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2023-03-06
ケアマネージャーは廃止されるって本当?ケアマネージャーの将来性と今後について詳しく解説!
約800万人いる団塊の世代が後期高齢者(75歳)となり、国民の4人に1人が後期高齢者という超高齢社会を迎える2025年に向け、介護サービスと利用者・家族の架け橋となるケアマネージャーの役割はますます大きくなると考えられています。その一方で「ケアマネージャー廃止説」が取り沙汰されていることをご存じでしょうか。今後、大きな役割を担っていくケアマネージャーがなぜ廃止が噂されるのか?さらに本当に廃止されるのかなど、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。今回はケアマネージャー廃止説の背景とその真偽、将来性について紹介します。
ケアマネージャーの資格廃止説の背景
最初に、ケアマネージャー廃止説がささやかれるようになった背景について見ていきましょう。
資格廃止説の原因1:受験資格が厳しくなり合格者が激減した
2018年にケアマネージャーの受験資格が厳格化されて以来、合格者が激減し、同年の合格率は10.1%と過去最低を記録しました。
厳格化の詳細は、①保有資格による試験免除科目が廃止された②国家資格所有者・相談援助業務に就いている人が要件となり、さらに実務経験が5年以上になったというものです。
厳格化の目的はケアマネージャーの質の向上とされていますが、「ケアマネージャーに需要がないため、受験資格を厳しくし合格者数を激減させたのでは?」という不安が介護職の間に広がり、ケアマネージャー資格廃止説につながったと考えられます。
資格廃止説の原因2:法改正の影響で管理者が主任ケアマネに限定された
介護保険法の改定により、居宅介護支援事業所の管理者は、2021年から「主任ケアマネージャー」に限定されることになりました。主任ケアマネージャーとは、2006年に介護保険制度の改正により新たに作られた、ケアマネージャーの上級資格です。
主な業務は「介護に関するサービス、福祉、医療介護保険などのネットワークの向上」「ケアマネージャーの指導・教育」「地域の特徴・課題を把握し、適切にケアできるシステムの構築」の3点です。
主任ケアマネージャーになるには、「主任介護支援専門員研修課程」を修了する必要があります。受講するには「ケアマネージャーとして通算5年以上従事する」という要件があるため、すぐに対応できない施設・事業所が大多数でした。
そのため、国は実施までの措置期間を最大2027年3月31日まで延長しました。時間は十分に用意されたものの、主任ケアマネージャーの必要性が大きく高まったことから、ケアマネージャーが廃止されるのではという意見が出てきたと思われます。
このようなケアマネージャー資格の廃止説に加え、近年では「ケアマネージャーの業務がAIに奪われるのではないか?」という新たな不安も出てきました。
次は、ケアマネージャーの仕事とAIの関係についてご説明します。
AI導入でケアマネージャーの仕事はどうなる?
現在、AI(人工知能)を活用しケアプランを作成する試みが民間企業などによっておこなわれています。介護サービスの利用者データを学習したAIにケアプランを作成させて、厚生労働省が実用化に向け調査をおこなっています。
AIとの共存がポイント
介護業界は、他の産業に比べ、デジタル化が遅れているといわれています。厚生労働省は積極的に介護業界のデジタル化を進めてきましたが、この流れは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてさらに加速。その中で研究・開発されたのが「AIケアプラン」です。
具体的には、AIが介護の膨大な事例をスピーディーにまとめ、そのデータを参考にケアマネージャーがケアプランを作成するというものです。現状、ケアマネージャーが多くの時間と労力をかけておこなっているケアプラン作成を、劇的に短縮できるシステムとして注目されています。
AIにはできない専門性の高い業務時間を作れる
AIを活用すればケアプラン作成時間が大幅に短縮され、ケアマネージャーの負担軽減につながります。さらに空いた時間で利用者と向き合うことが可能になるため、ケアマネージャーがAIを活用する利点は大きいといえるでしょう。
ケアマネージャーの仕事がAIに奪われない2つの理由
AIの導入によってケアマネージャーの仕事が楽になることはあっても、完全に取って代わる恐れは当分ないと見られています。その理由について解説します。
AIが利用者・家族に“寄り添う”ことは困難
ケアプランは介護保険や過去の事例などのデータだけでなく、利用者やその家族の気持ちも反映して作成します。AIはデータを素早くまとめることはできても、人の気持ちを汲み取ることはできません。ケアプラン作成をはじめ、マネジメントの主役はケアマネージャー本人なのです。
厚労省の想定はあくまでもケアマネージャーの支援
厚生労働省は介護分野でのAI活用を積極的に進めていますが、あくまでも「ケアプランの作成支援」にとどめています。つまり、AIが「主」になるのではなく、ケアマネージャーの負担を減らすためのサポートとして利用していこうという姿勢がうかがえます。
実際、2021年12月に厚生労働省が発表した報告書にも、下記のように記載されています。
・公正中立性の確保も含めケアマネジメントの質を向上させていくためには、ケアマネージャーが十分に力を発揮できる環境を整備していくことが重要であり、上記の業務効率化等の取組も含め、働く環境の改善等を進めていくことが重要である。
・将来的なケアマネージャーの人材確保の観点から、処遇の改善やICT機器等を活用した業務負担軽減などの環境整備が必要との指摘もある。
これらの内容からも、国がケアマネージャーの今後の活躍に大きな期待を寄せていることがわかります。
ケアマネージャーの将来性
ケアマネージャーの専門性や役割は、今後さらに高まる見込みが強く、将来性のある職種といえます。その理由についてご紹介していきます。
高齢化に需要は一層高まる
総務省統計局によると、2022年9月15日現在で日本の総人口は前年に比べ82万人減少している一方、65歳以上の高齢者人口は3,627万人と、前年(3,621万人)に比べ6万人増加し、過去最多となりました。
さらに総人口に対して、75歳以上の人口割合が初めて15%を超えています。これは「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ)と呼ばれる世代が2022年から75歳を迎え始める影響です。
介護の「2025年問題」では、ケアマネージャーをはじめとする介護職不足が懸念されています。介護職を含む他職種連携(マネジメント)をおこなう役割のケアマネージャーの需要はより一層高まると考えられます。
ケアマネージャーの高齢化から若手が必要に
ケアマネージャーの受験資格が「国家資格所有者または、相談援助業務に就いており、さらに実務経験が5年以上ある人」と厳格化されたことから、若年層のケアマネージャーが少なくなりました。
その結果、ケアマネージャーの高齢化も進み、現在は若年層のケアマネージャーが求められています。少子化の進む日本では、介護職や福祉に就く人数も減少するため、若手の需要はさらに加速するでしょう。
合格率の上昇
受験資格の厳格化により、2018年度に過去最低の10.1%まで落ち込んだケアマネージャー試験の合格率ですが、2021年には23.3%まで上昇し、受験者数自体も回復傾向にあるといわれています。このことからも、ケアマネージャーの需要はまだまだ高いといえるのではないでしょうか。
介護職の中では給与が高く、さらに処遇改善に期待できる
介護分野の他職種と比較して、ケアマネージャーの年収(収入)は高く設定されています。例えば介護職(無資格)の月収が約27万円であるのに対し、ケアマネージャーは約36万円とおよそ9万円の差があります。
この差は専門性の高い知識を活かしていること、担当する業務が多岐にわたることが理由と考えられ、活躍の場はさらに広がると思われます。
また激務かつ資格のハードルが高いことから、ケアマネージャーの処遇改善は常に求められており、今後の待遇改善にも期待されています。
ケアマネージャーの年収については、下記の記事で詳しくご説明しています。
国家資格化の可能性
2023年現在、ケアマネージャーは民間資格ですが、「日本介護支援専門員協会」が以前から国家資格化を訴えてきたこともあり、今後は国家資格になるのではないかといわれています。国家資格になれば資格取得を目指す人も増え、待遇がさらによくなる可能性もあると予想できます。
これらの理由から、ケアマネージャーは将来性のある仕事だといえるでしょう。
ケアマネージャーは社会に必要な存在
今後、さらに深刻な高齢社会や、担っている役割の大きさなどを考えると、ケアマネージャーがいかに将来性の高い仕事かがわかるのではないでしょうか。
さまざまな廃止論の中でも「AIに取って代わられるのではないか」という懸念は年々大きくなっているようですが、ケアマネージャーの仕事はケアプラン作成だけではありません。介護サービスと利用者・家族の橋渡しとなる重要なポジションとして期待されています。利用者と家族が抱える介護に関する不安や悩み、デリケートな感情を汲み取って寄り添うことは、AIにはまだ不可能といえるでしょう。
現在、介護職として頑張っている方、またこれから介護職を志す方は、ぜひ社会的に大きな意義をもつケアマネージャーを目指してみてはいかがでしょうか?