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介護資格・スキルアップ

2023-04-04

作業療法士に向いていない人の特徴は?必要な能力と目指す際のポイントを徹底解説

作業療法士は国家資格の医療職で、患者さまが病気により失ってしまった機能を再獲得したり、ぎこちなくなってしまった日常生活動作をスムーズに送れたりするようリハビリをおこないます。日常生活動作以外でも、認知機能面や精神機能面へのアプローチもします。

 

養成校も増加傾向で認知度も高まっている中、作業療法士を目指そうと考えている学生の方も多いのではないでしょうか?

 

しかし、作業療法士に向いていない人がいることも事実です。この記事では、作業療法士に向いていない人の特徴や必要な能力、目指す上で知っておきたい注意点を解説しています。ぜひ最後までご覧ください。

作業療法士に向いていない人の特徴

作業療法士は病気や障害を抱えた患者さまのリハビリをする職業です。医療系の専門職であるため、結婚や出産などライフステージの変化にも対応しやすく、女性からも人気の傾向にあります。

しかし、それだけの理由で作業療法士を目指すと「自分には向いていなかった」「仕事が辛い」と後悔するケースも少なくありません。そこで、まずは作業療法士に向いていない人の特徴について解説します。

忍耐力がない・短気な人

忍耐力がなく短気な人は作業療法士には向いていません。
作業療法では、体が不自由になってしまった方に対しての機能訓練ADL(日常生活動作)の訓練、作業活動などを患者さまに提供します。

筋力を増したり関節の動きをよくしたりといった細かなプログラムを元に、日々地道な動作訓練や筋力トレーニングをおこないますが、効果が現れるまでに時間がかかる場合がほとんどです。そのため、結果をすぐに求める人や忍耐力のない人は不向きといえます。

コミュニケーションが苦手な人

コミュニケーションを取るのが苦手な人も作業療法士には向いていません。

作業療法をおこなうにあたり、さまざまな人と関わります。その中には、耳や言葉の問題により意思疎通が難しい方も少なくありません。また、作業療法には他のリハビリ職とは異なり、精神科領域も専門としているため、精神的な支援も求められます。

関わりが難しい人や精神科領域に対応する必要があるため、コミュニケーションが苦手な人、対人スキルに不安がある人は、作業療法士に不向きといえます。

体力に自信がない人

業務内容や診療科にもよりますが、体力に自信がない人も作業療法士には向いていないといえます。

勤務先によっては、重症患者さまの介助や、筋力強化訓練での抵抗をかける時に立ちっぱなしの時間が長く、患者さまの部屋を訪室してリハビリするケースも少なくありません。また、患者さまに体を動かしてもらうレクリエーションをする際にも、準備や実施中の立ち回りで動きっぱなしとなる場合があります。

さらに、作業療法士は患者さまの動作の介助が必須になります。具体的には移乗動作(ベッドから車椅子への乗り移り動作など)・床上動作などの訓練の際に、動作の誘導や介助が必要となるため、筋力がない人では大きな負担となる可能性があります。

何事にも受け身の人

何事に対しても受け身の人は、作業療法士には向いていません。
医学は日進月歩であり、病気に対する知識や作業療法のアプローチ方法も日々アップデートされていきます。そのため、養成校で学び、作業療法士免許を取得して就職しても勉強は終わりではありません。

診療科にもよりますが、病気やリハビリに対する知識が古いままでは、十分な効果が見込めない可能性もあるでしょう。また、安静に対する考え方(かつては術後長期間の安静を推奨していましたが、現在では早期離床が進められている)のように常識だったことが、月日の経過とともに非常識となることすらあります。そのため、養成校で習ったことしか勉強していない・自ら学ぶ意志がない・就職したら勉強しなくてよいと思っているような人は、作業療法士だけでなくリハビリの仕事、ひいては医療職には向いていません。

作業療法士に求められる能力・素質

一方で、作業療法士に必要な能力・素質にはどのようなものがあるのでしょうか。作業療法士だけでなくリハビリ職に共通するものもあるため、併せて解説します。

人に対する興味・観察力

作業療法士には、観察力が必要不可欠です。
まずリハビリをおこなうにあたり、身体的な状態を客観的に評価する必要があります。そのため、初期評価をしてプログラムの介入後にどこがどう変化したのかを把握するためには、知識はもちろん観察力が欠かせません。

また、人に対する興味も必要になります。リハビリのプログラムはその人に合わせるべきです。患者さまの趣味や仕事、生活歴などを活かしたプログラムを提供するのは、作業療法ならではの醍醐味ともいえます。そのため、人に興味をもてるという素質は、作業療法士として強みとなるはずです。

コミュニケーションを取るのが好き

コミュニケーションを取るのが好きであることも、作業療法士には欠かせない素質です。

作業療法士は患者さまに合わせたプログラムを立案・実施します。プログラムを元に体を動かすのは患者さま自身です。しかし、リハビリをする患者さま全員が意欲的なわけではありません。中にはリハビリに拒否のある人や、病気・障害により落ち込み、意欲の低下した方もいらっしゃいます。

そんな中、患者さまの意欲を引き出すのに欠かせないのが、その人を知り適切なコミュニケーションを取る能力です。

一人一人に合わせてきめ細やかなコミュニケーションを取ることで、患者さまの気持ちや希望を聞き出したり、モチベーションを上げたりすることもできます。これは精神科のリハビリはもちろん身体障害の分野でも必要な能力です。

さらに、患者さまとだけではなく、他職種とのコミュニケーションも必要になります。リハビリはリハビリ職だけがおこなうものではなく、さまざまな職種と連携したチームアプローチが欠かせません。そのため、相手を問わずコミュニケーションを図れる能力が求められます。

柔軟な考え方ができる

基本的な知識・理論はもちろん、柔軟な思考も作業療法士には必要です。

前述した通り、同じ病気の疾患の患者さまでも、リハビリの内容が同じではありません。標準的・推奨される訓練内容はありますが、それをベースに個々に合わせた内容を考え、さらに患者さまの状態変化に合わせて柔軟にプログラムを変更する必要があります。また、作業療法では作業活動などをプログラムに取り入れることも少なくありません。

個々に合わせた対応で個別性の高いリハビリを提供できるため、柔軟な考え方は作業療法士に必要な要素の1つといえるのです。

思いやりがあり患者さまに寄り添える

医療職全般に共通しますが、患者さまに寄り添える思いやりの心も作業療法士には必要です。

多くの患者さまは病気や障害により、心身ともに辛い思いをしています。そのような時に必要なのが、患者さまの辛い気持ちに共感し寄り添い、信頼関係を築くことです。

患者さまがリハビリに対して意欲がなくなることは少なくありません。作業療法士は、患者さまの本心や意欲を引き出せるように寄り添い、心理的なサポートをすることが求められます。

探究心・向学心がある

探究心や向学心も作業療法士を含めたリハビリ職には必要です。研究や教育分野で活躍する作業療法士はもちろん、病院などの臨床(実際に患者さまに対してリハビリをおこなうこと)で働く作業療法士にも必要な要素といえます。

作業療法士は生涯勉強が必要な仕事です。研究職ではなくても、養成校を卒業、就職してからも新しい治療方法や病気に対する知識などのアップデートは欠かせません。

積極的に自己研鑽することで、日々患者さまにリハビリを提供する際にも役立つはずです。また、認定作業療法士やその他の資格などを取得すれば、キャリアアップにも繋がります。リハビリが必要な方と自身のためにも自ら学ぶ探究心は必要です。

作業療法士を目指すなら注意したいポイント

ここからは作業療法士を目指すにあたって、押さえておきたいポイントについて解説します。養成校に入学・受験する前に把握して、後悔することのないようにしましょう。

国家資格が必要

作業療法士になるためには、国家資格である作業療法士免許が必要です。

大学や専門学校などの養成校で3年制または4年制、さまざまな学問を履修し、医学的な基礎知識から作業に関する専門知識、心理学や福祉に関する知識まで幅広く学びます。

また、作業療法士のカリキュラムは、座学のみでなく実習も多いのが特徴です。見学実習・評価実習のものから、総合臨床実習または2か月程度の総合実習などがおこなわれます。特に長期実習では、実際に病院などの施設で患者さまに対して作業療法士の実務に沿った内容を実施していかなければなりません。

養成校を卒業すると国家試験の受験資格が得られます。国家試験に合格すれば、晴れて作業療法士免許を取得でき、作業療法士として働けるようになります。

適性を知る

この記事の向き不向きの項目を参考にしつつ、自分の適性を分析するとよいでしょう。しかし、自分を客観的に分析するのは難しいものです。そんな場合には適性診断を受けることをおすすめします。近年は自宅にいながらオンラインで受けられる適性試験もあるため、気軽に受けられるでしょう。

適性診断では自分の性格傾向、例えば価値観・資質・ストレス耐性などのパーソナリティといえる部分を把握できます。他にも、論理的な思考力や言語力といった思考の傾向も分かるため、自分の強みを見つけたい場合には活用するとよいでしょう。

他職種との違いを把握しておく

養成校に入学してからの後悔やミスマッチを防ぐためにも、他職種との違いを明確に把握しておく必要があります。リハビリでは理学療法士・言語聴覚士といった仕事もあるため、明確な違いや業務内容を区別できている人は多くありません。

理学療法士は立ったり座ったりといった動作のリハビリを主に担っています。基本的な動作や歩行に対するリハビリを専門としている点が特徴的です。

一方で、作業療法士は日常生活動作などの応用的動作のリハビリを主に担っています。心理的・精神的サポートや社会復帰の支援をするほか、精神科領域でのリハビリに携わる点も特徴です。

言語聴覚士は脳卒中により、うまく言葉が出なくなった方、飲み込みが難しくなってしまった方に対するリハビリを実施します。また高次脳機能障害といった複雑な症状に対してのリハビリも実施します。

それぞれの職種により、活躍する場所・就職先の選択肢も変わってきます。そのため、あらかじめ各職種の違いを十分に理解した上で、養成校の受験を検討しましょう。

年収の伸び代は小さい

作業療法士は国家資格であり、その収入は診療報酬によって影響を受けます。患者さま1人に一定の時間リハビリを実施することで、基準に応じた点数を算定し、それが収入となっているのです。1日に算定できる単位数には上限があるため、必然的に得られる収入には限りが出てしまいます。

新卒の作業療法士でもベテランの作業療法士でも、診療報酬で得られる点数は同じです。そのため、長い年数を働いても昇給は少なく、昇進も難しい状況があります。
全業種の中で見ると、年収は比較的安定している面もありますが、長期的に見ると年収の伸び代は小さいといえるでしょう。

作業療法士によくある質問

ここからは作業療法士を目指そうか迷っている人からよく聞かれる疑問をまとめました。

手先が器用でないとなれない?

結論からいうと、手先が器用でなくても作業療法士にはなれます。もちろん器用であればプラスとなる場面もあるでしょう。

作業療法士は手工芸などの作業をリハビリで使うことがあります。そのため、手先が器用でなくてはならないかと心配に思う方もいるかもしれません。

しかし、陶芸・革細工・織物をはじめとする手工芸などの作業を用いたリハビリをするかどうかは領域や勤務先によって大きく異なります。精神科領域では手工芸を扱うケースが比較的多い傾向にありますが、全員の患者さまにおこなうわけではありません。仮に扱う場合でも職人として作品を作るわけではありません。

また、機能訓練をメインでおこなう勤務先では手工芸をあまりおこなわない傾向にあります。作業療法士の作業とは何も手工芸だけには限らず、生活に関わる活動全般を指しているため、手工芸が不得意でも気にしなくてよいでしょう。

小柄では作業療法士として働くのは難しい?

作業療法士は女性が6割以上を占める職種であり、その中には小柄な方も臨床で働いています。患者さまの中には体の大きな方もいるため、小柄な女性であれば、作業療法士として働けるのか不安になるかもしれません。

作業療法士の業務の中で身体的な負担となりやすいのは、移乗動作などの介助や徒手療法(ストレッチ等)の際の不良姿勢が主です。筋力をつけておけばある程度は楽にはなりますが、どちらかというと介助のコツを掴む・負担の少ない姿勢を取るといった対策の方がより効果的です。

そのため、「小柄だから」「筋力がないから」というのを過剰に心配するよりは、養成校や臨床で動きに慣れ、より負担の少ない動きが取れるように練習するとよいでしょう。

理系でないとなれない?

作業療法士は医学の知識を要するため、理系でなければ作業療法士になれないと思う方も多いかもしれません。養成校では、生物・物理・化学・数学といった知識を元に、「生理学」「解剖学」「運動学」などのカリキュラムを学びます。確かに、理系に強い方が理解もスムーズかもしれませんが、一方で文系の学問である心理学も養成校では必須のカリキュラムの1つです。そのため、理系の知識のみが求められるわけではありません。

また、養成校に入学するのも理系でないと難しそうと思われがちです。確かに大学であれば、理系の科目を試験科目としている場合も多く、特に国公立大学では共通テストで5〜6教科8科目を求められる場合もほとんどです。そのため、どうしても理系科目が苦手で避けたいのであれば、専門学校を選ぶとよいでしょう。

養成校への入学やカリキュラムは無視できませんが、そもそもの職業に対する適性の方がより重要です。作業療法士に興味がある、向いていると思えるのであれば、文系理系問わず作業療法士を目指してはいかがでしょうか。

まとめ

作業療法士はリハビリ職の中でも、患者さまの生活面にアプローチし、心理面での支援をする機会が多い職種です。そのため、人に興味がない・コミュニケーションが苦手な人には向いていません。また、リハビリの効果が現れるのに時間がかかることも多く、すぐに結果を求める短気な人にも不向きです。

作業療法士にかかわらず、どのような職業でも、向き不向きはあります。そのため、自己分析して適性を知るのも仕事選びには欠かせません。

自分が作業療法士に向いていそうだと思えたら、作業療法士になるまでに必要なカリキュラムや待遇面などを考慮して進学先を決めるとよいでしょう。

加藤 真太郎

理学療法士
臨床実習指導者講習会修了

理学療法士として8年間、回復期病院で勤務。その後は養成校で専任教員をしながら、週1回は病院勤務を継続している。臨床と教育現場を経験している数少ない理学療法士である。
理学療法学科の専任教員を本業としながら、ライターとしても活動し記事の執筆をしている。筋トレ・ジムの紹介ブログも運営中。