介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 資格・就職・転職 【現役PTがわかりやすく解説】理学療法士と作業療法士の違いとは?

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2023-05-10

【現役PTがわかりやすく解説】理学療法士と作業療法士の違いとは?

理学療法士と作業療法士は、いずれもリハビリテーション(以下リハビリ)に関わる職業ですが、両者の違いに詳しくない方も多いのではないでしょうか。

 

この記事は、理学療法士と作業療法士の違いを現役理学療法士の筆者がわかりやすく解説します。理学療法士に興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

理学療法士とは

理学療法士とは?

(画像引用元:公益社団法人日本理学療法士協会「理学療法士ガイド」

理学療法士は病気やケガで思いどおりに身体が動かせない人に対して、運動療法や物理療法を用いてリハビリを行う専門職です。

主に「寝返り」「座る」「立つ」「歩く」などの基本的動作能力の回復を図ることを目的にしており、マッサージやストレッチ・筋力増強運動などの運動療法や温熱・電気治療などの物理療法を行います。

日常生活で動ける範囲を拡大させ自立度を上げる、介助が必要な場合は可能な限り介助量を少なくするなどの支援も理学療法士の役割です。

理学療法士は病院などの医療現場だけでなく、介護施設やスポーツの現場でも活躍します。急性期は病状に合わせてベッドから離れて活動する時間を作る、回復期は在宅復帰を目指して積極的に活動量を上げていくなど,状況に合わせて最適な理学療法を行います。

医師・看護師など他職種と情報交換してチーム医療を実践していく役割もあり、動作回復のスペシャリストといえるでしょう。

作業療法士とは

作業療法士とは?
(画像引用元:一般社団法人日本作業療法士協会ホームページ

作業療法士は「食べる」「顔を洗う」「着替える」「トイレで用をたす」「お風呂で身体を洗う」などの応用的動作能力や、仕事や趣味・地域活動への参加など社会適応能力の維持と改善を図る専門職です。

作業は一般的に物づくりや操作に関わる仕事を指す言葉ですが、作業療法では少し扱いが異なります。

日本作業療法士協会によると、「作業」を食べる・入浴するなど、人の日常生活に関わる全ての活動と定義しています。日常生活を送る上で欠かせない動作を作業と呼び、その改善に導くのが作業療法士の役割です。

また、理学療法士は基本的に身体に障害のある人を対象としているのに対し、作業療法士は精神に障害のある人や認知症の人へのリハビリも行います。身体だけでなく、心の問題に対しても支援する専門家なのです。

一覧で紹介|理学療法士と作業療法士の違い

「結局、理学療法士と作業療法士の違いは何?」という方に、一覧にしてまとめました。以下の表を確認してみてください。

理学療法士作業療法士
対象者身体に障害がある人身体・精神に障害がある人
目的立つ・歩くなどの基本的動作の回復を目指す応用的動作能力や社会適応能力の回復を目指す
治療治療体操やその他の運動(運動療法)
電気刺激・温熱などの物理的手段(物理療法)
手芸、工作その他の作業(作業療法)
仕事をする場所医療機関・教育機関
行政機関
介護老人保健施設
訪問リハビリテーション事業所
スポーツ・フィットネス施設
スポーツ選手やチーム所属のトレーナー
医療機関・教育機関
行政機関
介護老人保健施設
訪問リハビリテーション事業所
就労支援施設
放課後デイサービス
国家試験の科目解剖学・運動学・生理学・病理学概論・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要及び理学療法解剖学・運動学・生理学・病理学概論・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要及び作業療法
国家試験の合格率83.6%80.8%

(※国家試験の合格率は2023年を最新とした過去5年の平均を記載)

理学療法士と作業療法士は対象者や目的、治療方法に違いがあります。仕事をする場所は理学療法士が病院やスポーツ領域で活躍する一方で、作業療法士は精神病院や就労施設でも働けます。
活躍の場所を把握した上で、求める仕事ができる職種を選びましょう。

年収から見る理学療法士と作業療法士の違い

続いては、誰もが気になる収入面を見ていきましょう。結論から言うと、理学療法士と作業療法士に年収の差はほとんどありません

それを示すデータは以下のとおりです。また、参考までに他の医療・介護専門職の年収も合わせてご覧ください。

職種平均年収(概算)平均月収(概算)年齢勤続年数
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士430万円35万円34.7歳7.3年
看護師508万円42万円40.7歳9.1年
薬剤師583万円48万円41.1歳9.1年
診療放射線技師543万円45万円41.5歳13.7年
臨床検査技師508万円42万円39.8歳11.2年
介護支援専門員(ケアマネージャー)405万円33万円51.6歳10.5年
介護職員362万円30万円44.2歳7.9年

(年収の算出方法:「きまって支給する現金給与額」× 12 +「年間賞与 その他特別給与額」)

上記のデータは平均年齢や勤続年数にバラつきがあるため、単純に比較するのは難しいですが、理学療法士・作業療法士は夜勤がないので他の医療専門職よりも年収は低めとなっています。一方で、介護福祉系の職種よりも高めです。

今後の需要は?理学療法士と作業療法士の将来性

理学療法士と作業療法士の年収を知って、がっかりした方も多いのではないでしょうか。しかし、これからの社会の流れや活躍の幅を考えると両職種の将来性は明るいでしょう。

理学療法士・作業療法士はともにAIに奪われにくい職種と言われています。

AIやロボットによる自動化が難しい職種には、創造的な思考が必要でマニュアルどおりの対応が困難という特徴があります。理学療法士・作業療法士はまさにその典型です。

同じ疾患の患者さんでも全く同じ症状・年齢・社会背景の人は存在しません。臨機応変の連続が理学療法士・作業療法士の日常であり、人でなければ難しい仕事です。

また日本は今後も高齢者の割合が多い状況は変わらないと予測されており、なおかつ若い世代の心身の不調にも理学療法士・作業療法士の活躍の場があります。今後も理学療法士・作業療法士は、需要のある職業といえるでしょう。

理学療法士と作業療法士の働く場所の違い

理学療法士と作業療法士が一緒に働く職場もあれば、それぞれの専門性を活かした現場もあります。以下に両者の働く場所を紹介します。

理学療法士が働く場所

理学療法士が働く場所は以下のとおりです。

種類職場の例
医療機関総合病院、回復期リハビリテーション病院、クリニックなど
介護施設介護老人保健施設(老健)、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、特別養護老人ホームなど
行政機関福祉センター、保健センターなど
スポーツ領域プロや実業団のチームトレーナー、選手との個別契約
教育機関養成校の専任教員
企業リハビリ支援サービスの開発・導入拡大を目指す企業など

医療機関や介護施設以外にもスポーツ領域や企業など、幅広い活躍の場があります。

作業療法士が働く場所

作業療法士が働く場所は以下のとおりです。

種類職場の例
医療機関総合病院、回復期リハビリテーション病院、リハビリテーションセンター、クリニックなど
精神科領域精神科病院、精神科デイケアなど
介護施設介護老人保健施設(老健)、有料老人ホーム、デイケア、訪問リハビリテーション事業所、特別養護老人ホームなど
福祉施設児童発達支援センター、放課後デイサービス、就労支援事業所など
行政機関保健所、地域包括支援センターなど
教育機関作業療法士養成校の教員、特別支援学校など

作業療法士は精神科領域のリハビリや障害者の就労支援にも活躍の場があることが、理学療法士との違いです。

理学療法士に向いている人の3つのポイント

理学療法士は人と関わる仕事であり、社会復帰を支援する専門家です。以下に、理学療法士に向いている人の特徴を3つ紹介します。

コミュニケーション能力が高い人

理学療法士は患者さんの心と身体に寄り添い、基本的動作能力の回復を図り、自宅での生活や社会に戻るための支援をします。そのため、コミュニケーション能力の高い人が向いています。

リハビリは数か月の期間を必要とする場合があり、その間の目標設定や治療・訓練内容の説明・患者家族との関わりなどが重要です。

また、他職種と情報交換をしながらチーム医療を実現する役割もあります。チームで情報共有するには、動作の専門家からの視点を伝え、より良い方法を模索することで最適なリハビリが展開できます。

やりがいのある仕事がしたい人

理学療法士に限らず仕事をする上で、やりがいは大事です。やりがいを感じられる仕事は、報酬以上の喜びがありモチベーションを維持しやすくなるでしょう。

理学療法士はやりがいのある職業です。自分一人では歩けなかった患者さんが、リハビリの結果、歩けるようになり自宅での生活に戻れるようになると、自分のこと以上に嬉しいものです。目の前で変化していく患者さんを見るのは、大きなやりがいを感じられます。

洞察力がある人

相手の変化に早く気づき細やかな対応ができる洞察力のある人は、理学療法士に向いています。

患者さんの状態は日々変化します。回復段階なら動作能力のレベルに合わせて上位のプログラムを展開する必要があり、病状が悪化しているならバイタルサイン(脈拍や血圧、呼吸数などのこと)や患者さんの表情・訴えに応じて適正な負荷量を調整する必要があります。

その時々で対応の仕方は変わるためマニュアルどおりにはいきません。わずかな異変を敏感に察知する力がある人は、どのような職場でも重宝されます。

理学療法士・作業療法士|資格取得の難易度は?

理学療法士と作業療法士は国家試験に合格しなければ、その職種として働けません。試験合格が必須となりますが難易度はどの程度なのでしょうか。

理学療法士の国家試験の合格率は2023年に実施された第58回で87.4%であり、過去5年間の平均は83.6%です。一方、作業療法士の第58回国家試験の合格率は83.8%で、過去5年間の平均は80.8%となっております。

受ける年によって試験の難易度は変化するものの、しっかりと試験対策の勉強をすれば8割程度が合格します。

理学療法士・作業療法士になる方法

理学療法士・作業療法士は、いずれも資格取得までの流れに違いはありません。具体的には以下の3ステップです。

ステップ1:養成校に入学
ステップ2:養成校を卒業
ステップ3:国家試験に合格

養成校とは理学療法士・作業療法士の受験資格を得るための学校であり、高校卒業後に3年制の専門学校か短期大学、4年制の専門学校か大学のいずれかに入学します。

養成校では、基礎科目・職業専門科目・展開科目・総合科目を履修し、病院や施設などの現場で学ぶ臨床実習も修了する必要があります。

必要な単位数を取得し、養成校を卒業すると国家試験の受験資格が得られ、合格すると理学療法士・作業療法士それぞれの資格が取得できるのです。

私が理学療法士を選んだ理由

資格取得までの流れが理解できたところで、参考までに現役理学療法士の筆者が理学療法士を選んだ理由をお話しします。

私の場合、高校生で膝の手術をしてリハビリを受けたのが理学療法士を知ったきっかけでした。理学療法士に興味を持った私は、養成校を調べ複数の学校を見学しました。養成校は理学療法士と作業療法士、両方の学科を持つ場合が多く、私が入学を考えた学校も例外ではありません。

理学療法士にしか興味はなかったのですが、養成校の見学を通して作業療法士もよい職種だと思いました。最終的には私のリハビリをしてくれた方のような理学療法士になりたい気持ちが強くなり、理学療法士を選びました。

理学療法士になった現在、やりがいと新鮮味にあふれる職業を選んで正解だったと思っています。

理学療法士・作業療法士を区別してなりたい自分になろう

本記事では、理学療法士・作業療法士の違いを解説しました。理学療法士は対象を身体に障害のある人に限定しており、作業療法士は精神領域にも携わります。

目的・治療方法などにも違いがある一方で、収入や試験の難易度に関してはどちらも大差はありません。

理学療法士・作業療法士はいずれもやりがいがあり、人の役に立つ職業です。両者の区別をすることで、本当になりたいのはどちらか判断しやすくなります。専門的な知識を身につけて、なりたい自分になりましょう。

加藤 真太郎

理学療法士
臨床実習指導者講習会修了

理学療法士として8年間、回復期病院で勤務。その後は養成校で専任教員をしながら、週1回は病院勤務を継続している。臨床と教育現場を経験している数少ない理学療法士である。
理学療法学科の専任教員を本業としながら、ライターとしても活動し記事の執筆をしている。筋トレ・ジムの紹介ブログも運営中。