介護情報メディア ケアケア 一般介護向けコラム 介護サービス・制度 認知症の方が受けられる介護サービスとは?要介護認定の手続きや判断基準を解説

介護サービス・制度

2023-01-05

認知症の方が受けられる介護サービスとは?要介護認定の手続きや判断基準を解説

家族が高齢になり、物忘れやできないことが増えてくると「認知症では?」と考えることはありませんか。介護サービスを利用すれば、認知症の方に対して適切な支援が受けられます。

 

介護サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要がありますが、申請方法をよく知らないという方も多いでしょう。

 

この記事では、要介護認定の申請方法と認知症に対応している介護サービスを紹介します。

認知症の要介護認定はいつ受けると良い?

要介護認定は、いつ受けると良いのか悩む方もいるでしょう。認知症は日によって症状が異なるため、一緒に暮らしている家族でもなかなか気付けないこともあります。

介護認定を受けるタイミングは以下のとおりです。
・医療機関で認知症と診断されたとき
・本人が不安を訴えたとき
・認知症の進行で1人暮らしが困難と感じたとき
・入院をしたとき など

また、本人だけでなく家族が心配に感じた場合は、一度市町村に相談してみてください。

要介護認定を申請してから要介護度が決定するまで1か月近くかかるため、介護サービスの必要性を感じた場合は、なるべく早く手続きしておきましょう。

要介護認定は65歳以上から申請可能です。若年性認知症を含む特定疾病と診断された方は、40歳以上の方でも要介護認定を受けられます。(医療保険加入者に限る)

要介護認定とは

要介護認定は、介護サービスがどれくらい必要か判断するものです。

認知症の方は、自分自身が不安に感じていても、なかなか周囲に助けを求められません。

そのため、介護サービスがどれくらい必要かを判断するために定めた基準に沿って客観的に判定します。

介護度は、予防介護サービスが受けられる要支援1・2、介護サービスが受けられる要介護1〜5、どちらにも当てはまらない非該当(自立)を含めた8段階から決まります。

万が一、非該当になった場合でも、総合事業サービスや民間の高齢者支援サービスを利用することが可能です。

介護サービスの利用料は所得によって1~3割の費用負担で利用できます。介護施設を利用した場合、居住費や食費・日常生活費などが別途必要です。

介護サービスを利用する際のサービス量は、介護度によって異なります。要介護度別に上限額(区分支給限度額)が定められており、その範囲内でサービスを組み合わせることが可能です。

介護度別の区分支給限度額は以下のとおりです。

要介護度区分支給限度額(1か月)
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

要介護認定の申請に必要なこと

要介護認定の申請には、以下のものを準備しておきましょう。

・要介護・要支援認定の申請書
・介護保険保険者証(65歳以上の方)
・健康保険被保険者証(64歳以下の方)
・マイナンバーカード(またはマイナンバーが確認できるもの)

※市町村によってマイナンバーの確認を不要としている場合があります。

介護度を判定する際には、「主治医意見書」が必要です。申請書に主治医を記載しておくと、市町村が主治医意見書の作成依頼をします。主治医がいない方は、市町村が指定する医療機関の受診が必要です。

申請は、本人や家族以外でも委任状を作成すれば手続きができます。申請の際は委任状・印鑑・代理人の身元を証明するものを持参してください。

要介護認定を受けるまでの流れ

要介護認定を受けるまでの流れは以下のとおりです。

・市町村の窓口に申請
認定調査
・コンピュータによる一次判定
介護認定審査会による二次判定
・要介護度の決定

【市町村の窓口に申請】
申請者の住所がある市町村窓口にて申請をおこないます。要介護認定申請書は市町村の窓口で入手可能です。市町村によっては、ホームページからダウンロードができるため、確認しておきましょう。

【認定調査】
要介護認定申請後、担当者と日程調整をおこない認定調査を受けます。運動機能や精神状態など、国が定めた判断基準を用いて確認されます。

家族は、本人の普段の様子や行動・本人が困っていることなどを、あらかじめメモしておくとスムーズに進められるでしょう。

認定調査時は、認知症の方は普段と違う対応を見せ(初対面のため)、適切な判断ができない場合があるため注意が必要です。

【コンピュータによる一次判定】
一次審査では、認定調査の情報と主治医意見書の一部をもとに「介護の手間」と「要介護認定等基準時間」を計算します。

基準は以下のとおりです。

【介護の手間】

調査項目詳細
直接生活介助入浴や排泄・食事などの介護
間接生活介助洗濯や掃除などの家事援助
問題行動関連行為徘徊に対する対策
不潔行為に対する後始末
機能訓練関連行為歩行訓練
日常生活訓練などの機能訓練
医療関連行為輸液の管理
褥瘡の処置など診療の補助

【要介護認定等基準時間】

介護度要介護認定等基準時間
要支援1・2要介護認定等基準時間が25分以上32分未満、または、これに相当すると認められる状態
要介護1要介護認定等基準時間が32分以上50分未満、または、これに相当すると認められる状態
要介護2要介護認定等基準時間が50分以上70分未満、または、これに相当すると認められる状態
要介護3要介護認定等基準時間が70分以上90分未満、または、これに相当すると認められる状態
要介護4要介護認定等基準時間が90分以上110分未満、または、これに相当すると認められる状態
要介護5要介護認定等基準時間が110分以上、または、これに相当すると認められる状態

【介護認定審査会による二次判定】
一次判定のあとは、介護認定審査会による二次判定がおこなわれます。

介護認定審査会は、主治医意見書をもとに医療・保健・福祉の学識経験者で構成され、話し合いをもとに要介護度が決定します。

【要介護度の決定】
基本的に、申請から原則30日以内で自宅に決定通知が届きます。通知が届いたら、要介護度を確認しておきましょう。

要介護認定の結果に納得できない場合は、不服申し立てが可能です。

介護保険審査会が不当な点がないか審査し、認められた場合は市町村が改めて要介護認定のやり直しをします。

不服申し立ては要介護認定決定後、3か月以内に手続きをしなければなりません。市町村によって手続き方法が異なる場合があるため、まずは窓口に問い合わせてみてください。

認知症の方が要介護認定後に利用できる介護サービス

要介護認定が決定すると、さまざまな介護サービスが受けられます。中には、認知症専門の介護施設やサービスもあります。

認知症の方が受けられる介護サービスは以下のとおりです。

・認知症対応型通所介護
・グループホーム(認知症対応型生活介護)
・特別養護老人ホーム(要介護度3以上)
・有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅

基本的には、食事・入浴・排泄などの日常生活支援や生活機能訓練口腔ケア・心身機能の維持など、一般的な介護サービスと大きな変わりありません。

しかし、認知症専門の介護サービスでは、少人数制のケア(ユニットケア)や専門的なサービスが受けられるなどの特徴があります。また、利用者ができるだけ長い間、自立した生活ができるような援助方法やサービスが提供されています。

認知症の方が要介護認定を受けるメリット

認知症の方が要介護認定を受けることによって得られるメリットは、以下の5点です。

・外出の機会が持てる
・機能低下を予防できる
・介護サービスの利用ができる
・介護者の負担を減らせる
・介護者が介護から離れる時間が持てる

認知症の方は、転倒や行方不明のリスクも考えられるため、自宅で過ごす時間が増えます。

認知症の方は、家族以外の人と話す機会が減少し、社会とのつながりを感じられなくなる方も多い傾向です。

介護サービスを受けることによって、家族以外の人との関わりが持てます。また、通所介護や施設では、活動時間が決まっているため、生活リズムを整えることも可能です。

認知症の方が介護サービスを利用している間、介護者は介護から離れて、自由な時間を持てるでしょう。

認知症の方が適切な介護サービスを受けるためには

認知症の方が適切な介護サービスを受けるためには、認定調査の聞き取りの際に、日常生活上の様子をすべて話すことが大切です。

認知症の方は、認定調査のような普段と様子が違うときに、普段よりもしっかりした受け答えをする場合があります。

普段と違った情報で調査を終えてしまうと、適正な介護度にならず、低い介護度が出てしまうと大変です。必要な介護サービスを受けられなくなってしまうと、その分、家族の支援が必要になります。

普段からこまめに日頃の様子をメモしておき、どのようなところで介護が必要か、いつでも話せるよう準備しておくと良いでしょう。

要介護認定を受けて認知症の方に適切な支援を

この記事では、要介護認定の手続きや判断基準、認知症の方向けの介護サービスについて解説しました。

要介護認定は、認知症の有無に関わらず介護サービスを受ける際に必要です。要介護認定を受ける際は、市町村の窓口に申請しましょう。

初回の認定調査時は市町村の職員、2度目からは委託された担当者などが自宅に訪問し、国の定めた判定基準に沿って調査をしたうえで、介護度が決定します。

介護サービスの中には、認知症専門の施設やサービスがあります。本人や家族が負担なく生活できるよう、希望に合ったサービスを選ぶようにしましょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。