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2023-04-27
言語聴覚士はどんな仕事?待遇や年収・資格の取得方法を解説!
言語聴覚士は、食べたり話したりする機能に障害がある人に対して、リハビリテーションをする専門家です。
言葉によるコミュニケーションや嚥下能力(飲み込み)は日常生活に重要なものです。しかし、病気や事故が原因で、言葉によるコミュニケーションや嚥下が難しくなる場合もあります。また、言葉は子どもの発達にも大きく関わっています。
今回は、言語聴覚士の業務内容や待遇・資格の取得方法について解説しています。
言語聴覚士の具体的な業務内容
言語聴覚士は、聞き取りや言葉の発声・言葉の理解など、言葉に関する問題をサポートする専門家です。また、嚥下の訓練をするなど、食事に関する支援もおこないます。
言語聴覚士の具体的な業務内容は、次のとおりです。
● 食事や嚥下に関する指導
● 発声や発語に関する指導
● 言語障害の指導
● 聴覚支援
● 子どもの言葉の訓練
言語聴覚士がサポートする対象者は子どもから高齢者まで幅広く、個人によって問題点は異なります。
具体的な業務内容を見ていきましょう。
食事や嚥下に関する指導
言語聴覚士は、食事の食べこぼしや飲み込みに関する指導をおこないます。食事を食べる動作でも、脳の障害があるとうまく飲み込むことも難しくなります。
高齢による舌の筋力低下やうまく食べ物を噛めないなど、原因はさまざまです。うまく飲み込みができないと、肺炎を引き起こす場合もあるため、言語聴覚士のサポートは重要な役割を担っています。
発声や発語に関する指導
言語聴覚士は、発声や発語に関する指導をおこないます。具体的には、脳梗塞などで言葉を表現できない方へ、障害の程度や様子を見ながら計画を立ててリハビリテーションをおこないます。
言葉を理解しているものの、うまく伝えられない失語症の方には絵カードなどを用いて発語を促し訓練し、唇や舌の麻痺などでうまく相手に伝えられない構音障害の方には、筋力訓練をおこないます。
自分の思いを伝えることが困難と感じる方に訓練し、うまく家庭や社会に復帰できるように手助けをする専門職です。
言語障害の指導
社会生活を適切におこなうためには、記憶や感情、判断力なども必要になります。病気やケガで脳にダメージを受けた方に、言語聴覚士は指導をおこないます。
すぐに忘れてしまうなど、集中力が続かない方のサポートも言語聴覚士の仕事です。カレンダーを使ってメモを取るなどの訓練を実施する場合もあります。
聴覚支援
言語聴覚士は、周囲の声や音が聞こえない聴覚障害や、聞こえづらい難聴に対する支援をします。難聴は、先天性のものもあれば、事故や病気などの後天性のものもあり、発症時期や症状によって異なる指導が必要です。
言語聴覚士は、聴覚検査の実施や、補聴器を作る際のフィッティング、人工内耳の調節などもおこなうことがあり、障害の種類を検査し、それぞれに合った支援をおこないます。
子どもの言葉の訓練
発達障害や知的障害・聴覚障害などが原因で、言葉の発達が遅れた子どもに対しての指導もおこないます。
周囲への関心が少ない子どももいるため、言葉やコミュニケーションに興味を持ってもらうことも仕事の1つです。まずは、文字や単語から言葉を獲得していくことを支援します。
また、言語聴覚士は、教育機関や家族と協力し、子どもの周辺環境を整える役割も担います。保育園や幼稚園・小学校などを訪れて、家族や担当者にアドバイスすることも可能です。
言語聴覚士の年収や待遇
言語聴覚士を目指すうえで、業務内容だけでなく、年収や待遇なども気になるでしょう。言語聴覚士の仕事は、子どもから高齢者まで対象者も幅広く、働く場所も豊富です。また、年齢や性別を問わず働けるため、女性も多く活躍しています。
しかし、言語聴覚士の就業時間やスケジュール、給料面については働く場所によって異なります。
休日の扱いについても施設によって違うため、職場を選ぶ際は確認が必要です。
年収
厚生労働省の調査による言語聴覚士の全国平均年収は、約426.5万円です。しかし、全国平均のため、働く地域や勤務施設によって金額は異なるでしょう。
また、Indeed調べによると、言語聴覚士の年収は348.2万円。平均月収は約24.6万円となっています。
言語聴覚士の働く場所は、介護福祉施設や医療施設・子どもの放課後デイサービスなどさまざまです。言語聴覚士の平均時給は1,218円ですが、児童指導スタッフの場合だと平均時給は900円台まで下がります。※2023年4月現在
勤務形態
言語聴覚士の勤務先は、医療機関や介護福祉施設などさまざまです。一般的に勤務時間は8:00~18:00の間に設定されており、7~8時間勤務します。夜間対応や緊急対応は基本的にはありません。
しかし、緊急対応による残業はないものの、書類作成や勉強会などで残業することはあるでしょう。
休日についても、職場によって異なり、必ずしも土日が休日とは限りません。病院や施設によって、勤務状況は変わるため、希望する職場に確認するとよいでしょう。
働ける場所
言語聴覚士は、医療機関や介護福祉施設、特別支援学校などの教育機関で働けます。ただし、学校で働く場合は、教員免許が必要です。
医療機関では、リハビリセンターや回復期病棟、口腔外科や耳鼻咽喉科などで活躍します。リハビリセンターで働く場合、急性期から回復期にわたって長期間関わることもあるでしょう。
介護福祉施設では、主に嚥下訓練などをおこないます。また、訪問リハビリテーションで自宅に訪問してリハビリをおこなうこともあるでしょう。特別支援学校では、子どもの言葉を引き出す訓練をするほか、身ぶり手ぶりなど言葉以外のコミュニケーションを使う練習をします。
1日のスケジュール
次の表は、言語聴覚士の1日のスケジュール(例)です。
8:30~ | 朝礼。当日のスケジュール確認や申し送り。 |
9:00~ | 担当のリハビリ業務・記録 |
12:00頃 | 食事前の嚥下訓練 |
13:00~ | 休憩 |
14:00~ | 担当のリハビリ業務・記録 |
17:00~17:30 | 事務作業・明日の準備・申し送り |
勤務先によって違いはありますが、基本的には夜勤がなく、決まった担当業務をおこないます。言語聴覚士は、他職種との連携が重要となるため、申し送りや記録を確実におこない、情報を共有していきましょう。
介護福祉施設で働く場合、レクリエーションの参加や送迎業務を担当する場合もあります。
言語聴覚士の魅力とは
言語聴覚士は、専門知識を発揮して活躍できることが魅力です。自分で対象者に合わせたプログラムを作成し、自分のサポートで対象者の回復が実感できることも魅力です。
また、長期にわたって関わることも多く、対象者と時間をかけて信頼関係を結ぶことも可能です。
言語聴覚士は、緊急対応や夜間対応もほとんどありません。そのため、プライベートの時間を作りやすく結婚や育児といった生活環境の変化にも対応しやすいでしょう。
同じリハビリ職の理学療法士や作業療法士と比べて、体を使う場面が少ないため、年齢や性別に関わらず活躍できます。
言語聴覚士協会の調べでは、言語聴覚士の男女比は男性が4,737人、女性が15,052人で全体の約7割を占め、女性でも活躍できる仕事です。
言語聴覚士になるには
言語聴覚士になるためには、国家試験を受けることが必須です。また、国家試験を受験するためには受験要項があります。
言語聴覚士は、一定の専門知識が必要となるため、通信教育などでは受験資格を取得できません。
次から、言語聴覚士の受験資格や試験概要について解説します。
言語聴覚士になるまでのルート
言語聴覚士になるためには、次のようなルートがあります。
・高校卒業後、言語聴覚士養成校に進学する
・一般の大学卒業後、言語聴覚士養成校に進学する
・言語聴覚士として定められた基準の科目を履修する
このように、一般的には養成校を卒業し国家試験に合格することで初めて言語聴覚士になれます。
また、4年制大学卒業者であれば、社会人から言語聴覚士になることも可能で、言語聴覚士養成校に通学し、履修することもできます。
国家試験の概要
言語聴覚士の国家試験は、試験機関として指定されている「公益財団法人医療研修推進財団 PMET」が実施しています。
言語聴覚士の国家試験の概要は次のとおりです。
資格名 | 言語聴覚士 |
---|---|
試験地 | 北海道・東京都・愛知県・大阪府・広島県・福岡県 |
試験日 | 2月中旬 |
受講料 | 34,000円 |
試験内容 | ・基礎医学 ・臨床医学 ・臨床歯科医学 ・音声・言語・聴覚医学 ・心理学 ・音声・言語学 ・社会福祉・教育 ・言語聴覚障害学総論 ・失語・高次脳機能障害学 ・言語発達障害学 ・発声発語・嚥下障害学及び、聴覚障害学 |
公式ホームページ | 公益財団法人 医療研修推進財団 PMET |
合格基準と合格率
言語聴覚士の国家試験の配点は、200問あり、1問1点の加点方式です。120点以上が合格基準となっています。
下記の表は、近年おこなわれた言語聴覚士国家試験の合格率です。
受験年度 | 受験者数 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
第25回(令和5年) | 2,515名 | 1,696名 | 67.4% |
第24回(令和4年) | 2,593名 | 1,945名 | 75.0% |
第23回(令和3年) | 2,566名 | 1,766名 | 69.4% |
(参考:言語聴覚士国家試験の合格発表について|厚生労働省第25回~23回)
上記の表によると、言語聴覚士の平均合格率は70.6%です。合格基準点は約60%以上のため、国家試験対策のテキストや問題をこなし、集中的に取り組めば合格を狙える難易度だと言えるでしょう。
次の表は、リハビリ職の合格率を比較したものです。
資格内容 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
言語聴覚士 | 2,515名 | 1,696名 | 67.4% |
理学療法士 | 12,948名 | 11,312名 | 87.4% |
作業療法士 | 5,719名 | 4,793名 | 83.8% |
(参考:第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省)
理学療法士や作業療法士の合格率は80%以上あることから、リハビリ職のなかでは、言語聴覚士の難易度はやや高めと考えられます。
言語聴覚士は専門知識を生かせられる仕事
言語聴覚士は、言葉や聞き取り、食事に関する専門資格です。病気や障害などで言葉を失ってしまった方に訓練や指導ができるだけでなく、子どもの発達にも関われるため、幅広い年齢層の対象者を支援できます。また、医療機関や介護施設・教育機関などさまざまな場所で働くことができます。
言語聴覚士は基本的に夜勤がないため、プライベートの時間を確保しやすい仕事です。体を使うことが少ないこともあり、年齢や性別を問わず活躍しやすいでしょう。
国家試験の結果から考察すると、ほかのリハビリ職よりは、やや難易度が高いと感じるかもしれません。しかし、自分の支援によって対象者が回復へ向かう姿は何ものにも代えがたい喜びを感じられる仕事です。
ぜひ、言語聴覚士を目指してみてはいかがでしょうか?