介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護資格・スキルアップ 介護福祉士からの転職が最も多い「介護支援専門員(ケアマネージャー)」の仕事とは

介護資格・スキルアップ

2022-09-05

介護福祉士からの転職が最も多い「介護支援専門員(ケアマネージャー)」の仕事とは

介護支援専門員(ケアマネージャー)は、介護保険法によって創設された職種です。介護保険サービス等を利用する方や家族などの相談に応じて利用者の希望や心身の状態を考慮し、在宅や施設で適切なサービスを受けたり、質の高い生活を送れるようにケアプラン(介護サービス計画)を立案したり、関係機関との連絡調整を行います。高齢化が進むなか、需要が高まる介護支援専門員について解説します。

介護支援専門員(ケアマネージャー)とは

介護支援専門員(ケアマネージャーは、2000年に施行された介護保険法によって誕生した職種です。居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、介護施設などに配置義務があり、保健医療の向上および福祉の増進を図ることを目的とした介護保険制度の理念を実現する役割を担っています。

介護支援専門員(ケアマネージャー)の仕事

介護支援専門員は、介護保険法第7条第5項において次のように定められています。

要介護者または要支援者(以下「要介護者等」という。)からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切なサービスを利用できるよう、市町村、サービス事業者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識および技術を有するものとして介護支援専門員証の交付を受けたもの」(原文中略)

主な業務として、利用者、家族の希望や、サービス提供従事者の意見をもとに、居宅介護支援事業所や介護保険施設等で介護サービス計画(ケアプラン)の立案を行います。介護サービス計画は、介護保険のサービスを利用する際に必要です。介護サービス従事者の中では、介護支援専門員のみが作成できます。

介護支援専門員(ケアマネージャー)のやりがい

介護支援専門員は、利用者や家族の希望に耳を傾け、介護サービスの利用調整や関係者間の連絡調整を行い、課題の解決や目標の達成を目指します。利用者のQOL(生活の質)を高めるためには、介護支援専門員が利用者にとって有益な情報や、マッチするサービスを熟知している必要があります。困難なケースを担当するなど、神経をすり減らすこともありますが、自らが立案した介護サービス計画によって利用者や家族の生活環境が改善し、QOLが向上したときは、大きな喜びを感じられるでしょう。

介護支援専門員(ケアマネージャー)になるには

介護支援専門員になるためには、都道府県知事が実施する介護支援専門員実務研修受講試験に合格したうえで介護支援専門員実務研修の課程を修了し、介護支援専門員として都道府県に登録しなくてはなりません。試験は、年一回実施されます。

第1回(平成10年度)の合格率は介護支援専門員の確保が急務であったため、合格率は44.1%と高い結果でしたが、それ以降は年々下がり、第21回(平成30年度)は合格率10.1%と過去最低を記録。その後、第24回(令和3年度)の試験は合格率23.3%と、例年並みに戻っています。

介護支援専門員は、「保健・医療・福祉の分野で要援護者等に対する相談・援助の業務に一定期間従事した経験のある人の中から養成する」という目的から、受験資格の要件が定められています。受験資格を得るには、下記の国家資格に基づく業務を通算して5年以上経験する必要があります。

  • ・国家資格に基づく業務

医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士

また、次の相談援助業務を行う場合も5年以上の経験があれば受験資格を得られます。

  • ・生活相談員

特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護予防特定施設入居者生活介護等における生活相談員としての業務が対象になります。

  • ・支援相談員

介護老人保健施設における支援相談員としての業務が対象となります。

  • ・相談支援専門員

計画相談支援、障害児相談支援における相談支援専門員としての業務が対象となります。

  • ・主任相談支援員

生活困窮者自立相談支援事業等における主任相談支援員としての業務が対象となります。

「介護福祉士から介護支援専門員へ」給与や待遇の比較

介護支援専門員は、介護福祉士の受験者が最も多く、毎年約6割を占めています。「介護支援専門員は、介護福祉士からのステップアップ資格」と表現されることがありますが、介護支援専門員は都道府県知事が実施する公的資格、介護福祉士は国家資格のため、この表現は適切ではありません。介護福祉士の中には「身体に負担を感じてきたときのため」など、将来を見越して資格を取得している人も多いです。

では、介護福祉士から介護支援専門員へなった場合、給与は変わるのでしょうか。

令和2年度介護労働実態調査の結果による給与比較では、介護支援専門員の月額266,022円に対し、介護職員は223,981円となっています。ただしこの調査は介護職員(介護福祉士以外も含む)が対象で、経験年数も明らかにされていません。

こんなに違う、介護福祉士と介護支援専門員(ケアマネージャー)の業務

介護保険法では、さまざまな事業所に介護支援専門員の配置が義務付けられています。居宅サービスでは、小規模多機能型居宅介護・グループホーム・居宅介護支援事業所・地域包括支援センターなど、施設サービスでは、介護老人福祉施設・介護老人保健施設など、多岐にわたって活躍の場が設けられています。

居宅介護支援事業所の仕事内容

担当の利用者宅を月一回訪問し、心身の状態や希望をヒアリングして、介護サービス計画書を作成します。1人の介護支援専門員が担当する利用者は39人までと考えられています。介護支援専門員の上位資格として主任介護支援専門員(実務経験10年以上で受験可能)があり、それを有していなければ管理者になることができません。

介護施設の介護支援専門員(ケアマネージャー)の仕事

介護施設老人ホームに入居する利用者の介護サービス計画を作成します。居宅介護支援事業所と異なり、利用者が施設で生活しています。生活相談員や介護職、看護職が同じ職場で働いており、情報収集や連携が行いやすいのが特徴です。

100人の入所者に対して1人以上の介護支援専門員の配置が義務付けられ、入居者の数が少ない施設の場合は、人員基準を満たしたうえで、相談員・管理者・介護職員と兼務する場合もあります。

地域包括支援センターの介護支援専門員(ケアマネージャー)の仕事

地域包括支援センターは、地域住民の心身の健康・生活安定のために必要な援助を行うための機関で、市町村もしくは、委託を受けた社会福祉法人・社会福祉協議会・医療法人などが運営しています。居宅介護支援事業所が要介護者を対象にしているのに対し、地域包括支援センターは、高齢者が要介護状態にならないための介護予防ケアマネジメントを行うため、要支援者が対象になります。介護支援専門員のほかに、社会福祉士や保健師も配置されており、各専門職との連携や対応が求められています。

介護支援専門員(ケアマネージャー)の課題

介護保険制度は、利用者本位の介護サービス提供を基本理念の一つとして創設されました。その中で介護支援専門員は、その理念を実現する中心的存在であり、要介護者にとって欠かせない存在です。しかし、すべての介護支援専門員にスキルが担保されているとは言い切れません。具体的にどのような課題があるのか、見ていきましょう。

介護支援専門員(ケアマネージャー)の資質に関する課題

介護支援専門員の質を担保するために平成18年3月から、5年ごとの資格更新制度が導入されました。また、平成25年度に開催された「介護支援専門員(ケアマネージャー)の 資質向上と今後のあり方に関する検討会」では、次のような課題が挙げられています。

  1. ①介護保険の理念である「自立支援」の考え方が、十分共有されていない。
  2. ②利用者像や課題に応じた適切なアセスメント(課題把握)が必ずしも十分でない。
  3. ③サービス担当者会議における多職種協働が十分に機能していない。
  4. ④ケアマネジメントにおけるモニタリング、評価が必ずしも十分でない。
  5. ⑤重度者に対する医療サービスの組み込みをはじめとした医療との連携が必ずしも十分でない。
  6. ⑥インフォーマルサービス(介護保険給付外のサービス)のコーディネート、地域のネットワーク化が必ずしも十分できていない。
  7. ⑦小規模事業者の支援、中立・公平性の確保について、取り組みが必ずしも十分でない。
  8. ⑧地域における実践的な場での学び、有効なスーパーバイズ機能など、介護支援専門員の能力向上の支援が必ずしも十分でない。
  9. ⑨介護支援専門員の資質に差がある現状を踏まえると、介護支援専門員の養成や研修について、実務研修受講試験の資格要件・法定研修のあり方、研修水準の平準化等に課題がある。
  10. ⑩施設における介護支援専門員の役割が明確でない。

介護支援専門員試験受験者の減少

介護支援専門員の受験者は年々減少傾向にあります。「第21回(平成30年度)介護支援専門員実務研修受講試験」の受験者数は、前年の14万人から6割以上減少した約5万人。合格者数も4990人と、過去最低となりました。

この年から資格要件が厳格化され、「介護等の業務経験が10年以上」「実務者研修修了者や介護職員初任者研修修了者などで5年以上の業務経験」が対象外となったためと考えられます。しかし、それ以降も4~5万人で推移するなど「介護支援専門員離れ」とも呼べる状況が続いています。

介護支援専門員を希望する人が減少している理由として、「合格率の低さ」「待遇の問題」など、さまざまな要因が考えられます。介護福祉士よりも肉体的な負担は少ないですが、訪問先で利用者や家族に神経を使わなくてはならず、精神的に辛いこともあります。

また国は「特定処遇改善加算」を創設するなど、介護職員を確保するための政策を打ち出していますが、介護支援専門員については、それほど手を差し伸べられていません。介護支援専門員の多くが介護福祉士からの転職であるため、「介護福祉士の待遇が良ければ介護支援専門員になる必要はない」と考える人もいるでしょう。

■居宅介護支援事業所の介護支援専門員の一日


9:00出社・連絡事項の確認
9:30利用者宅を訪問し、心身状態や介護サービスの利用状況や新たな介護サービスの必要性を確認
11:30事業所に戻り記録の整理
12:00休憩
13:30利用者宅を訪問し、心身状態や介護サービスの利用状況や新たな介護サービスの必要性を確認
14:30役所へ赴き、サービス申請や相談を行う
15:30事業所に戻り電話応対やケアプラン、サービス計画表の作成
16:30サービス担当者会議の準備
17:00サービス担当者会議
18:00退社
場合によっては事業所で利用者やその家族から相談を受けたり、病院などの医療機関へ訪問したりすることもある


場合によっては事業所で利用者やその家族から相談を受けたり、病院などの医療機関へ訪問したりすることもある。
※施設に配置されている介護支援専門員は決まったルーティーンはありません。

受験者数が少ないうちに介護支援専門員(ケアマネージャー)の取得を!

介護支援専門員については、一部では「AI導入により介護支援専門員が不要になる」や「公的資格から国家資格になる」等さまざまな噂があります。今後どのように変化するかは分かりませんが、需要が減ることは考えにくいと思われます。将来性を見越して、介護支援専門員の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

渡口 将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながら、ライター活動をおこなっており、記事の執筆や本の出版をしている。