引用:介護の仕事にスグ効くメディア|We介護

介護福祉士国家試験の勉強方法

介護福祉士国家試験は、次の3つの勉強方法があります。

・独学
・通信教育
・スクール

介護福祉士国家試験の受験申込みは、毎年7月頃に公開されます。介護福祉士の国家試験に必要な学習期間は3か月~6か月間必要です。

それぞれの特徴やメリット・デメリットも紹介しています。自分の生活スタイルや性格に合った方法を選んでみてください。

独学

独学は、書店でテキストや問題集を購入し、繰り返し解いていく方法です。テキストは、書店で購入するほか、知人や先輩から譲ってもらうこともあるでしょう。

独学で進める場合は、問題集やテキスト代のみのため、費用はそれほどかかりません。また、仕事のあとや休日など、自分の好きな時間に自分のペースで進められるところがメリットです。

しかし、解説やテキストをよく読んでも理解しにくいところや、わからないところをすぐに解消できないところがデメリットです。

繰り返し過去問や問題集を解いて理解を深め、身近に質問できる方がいれば、安心して取り組めるでしょう。

通信教育で学ぶ

介護福祉士国家試験の勉強を、通信教育で学ぶ方法もあります。通信教育では、テキストや問題集が用意されており、カリキュラム通りに進めていくものもあります。

通信教育では、空き時間を利用し自分のペースで学習を進められます。わからないところをメールやウェブ上で質問できるため、問題の理解を深められるところがメリットです。

また、通信教育では、領域や科目ごとに小テストが設けられているものもあり、自分がどれくらい理解しているか、客観的に見ることも可能です。

通信教育の場合、テキスト代や受講料など独学で勉強するよりも、多少費用が高くかかるところがデメリットです。

スクールで学ぶ

介護福祉士国家試験を学習するには、スクールに通学して学ぶ方法もあります。専門講師から学べ、わからない問題や理解しにくい問題をすぐに解消できるところがメリットです。独学や通信講座よりも、手厚いサポートが受けられるでしょう。

しかし、スクールの受講料やテキスト代に費用がかかります。また、スクールの日程に合わせて、仕事のシフト調整が必要なところがデメリットです。

日程調整が難しいかもしれませんが、スクールに通うことで勉強時間を確保できます。ある程度の強制力が働き、1人で勉強することが苦手な方にはよいでしょう。

介護福祉士国家試験に合格するための3つのポイント

介護福祉士国家試験に合格するためには、次の3つのポイントがあります。

・勉強方法を決める
・計画的に勉強する
・過去問を繰り返し解く

介護福祉士国家試験の勉強は早い人で受験申込み直後から試験勉強を開始します。遅くとも3か月前には開始しておいた方がよいでしょう。

また、実務者講習を受ける方は、講習スケジュールを考慮する必要があります。

勉強方法を決める

まずは、どのような勉強方法をするか考えてみましょう。スクールに通いたい方や通信教育を受けたい方は、申込み手続きに時間がかかる場合があります。

スクールに通う場合は、希望の日時に通えない場合も考えられるため、早めの申込みが必要です。

計画的に勉強する

介護福祉士国家試験の問題数や出題範囲は広いため、計画的に取り組むことが必要です。独学で勉強する方は、勤務形態や健康に気をつかい、無理のないスケジュールを立てることが大切です。

また、毎日少しずつ進めるのか、休日にまとめて勉強をするなど、勉強に充てられる時間を把握しておきましょう。

学習を進めるごとに、自分の得意・不得意科目を理解し、繰り返し問題を解いていくことも大切です。

試験日近くには模擬試験を受け、本番の雰囲気を体験する日程も組んでおきましょう。このように、計画的に勉強を進めることが大切です。

過去問を繰り返し解く

介護福祉士国家試験の勉強は、過去問を繰り返し解きましょう。問題を繰り返し解くことで、試験の出題傾向や自分の苦手科目を理解できるでしょう。

また、過去問は国家試験の出題方法に沿っているため、過去問に触れておくだけで、問題に慣れることもできます。試験時間である1時間50分でどれくらい問題が解けるか測っておくことも大切です。

間違った問題の解説を声に出して読んだり、テキストに戻って復習したりして、理解を深めます。

また、介護福祉士国家試験は、すべての科目で得点を得られなければ、総合得点がよくても合格できません。問題数の少ない科目や苦手科目を重点的に学習することも重要です。

まとめ:介護福祉士国家試験の勉強は、過去問を繰り返し解いて傾向をつかもう!

この記事では、介護福祉士国家試験の勉強方法や合格のポイントや、過去問の一例を紹介しました。

介護福祉士国家試験に合格するためには、過去問を繰り返し解くことが重要です。その他にも、通信教育を受講したりスクールに通ったりして、さらに理解を深めることも可能です。

過去問は、介護福祉士国家試験の出題傾向を知ることや、問題に慣れることにも役立ちます。問題を解くことに慣れたら時間を測り、時間内に解くことも大切です。

介護福祉士国家試験の合格率は約70%で、他の福祉関連の試験と比較すると、難易度が低めです。過去問を繰り返し解いて試験に臨みましょう。

上野紳也

介護福祉士
福祉用具専門相談員
初任者研修講師

介護職歴13年以上の現役介護士。ショートステイのユニットリーダーやデイサービスの相談員を経験。現在は、リハビリデイの相談員兼管理者として勤務。介護の悩みを解決したり、介護の役立つ情報を発信するブログを運営中。