介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 資格・就職・転職 言語聴覚士が少ない理由とは?言語聴覚士の就職・転職や将来性を解説!【2026年最新版】

資格・就職・転職

投稿日:
2023-04-28

更新日:
2026-08-12

言語聴覚士が少ない理由とは?言語聴覚士の就職・転職や将来性を解説!【2026年最新版】

言語聴覚士は、コミュニケーションや飲み込み(嚥下)の問題を抱えている人々の支援を行う職種で、社会的に需要の高い専門職です。しかし、「言語聴覚士は数が少ない」という話を聞き、就職や転職、将来性について不安を感じる方もいるでしょう。
 
本記事では、言語聴覚士がなぜ不足しているのか、将来性や強みについて、最新データをもとに詳しく解説します。

言語聴覚士の仕事とは?

言語聴覚士は、「話す・聞く・食べる」といった生活に欠かせない機能に問題を抱える方々に対し、専門的な知識と技術で支援を行う国家資格を有する専門職です。

具体的には、脳卒中後の失語症(言葉の理解・表出(ひょうしゅつ)の困難)や構音障害(発音の困難)、ことばの発達の遅れ、聴覚障害、摂食嚥下障害(食べ物や水分を飲み込むことの困難)などが主な対象です。

障害が生じるメカニズムや状態を明らかにするために検査・評価を行い、必要に応じて訓練や指導などを実施します。また、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・医療ソーシャルワーカー・ケアマネジャーなどとも協働し、多職種からなるチーム医療・ケアの中核を担い、患者や利用者の生活全般を支える重要な専門職です。

言語聴覚士が少ない理由

社会的に必要とされているにもかかわらず、言語聴覚士の数は他の医療従事者と比べて依然として少ないのが現状です。言語聴覚士が少ないとされている主な理由を、それぞれ詳しく解説していきます。

言語聴覚士は歴史が浅く認知度がまだ低い

言語聴覚士は1997年に国家資格として制定されました。理学療法士および作業療法士と比べると歴史が浅く、その専門性は広く認識されつつあるものの、一般社会における認知度は依然として十分とはいえず、比較的新しい職種です。

このように医療や介護・福祉、療育での需要が高まっている言語聴覚士ですが、認知度の低さが人手不足の大きな要因の1つとなっています。

参考
一般社団法人 日本言語聴覚士協会|言語聴覚士とは

言語聴覚士は対応する分野が限定的だった

かつての言語聴覚士の役割は、特定の言語や聴覚障害に対する対応に限られた支援にとどまっていました。しかし、社会の変化に伴い、その専門性はますます重要視されるようになっています。

実際に高齢者の増加に伴い、高齢者の摂食嚥下障害や、脳卒中・外傷による失語症や高次脳機能障害に対する支援のニーズが増加しています。さらに、発達障がいに対する社会的な理解が深まった背景から、小児の言語発達支援の重要性が認識されるようになりました。

これにより、言語聴覚士の活躍の場は医療や介護・福祉分野だけにとどまらず、保育・教育など、地域社会全体へと広がりを見せています。今後、言語聴覚士の需要拡大が見込まれる一方で、人材の確保が追いつかず、慢性的な人手不足が続いています。

関連記事:言語聴覚士の将来性

言語聴覚士の資格取得者が他の職種と比べて少ない

言語聴覚士が慢性的に少ない根本的な理由として、他のリハビリテーション職よりも資格取得者数や養成校が少ない点が挙げられます。詳しくは、以下のデータをご覧ください。

【資格取得者数の比較】(※2026年5月時点の情報)

 理学療法士  作業療法士言語聴覚士
資格取得者数247,546人118,715人44,817人

公益社団法人日本理学療法士協会|統計情報一般社団法人日本作業療法士協会|統計情報 、一般社団法人日本言語聴覚士協会|会員動向
をもとに表を作成

【養成校数(全国)の比較】(※2026年5月時点の情報)

 理学療法士作業療法士言語聴覚士
養成校数278校204校80校

公益社団法人日本理学療法士協会|統計情報一般社団法人日本作業療法士協会|作業療法士養成校一覧一般社団法人日本言語聴覚士協会|養成校検索 (地域や年数などを全選択でカウント)をもとに表を作成

言語聴覚士は、理学療法士や作業療法士に比べ、資格取得者数や養成校数ともに最も少ない状況です。資格取得者は理学療法士の約5分の1、作業療法士の約3分の1にとどまっています。特に養成校の数は半分以下です。

言語聴覚士は毎年1,700人程度の新規資格取得者(国家試験合格者)が誕生していますが、需要が急速に拡大しているため、人手不足の解消には至っていません。

参考
一般社団法人日本言語聴覚士協会|会員動向

言語聴覚士の特徴的な構成

言語聴覚士の資格取得者には、年代や男女比に特徴が見られます。ここではグラフを用いながら、詳細を解説します。

年代

出典元:一般社団法人日本言語聴覚士協会|会員動向

一般社団法人日本言語聴覚士協会の会員動向データによると、30代が最も多く、全体の4割を占めており、次いで40代、20代と続きます。これは、言語聴覚士が国家資格として1997年に制定された比較的新しい職種であり、資格取得者が若年層に集中しているためです。

近年では、社会人経験を経てから言語聴覚士を目指す方も増えており、今後は40代以上の資格取得者も徐々に増えると予想されます。

男女比

言語聴覚士は女性の割合が非常に高い専門職で、会員の約8割が女性で占めています。

言語聴覚士の仕事内容はコミュニケーション能力や共感性も重視されやすく、他のリハビリテーション職と比較しても身体的負担が少ないことが、女性にとって働きやすい職種とされる要因の一つと考えられます。

一方で、出産や育児を機に離職するケースも見られるため、専門性を有する人材の定着が課題となっています。こうした背景を踏まえ、言語聴覚士が長く働き続けられるような職場環境の整備が求められています。

他職種と比較した言語聴覚士の割合

ここでは、言語聴覚士の少なさをより詳しく知るために、受験者数や合格者数、有職者数のデータを用いて他職種と比較します。

受験者数と合格者数

2026(令和8)年度の医療系国家試験の受験者数と合格者数は以下のとおりでした。

【国家試験受験者数の比較】2026(令和8)年度

 介護福祉士理学療法士作業療法士言語聴覚士
受験者数78,469人12,436人5,426人2,187人
合格者数54,987人11,156人4,947人1,453人
合格率70.1%89.7%91.2%66.4%

厚生労働省|第38回介護福祉士国家試験合格発表について
厚生労働省|第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省|第28回言語聴覚士国家試験の合格発表について
をもとに表作成

上記の表を見てもわかるとおり、言語聴覚士の受験者数は介護福祉士や他の2つのリハビリテーション資格と比較すると、圧倒的に少ないことがわかります。

言語聴覚士の合格者数は1,453人と、理学療法士(11,156人)の約7分の1以下、作業療法士(4,947人)の約3分の1です。

言語聴覚士の国家試験合格率は近年70%前後で推移していましたが、2026年度は66.4%へと大幅に低下しました。この背景には、試験内容では幅広い領域の知識と高度な専門性を求められている点が挙げられます。そのため、脳の神経機能や発達過程の知識、発音・聴覚・摂食嚥下に関する臨床的判断力など、多角的な学習が不可欠です。こうした複合的な専門知識の習得や臨床で応用する際のハードルの高さが、近年の合格率の変動や低下に影響していると考えられます。

出典元:一般社団法人日本言語聴覚士協会|会員動向

有職者数

現役の従事者数(登録・協会会員数など)を見ても、言語聴覚士は22,511人にとどまります。介護福祉士の2,060,696人、理学療法士の144,943人、作業療法士の63,352人と比較すると圧倒的に数が少ないといえます。

【有職者数を比較】(※2026年5月時点の情報)

 介護福祉士理学療法士作業療法士言語聴覚士
有職者数2,060,696人144,943人63,352人22,511人

※介護福祉士は厚生労働省発表の「累計登録者数」、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は各協会の「会員数」に基づいて記載しています。集計基準は異なりますが、他職種と比較した際の言語聴覚士の少なさの目安としてご覧ください。

近年では、言語聴覚士が医療・介護分野にとどまらず、児童発達支援(療育)などにも活躍の場を広げています。このように多様な領域で需要が高まる一方で、人材の確保が大きな課題となっています。

参考
厚生労働省|介護福祉士の登録者数の推移
公益社団法人日本理学療法士協会|各資格の取得状況
一般社団法人日本作業療法士協会|2024年度日本作業療法士協会会員統計資料
一般社団法人日本言語聴覚士協会|会員動向

言語聴覚士の主な就職先

ここでは、言語聴覚士の主な就職先とその役割について解説します。

病院などの医療機関

言語聴覚士の最も大きな活躍の場となっているのは病院などの医療機関です。日本言語聴覚士協会のデータによると、言語聴覚士の70%近くが医療機関に従事しています。主な所属先は、リハビリテーション科・耳鼻咽喉科・脳神経外科・神経内科・小児科・口腔外科などです。

2024年度の診療報酬改定では、急性期における「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」の強化や、回復期における「口腔管理の体制整備」に関する要件の追加など、言語聴覚士の専門性が関わる領域が重点的に評価されました。

これにより、摂食嚥下機能の専門家である言語聴覚士の存在意義は、医療機関においてますます高まっています。

参考
厚生労働省|令和6年度診療報酬改定の基本方針

介護施設および障がい者福祉施設

医療機関の次に多くの言語聴覚士が勤務しているのが、介護施設や障がい者福祉施設です。

介護老人保健施設をはじめ、訪問や通所施設などで利用者のニーズに合わせたリハビリテーションを実施しています。

高齢化社会の進行に伴い、高齢者の「食べる」「話す」といった機能の維持・向上が重視されています。介護現場では安全な経口摂取やコミュニケーション支援を通じて、利用者のQOL(Quality Of Life=生活の質)を維持・向上させるため、言語聴覚士の需要は高まっています。

また、障がい者福祉施設やデイサービスセンター、小児療育センターも重要な勤務先です。障がいのある成人や小児を対象とし、言語やコミュニケーションの改善を目標に支援を行います。さらに、障がいを抱えるご家族へのフォローも重要な業務の1つです。よりよい生活を送れるようサポートする重要な役割を担っています。

言語聴覚士の将来性と強み

言語聴覚士の仕事は将来にわたって社会的な需要がある仕事の1つです。ここでは、言語聴覚士の将来性や強みについて詳しく解説します。

患者のQOL向上に貢献できる

言語聴覚士はその人らしく生きるために必要な「話す・聞く・食べる」に特化した専門家として、患者のQOL向上に貢献する仕事です。

脳卒中などにより失語症や構音障害、嚥下障害を発症すると、周囲とのコミュニケーションが阻害されて孤立感を抱いたり、食べる喜びを失ってしまう方も少なくありません。その結果、QOLは著しく低下します。

そこで言語聴覚士は、コミュニケーションの円滑化に向けた訓練や支援、安全な経口摂取を継続するための指導を行います。また、多職種と連携しながら、患者のQOL向上のためにチームケアを実施します。患者のQOL向上に直接貢献できる職種であり、大きなやりがいを感じられる仕事です。

「売り手市場」で就職・転職しやすい

言語聴覚士は必要とされるサービス体制に対して人材が不足しており、現在は明らかな「売り手市場」です。

厚生労働省によると、2023年度の平均有効求人倍率は1.31倍ですが、言語聴覚士の有効求人倍率は4.16倍と、需要の高さはデータからも明らかです。

この需要の高さは、人材を確保したい現場がサポート体制の充実や待遇改善に力を入れていることを意味しています。

言語聴覚士は、ライフステージの変化に応じて就職・転職先を柔軟に選びやすいという、非常に大きな強みを持っています。

高齢化社会で十分に需要がある

高齢化が進むにつれ、摂食嚥下障害や認知症に伴うコミュニケーション課題の増加は避けられない問題です。それに伴い、言語聴覚士の活躍の場は医療現場から、介護保険施設や特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問リハビリなど地域に密着した多様な現場へと飛躍的に拡大してきました。

高齢者が安心して暮らせる社会を目指すためには、地域での生活により密着したサポート体制の構築が欠かせません。言語聴覚士は地域で暮らす高齢者のQOLの維持・向上に貢献できる専門職として期待されています。

医療チームと連携しながら活躍できる

医療現場では1人の患者さんを支えるために、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・栄養士・薬剤師・医療ソーシャルワーカーなどによるチーム医療の考え方が極めて重要です。コミュニケーションと摂食嚥下の専門家である言語聴覚士は、患者の生活を切れ目なく支えるチームの中でも不可欠な存在です。

言語聴覚士は、チームの一員として情報や意見を交換し、多角的な視点から貢献しながら、さまざまな問題を解決に導いていくことができます。一人ひとりのニーズに合わせた最適な医療や介護を提供するうえで、言語聴覚士がチームの中核を担って活躍できることは大きな強みとなるでしょう。

専門的な知識でさまざまな支援ができる

言語聴覚士の専門知識は、幅広い領域で生かされ、さまざまなライフステージの対象者を支援できます。特に子どもの発達サポートにおいては重要な役割を担います。例えば、ことばの発達の遅れや発音の不明瞭さ、吃音(きつおん)、発達障がいに伴うコミュニケーション困難などに対し、詳細な評価に基づいた訓練や支援を行います。おもちゃや遊びを取り入れるなど、子どもの興味を引き出す工夫を凝らし、言葉の表出や会話を引き出して、コミュニケーションづくりを促します。

言語聴覚士は今こそ求められている職業であり、将来性がある仕事

今回は、言語聴覚士はなぜ少ないかについて詳しく解説しました。介護福祉士や、理学療法士、作業療法士と比較すると、認知度の低さが大きな理由の1つです。また、資格取得者や養成校の数が少なく、社会的なニーズが高まっているにもかかわらず、人手不足が続いています。

しかし、言語聴覚士の活躍の場は、医療現場に限らず介護や福祉、教育などの領域にも広がってきており、ますます需要が高まっているといえます。

「言語聴覚士は少ない」と聞くと、就職や転職、将来性について不安に感じるかもしれませんが、言語聴覚士は今こそ求められている、将来性がある職業です。患者のQOL向上に貢献できる点も、大きな魅力であり、やりがいを感じられるでしょう。

これから言語聴覚士を目指す方は、働きたい分野やキャリア形成について考えておくことで、資格取得後も充実した働き方を実現できます。言語聴覚士の資格取得後も、臨床で経験を積んだり、興味のある分野の知識を学び続けたりしながら、自身の専門性を高めて成長していけるでしょう。

言語聴覚士に興味がある方は、こちらの記事もご参照ください。

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コラム執筆担当者

山田絵梨
言語聴覚士/がんリハビリテーション研修修了
言語聴覚士として、リハビリ回復期病棟や一般病棟などに10年間勤務。多くの患者さんの言語機能や嚥下機能、高次脳機能障害を支援してきた実績あり。専門性を活かし、現在はライターとして活動中。信頼性の高い記事を、読者に寄り添う言葉で執筆する。