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介護サービス・制度

2025-01-08

介護予防とは?予防支援の目的と利用できるサービスについて解説

高齢化が進む現代社会で、高齢者が自立した生活を続けるために欠かせないのが「介護予防」です。高齢者が要介護状態に陥るリスクを減らし、心身の健康を保つためにはどのような対策が必要なのでしょうか?
 
本記事では、介護予防の目的や基本となる3つのポイント、利用できるサービスについて分かりやすく解説します。大切なご家族や自分自身の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。

介護予防とは?

介護予防とは、高齢者が要介護状態になることを防いだり、遅らせたりするための取り組みです。

加齢とともに体力や認知機能が低下していくのは自然なことですが、適切な予防を行うことで、機能低下を緩やかにし、健康寿命を延ばせます。

近年、日本の高齢化が進む中で介護予防の重要性がますます高まっており、自治体や地域での支援活動が広がっています。

介護予防の目的

介護予防の目的は、できるだけ健康で自立した生活を送ることです。要介護状態になることを防ぎ、高齢者が生活の質(QOL)を維持するだけでなく、ご家族や社会全体の負担も軽減できます。

また、高齢者が社会との関わりを持ち続けることで、「心身の健康を保つ」と考えられており、孤立やうつ状態を防ぐ効果も期待できるでしょう。

介護予防の3つの柱

介護予防には「運動」「栄養」「社会参加」の3つが重要とされています。

・運動

筋肉の低下を防ぐためには、適度な運動が重要です。運動で得られた筋力や体力は、転倒予防や骨粗しょう症対策など、身体機能を維持する効果が期待できます。

・栄養

高齢者は低栄養になりやすいため、バランスのよい食事を意識することが大切です。栄養の偏りを避けることで、健康的な身体を維持できます。

・社会参加

高齢者にとって、社会とのつながりは認知機能の低下予防や精神安定に役立ちます。地域活動やご家族の交流を通じて、孤独を防ぎ、生きがいを感じることにもつながるでしょう。

フレイルとは?

フレイルとは、加齢によって筋力や体力、認知機能が低下し、健康と要介護の中間に位置する状態を指します。

フレイルが進行すると要介護状態にまで進むリスクが高まりますが、早期から介護予防に取り組むことで、改善や回復が期待できるでしょう。

フレイルの要因は、加齢による体重減少・筋力低下・疲れやすさなどがあり、さらに外出する機会の減少が原因で起こりやすくなります。高齢者のフレイルの症状が軽いうちに、本人やご家族がフレイルに気づくことが、介護予防の第一歩になるといえるでしょう。

介護予防チェックリストを活用してみよう

厚生労働省は自治体単位で短期集中予防サービスを実施する際の参考資料として「介護予防マニュアル」を発表しています。

チェックリストには「運動」「栄養」「口腔」「そのほか」の項目があり、それぞれ自己チェックをしてみましょう。必要な支援が把握できるので、その後の介護予防の相談や計画、対策に役立ちます。

項目回答
(該当する場合にチェックを入れる)
1バスや電車を利用して1人で外出していますか
2日用品の買物をしていますか
3預貯金の出し入れをしていますか
4友人の家を訪ねていますか
5家族や友人の相談に乗っていますか
6階段を手すりや壁をつたわずに昇っていますか
7椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか
815分位続けて歩いていますか
9この1年間に転んだことはありますか
10転倒に対する不安は大きいですか
116か月間で2〜3kg以上の体重減少がありましたか
12身長 cm 体重 kg(BMI= )
※BMI=体重(kg)÷身長(m)が18.5未満の場合に該当
13半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか
14お茶や汁物などでむせることがありますか
15口の渇きが気になりますか
16週に1回以上は外出していますか
17昨年と比べて外出の回数が減っていますか
18周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われますか
19自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか
20今日が何月何日か分からない時がありますか
21(ここ2週間)毎日の生活に充実感がない
22(ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
23(ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる
24(ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない

出典元:厚生労働省|介護予防マニュアルについて 図表 0-2 基本チェックリスト をもとに作成

介護予防の取り組み

介護予防の取り組みには「総合事業」と「予防給付」があり、介護予防を推進するための重要な仕組みです。ここからは、総合事業と予防給付それぞれの特徴と介護予防サービスの種類を解説します。

総合事業

正式名称「介護予防・日常生活支援総合事業」は、地域包括ケアシステムの一環として、各自治体が主体となって提供する介護予防サービスです。要支援者を含む地域の高齢者全体を対象としており、健康維持や生活の質向上を目指した取り組みが提供されています。

例えば、高齢者が楽しく運動する体操教室、地域住民が交流できるサロン、趣味活動などがあります。

介護予防サービスの種類(予防給付)
予防給付は、介護予防サービスを利用するための給付で、要支援者を対象としています。

要支援者が受けられる介護予防サービスは以下のとおりです。

介護予防サービスの種類内容
介護予防訪問入浴介護利用者の自宅を訪問し、持参した浴槽で入浴の介護を行います。
介護予防訪問看護看護師が一定期間、自宅を訪問して療養上のサービス、診療の補助をします。
介護予防訪問リハビリテーション一定の期間、自宅でリハビリテーションを受けられます。
介護予防通所リハビリテーション一定の期間、介護老人保健施設(老健)/病院/診療所などに通い、理学療法や作業療法などの必要なリハビリテーションを受けます。
介護予防短期入所生活介護
(ショートステイ)
特別養護老人ホーム(特養)などの施設で、短期間生活し、入浴・排泄・食事などの介護を受けられます。ほかにも生活支援や機能訓練が受けられます。
介護予防短期入所療養介護介護老人保健施設(老健)などの施設で、短期間生活し、リハビリや日常生活のサポートを受けられます。
介護予防特定施設入居者生活介護介護予防特定施設サービス計画書に基づいて行われる、入浴・排泄・食事などの介護を受けられます。また、日常生活上の支援や機能訓練、療養上のサポートも受けられます。
介護予防福祉用具貸与福祉用具のうち、介護予防に効果があるとして厚生労働省が定めた福祉用具を貸与できます。
特定介護予防福祉用具販売福祉用具のうち、介護予防に効果があり、貸与できないもの(※特定介護予防福祉用具)を介護保険を利用して購入します。
介護予防居宅療養管理指導病院・診療所または薬局の医師・歯科医師・薬剤師などで提供される、療養上の管理および指導を受けられます。

参考:厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索

地域密着型介護予防サービスは、次の3つです。

介護予防認知症対応型通所介護認知症の方が事業所に通い、入浴・排泄・食事などのサービスを提供しています。また、日常生活で必要なサービスや機能訓練も受けられます。
介護予防小規模多機能型居宅介護通い・泊まり・訪問のサービスをひとつの事業所から組み合わせて利用できます。
介護予防認知症対応型共同生活介護
(グループホーム)
認知症を持つ方が共同生活を送る住居で入浴・排泄・食事などの介護を受けられます。
※認知症の原因となる疾患が急性の状態の方は除く

参考:介護事業所・生活関連情報検索|厚生労働省

介護保険外サービスの活用

介護保険外サービスは、介護保険の枠外で提供されます。利用者が自由に選んで使えることが特徴で、介護認定を受けていない方や、保険サービスだけではサービスが足りない方が利用するケースが多い傾向です。

介護保険外サービスには家事援助・配食サービス・見守りサービスなどがあります。見守りサービスには定期的な安否確認や緊急時の対応も含まれるため、ご家族と離れて暮らしていても安心です。ただし、介護保険外サービスの費用は全額自己負担となります

介護予防支援を受けるには

介護予防支援とは、地域包括支援センターのケアマネジャー、または委託された介護支援事業所のケアマネジャーが介護予防サービス計画を立て、サービスを利用できるようにする支援です。

介護予防計画書を作成するには、市町村の窓口で要介護認定を受ける必要があります。介護予防支援を受けるまでの流れは、以下のとおりです。

1.要介護認定の申請
2.認定調査主治医の意見書作成
3.認定結果の通知
4.ケアプラン(介護予防サービス計画)の作成
5.サービスの利用開始

1. 要支援・介護認定の申請

介護予防給付を受けるには、市町村の窓口で要支援・介護認定の申請が必要です。申請時には、認定調査を受ける場所や連絡先、主治医の意見書を依頼するかかりつけ医を記載します。

2. 認定調査・主治医の意見書作成
認定調査では、市町村の職員や委託された調査員が自宅に訪問し、申請者の運動機能や精神状態、生活環境を確認します。また、申請時に記載したかかりつけ医に対して、市町村から主治医の意見書の作成を依頼します。

※主治医の意見書はご家族から依頼する必要はありません。

3. 認定結果の通知
認定調査の結果をコンピュータで判定した結果(一次判定)と主治医の意見書をもとに、介護認定審査会で要支援・介護認定(二次判定)が行われます。
介護予防給付を受けられるのは「要支援1・2」の方です。審査結果は一般的に、申請から30日以内に通知されます(※)。

(※)要介護認定の審査にかかる日数は、市町村ごとで異なります。詳細についてはお住まいの自治体に確認することをおすすめします。

4. ケアプランの作成
要支援認定後、地域包括支援センターでケアプラン(介護予防サービス計画)を作成します。ケアプランの記載内容は、利用するサービスの内容や頻度などです。

5. サービスの利用開始
ケアプランが完成後、サービス提供事業者と契約を結び、介護予防給付サービスの利用が開始します。

自宅でできる介護予防対策

自宅でも介護予防はできます。日常生活の中で少し工夫するだけでも、健康を維持し自立した生活を続けられるでしょう。

介護予防につながる取り組みの一例は、以下のとおりです。

運動

自宅でできる運動には、下肢筋力を鍛える運動が効果的です。例えば、椅子に座った状態でもできる「かかと上げ」は日常生活でも取り入れられるため、始めやすいでしょう。関節の可動域を保つために、各部位のストレッチもおすすめです。簡単な体操は家の中や庭先でもできるため、テレビや動画を観ながら取り組みましょう。

栄養

バランスのとれた食事は、体力や免疫力を保つために欠かせません。高齢者は食事量が減る傾向があるため、栄養のバランスが重要です。また、高齢者は脱水を起こしやすいため、こまめに水分を摂る習慣をつけましょう。

口腔ケア

口腔ケアは歯や口の中だけでなく、全身の健康にも関わるケアです。噛む力や飲み込む力が衰えると、栄養の摂取が難しくなり、健康を損なうリスクが高まります。     口内の清潔を保つことで、細菌の繁殖を防ぎ、感染症や誤嚥肺炎の予防につながります。食後は口の中をきれいにすることを心がけましょう。

人との交流

人との交流は、孤立やうつの予防に役立ちます。ご家族や友人と連絡を取り合うことで、脳の活性化や心の支えになります。外出できない日があっても、電話やビデオ通話を利用すれば、コミュニケーションがしやすくなるでしょう。  

 趣味の活動

趣味は、生きがいや楽しみのために必要です。手芸や読書・ガーデニングなどの趣味は、集中力を高め脳の活性化につながります。     また、趣味の時間を楽しむことで生活にメリハリが生まれ、心身の健康の維持にも役に立ちます。 

できる限りの介護予防をして必要に応じてサービスを利用しよう

高齢者が自立した生活を続けるためには、介護予防サービスを活用して、要介護状態にならないことが大切です。

介護予防対策には「運動」「栄養」「社会参加」の3つのポイントがあり、これらに取り組むことで、高齢者の健康維持だけでなく、ご家族の負担軽減につながります。

介護予防は自宅で取り組めることも多くあるため、体力や状態に合わせて取り組み、健康で充実した生活を送りましょう。

渡口 将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながら、ライター活動をおこなっており、記事の執筆や本の出版をしている。