介護士向けコラム
2023-04-13
言語聴覚士になるのはやめた方がいいと言われる理由とは?|待遇や向いている人を解説
言語聴覚士は、言葉でのコミュニケーションや嚥下困難な方に対して、本人の重症度や機能の働きに合わせた指導をおこないます。
担当の医師や歯科医師と連携しながら訓練を実施し、できないことができるようになる場面に立ち会える、やりがいのある仕事です。
しかし「言語聴覚士になるのは、やめた方がいい」という声を聞いたことはないでしょうか?
この記事では、言語聴覚士をやめた方がいいと言われる理由と、言語聴覚士の待遇や向いている人について解説しています。言語聴覚士の仕事を目指す方はぜひ参考にしてください。
言語聴覚士の待遇とは
言語聴覚士は、言葉によるコミュニケーションや嚥下のリハビリテーションをする仕事です。脳血管障害や頭部外傷による言語障害や高齢による呼吸器疾患、廃用症候群による嚥下障害に対して、訓練や評価をしながら回復に向けて援助や指導をします。
言語聴覚士の就業時間や休日・給料面については、働く地域や施設・医療機関によって異なるため、希望する職場を事前によく調べておいた方がよいでしょう。
まずは言語聴覚士の待遇や働く場所について、解説しています。
勤務形態
言語聴覚士は、1日の勤務スケジュールが決まっていることが多く、8:00~18:00の間の7~8時間勤務をしています。
他の医療職である医師や看護師と比較すると、急性期の人の対応や夜勤をすることは基本的にはありません。ただし、職場によっては、書類作成や業務終了後に勉強会をおこなう場合があります。
また、土日や祝日でも業務をしている施設もあるため、必ずしも土日に休めるとは限りません。
年収
厚生労働省の調査によると、言語聴覚士の年収は全国平均で約426.5万円・月収約24.9万円です。しかし、全国平均のため、働く地域や施設によっては、収入が大きく異なるでしょう。
転職・求人情報のdoda(デューダ)によると、医療機関やリハビリ専門施設などでは、年収350~400万円、子どもの放課後支援などでは、270〜350万円というデータが出ています。また、正社員だけでなく、非常勤で働くことも可能で、平均時給は1,241円です。(令和5年3月時点)
働く場所
言語聴覚士は、医療・福祉・介護施設・教育現場などさまざまな勤務先で活躍しています。また、研究機関や福祉保健局などで働ける場合があり、指定された試験に合格した人は、公務員として働くことも可能です。
言語聴覚士になるのは、やめた方がいいと言われる理由
高齢化が進むことによって社会的ニーズが高まり、言語聴覚士の需要が増えてきています。
言語聴覚士は、働く場所も多岐にわたり、子どもから高齢者まで幅広い年齢層のサポートができるやりがいのある仕事です。
それでも「やめた方がいい」と言われる理由は、主に次の4点です。
・希望する職場が見つからない
・給料が低い
・休みを取得しにくい
・人間関係がつらい
それぞれ解説します。
希望する職場が見つからない
まず、言語聴覚士の希望する職場が見つからないことが理由の1つです。言語聴覚士が働くリハビリ現場では、理学療法士や作業療法士といった他の専門職も働いています。
高齢化が進み需要があるものの、他のリハビリ専門職と比較すると、言語聴覚士の求人枠が少なく希望する職場で働くことが難しくなっています。
国家資格を取得したものの、働きたい場所でやりたい仕事に就けないため、言語聴覚士はやめた方がいいと言われています。
給料が低い
次に挙げられるのは「給料が低い」ことです。言語聴覚士の平均年収は約426.5万円です。
他のリハビリ系職種と年収はあまり変わらず、理学療法士や作業療法士の平均年収も、言語聴覚士と同等の約426.5万円です。
対して、同じ医療職である看護師の平均年収は約493万円です。看護師の全国平均年収と比べると低いと感じる人もいるでしょう。
さらに、看護師よりも昇給しにくい背景があり、言語聴覚士になるのはやめた方がいいと言われています。
しかし、子どもの放課後支援など、短時間労働ができる職場を選べる場合があります。生活環境に合わせた働き方をしたい方には向いているといえるでしょう。
休みを取得しにくい
他にも、休みを取得しにくいことが挙げられます。言語聴覚士は、夜勤がないというメリットもありますが、休日についてはシフト制の事業所もあり、土日に休みが取れない場合があります。また、週休2日制であっても、祝日は休めない場合もあるでしょう。
また、医療の進歩は早く、常に新しい情報を知っておく必要があるため、休日は勉強会の参加や自主的なスキルアップの時間に充てることもあります。
言語聴覚士は現場で働く仕事のため、休みにうまく休息を取れていないと、体調を崩してしまうかもしれません。
人間関係がつらい
言語聴覚士になるのはやめた方がいいと言われる理由の1つに「人間関係がつらい」ことが挙げられます。
介護現場や医療現場では、同じ部署に言語聴覚士が複数人働いていることは少なく、他職種と連携して業務をおこなっています。
言語聴覚士の業務内容について理解されない場合、孤独を感じることもあるでしょう。うまく相談できる相手も見つからない場合、人間関係がつらく感じてしまうかもしれません。
言語聴覚士を続けている人の理由
やめた方がいいと言われる一方で、言語聴覚士として仕事を続けている人もいます。言語聴覚士として仕事を続ける主な理由は、次の3点です。
・仕事にやりがいがある
・長く働ける
・社会から信頼されていると感じる
言語聴覚士にどのようなメリットを感じて働いているのか順番に解説していきます。
仕事にやりがいがある
言語聴覚士の仕事は、リハビリや指導をおこなうことによって、それまでできなかったことができるようになる様子が見られます。
多くの方は「早く家に帰りたい」「仕事に復帰したい」などの願いを持っています。病気やケガの回復や機能維持に関わり、支援することで、社会復帰の手助けができる仕事です。
また、高齢者のみならず、子どもの成長にも関われます。文字や絵のコミュニケーション、口の体操などで言葉を引き出したり、幼稚園や学校に訪問して先生や保護者に支援やアドバイスをしたりすることも可能です。
このように、専門資格を生かした支援ができたときに、やりがいを感じられる方は言語聴覚士を続けたいと考えています。
長く働ける
言語聴覚士は、長く働けることにメリットを感じている人もいます。働く場所によっては、短時間労働を選択できます。
また、言語聴覚士は、就業者の約70%が女性です。結婚や子育てといったライフステージが変化しても長く働くこともできます。
また、理学療法士や作業療法士と比較すると、歩行訓練や体を支えるサポートをする機会が少ないことから、年齢を問わず働けると考えられるでしょう。
言語聴覚士は、高齢者から子どもまでサポートができるため、さまざまな労働環境を選べる点がメリットになります。
社会に信頼されていると感じる
言語聴覚士は、国家資格を保有しているため、専門的な知識や技能を修得しており、社会的信頼も厚いといえるでしょう。
ただし、言語聴覚士として社会的信頼を得るためには、最新情報を集めたり勉強をしたりする必要があります。
言語聴覚士に向いている人はどんな人?
言語聴覚士は、相手の人とゆっくりと信頼関係を築きながら訓練や指導を進める仕事のため、障害の特徴や病気を理解し、相手に合わせたサポートが必要です。一人ひとりの成長を見ながら計画・評価することが求められます。
言語聴覚士に向いている人は以下の通りです。
・人に接することが好きな人
・根気のある人
・些細な変化に気付ける人
それぞれ見ていきましょう。
人と接することが好きな人
言語聴覚士は人と接することが好きな人に向いています。言語障害のある方は、コミュニケーションが取りにくいため、相手の立場になって考えられるかが重要です。
リハビリ内容の説明をわかりやすく説明したり、言語障害のある方の悩みを聞いてあげたりすることもあるでしょう。
また、他業種と連携して業務をする機会も多く、医師や看護師・介護員など職員同士のコミュニケーションも求められます。
根気のある人
言語障害のある方は、訓練をしたからといってすぐに改善されないこともあります。言葉をうまく話せないため、言語聴覚士の方から相手の感情をくみ取ることが必要となるでしょう。
言おうとしていることを最後までゆっくり聴いてあげることも重要な仕事となるため、根気のある人が言語聴覚士に向いているといえるでしょう。
些細な変化に気付ける人
言語聴覚士は、対象者の些細な変化に気付ける人が向いています。
また、相手の成長に合わせた訓練計画を立て、相手に合わせたコミュニケーションが取れることも重要です。
小さな変化にも気付ける言語聴覚士は、訓練中に問題が起きたときにでも、改善方法をすぐに考えることもできるでしょう。
まとめ:言語聴覚士はやりがいがあり続けやすい仕事
この記事では、言語聴覚士がやめた方がいいと言われる理由を4つ紹介しました。言語聴覚士の平均年収は、他の医療系の仕事と比べて給料が低い傾向にあります。
しかし、夜勤がなく短時間労働ができる職場もあることや言語聴覚士として活躍できる場所が多いところは魅力です。結婚や出産などのライフステージが変わっても、続けやすい仕事といえるでしょう。
言語聴覚士は、人とのコミュニケーションが取れることが重要です。また、他職種と協働する場面が多く、1人で働きたい方には向いていないかもしれません。
障害や病気の方を理解し、一人ひとりに寄り添いながら成長していく姿を目の当たりにできる喜びの多い仕事です。やりがいや喜びを感じられる仕事のため、ぜひ言語聴覚士を目指してみてはいかがでしょうか?