介護情報メディア ケアケア 一般介護向けコラム 家族介護 【必見!】認知症の家族介護がつらい。限界になる前に知っておいてほしいこと

家族介護

2022-12-08

【必見!】認知症の家族介護がつらい。限界になる前に知っておいてほしいこと

認知症ケアに悩みを抱える家族は少なくありません。一人で抱え込んでしまい、どうすれば良いか分からなくなっている方もいるでしょう。

 

認知症ケアは、介護サービスの活用や周囲の人と連携をとり、一人ひとりの負担を軽減しながらおこなうことが大切です。

 

この記事では家族介護による心身の負担やストレスによる問題を紹介します。ストレス発散方法や心構えもあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

認知症ケアとは

認知症ケアとは、認知症の方に配慮した日常生活上のサポート全般です。

認知症の方は、判断力・理解力の低下によって意志疎通が難しい場合があります。要介護者ごとに症状はさまざまなため、一人ひとりに合ったケアが重要です。

認知症の方はこれまでにない感情や世界観を抱く場合があり、つじつまの合わない話をするかもしれません。会話の内容が曖昧であっても、否定せずにあいづちを打つなどして接しましょう。

認知症の症状や特徴を理解したうえで、相手を思いやり尊重する姿勢で受け入れることがとても重要です。

認知症ケアは介護を受ける側とおこなう側、双方の問題で、どちらか片方だけのケアではいけません。介護する側の疲労やストレス、心身への影響にも配慮が必要です。

なるべく負担を軽減するために、一人で抱え込まず家族や親戚で協力し合うようにすると良いでしょう。

在宅介護による負担

在宅介護による認知症ケアでは、介護に対しての悩みや不安、介護疲れを感じる方も多い傾向です。

ここから、ストレス発散方法や疲労を軽減するための心得も紹介しますので、一つずつ確認していきましょう。

多くの人が悩む介護疲れ

家族介護による認知症ケアでは「認知症の方とどのように接して良いか分からない」「介護によって心身が疲弊してしまった」などの悩みを抱える方がたくさんいます。

介護疲れによって仕事や私生活に影響が出る場合もあり、ひどい場合では介護うつにつながるリスクがあります。

介護者が心身ともに疲れ切ってしまう前に、介護サービスの導入をおこない、負担の軽減を図りましょう。

ストレスを抱えやすい人の特徴

ストレスを抱えやすい人の特徴は以下のとおりです。

【ストレスを抱えやすい人】
・責任感が強い
・一人で抱え込んでしまう
・仕事への影響を気にしすぎる

責任感が強い方は、必要以上に自分の中でハードルを上げすぎてしまっているかもしれません。介護に対する強い気持ちがストレスやプレッシャーにつながる場合があります。

そのため、一人で抱え込んでしまう人は疲れてしまうリスクが高いと言えるでしょう。つらい思いをしているのに周りに相談できない、家族が認知症であることを周囲に知られたくないという方は注意が必要です。

家族介護の負担が増えて困っていたとしても、仕事場で事情を話せず悩む人もいるでしょう。残業や業務外の仕事を断れない方は、上司や同僚に相談する勇気も必要です。

悩みやストレスを抱え込みやすい人は、少しずつでも周囲に相談するように心がけてみましょう。

ストレス発散方法

ここからは認知症介護によるストレスの発散方法を紹介します。疲れを感じたときに、ぜひ試してみてください。

おすすめの方法は下記のとおりです。

【ストレス発散法】
・深呼吸
・仮眠をとる
・好きな音楽を聴く
・外の空気を吸う
・好きな香りを楽しむ
・好きな飲み物を飲む

ストレスによってイライラしてしまったときは、まず深呼吸をしましょう。イライラの感情は6秒でピークを超えると言われています。

可能であれば外の空気を吸うのもおすすめです。空を見上げたり、四季による自然の変化を探したりすると良いでしょう。気分を少し変えられるはずです。

その他、好きな音楽や香りによってリラックスする方法があります。好きなお茶を飲んだり、少しの時間、仮眠をとったりすることもおすすめです。

介護疲れやストレスを軽減する心得

家族で認知症介護をする場合の心得を紹介します。ちょっとした意識によって気持ちが楽になることもあるでしょう。

ストレス軽減の心得は以下のとおりです。

【家族介護の心得】
・誰かに相談する
・職場に事情を伝える
・みんなで協力し合う
・認知症ケアのスキルを学ぶ

介護疲れやストレスで悩んでいる場合は誰かに相談しましょう。信頼できる知人や友人に悩みを聞いてもらうことで楽になる場合もあります。

また、職場へ事情を伝えることも大切です。家族介護によって仕事に支障が出る前に、同僚や上司に伝えておきましょう。状況に応じて時短勤務や出勤日数の調整などの協力を得られる場合があります。

認知症ケアでは、特定の人だけに負担がかからないように配慮して、みんなで協力し合うことが大切です。

その他、認知症についての知識を学ぶのも良いでしょう。認知症の特徴やケア方法を学ぶことで対処法が分かり、ストレス軽減につながります。

認知症介護で知っておきたいこと

認知症介護では、さまざまな選択肢があり家族介護だけがすべてではありません。介護負担を軽減するには一人で頑張りすぎないことや、介護サービスの活用が重要です。

頑張りすぎない

大切な方の介護ではつい「できるだけやってあげたい」「本人のためになるなら」と頑張りすぎてしまいます。気持ちは大切ですが、頑張りすぎて疲弊してしまわないように注意しましょう。

家族介護では普段の頑張りを評価される機会が少ないため「こんなに頑張っているのに」と辛い気持ちになる場合があります。

また、要介護者にできることを自身でやってもらうのはリハビリの一環です。「できることは自分でやってもらう」ことを忘れないようにしましょう。

介護サービスを利用する

認知症ケアでは介護サービスの活用が重要です。

認知症の介護は数ヵ月、数年と長い期間でおこなっていく必要があります。長く続けるためには介護サービスの活用など、できる限り介護する側の負担軽減を図りましょう。

介護サービスにはさまざまなサービスがあるため、症状や希望に合わせた利用が可能です。訪問介護やデイサービス、ショートステイなどの利用でレスパイト(介護する方の息抜き)につながります。

いつでも利用できる安心感を得るためにも、希望に合う介護サービスを事前に調べておくと良いでしょう。

もしものときは施設の利用を検討する

訪問介護や通所介護などのサービスだけでは負担を軽減できなくなった場合には、施設の利用を検討しましょう。

施設入所に抵抗がある場合は、数日間のショートステイ利用で様子を見ることも可能です。例えば、介護老人保健施設(公的施設)であれば、リハビリによって機能の維持を図りながら短期入所を試せます。

もし、認知症による混乱や排泄の失敗などの症状がある場合には、長期的に入所できる施設を検討しましょう。

安い費用で利用できる公的施設の場合、順番待ちになる場合があるため、早いうちの検討や申し込みが必要です。急ぎの場合には民間が運営する施設を検討すると良いでしょう。

在宅介護と施設介護の違い

在宅介護と施設介護の違いを紹介します。それぞれの主なメリット・デメリットは下記のとおりです。

在宅介護施設介護
メリット・家族で長い時間一緒に過ごせる
・介護サービスにかかる費用を節約できる
・要介護者が家族以外の人と触れ合う機会が作れる
・知識豊富なスタッフがいるため安心できる
デメリット・家族介護によって負担が増す
・症状によって家族では対応できない場合がある
・家族で過ごす時間が減る
・介護にかかる費用がかさむ

在宅介護の場合、要介護者と一緒に過ごす時間を作れることがメリットと言えます。その他、介護にかかる費用を節約できることです。

在宅介護では、介護者・要介護者の状況や希望に合わせて適宜介護サービスを利用できます。

家族で過ごす時間を作れる一方で、認知症の症状によってはケアに限界を感じる場合もあります。そのときは無理せず施設利用を検討しましょう。

施設介護の場合は、要介護者と別居になるため家族の負担を大幅に軽減できるメリットがあります。また、経験や知識があるスタッフによって適切なケアを受けられるため安心です。

その他、家族以外の人との接点を作れるため、要介護者にとっても日々の充実につながるでしょう。

一方で、施設を利用すると大きな介護費用が必要です。また、施設の環境や雰囲気が合わない場合、要介護者のストレスや精神的負担につながるリスクがあります。

施設検討の際は、事前に施設の雰囲気や様子を確かめるために見学へ行っておくと良いでしょう。

在宅介護をやめるタイミング

在宅で認知症ケアをおこなうと介護者にストレスがかかりやすいです。

さまざまな要因によって疲労やストレスを感じた場合は、限界を迎える前に改めて在宅介護の継続か施設利用をするのか検討しましょう。検討のタイミングは下記のとおりです。

睡眠不足

一つ目は深刻な睡眠不足に悩んでいる場合です。

認知症の症状から昼夜逆転してしまう方がいます。症状によっては夜中起きて活動する・何度もトイレに行く場合もあるでしょう。

また、いつまで続くか分からない介護に不安を感じ、眠れなくなる可能性もあります。

睡眠不足が深刻な場合は施設の利用を検討しましょう。

精神的・肉体的につらい

2つ目は精神的・肉体的に限界を感じたときです。

日常生活では、さまざまな場面で介助が必要になります。ベッド上での介助や歩行時、排泄や服薬、入浴介助などです。特に、老々介護の場合には肉体的な負担が大きく、サポートが難しい場面も多いでしょう。

一日に何度もおこなう動作では、足腰や腕など全身に負担がかかりやすいです。夜間帯の介助は肉体的な疲労だけではなく、睡眠不足など精神的な負担も大きくかかるでしょう。

その他、認知症ケアでは、事故や怪我への配慮が必要になるため気を遣います。さまざまな場面で精神的・肉体的に負担がかかるでしょう。辛い思いが強くなってきた場合は、在宅介護を考え直すタイミングです。

要介護者の性格の変化

3つ目は要介護者の性格に変化があった場合です。

認知症による症状から性格が変化する場合があります。特に安心できる人に対して攻撃的になる場合や急に陽気になるなどの変化が現れる傾向です。

攻撃的になる場合は落ち着くまで距離を置き、ある程度聞き流すことで一時的に対処できる場合があります。

一方で、興奮度合いが過ぎる場合や暴力が出るときは、家族だけの介護は難しいため施設の利用や第三者に頼りましょう。

客観的な視点で見たとき

4つ目は客観的に考えて、施設利用が視野に入ったときです。

在宅介護では、つい目の前のことでいっぱいになり視野が狭くなってしまいます。冷静に認知症の状態や自身の状況を客観視することが重要です。

介護をする側・受ける側の双方にとって家族介護が最善なのか考えてみましょう。家族がいる場合は、家族同士で冷静に話し合う機会も必要です。

また、第三者に相談し意見を聞くことが重要なポイントになります。聞くときはどんな意見でも素直に聞くことが大切です。

客観的に考慮した結果、施設利用にメリットを感じる場合は家族介護を考え直すタイミングと言えるでしょう。

介護する人の健康にも気を配る

家族介護では認知症の方への配慮だけではなく、介護する家族や自身への配慮も必要です。

家族数名で介護している場合は、お互いの様子に気を配り、疲れているようであれば協力し合うようにしましょう。

特に、ストレスや精神面の問題は気づきにくい場合があるため注意が必要です。

ストレスによっておこる問題

認知症の介護では肉体的な疲労だけではなく、精神的な疲労やストレスに悩む方が多い傾向です。ストレスをため込むとさまざまなリスクがあるため注意しましょう。

ストレスによるリスクは以下のとおりです。

【考えられるリスク】
・要介護者への虐待
・介護うつ
・体調不良

介護疲れやストレスから、要介護者への虐待につながる場合があります。

虐待には暴力・暴言による虐待のほかに、介護放棄やお金を勝手に使うなどの経済的虐待があります。

精神的な疲労やストレスがひどい場合には、介護うつや体調不良につながる危険があり、注意が必要です。精神的な不調は回復に時間がかかるため、限界が来る前に意識的に解消するようにしましょう。

専門家への相談窓口

少しでも家族介護に不安や悩みがある場合は専門家へ相談してみましょう。

主な相談先は以下のとおりです。

【主な相談先】
地域包括支援センター
・各市区町村の福祉担当窓口
・かかりつけの主治医
・ケアマネジャー
・介護者の会や認知症カフェ

介護の総合的な相談は、地域包括支援センターや役所の福祉担当窓口が受け付けています。どこに相談して良いか分からない場合は、地域包括支援センターか役所の担当窓口を利用してみましょう。

かかりつけの主治医や担当のケアマネジャーへの相談もおすすめです。主治医であれば、現在の病状に合わせた治療内容やケア方法を提案してくれるでしょう。

ケアマネジャーであれば改善策やケアプランの見直しを一緒に考えてくれるはずです。

その他、地域によって介護者の会や認知症カフェなど、同じ悩みを持った方が集まる場があります。ストレス発散やアドバイスを聞けるチャンスがあるかもしれません。

認知症介護に悩みがある場合は、限界が来る前に相談の場を活用してみると良いでしょう。

まとめ

この記事では、認知症介護による家族への負担を説明し、ストレスが心身に与える影響や対処方法を紹介しました。

家族介護では誰か一人に負担がかからないように配慮し、協力し合うことが大切です。家族で介護することに疲れた場合は、介護サービスの利用を検討しましょう。

認知症ケアで悩みがある場合は、一人で抱え込まず誰かに相談する勇気が必要です。日頃から自身のケアも心がけ、限界になる前に知人や専門家に話を聞いてもらうようにすると良いでしょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。