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2023-06-27
ケアマネージャーの資格取得は将来性がある?現状と今後を解説
ケアマネージャーは、介護の必要な方に適切な介護サービスを提供するために、家族や利用者に聴き取りをおこない、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成する仕事です。
利用者の状況を把握し、心身の状態に合わせて修正をおこなうなど、介護サービス利用の際に必要な存在です。
しかし「ケアマネージャーは必要なくなる」という話を耳にすることもあり、ケアマネージャーの将来性に不安を感じるのではないでしょうか。
この記事では、ケアマネージャーの現状や将来性について解説します。どのようなときに活躍できるのか、ケアマネージャーを目指す人は、ぜひ参考にしてください。
ケアマネージャーはなくなる?将来性が心配される理由
ケアマネージャーになろうと考えている人は、ケアマネージャーの仕事がなくならないか、気になるでしょう。
ケアマネージャーの将来性が心配される理由は、次の3つが考えられます。
・受験資格の厳格化
・ケアマネージャーの数
・ケアマネージャーの給料面
次から、1つずつ解説していきます。
受験資格の厳格化
はじめに、ケアマネージャー(介護支援専門員実務研修受講試験)の受験資格が厳格化したことが挙げられます。
ケアマネージャー試験を受験するためには、福祉・医療・保健に関する指定国家資格を保有している方が対象です。さらに、通算5年以上の実務年数と900日以上の業務従事日数が必要です。
福祉・医療・保健に関する指定国家資格 |
---|
医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師・栄養士(管理栄養士含む)・精神保健福祉士 |
業務通算日数は、資格が取得できた日ではなく、登録日以降からの算定が必要です。資格を保有していても教育業務や事務などの業務の場合は、実務経験には含まれません。
また、同一日に複数の事業所で勤務した場合は通算できません。また、受験の際には、実務経験証明書が必要です。
以前は、法定資格がなくても実務経験が10年以上あれば受験できましたが、ケアマネージャーの受験要項が厳格化したことが、ケアマネージャーは必要ないと心配されている原因です。
ケアマネージャーの数
次に、ケアマネージャーの数に注目してみましょう。以下の表は、令和4年度から過去5年間の介護支援専門員の受験者数と合格者・合格率です。
年度 | 受験者数 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
第21回(平成30年度) | 49,332 人 | 4,990 人 | 10.1 % |
第22回(令和元年度) | 41,049 人 | 8,018 人 | 19.5 % |
第23回(令和2年度) | 46,415 人 | 8,200 人 | 17.7 % |
第24回(令和3年度) | 54,290 人 | 12,662 人 | 23.3 % |
第25回(令和4年度) | 54,406 人 | 10,328 人 | 19.0 % |
(参考:第25回・第24回・第23回・第22回・第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省)
資格 | 受験者数 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
介護福祉士 | 79,151人 | 66,711人 | 84.3% |
社会福祉士 | 36,974人 | 16,338人 | 44.2% |
上記表をみると、年々ケアマネージャーの受験者数は増加しているものの、合格者はそれほど多くありません。
ほかの福祉系資格の合格率(令和4年度)と比較しても、ケアマネージャーの合格率は低く、一時は10%程度まで低下しています。
また、ケアマネージャーの資格は更新制度のため、5年に一度更新が必要です。56時間と32時間の更新研修を履修が必要になっており、資格の維持も厳しい状況です。
さらに、事業管理責任者は、主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)に限定されています。
主任ケアマネージャーになるためには、5年以上の実務経験と70時間の研修が必要です。
このように、ケアマネージャー試験の受験要項が厳しく、主任ケアマネージャーになるためには、時間がかかるため、ケアマネージャーは人材不足だといえるでしょう。
ケアマネージャーの給料面
最後に、実際にケアマネージャーの給料面はどのくらいなのか、ほかの福祉資格と比較してみました。
職種 | 年収 |
---|---|
看護師 | 508.1万円 |
理学療法士 | 430.7万円 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 405.8万円 |
施設介護員 | 362.9万円 |
(参考:jobtag|厚生労働省)
施設介護員よりも年収は高いものの、看護師や理学療法士よりも低い状況です。
ケアマネージャーの仕事は、ケアプラン(介護サービス計画書)を作成するほか、毎月利用者の自宅に訪問し、サービス調整をおこないます。
ほかにも、利用割合を考えることやサービス担当者会議の開催・作成書類など、業務範囲が広いわりに、給料が少ないと感じる人も少なくありません。
そのため、ケアマネージャーの仕事にやりがいを感じていても長続きしないところも、将来性がないと言われる原因の1つです。
ケアマネージャーは将来性がある仕事!その理由を解説
先に紹介したように、ケアマネージャーには将来性がないと言われていますが、一方で、将来性があるという意見もみられます。
ケアマネージャーに将来性があるという理由は、次の2点です。
・進む高齢化
・AIにはできない仕事
次から、解説します。
進む高齢化
現在、日本では高齢化が進んでおり、2025年には「団塊の世代」が75歳以上になるため、後期高齢者の増加が見込まれています。
そのため、介護が必要になる人数が増加することが考えられるため、介護サービスの利用者も増えるでしょう。
介護サービスを受けるための、要介護認定調査や更新手続きの際にも、ケアマネージャーの役割は重要です。また、施設に入所したい場合にも、施設担当のケアマネージャーが施設内サービスに沿ったケアプランを作成します。
高齢者の増加とともにケアマネージャーの手が必要となるため、今後も需要が高い職業だといえます。
AIにはできない仕事
介護業界にもICTの導入が考えられており、ケアプランの作成にAIを取り入れようとしています。そのため「ケアマネージャーの資格廃止」が懸念されています。
しかし、ケアマネージャーの仕事は、人間同士のコミュニケーションや利用者のニーズに合わせたケアプランの作成・利用者や家族との関係構築などです。
ケアプランの作成時は、利用者の性格や家庭環境を考慮することや話し合いが必要です。そのため、ケアプランの一部はAIが作成できても、すべてを任せることは難しいでしょう。
また、ケアマネージャーは専門的な知識や利用者に寄り添うことも大切です。利用者にとって適切なサービスが受けられているか、モニタリングも大切な仕事の1つです。
このように、ケアマネージャーは人と関わる業務が多く、AIにはできないことだと考えられるでしょう。
ケアマネージャーもスキルアップを目指せる
介護職員は、介護初任者研修から始まり、介護福祉士やケアマネージャーなどの資格を取得して、キャリアアップすることが可能です。
また、介護職員を確保するために、事業所においてもキャリアアップできる仕組みや環境改善が求められています。
ケアマネージャーは、現場の経験を積めば主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)になることも可能です。
主任ケアマネージャーになれば、ほかのケアマネージャーの指導やアドバイスができます。また、事業所の管理者として必要な人材のため、重宝されるでしょう。
ケアマネージャーの資格取得後も、資格手当などの給料アップや上級資格の取得などのキャリアアップができることから、将来性がある仕事だと考えられています。
ケアマネージャーに関連する、よくある質問
ここからは、ケアマネージャーに関連する、よくある質問を紹介します。
ケアマネージャーは廃止されるって本当?
主任ケアマネージャーは、ほかの福祉系資格と比較して合格者が少ないため、不足している状況です。
ケアマネージャーの質の向上を目的に、受験資格が難しくなっているため、ケアマネージャーを廃止しようとしているのではないか?と疑問視されています。
また、事業所の管理者として主任ケアマネージャーの配置は、令和9年3月31日まで延長されましたが、今後主任ケアマネージャーの需要は高まるでしょう。
この先、高齢化が進み介護サービス利用者が増加すれば、ケアマネ―ジャーが必要です。主任ケアマネージャーになるためには、現場での5年以上実務経験をし、70時間の研修を受ける必要があります。
どちらも需要が高いことが予想できるため、ケアマネージャーの資格が廃止されることはないといえるでしょう。
ケアマネージャーは国家資格ですか?
ケアマネージャーは国家資格ではなく、都道府県で指定されている公的資格です。しかし、介護支援専門員実務研修受講試験を受験するためには、介護福祉士をはじめとする国家資格が必要です。
ケアマネージャーは、国家資格ではないものの、専門の知識と技術が必要な仕事です。合格難易度の高さも考慮すると、介護福祉士の上級資格だと考えられます。
ケアマネージャーは今後も需要があり、将来性のある資格
ケアマネージャーの受験資格の厳格化や主任ケアマネージャーの配置・AIの導入などが理由で、ケアマネージャー不要論がささやかれています。
しかし、ケアマネージャーは利用者や家族と関わりながら、適切なサービス提供をするため、AIはケアプラン作成の補助的な役割に留まるでしょう。
今後、高齢化が進み介護サービスの利用者は増えていきます。利用者のサービスを統括するケアマネージャーと、事業所の管理を担う主任ケアマネージャーの配置は必須です。
主任ケアマネージャーになれば、ケアマネージャーの指導や教育にも関われるうえに、業務範囲を広げることも可能です。
自身の給与アップやキャリアアップのために、まずは、ケアマネージャーを目指してみてはいかがでしょうか。