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家族介護

2023-01-26

在宅介護で大変なことランキング!ストレス軽減の方法・対策について紹介!

自宅で親の介護をおこなう在宅介護では、介護者の目が行き届くため安心な一方で、「常に親が気になって気持ちが休まらない」「すべて自分1人で対応するため精神的に追いつめられる」「介護によって腰や肩を痛めた」など、さまざまな苦労があります。

 

今回は、実際に在宅介護をおこなっている人たちが考える「在宅介護で大変なこと」を取り上げ、ランキング形式で紹介します。既に在宅介護をおこなっている方はもちろん、これから在宅介護を始める方、将来的に在宅介護を検討している方もぜひ参考にしてください。

在宅介護はなぜ大変?

在宅介護には「大変」というイメージがありますが、どんな課題があるのか、それぞれ見ていきましょう。

身体的な負担

要介護者の食事・排泄・入浴の介助などには身体的な疲労が伴います。要介護度が高くなると、ベッドから車椅子への移乗や入浴時に抱きかかえるなど、介護者の負担はさらに大きくなるでしょう。

介護のプロは身体をうまく使いますが、それでも腰痛に悩まされる介護職が非常に多いです。

また夜間に何度もトイレ介助をしたり、おむつを替えたりすると、睡眠不足に悩まされ体力が落ちる介護者も少なくありません。

精神的な負担

在宅介護では1日中、要介護者と一緒に過ごすことがほとんどです。それだけでも精神的に大きな負担を感じる方もいます。要介護者と介護者の折り合いが悪いケースでは、さらに負担に感じるでしょう。

認知症を発症している場合では、同じ質問を何度も繰り返される・急に怒り出す・深夜に歩き回るなどの問題もあり、「ちょっと目を離した時に、何か起こったらどうしよう」など、心配で気持ちが休まりません。

また、1人で介護をおこなっている・家族が非協力的などの場合、介護者の精神的負担はさらに大きくなるでしょう。

経済的な負担

施設入所と比べれば負担は少ないものの、在宅介護で介護保険サービスを利用する際にも費用は発生します。利用者負担は1~3割と決められていますが、所得によって割合が異なるため注意が必要です。

介護費用の中には、介護保険の適用外の費用もあり、全額自己負担しなければならないものもあります。例えばおむつ代や介護食代などです。

さらに介護用品のレンタルや購入、自宅をバリアフリーにするためのリフォーム費用なども加えれば、決して少なくない費用が必要になります。

在宅介護の大変さが解消されない場合のリスク

在宅介護には身体的・精神的・金銭的な大変さがありますが、それらが解消されない場合、介護者はもちろん要介護者にもリスクが発生します。どのようなリスクが起こるのか理解しておきましょう。

介護疲れで介護者・要介護者が共倒れに

介護者の心身の疲れが解消されないと、体調を崩して倒れてしまう恐れがあります。

老老介護」という言葉があるように、介護される親・介護する子が共に高齢であるケースは決して珍しくありません。

若い年代でも長年にわたる在宅介護は大きな負担になるため、高齢化しているケースでは、さらに共倒れのリスクが高いといえます。

介護者が介護離職してしまう

介護離職とは、仕事と介護の両立ができず、離職して親の支援に専念することです。介護離職すると家庭の収入が減り、経済的な負担が大きくなります。

また、働いていない期間が長くなる・介護者が年齢を重ねてしまうと再就職が難しくなり、さらに追いつめられることも。

近年は働き盛り世代の介護離職が増加しており、大きな社会問題になっています。

在宅介護で大変なことランキング

在宅介護にはさまざまな課題があります。実際におこなっている方々にとって、どのような点が大変なのか見ていきましょう。

在宅介護をおこなっている人が感じる大変さをランキング形式で紹介します。

2021年に医療法人社団風林会リゼクリニックが40~50代の男女1,100名を対象に実施した、「介護で大変なこと」からさまざまな課題を見ていきましょう。男女別でまとめた結果が、次の表です。

■介護で大変なことランキング

順位大変なこと全体女性男性
1相手とのコミュニケーション51.7%59.7%39.8%
2排泄の介助46.1%49.6%40.9%
3精神面42.7%52.5%28.0%
4時間面41.4%46.0%34.4%
5食事の介助38.4%36.7%40.9%
6入浴の介助32.8%31.7%34.4%
7経済面29.7%31.7%26.9%
8徘徊16.8%17.3%16.1%
9身だしなみのケア14.7%15.1%14.0%
10特にない6.9%5.0%9.7%

男女で「介護で大変なこと」の内容が大きく異なる、興味深い結果です。

排泄・食事の介助など直接的な介護ケアが大変だと感じる人が多い男性に対し、女性はコミュニケーションや精神的な面を大変だと感じる人が多くなっています。

男女別「在宅介護で大変なこと」ワースト1位の対処法

在宅介護で大変なことは、男女で差があることが分かりました。では、それぞれの「最も大変なこと」はどうすれば解決できるのでしょうか。

ここでは、それぞれの解決法について考えていきます。

女性の大変なことワースト1位:「相手とのコミュニケーション」

太古の時代から、男性は「目的」を重視し、女性は「共感」を大切にするといわれてきました。

女性が「相手とのコミュニケーションが大変」と感じるのは、当たり前のことかもしれません。

コミュニケーションといっても、実の親と義理の親では方法も密度も違います。実の親なら以心伝心で分かり合えたり、心を許せたりする部分が大きいでしょう。

しかし義理の親には遠慮が生まれ、折り合いが悪い場合はそばにいるのもつらいかもしれません。

その一方、実の親には遠慮がない分、つい厳しい言い方や、「昔はちゃんとできていたのに」など、過去と比べて責めてしまうこともあるでしょう。実の親とのコミュニケーションがつらい時は、過去と比べることをやめて、今の状態に着目して考えると負担を軽減できます。

子にとって、介護が必要になっても親に変わりないため、甘えたり頼ったりしたくなることや、腹が立つこともあるでしょう。しかし「今」の親に寄り添うことは、コミュニケーションを取りやすくする手段の1つです。

反対に義理の親はある程度割り切って、冷静に判断できるという長所があります。もし人間的に分かり合えない場合や、どうしても悩みが解消されない場合は、無理をせず介護以外は距離を取ってみるとよいでしょう。

訪問介護やデイサービス・デイケア、ショートステイなどの介護サービスを積極的に利用し、なるべく離れる時間を作ってみてください。

男性の大変なことワースト1位:「排泄・食事の介助」

排泄の介助には、誘導が必要・おむつの着用が必要など、状態によって支援方法はさまざまです。排泄の介助には、どうしても臭いがつきものなので、ある程度慣れることが必要になってきます。

介助のストレスを軽減するには、それぞれの状態に合わせた工夫が必要です。夜間のトイレ誘導で要介護者に合わせて起きるのがつらいなら、夜だけベッドの側にポータブルトイレを置いてみるとよいでしょう。

また、夜中のおむつ交換がつらいなら、吸収量の多い夜用タイプを利用するのも効果的です。これらの工夫で、少しでも負担を軽くしていきましょう。

食事介助についても、要介護者の状態で大変さが変わります。摂食動作だけ介助すればいい方から、食材を細かく刻む・とろみをつける・ミキサーなどでペースト状にするなど、調理の手間も必要な方までさまざまです。

調理の手間が大変という場合は、ホームヘルパー(訪問介護)を利用して要介護者の食事を作ってもらう・市販品を利用するなどして、負担を軽減しましょう。

在宅介護で大変なことランキングを通して、多種多様な「大変さ」があることが分かりました。

次は、在宅介護に関するストレスを少しでも軽くするためにどんな方法があるのかについて考えます。

在宅介護で大変なことを軽減する方法

在宅介護に関する大変さを軽減するには、専門職・専門機関への相談や、レスパイトケアを利用するとよいでしょう。ここでは、在宅介護の大変さを軽減するための方法についてご紹介します。

介護サービスを利用する

在宅介護の大変さを軽くする介護サービスはたくさんあります。自宅に来てもらいサービスを提供するホームヘルパーや訪問入浴などのサービスがおすすめです。

ホームヘルパーは要介護者の調理から食事の介助、おむつ交換などに対応してくれます。また、訪問入浴は専門の浴槽などを持参してくれるので、自宅に浴槽がない家でも入浴介助を依頼できます。

自宅外で受けるなら、デイサービスやデイケア(通所リハビリテーション)など、数時間~半日利用できるサービスがあります。排泄・食事・入浴だけでなく、レクリエーションを楽しんだりリハビリテーションをおこなったりと、要介護者にとっても、いい気分転換になります。

宿泊のサービスとしてショートステイもあります。1泊から最長30日間程度まで、施設に宿泊して介護サービスを受けられます。

レスパイトケアを試してみる

「レスパイトケア」とは、介護者のリフレッシュを目的に、一時的に介護から離れる時間をもつことです。

ゆっくり心身を休ませる・同じように在宅介護をおこなっている人たちと集まって交流できるなど、自由な時間を作れるでしょう。

介護サービスを利用すれば、スムーズなレスパイトケアが可能です。

施設への入居を検討する

在宅介護を続けることが難しくなったら、限界を迎える前に特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護老人保健施設などの施設入居を検討してみましょう。

要介護度や年齢など、各施設の設ける条件を満たせば入居が可能です。在宅介護で最も避けたいことは、介護者と要介護者が共倒れになってしまうことです。まだ余裕がある状態から、それぞれの施設について知識を得ておくことをおすすめします。

ここまでは在宅介護をしている方に向けた内容を紹介してきました。

次項からは、これから始める方や、いずれ在宅介護をする予定という方に向けて、事前に知っておきたい内容を紹介します。

在宅介護を始める前に知っておきたいこと

超高齢社会となった現在、在宅介護は決して他人事ではありません。ここではいつ在宅介護をすることになっても慌てないように、必要な知識や情報をまとめています。

在宅介護について、家族で話し合っておく

まず、親を含めた家族全員、できれば親族も含め、介護が必要な状態になったらどうするかについて、元気なうちから話し合っておくことをおすすめします。

介護に関する親の希望を確認することは、必要な介護サービスを効率的に選ぶことにつながるためです。

元気なうちから介護について話すのは抵抗があるかもしれませんが「まだ大丈夫」「いずれそのうちに」と考えていると「急に倒れて、すぐに介護が必要な状態になってしまった」というケースは決して珍しくありません。

そうなってから慌てずに済むよう、日頃から介護について話しておきましょう。

資金の準備をしておく

在宅介護が必要になった場合に向けて、資金の準備をしておきましょう。

在宅介護の場合も、施設入居ほどではないにしても費用がかかります。介護サービスの利用をはじめ介護用品や福祉用具のレンタル・購入、自宅をバリアフリーにするための住宅改修などにも費用がかかります。

介護保険を利用すれば費用の負担は減らせますが、出費をゼロにはできません。それらの費用はどこから出すのか、さらに施設入居が必要になったらその資金はどうするのかも決めておくと安心です。

1人または家族だけで抱え込まないようにする

在宅介護によくあることは、介護者が1人だけ、あるいは家族だけで介護や介護に関する苦労を抱え込んでしまうことです。

介護者が心身ともに疲れ、要介護者と一緒に倒れてしまわないために、介護に協力してくれる人や相談先を見つけておきましょう。

親族に限らずケアマネージャーやホームヘルパー、地域包括支援センターなど行政の窓口についても知っておくと安心です。

介護保険制度について学んでおく

介護サービスを利用する際に介護保険制度の利用は欠かせません。介護保険制度に関する正しい知識を得ておきましょう。

介護保険制度は3年に1度内容が改定されるため、最新の情報をチェックしてください。

まとめ

在宅介護は介護者と要介護者の距離が近い分、いろいろと課題も多いです。在宅介護をする中で、非常に仲の良かった親子の気持ちがすれ違っていくこともあります。

親の介護をプロに依頼することは、親不孝や子の愛情不足にはつながりません。介護は専門家に任せ、子や家族が精神的な支えになることで、要介護者がよりよい人生を送ることにつながる場合も多くあります。

親も自分も大切にしながら、お互いに負担のない状態を検討し、頑張りすぎない介護をしていくとよいでしょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。