介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護資格・スキルアップ 【作業療法士の実習は大変?】実習内容やつらいと言われる理由と乗り切るポイントを紹介します

介護資格・スキルアップ

2023-04-12

【作業療法士の実習は大変?】実習内容やつらいと言われる理由と乗り切るポイントを紹介します

作業療法士になるには、専門学校や大学などの養成学校での課程を修了し、作業療法士国家試験に合格する必要があります。

 

養成課程にある臨床実習がつらいと聞いて、不安を抱く方もいるでしょう。

 

この記事では、作業療法士臨床実習の内容と、つらいと言われる理由を解説します。実習がつらいと感じた時の対処法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

作業療法士に必要な臨床実習の内容

作業療法士の養成課程には臨床実習が組み込まれており、生徒は規定の実習を受けなければなりません。必要な実習時間数は、世界基準で計1,000時間以上と定められています。

作業療法士の実習には、大きくわけて3種類があり、それぞれ以下のとおりです。

・見学実習
・評価実習
・総合臨床実習

カリキュラムの内容を1つずつ確認してみましょう。

2020年に実習カリキュラムの変更があった

2020年に、作業療法士実習カリキュラムの内容が大きく変更されました。

それまで、指導者に求められる条件は「実務経験3年以上」でしたが、2020年からは「実務経験5年以上」に変更されています。また、指導方針の均一化や指導内容の改善を図るために、指導者に対して16時間の研修が義務化されました。

これまで、主な実習先は病院や施設でしたが、2020年から通所または訪問リハビリテーションでの実習が義務化されています。

見学実習

見学実習は、1〜2年生の間に1〜2週間かけておこなわれます。主な実習内容は、仕事の様子や仕事場の見学などです。

見学実習や勤務職員とのコミュニケーションを通して、作業療法士としての所作・接遇を学びます。

見学実習は、初学年でおこなわれる場合が多く、学生にとっては初めての体験や経験も多いでしょう。

専門的な内容よりも作業療法士としての基本的な振る舞いや、人員配置、チーム構成などの基礎的な部分を学びます。

評価実習

評価実習は、2〜3年生の間に2〜4週間にわたっておこなわれます。

実際に患者や利用者とコミュニケーションを取りながら、相手の心身状況を観察するのが主な研修内容です。

対象者の麻痺の状態や関節の可動域、筋肉量、残存感覚などをもとに、作業療法プランを組み立てる練習をおこないます。

評価実習の最終的なゴールは、相手の心身機能・認知機能などから課題やニーズを考え、目標達成までのプランを作成することです。

総合臨床実習

総合臨床実習は、3〜4年生の間に8〜10週間かけておこなわれます。養成学校によって、実習の内容やスケジュールはさまざまです。

総合臨床実習では、これまでの実習で学んだ内容を生かし、プランの作成から実践・再評価・修正検討までをおこないます。

総合臨床実習は、これまでの実習の中でもっとも長期間にわたっておこなわれる実習です。
これから作業療法士として働くために必要なスキルのほか、専門職としての自覚や認識を養います。

作業療法士の総合臨床実習スケジュール

作業療法士の臨床実習では、総実習時間の3分の2以上を医療機関でおこなわなければなりません。

実習では、実際の作業療法に必要な「身体障害・精神障害・老年期障害・発達障害」など の領域を学びます。

臨床実習の実施場所や実習内容、スケジュール例を以下で確認してみましょう。

実習場所

主な実習場所は病院や施設ですが、カリキュラムによって訪問リハビリや、通所リハビリなどでもおこないます。

日々の実習時間は8時頃〜18時頃までの間で、実習地の勤務時間に合わせておこなわれるのが一般的です。

また、遠隔地など離れた実習地では、現地に宿泊するケースもあります。

4年制大学の場合のスケジュール例

4年制の大学を例に、作業療法士の臨床実習スケジュールを紹介します。

年次ごとの実習項目と研修期間は、それぞれ以下のとおりです。

年次研修項目研修期間
1年次見学実習1〜2週間
2年次評価実習2週間×2
3年次総合臨床実習Ⅰ8週間
4年次総合臨床実習Ⅱ8週間

3年制と4年制の学校では実習のペースが異なるほか、養成学校ごとにカリキュラムの進め方やスケジュールもさまざまです。

それぞれ、事前に実習スケジュールを確認しておくとよいでしょう。

レポートの提出

学校によっては実習中の課題として、日誌やレポートの提出を求める場合があります。

実習がきついと言われる理由の1つが、この実習中のレポート課題です。レポートの量によっては、実習終了後に自宅へ持ち帰り、夜中まで取り組む場合もあります。

最近では、テクニカルクラークシップと呼ばれる、参加型の実習を取り入れる学校も増えてきました。

テクニカルクラークシップ型の実習では、レポート作成がない場合が多い傾向です。レポート課題があったとしても、実習終了後に学校で作成するため、学生へのレポート負担は減少傾向にあります。

作業療法士の実習はつらい?

作業療法士の実習がつらいと言われるのには、さまざまな理由があります。

また、つらいと感じる人と、そうでない人がいるのはなぜでしょうか。

これから、作業療法士の実習がつらいと言われる理由と、つらいと感じた時の対処法を紹介します。

それぞれ詳しく確認してみましょう。

実習は本当につらいのか?

実際に実習がつらいと感じる人は少なくありません。

そのため、2020年からカリキュラムや指導方針が見直されるようになりました。現在では、少しずつ実習内容や現場環境が改善されてきています。

以前までは、実習先によって指導内容や指導方針、課題の量などに差がありました。現在は、方針の均一化・改善が検討されており、この差も少なくなってきています。

実習がつらいと言われる理由

実習がつらいと言われる主な理由は、以下のとおりです。

実習先で孤独感を抱く
バイザーの指導が厳しい
レポート量が多く睡眠時間が削られる

実習は、基本的に1人で実習先へ行くことになります。そのため、孤独感を抱き、つらいと感じる人は少なくありません。

その他、バイザーからの厳しい指導につらさを感じたり、バイザーとの関係性がうまくいかずに悩んだりする人もいます。

実習中のレポートの量に悩む生徒も多く、場合によってはほとんど睡眠時間を確保できないケースもあるようです。

実習がつらいと感じたら

実習先に自分と同じような実習生がいる場合は、コミュニケーションを図ってみましょう。つらいと感じる悩みを分かち合えるかもしれません。孤独を感じやすい環境では、支え合える存在が重要です。

もし、本当につらくて誰にも言えない場合は、学校に相談しましょう。実習先の変更等、対策を取ってもらうのも大事な選択肢です。

実習がつらいと感じる人は多い

厚生労働省の作業療法士の実習アンケートでは、約8割の生徒がレポートを持ち帰っているという結果が出ています。課題量の多さにつらさを感じている学生は多いようです。

その他、実習に取り組む中で、さまざまな壁に当たったり、理想と現実のギャップに自信をなくしてしまったりする人もいます。

さまざまな要因から、実習に耐えられなくなり、途中で作業療法士の道を断念してしまう人もいるようです。

近年では、臨床実習の指導内容や指導環境の改善検討会によって、少しずつ実習環境は改善傾向にあります。

作業療法士の実習を乗り切るコツ

実習がつらいと感じる人は多く、つらさから作業療法士の道を断念してしまう人もいます。

途中でリタイアしてしまわないように、少しでもつらいと思う気持ちを軽減する工夫が大切です。

これから、作業療法士の実習を乗り切るコツを紹介します。

それぞれ確認してみましょう。

バイザーに悩みを相談する

実習を乗り切るには、バイザーとの良好な関係が必要不可欠です。

疑問や悩みがある場合は、なるべくバイザーに相談するようにしましょう。

もし、指導が厳しいと感じた場合、何か意図がある可能性があります。お互いの良好な関係を築くためにも、バイザーへの相談は重要です。

実習先に同じ学校の卒業生やバイザーがいる場合は、親身になって相談に乗ってもらえる可能性があります。同じ学校卒の先輩がいるようであれば、先輩を頼るのも1つの選択肢でしょう。

実習で患者と接する機会は貴重

実習は大変かもしれませんが、患者と接する機会は貴重です。

普段の授業では得られない知識やスキルを、獲得できるチャンスだと認識しておきましょう。作業療法士としての、接遇や対応力を磨ける場でもあります。

将来の自分のために実習している認識をもって、取り組んでみましょう。自分のためだと思うことで、少し楽になる場面があるはずです。

実際の業務より実習がつらい場合がある

バイザーによって、あえて厳しく指導している場合があります。

人によっては、実際の業務よりも、実習のほうがつらいと感じることもあるでしょう。

総合臨床実習では、初めての経験に戸惑う場面もあるはずです。慣れない状況や環境から、余計につらいと感じる場合もあるでしょう。

つらい実習を終える頃には、作業療法士としての知識やスキルが備わっているはずです。

まとめ:作業療法士の実習はつらいが改善傾向にある

この記事では、作業療法士の実習内容と、つらいと言われる理由を解説しました。作業療法士になるには、臨床実習は避けて通れません。

近年では、指導者の研修義務化や実習内容の改善検討会によって、少しずつ実習環境は改善されてきています。

初めての経験で大変だと思うことや、つらいと感じる場面があるでしょう。しかし、実習によって得られる経験や知識は、今後の作業療法士としての業務に役立つはずです。

実習でつらいと感じた場合は、1人で抱え込まず仲間やバイザー、学校などへ相談してみましょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。