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介護サービス・制度

2024-07-19

訪問介護とはどんなサービス?対象者や料金、利用までの流れを解説

初めて介護保険サービスを利用する方の中には、「訪問介護とはどのようなサービスを受けられるのか?」と疑問に思われる方は少なくないでしょう。

 

訪問介護保険サービスといっても、多岐にわたっており、入浴介助・オムツ交換などの身体介護から、掃除・買い物などの生活援助までさまざまなサポートがあります。ただし、訪問介護では受けられないサポートもあるため、事前に内容を把握しておくと安心です。

 

今回は訪問介護とはどんなサービスなのか、サービス内容や料金、利用までの流れについて解説していきます。

訪問介護(ホームヘルプサービス)はどんなサービスが受けられるか

訪問介護とは、利用者が可能な限り自宅での生活を継続できるようにホームヘルパーが利用者宅へ訪問し、身体介護生活援助を行うサービスです。

介護福祉士介護職員初任者研修、実務者研修のいずれかの資格を持ったスタッフが自宅を訪れ、入浴介助・オムツ交換・清拭・掃除・洗濯・調理・通院時の移動サポートなどを行います。

自宅での介護をご家族のみで続けるのは負担が大きいため、利用者だけでなく、ご家族の生活を支えるうえで訪問介護はなくてはならないサービスです。

訪問介護で利用できるサービスは以下の3つです。

  • ・身体介護
  • ・生活援助
  • ・通院など乗降介助

サービスの内容を詳しく確認しましょう。

身体介護

身体介護とは、利用者の身体に直接触れるサービスであり、入浴介助・オムツ交換・清拭・着替えなどが該当します。利用者の身体機能に応じて、必要な介助を提供し、ご家族への介助方法の指導・相談への対応などを行います。

以下の表が、身体介護の具体例です。

食事介助・自身で食事摂取ができない方への摂取動作の介助
・スプーンの操作や飲み物を口元へ運ぶ介助
・嚥下(飲み込み)の確認
入浴介助・全身またはシャワー浴(顔・髪・腕・足・陰部などの部分的な洗浄)の介助
・浴槽のまたぎ動作や立ち上がり動作の介助
・更衣介助を含む
身体の清拭(タオルなどで拭く)・入浴が困難な場合、タオルで身体を拭いて清潔を保つ介助
排泄介助・オムツ交換の介助(陰部や殿部の洗浄を含む)
・トイレでの排泄動作を介助
更衣介助(着替え)・衣類や靴下の着脱を介助
体位変換・ベッド上で床ずれ予防のために定期的に姿勢を交換する
起居移乗介助・ベッドからの起き上がりや車いすへ移る際の動作を介助
・身体機能によっては福祉用具(スライディングボードなど)を使用
歩行介助・移動介助・自宅内外の歩行をサポート
環境用具や歩行補助具など、身体機能に応じて使用する
歩行が困難な場合は車いすを使用
・運動機能に応じて普通型車いすやリクライニング車いすを利用

身体介護は介護者側の負担が大きく、ご家族のみで行うと腰痛や膝関節痛、共倒れのリスクがあります。無理せず、訪問介護スタッフと協力しながら行うとよいでしょう。

生活援助

生活援助とは、要介護の本人に代わり身の回りの家事を中心に行うサービスです。掃除・洗濯・調理・買い物などが該当します。病気や怪我によって、今まで行えていた家事などの動作が難しくなってしまった際に利用するとよいでしょう。

以下の表が、生活援助の具体例です。

掃除・訪問介護を利用している方の部屋やトイレ、テーブルを掃除(本人以外の部屋は対象外)
・ゴミ出し
洗濯・衣類を洗う・干す・たたむ・整理・アイロンがけ
ベッドメイク・ベッドのシーツ・布団カバーの交換
調理・食事の準備(本人以外の食事は対象外)
・配膳・後片付け
買い物・日用品の買い物代行(内容の確認・釣り銭の確認)
※趣向品は対象外
そのほか・薬の受け取り

生活援助は、自分で行うことが難しくなった身の回りの家事を支援するサービスですが、家事代行サービスではありません。そのため、ほかのご家族の部屋の掃除や食事の準備、来訪者の対応、ペットの散歩などは対象外となります。あくまでも訪問介護の利用者本人を中心としたサービスであることを認識しておきましょう。

通院など乗降介助

訪問介護事業所の介護職員が自ら運転する車両に、利用者を乗せたり降ろしたりする際の支援を行い、乗車後は病院などの目的地まで送迎し、受診の手続きや移動の手助けを行います。

多くの場合、車いすごと乗車可能な車両を使用するため、歩行困難な方でも利用可能です。

ただし、通院など乗降介助では以下3つのように支援を受けられないサービスもあります。

  • ・ご家族の同乗
  • ・病院内の付き添い
  • ・食料品の調達や旅行などでの利用

通院など条項介助は、サービス名称のとおり、通院などが困難な利用者に提供されるサービスのため、それ以外の目的では利用できないことを理解しておきましょう。

病院以外で移動の支援が必要な場合は、介護タクシーの利用が推奨されています。

訪問介護の利用条件と対象者

訪問介護の利用条件と対象者は以下のとおりです。

  • ・利用には要支援・要介護認定が必要
  • ・自宅または介護サービスを提供していない施設入所者が対象

利用条件を確認しつつ、対象者として該当しているかチェックしていきましょう。

利用には要支援・要介護認定が必要

訪問介護を利用するには、要支援介護認定を受けていなければなりません。要支援・要介護認定を受けていない方は自宅近くにある「地域包括支援センター」や「居住地管轄の役所窓口」に相談してみましょう。

また、要支援1・2の認定を受けている方は介護予防訪問介護サービスを利用することになります。

現在、多くの自治体で、要支援1の方は週2回まで、要支援2の方は週3回までと利用回数が定められています。ケアマネジャーと相談しながら頻度や利用する曜日・時間を決めていきましょう。

自宅または介護サービスを提供していない施設入所者が対象

訪問介護を利用する条件として、自宅あるいは介護サービスを提供していない施設で生活を送っている方が対象となります。

介護サービスを提供していない施設の例は、以下のとおりです。

  • ・住宅型有料老人ホーム
  • ・健康型有料老人ホーム
  • ・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 

特別養護老人ホームや介護付き老人ホームなどに入居している方は対象外となります。

訪問介護で受けられないサービス

訪問介護で受けられないサービスは以下の2つです。

  • ・利用者の援助に該当しないサービス
  • ・医療行為にあたるサービス

利用者の援助に該当しないサービス</h3>

訪問介護では、利用者が自力で困難な生活行動を支援することが基本なので、一般的な家政婦や家事代行サービスとは異なります。依頼できる範囲に制限がある点を知っておきましょう。

具体的には、以下の内容がサービス外となります。

  • ・利用者以外の食事の準備
  • ・利用者以外の衣類の洗濯
  • ・利用者以外の部屋の掃除
  • ・来客の対応
  • ・ペットの散歩
  • ・庭の手入れ
  • ・金銭管理や娯楽に該当する外出援助 など

中には何でもやってもらえると思い、訪問介護サービスに頼まれる方もいますが、上記に挙げたサービス外の内容は、ご家族や友人などでサポートできる範囲です。ご家族間で相談しながら支援していきましょう。

また、掃除の範囲は日常生活に支障のない範囲です。大掃除やハウスクリーニングのような大掛かりなサービスは対象外になります。

医療行為にあたるサービス

訪問介護では、医療行為にあたるサービスは提供できません。

なぜなら、訪問介護で来てくれる介護福祉士や介護職員初任者研修、実務者研修を終えたスタッフには医療行為ができないというルールがあるからです。

床ずれや傷の処置や服薬の援助などは医療行為に該当し、訪問介護で提供できるサービスの範囲外となります。

ただし、痰の吸引(口腔・鼻腔内・気管カニューレ)や経管栄養胃ろう・腸ろう・経鼻)は、介護福祉士や一定の研修を受けた介護職員であれば、一定の条件下で実施が可能です。

その他の医療的な処置は、訪問看護から来る看護師が対応できるため、ケアマネジャーに相談してみましょう。

訪問介護の利用料金

訪問介護の1回あたりの自己負担額(1割の場合)の目安は以下のとおりです。(2024年6月から)

内容サービス提供時間自己負担
身体介護20分未満163円
身体介護20分以上30分未満244円
身体介護30分以上1時間未満387円
身体介護1時間以上567円(30分ごとに82円加算)
生活援助20分以上45分未満179円
生活援助45分以上220円
通院など乗降介助1回97円

出典:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)

上記で示した自己負担額はあくまで参考の金額です。事業所によっては介護職員処遇改善加算や介護職員など特定処遇改善加算などが上乗せされます。金額の詳細はケアマネジャーが把握しているため、確認してみましょう。

訪問介護を利用するまでの流れ

訪問看護を利用するまでには、大まかに分けると以下の4つのステップがあります。

  1. 1.要支援・要介護認定の申請
  2. 2.介護認定調査で審査
  3. 3.認定結果に応じてケアマネジャーがケアプランを作成
  4. 4.介護保険サービスの利用開始

それではひとつずつ見ていきましょう。

1.要支援・要介護認定の申請

まずは自宅近くの地域包括支援センターや市町村の担当窓口に相談しましょう。要介護認定申請書の説明を受けた後、必要事項を記入し、市町村の担当窓口へ提出します。

原則、本人が申請をする必要がありますが、ご家族や地域包括支援センターのスタッフが代行することも可能です。

2.介護認定調査で審査

要介護認定を受けるための、介護認定調査員による聞き取りが行われます。調査員は、自宅や入院先の病院などに訪問し、身体面や精神面の状態をもとに、調査票を作成します。

また、申請時に記入した主治医が「主治医の意見書」を作成し、認定センターに提出後、認定審査会にて介護度が決定するシステムです。

3.認定結果に応じてケアマネジャーがケアプランを作成

申請日から30日を目処に、市町村から保険者へ要介護度の決定通知が郵送されます。要支援であれば地域包括支援センターのケアマネジャーが担当してくれるのが一般的です(※地域包括支援センターが居宅介護支援事業所に委託する場合もある)。

要介護1以上であれば、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当となり、利用者に適切なケアプランを作成します。必要なサービスや困りごとはケアマネジャーに相談するとよいでしょう。

4.介護保険サービスの利用開始

ケアプランの作成が終わり次第、介護保険サービスとして訪問介護が利用可能です。

訪問介護の利用者やご家族では困難な身体介護、生活援助を実施していきます。

自宅生活を続けるためには訪問介護が不可欠

本記事では、訪問介護とはどんなサービスなのか、サービス内容や料金、利用までの流れについて解説しました。

入浴介助やオムツ交換、掃除、買い物、通院の同行など、訪問介護では自宅生活を継続するために欠かせないサービスを多数受けられます。

一方で、利用者以外の食事提供や部屋の掃除、訪問者の対応などはサービス対象外であり、依頼はできません。

必要な支援を整理し、利用料金も確認しながら、ケアマネジャーに受けたいサービスを相談しましょう。介護の専門家に関わってもらえれば肉体的な負担だけでなく、精神的な不安なども軽減できるため、本記事を参考に、ぜひご検討ください。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。