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投稿日:
2023-04-06
更新日:
2025-09-02
作業療法士がやりがいを感じるのはどんな時?やりがいを感じられない時はどうする?など徹底解説!

心身に障がいのある方に対し、日常生活機能の回復や社会復帰を支援する作業療法士。社会的な貢献度が高く人の役に立てる作業療法士は、大きなやりがいを感じながら働ける職種といえます。
しかし、作業療法士として働く中で「今の仕事にやりがいを感じられない」「なぜこの職業を選んだのだろう」と悩むこともあるでしょう。多くの人との関わりや日々の業務に疲れを感じている方もいるかもしれません。
作業療法士としてやりがいを見失ったら、初心に立ち返ってみましょう。この記事では、作業療法士がやりがいを見つけるポイントや、モチベーション回復のヒントを解説します。
作業療法士としてやりがいを感じられない…、そんなときに見直したいこと

作業療法士としてやりがいを感じられないとき、仕事の本来の意味を見失っているのかもしれません。作業療法士の役割は患者さんの生活の質を向上させることです。その根本的な価値を思い出しましょう。
また、日々の業務に追われる中で忘れがちな「なぜこの仕事を選んだのか」という初心に立ち返ると、モチベーション回復の第一歩となるはずです。
「誰のための仕事か」を再確認する
書類作成や会議などの煩雑な業務に追われていると忘れがちですが、作業療法士の仕事は、患者さんが自分らしい生活を送れるよう支援することです。
脳梗塞で手の機能が低下した方が再び料理を楽しめるようになったり、精神的な不調で外出が困難だった方が社会復帰を果たしたりする瞬間もあるでしょう。こうした変化は患者さんの人生そのものを豊かにする重要な意味があります。やりがいを感じられないときこそ、目の前の患者さん一人ひとりの笑顔や変化に目を向けて、作業療法士の仕事の本質的な価値を思い出してみましょう。
「なぜ自分は作業療法士になったのか」と原点に立ち返って考える
作業療法士を目指した当初の動機を振り返ると、今の仕事に対する情熱を取り戻せるかもしれません。多くの作業療法士は「人の役に立ちたい」「医療を通じて社会貢献したい」という気持ちでこの職業を選んだのではないでしょうか。
実習中に患者さんから感謝の言葉をもらった経験や、国家試験に合格したときの達成感、初めて患者さんの機能改善に貢献できた時の喜びなど、原点となる体験は人それぞれ異なります。その体験はやりがいを見失ったときの支えとなってくれるはずです。
初心を思い出して、モチベーションを取り戻しましょう。
作業療法士になりたい!と思ったきっかけは?
作業療法士を目指すきっかけは人それぞれです。医療への憧れや自身の体験、安定した職業への希望など、動機は多岐にわたります。自分がなぜこの道を選んだのか、今一度振り返ってみましょう。
医療の現場で人を支える側になりたいと思った
医療従事者として患者さんを支えたいという思いは、作業療法士を目指す最も多い動機の一つです。病気や怪我で困っている人の力になりたい、医療チームの一員として貢献したいという純粋な気持ちが出発点となっています。
実際の現場では、多職種が連携して患者さんの治療にあたる中、作業療法士は日常生活動作の改善を目指してリハビリを行います。患者さんの回復を通して、初心を思い出しましょう。
自分自身の怪我や不調がきっかけ
自身の怪我や病気の経験によって作業療法士を志す人もいます。患者として作業療法を受けた経験から、支援する立場になりたいと考えるようになった方もいます。また、自分自身はもとより、自分の家族がリハビリを受けていて興味を持ったという方もいます。
いずれにせよ、自分もしくは家族が患者の立場を経験しているからこそ、治療への不安や回復への期待を理解できるという強みがあります。原体験を思い出せば、患者さんの気持ちに寄り添いながら、励ましや指導ができるでしょう。
日常生活をさまざまな面からサポートしたいと思った
作業療法士の特徴は、患者さんの日常生活全般を包括的に支援できることです。食事や更衣、入浴などの基本的な動作から、仕事や趣味まで幅広く関われる点に魅力を感じて志望した方もいるでしょう。
作業療法とは、身体機能の回復はもとより「人々の健康と幸福を促進するため」に行われるものです。「その人にとって価値のある生活」の実現を目標とします。例えば、脳血管疾患の後遺症がある方に対して、歩行訓練だけでなく、料理や掃除、趣味の園芸まで総合的にアプローチすることが可能です。患者さんの価値観や生活スタイルを尊重することで質の高い支援を提供できます。
患者さんの人生そのものに深く関わるため、生活の質の向上という大きな目標に向かって取り組むことができ、やりがいを感じられるでしょう。
収入や休日が安定している仕事に就きたかった
作業療法士は国家資格を持つ専門職であり、高齢化社会における需要を見越して、経済的な安定性を重視して選択する方もいます。また、医療職の中でも基本的に夜勤がない職種であるため、働きやすそうだと感じた方もいるでしょう。
実際、診療報酬に左右されるとはいえ、病院勤務であれば雇用も安定している場合が多いようです。
精神と身体の両方に働きかける仕事に魅力を感じた
作業療法士の大きな特徴は、身体機能と精神機能の両方にアプローチできることです。ほかの医療職では得られない包括的な視点で患者さんを支援できる点に魅力を感じて志望する方も多くいます。
精神科領域の知識ももち合わせるため、機能訓練や日常生活動作の練習を行いながら、患者さんの心理的なサポートをする場面もあるかもしれません。心身両面への働きかけは、患者さんの全人的な回復を支援できる意義深い仕事といえます。その人の生活全体を見渡しながら関わっていくと、作業療法士としてのやりがいを感じることができるでしょう。
作業療法士がやりがいを感じる瞬間とは?

障がい者や高齢者の患者さんに対し、心身機能の改善や社会復帰をサポートする作業療法士がやりがいを感じる瞬間について見ていきましょう。
患者さんの「できた!」という瞬間を見れたとき
自分が担当した患者さんの心身機能が改善し元気になって社会復帰やその人らしい生活ができるようになったとき、作業療法士は大きなやりがいを感じられるでしょう。
患者さんの「できた!」という喜びの表情は、何物にも代えがたいものです。脳梗塞で手の機能が低下した方が、リハビリを通じて再びペンを握って文字を書けるようになったときや、精神的な不調で部屋からほとんど出られなかった方が初めて活動に参加できたときなど、小さな変化でも患者さんにとっては大きな前進となります。このような瞬間に立ち会えることは、作業療法士の醍醐味といえるでしょう。
また、作業療法士は精神面でも患者さんに寄り添うことが求められます。身体機能の改善とともに、患者さんが明るくなっていく姿を間近で見られることも、大きなやりがいにつながるでしょう。
チーム医療で自分が信頼されていると実感したとき
医療・介護の現場では多職種が連携して患者さんの治療にあたるため、チームメンバーから信頼されることは作業療法士にとって大きなやりがいとなります。専門性を認められて、他職種から相談を受けたり意見を求められたりする場面で、職業的な充実感を得られるはずです。
例えば、病棟のスタッフから「ADLの〇〇の介助が難しい」など声をかけられ、患者さんの能力に応じた介助方法・環境設定をアドバイスして改善できた、などの経験です。
信頼関係の構築は、日頃の専門的な知識と技術、そして患者さんへの真摯な姿勢の積み重ねによって生まれます。チーム医療の一員として頼りにされると、やりがいも感じられるでしょう。
専門家としてスキルアップできたとき
作業療法士は国家資格の合格後も、分野ごとに設けられた専門資格を取得してスキルアップできます。例えば「認定作業療法士」「専門作業療法士」などもそれらの資格のひとつです。
認定作業療法士とは「作業療法の啓発と普及に貢献し、国民の医療・保健・福祉の発展に大きく寄与する」という役割を担う資格です。取得するにはまず都道府県の「日本作業療法士協会」に入会後、作業療法士として5年以上の経験を積む必要があります。さらに教育・研究・管理運営および自身の専門領域に関する研修を受け、試験に合格するなどの規定をクリアしなければなりません。
認定作業療法士としてキャリアを積んだ後に、専門の作業療法士になる道もあります。福祉用具や認知症など、11の専門分野について深い知識を持ち、その分野で高度な実践力・課題解決力を持つと認められた人だけが専門作業療法士を名乗ることができます。
また、呼吸療法認定士や心臓リハビリテーション指導士などの資格の取得も新たな知識を得られ、やりがいにつながります。
作業療法士として自分の適性に合わせてキャリアを積んでいくことも、働くうえでのやりがいになるでしょう。
参考
後輩から頼りにされるとき
経験を積んだ作業療法士にとって、後輩から相談を受けたり指導を求められたりすると、自身の成長を実感できるでしょう。また、新人や学生から頼りにされることで、専門職としての責任感とやりがいを深く感じられることもあるでしょう。
実習で自分が培ってきた知識や技術を伝えるとき、実習生が真摯に聞いてくれるとうれしいものです。また、後輩が患者さんとの関わり方で悩んでいるときにアドバイスを求められたり、難しい症例について相談を受けたりする場面では、自分の経験が他者の成長に役立つと感じられるでしょう。
また、人に教えることで自分自身の知識も整理され、新たな発見や気づきを得ることもあります。教育的な関わりを通じて、後輩ひいては職場のレベル向上に貢献できるのは、ある程度経験を積んだからこそです。後輩の成長を通して、自分なりのやりがいを見出してみましょう。
【施設別】働く場所における作業療法士のやりがい
作業療法士が働く施設によって、やりがいも異なります。老人保健施設では高齢者の生活機能維持、精神科では心の健康回復、クリニックでは個別性の高いリハビリテーションなど、それぞれ特徴があります。自分が働く施設の特性を理解し、その環境ならではのやりがいを見つけると、仕事への取り組み方も変わってくるでしょう。
老健で働く作業療法士のやりがい
老人保健施設(老健)で働く作業療法士は、高齢者の生活機能維持と在宅復帰支援という重要な役割を担っています。高齢者特有のニーズに応えながら、その人らしい生活の実現を目指せることが大きなやりがいとなるでしょう。
老健では入所者の多くが認知症や複数の疾患を抱えているため、個別性の高いアプローチが求められます。例えば、転倒により入所した方が再び自宅で安全に生活できるよう、住環境の調整や福祉用具の選定、ご家族への指導まで幅広く関わる機会もあるでしょう。また、趣味活動や季節行事を通じて入所者の生活に彩りを添える創作活動なども、老健ならではの取り組みです。
加えて、老健では入所から在宅復帰、通所でのフォローアップまで、利用者さんと長期にわたって関わる場合が多いため、自分が利用者さんをサポートしたいという想いが生まれ、モチベーションの維持につながるでしょう。
精神科で働く作業療法士のやりがい
精神科で働く作業療法士は、心の健康回復と社会復帰支援という役割を担っています。目に見えない精神疾患と向き合いながら、患者さんの内面的な変化を支援できることに深いやりがいを感じられるでしょう。
精神科作業療法では、創作活動や集団プログラムを通じて患者さんの自信回復や対人関係の改善を図ります。うつ病で意欲を失っていた方が陶芸作品を完成させたときの達成感や、統合失調症の方が集団活動で他者との関わりを楽しめるようになった変化など、小さな進歩でも患者さんにとっては大きな意味を持ちます。
また、精神科では長期間の治療が必要なケースも多く、患者さんとじっくりと関係性を築きながら回復を見守ることも少なくありません。メンタル面が低下している患者にとって、時に作業療法士は心を開ける間柄になります。患者に細かなことまで頼られ、心を通じ合えることで作業療法士としてのやりがいを感じられるでしょう。
クリニックで働く作業療法士のやりがい
クリニックで働く作業療法士は、外来患者さんに対してマンツーマンでの集中的なリハビリを行う点が大きな特徴です。個々のニーズに合わせた治療を通じて、一人ひとりの患者さんと深く関わることができ、やりがいを感じられます。
例えば、整形外科クリニックでは手の外科手術後のリハビリテーションや、スポーツ外傷からの競技復帰支援など、専門性の高い治療に携わる機会があります。例えば、手首骨折後に細かい作業ができなくなった主婦の方が、段階的な訓練を通じて再び料理や裁縫を楽しめるようになるプロセスを支援するときに、患者さんの喜びを直接感じられるでしょう。
また、クリニックのような地域密着型の職場では、些細なけがやちょっとした不調などで訪れる患者さんも少なくありません。身近な存在として地域に根ざした医療を提供するなかで、地域で暮らす方々の支えになっていると確信できたとき、作業療法士の仕事にやりがいを感じられるでしょう。
作業療法士の仕事は何が大変?

作業療法士の仕事には多くのやりがいがある一方で、大変な面もいくつかあります。身体的な負担や専門性の理解不足、対人関係の複雑さなど、さまざまな課題に直面することがあるでしょう。仕事の大変な面を解消できれば、より充実した職業生活を送れるはずです。一つずつ対処していきましょう。
ある程度の基礎体力が求められること
作業療法士の仕事は患者さんの身体を支えたり、一緒に動作練習を行ったりするため、体力が必要です。特に身体障害領域では、車椅子への移乗介助や歩行訓練の付き添いなど、身体的な負担を伴う業務が日常的にあります。高齢者施設では重度の要介護者も多く、ベッドから車椅子への移乗や起居動作の介助などで腰や肩に負担がかかる場合もあり、腰を痛める方も少なくありません。
しかし、適切な介助技術を身につけること、患者さんに身体機能を最大限発揮してもらうことで、身体への負担は減らせます。また、福祉用具を効果的に使用すれば、安全かつ効率的に介助することも可能です。
それでも体力面での不安がある場合は、精神科や外来クリニックなど、比較的身体的負担の少ない職場を選択することも1つの方法といえるでしょう。
「作業療法」自体の一般認知度が低いこと
作業療法士は国家資格を持つ専門職でありながら、一般社会での認知度がまだ十分ではありません。理学療法士と混同されたり、作業療法の具体的な内容を理解してもらえなかったりすることもよくある話です。
患者さんやご家族から「作業療法って何をするんですか」と質問されることは日常茶飯事です。そのため、医療従事者以外の方に作業療法の意義や効果を伝える機会があれば、専門用語を使わずに分かりやすく説明できるとよいでしょう。
日常的にさまざまな人と関わりを持つこと
作業療法士は患者さんだけでなく、医師や看護師、理学療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなど多くの職種と関わる必要があります。また、患者さんのご家族や介護者との関わりも不可欠であり、高いコミュニケーション能力が求められるでしょう。
患者さんの中には認知症や精神疾患により意思疎通が困難な方もいれば、治療に対して消極的な方もいます。さらに、他職種との連携がスムーズにいかないことも少なくありません。そのため、相手の立場を理解しながら適切な関係性を築く技術が必要となります。
しかし、対人関係のスキルを磨けば、リハビリもより円滑に進めやすくなります。ほかの職種連携のみならず、専門性向上の機会としても捉えられるとよいでしょう。
勉強の積み重ねが必要であること
作業療法士は医療技術の進歩や制度変更に対応するため、卒業後も継続的な学習が不可欠です。国家資格取得後も専門知識のアップデートや新しい治療技法の習得など、終わりのない学びが求められるため、負担を感じる方もいるでしょう。
学会参加や研修会受講、専門書籍の購読など、スキルアップには時間と費用がかかります。また、認定作業療法士や専門作業療法士などの上位資格を目指す場合は、症例発表や論文作成なども必要となり、プライベートの時間を削って準備に取り組むこともあります。
しかし、継続的な学習は、患者さんによりよい作業療法を提供するための重要な投資です。新しい知識や技術を身につければ治療の幅が広がり、これまで対応困難だった症例にも効果的にアプローチが可能となるでしょう。新たな知識や技術が臨床で生かされ、患者さんの改善につながったときの達成感は、勉強の苦労を上回る価値があるはずです。
患者に対して根気強く治療を続けること
作業療法では、患者さんの機能改善や生活の質向上には長期間を要することが多く、目に見える変化が現れるまで根気強く治療を継続する必要があります。特に脳血管疾患の後遺症や精神疾患など、回復に時間がかかる病気では、患者さんと治療者双方に忍耐力が求められるでしょう。
毎日同じような訓練を繰り返しても変化が見られない時期や、患者さんが治療に対してやる気を失ってしまう場面も少なくありません。また、一度改善した機能が再び低下したり、別の疾患を発症したりすることで、治療計画の見直しが必要になるケースも珍しくないでしょう。
しかし、小さな変化でも患者さんと一緒に喜びを分かち合い、時には維持できているだけで十分だと考えて継続していくことが大切です。やりがいがある反面、長期的な視点を持つことが必要だということを心にとめておきましょう。
作業療法士はやりがいのある仕事
作業療法士は患者さんの生活を支える専門職として、多くのやりがいを感じられる仕事です。日々の業務でモチベーションが下がる場面もあるかもしれませんが、身体面と精神面の両方に働きかけて患者さんをサポートする作業療法士は重要な職種であり、十分やりがいを得られる魅力的な仕事です。
やりがいを見失ったときは、自分がなぜこの職業を選んだのかを思い出してみてください。初心に立ち返れば、やりがいを取り戻せるかもしれません。また、施設によってもやりがいは異なるため、今の職場ではどうしてもモチベーションが保てないなら、別の職場を探すのもよいかもしれません。患者さんのためにも自分のためにも、やりがいを持って日々の業務にあたりましょう。