資格・就職・転職
2023-11-21
作業療法士は人手不足?辞めたくなる理由や転職を成功させるコツを解説
「国家試験に合格して作業療法士として働いてきたけど、今の職場を辞めたい・転職したい」と思ったことはありませんか?
辞めたいと思う理由は人それぞれですが、働く場所を変えれば解決できるかもしれません。
この記事では、作業療法士が転職したいと思う理由や転職先の選択肢、転職を成功させるポイントを解説します。
転職しようかどうか迷っている作業療法士の方はぜひ最後までご覧ください。
作業療法士は人手不足?需要はある?
作業療法士(OT)としてのキャリアを積む中で、転職を考える人は少なくありません。しかし、実際の需要や転職先を理解している人は少ないのではないでしょうか。
まずは作業療法士の需要と供給について解説します。
有資格者は増えており需要を上回っている
作業療法士の養成校は増加し続け、有資格者が2021年には有資格者が104,465名にまで増えています。
有資格者が多く需要もあればよいのですが、一概にそうではありません。2019年の厚生労働省の調査では、理学療法士(PT)と作業療法士の供給は既に需要を上回っており、2040年ごろには供給数が需要数の約1.5倍になると推計されています。
超高齢社会で、リハビリ職の需要は高いといわれるものの、既に飽和状態です。
領域によっては人手不足となっている
しかし、単純に有資格者数だけで見れば飽和状態となっていますが、作業療法士の就労先に偏りがあるのも事実です。領域ごとの勤務者比を以下のとおりです。
領域 | 勤務者比 |
---|---|
医療機関(うち精神科) | 71.5%(10.1%) |
介護施設 | 19.5% |
障害関連施設(児童福祉施設・障害者支援施設など) | 3.7% |
行政・教育機関など | 1.6% |
養成施設(大学・専門学校など) | 3.7% |
【引用文献:作業療法士白書2021】
このように、作業療法士の7割以上は医療機関で働いていることが分かります。
高齢者が増え、介護施設の数は増えているものの、作業療法士の就業者数はさほど伸びていません。これは介護施設の種類によって、配置基準に作業療法士が含まれていないことが理由に挙げられます。
例えば、特養では機能訓練指導員の配置が必要ですが、看護師や柔道整復師など、作業療法士以外の職種も対象となっているのです。
また、障害関連施設や行政などで働く作業療法士の数は医療機関と比べると少数です。近年、放課後デイサービス(発達支援に含まれる)などでは、作業療法士の求人が掲載されており、まだまだ需要があるといえます。このように有資格者が多くなっても、領域によって需要は異なるのです。
作業療法士が転職したいと思う理由は?
作業療法士として働いていると、つらいと感じたり辞めたいと思ったりすることもあるでしょう。以下で作業療法士が転職を考える理由を紹介します。
体力的にキツいから
実際に作業療法士として働いてみると、思ったより体を動かす業務が多いと感じた人も多いでしょう。
職場にもよりますが、患者の起居動作や移乗動作の訓練・生活動作の介助・レクリエーションなどで身体的な負担を感じる人は多い傾向にあります。中には体格の大きな患者もいるため、小柄な方では大きな負担になるでしょう。
日々の業務から腰痛を発症する作業療法士は少なくありません。特に年齢を重ねるにつれ、負荷が大きくなり、それを理由に辞めたくなる人もいるでしょう。
忙しすぎるから
作業療法士が働く場所は病院や施設などさまざまですが、職場によっては非常に忙しい場合があります。
・作業療法士1人あたりの担当患者数が多い
・書類仕事(報告書・計画書作成)が多い
・休日も研修などがある
・残業が多い
勤務時間中の忙しさだけでなく、残業が多かったり休日も休めなかったりするのでは、辞めたいと思うのも無理はないでしょう。
給料が安いから
国家資格を保有しているにもかかわらず、医療業界の給与が低いと度々指摘されています。もちろん作業療法士も例外ではありません。
2022年時点の作業療法士と日本の給与所得者の平均年収を、以下に示しました。
作業療法士 | 給与所得者 |
---|---|
430万6,800円 (令和4年賃金構造基本統計調査より) | 458万円 (国税庁|令和4年分民間給与実態統計調査より) |
※いずれも残業代などの超過労働給与額を含む
このように、作業療法士の平均年収は日本の平均より低いことが分かります。仕事自体にやりがいがあっても、心身の負担とプレッシャーに対して見合わない給与だと感じれば辞めたいと思うのも無理はないでしょう。
専門性のない業務が多いから
作業療法士は本来リハビリの専門職ですが、職場によっては専門性のない業務が多いとの不満もあるようです。
例えば、「病棟の看護補助のようなリハビリ以外の業務が多い」や「送迎業務がある」といった声は、筆者の周りでも聞くことがあります。また、OT ・PTで同じ業務をしている場合もあります。
このような職場では、作業療法士ならではの経験が積めないと感じたり、専門性を生かせられないと疑問を持ったりして辞めたいと感じる人もいるでしょう。
人間関係でストレスがあるから
医療の現場は、人間関係での悩みが多いものです。部署内でリハビリに対する考え方・指導方法などが思っていたものと違ったり、他部署との関わり方が難しいと感じたりすることがストレスとなることもあるでしょう。また、ストレスは職員間だけとは限りません。
患者への対応やコミュニケーションが難しくストレスを感じる人もいます。このような人間関係によるストレスで辞めたいと感じる人もいるのです。
作業療法士の転職先は?
作業療法士としての経験やスキルを生かせる転職先は多岐にわたります。
作業療法士の仕事内容は「病院や施設でのリハビリ」といったイメージが強いものですが、それ以外の分野で活躍する人も少なくありません。
以下に、作業療法士として勤務する主な転職先を紹介します。
医療機関
先述のとおり作業療法士の主な職場として一般的なのが医療機関です。
一般病院やクリニックでは、急性期・回復期・維持期とさまざまな段階の患者のリハビリを行います。主な対象疾患は脳血管・整形疾患です。転職を検討するなら、研修や教育体制が整っている医療機関を選ぶとよいでしょう。
介護施設
高齢者化に伴い介護施設も増え、転職先として検討する作業療法士も増えてきています。介護施設では、主に要介護・要支援認定を受けた高齢者が対象となります。
リハビリを集中して行う介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの施設や、在宅の方が利用される訪問リハビリテーションやデイケアなどが主な勤務先として挙げられるでしょう。
児童福祉施設
児童福祉施設や養護学校などでも作業療法士は活躍しており、障がいや特性のある子どもたちの自立支援や適正な発達を促すサポートをしています。
未就学児が対象の児童発達支援や、学童が対象の放課後デイサービス、特別支援学校などが主な転職先となるでしょう。放課後等デイサービスの求人は増加傾向にあります。
障害福祉施設
障がいを持つ成人の日常生活をサポートする障害福祉施設も作業療法士の転職先として挙げられます。生活を自立するためのトレーニングや、社会参加のサポートなどが主な役割です。
ただし、ほかの領域と比較すると、就労移行支援事業所や障害者入所施設などの求人数はあまり多くないように感じられます。
養成校
患者と直接関わるのではなく、作業療法士の養成校や大学などの教育機関で働く選択肢もあります。自らの経験を生かして後進の教育に携わるのも作業療法士の大切な役割です。
ただし、養成校に転職するには臨床経験5年以上が必要なうえ、2023年現在は専任教員養成講習会の修了(または大学で教育学に関する科目4単位以上取得)が必須となるため、注意しましょう。
一般企業
厳密には作業療法士として働くわけではありませんが、医療機器・福祉用具の企業やスポーツジムなどに転職する人もいます。これまで培ってきた知識や経験が役に立つことも多いでしょう。
一方で、医療から離れてまったく違う業界に未経験で飛び込む人もいます。ただし、作業療法士などの医療職は、一般企業のマナーやルールに不慣れな人も多いです。そのため、異業種に挑戦する場合は、初歩的なマナーから勉強が必要となるでしょう。
作業療法士が転職を成功させるには?
作業療法士が転職活動を成功させるためには、事前の準備や自己分析が非常に重要です。以下に、転職を成功させるためのポイントを紹介します。
転職の軸を考える
まずは転職の軸(転職にあたり何を重視するのか)を明確にしましょう。
例えば、「給与や待遇のよいところで働きたい」「専門性を深めたい」などがあります。ほかにも、「プライベートを大切にしたい」など、働き方やワークライフバランスを重視する方もいるでしょう。
いずれにせよ、自分の中で最も重要視するポイントを明確にしておくことで、転職先を選ぶ際の基準ができ、ブレのない転職活動ができるようになります。
ポジティブな転職理由を考える
面接の際には、前職を辞めた理由や転職を希望する理由を聞かれることが多いです。
実際には、給料が安い・人間関係の問題などで辞める人は多いかもしれません。しかし、転職理由としてそのまま伝えると採用側にネガティブな印象を持たれる可能性があるため、前向きな理由に変換したいものです。
例えば「新しい環境でキャリアを積みたい」や「専門性をさらに深めたい」といったポジティブな理由に変換して好印象を与えましょう。
書類選考・面接対策をする
採用側にとって、応募者の志望動機・自己PRなどは特に重要です。また、前職での経歴やキャリア・転職理由・キャリアプランなどもよく聞かれます。
そのため、自分のキャリアやスキル、応募先のどのようなところに魅力に感じたか、入職後にしたいことなどを具体的に記載しましょう。もちろん応募先によって内容を変える必要があります。
採用側は、応募者が活躍できそうか、適性があるかを判断しています。しっかり書類内容の熟考と面接の練習をして熱意を伝える準備を整えましょう。
在籍中に転職活動を始める
転職活動に思ったよりも時間がかかるのは珍しいことではありません。退職してから転職活動をすると空白期間やブランクが長くなり不利になるリスクもあります。
反対に、在職中であれば経済的な安定から余裕を持った交渉も可能です。そのため、いつまでに転職したいかを考えたうえで逆算して転職活動を始めましょう。
転職エージェントを活用する
在籍中から転職活動した方がよいものの、働きながらでは求人のリサーチなどに時間をかけられないものです。また、自分で探していても、勤務地や年間休みなど希望条件どおりの職場が見つからないこともあります。
そんな時は、転職エージェントへの相談がおすすめです。自分の希望に近い求人を紹介してもらえたり、書類作成のサポートや面接対策のアドバイスをしてもらえたりと活用するメリットは多数あります。
まとめ
心身の負担・待遇面・業務内容など、作業療法士が「辞めたい」と思う理由はさまざまです。そしてその理由は同じ職場にいても、解消されるのはなかなか難しいでしょう。
そんな時は転職を視野に入れるとよいかもしれません。一度、自分が作業療法士としてどんな仕事をしたいか見つめ直してみましょう。
そして、転職の軸を明確にし、書類選考や面接の対策を十分にすることが大切です。自身のキャリアアップや充実した生活を送る一歩として、慎重かつ前向きに取り組んでいきましょう。