介護職の給料
投稿日:
2023-04-11
更新日:
2025-11-14
作業療法士の年収は?臨床その他の年収アップ方法を解説
作業療法士としてキャリアを重ねても、「このまま収入は上がるだろうか」と不安を感じている方もいるかもしれません。実際、一定の経験年数を経ても給与が頭打ちになるケースも見られます。こうした状況の中、「年収アップ」を目指している作業療法士もいます。
本記事では、作業療法士が年収アップを目指す現実的な方法と、具体的なアプローチについて解説します。
作業療法士の平均年収はいくら?

政府機関がまとめたデータによると、作業療法士の平均年収は約432万円となっており、日本の平均年収460万円と比べるとやや低い傾向にあります。
また、作業療法士の平均月収と年間の賞与について、以下にまとめました。
| 平均月収 | 平均賞与 |
|---|---|
| 30万900円 | 71万4,400円 |
出典:政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査1 一般_職種(小分類)DB をもとに作成 ※作業療法士の欄
作業療法士の業務は、リハビリだけでなく、書類作成や他職種との連携、会議、研修会参加など多岐にわたります。多忙な業務量に対して、給与が見合っていないと感じる方も少なくありません。
【地域別】平均年収統計
以下の表は、地域別の作業療法士の平均年収上位3県をまとめたものです。
| 作業療法士の平均年収 上位3県 | 平均年収 |
|---|---|
| 滋賀県 | 473万3,400円 |
| 茨城県 | 470万3,500円 |
| 秋田県 | 470万2,000円 |
出典:e-Stat|賃金構造基本統計調査令和2年以降 一般_都道府県別_職種(特掲)DB | 統計表・グラフ表政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査1 一般_職種(小分類)DB をもとに作成
※男女計/職種(小分類)/理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視覚訓練士/2023年を選択し、各都道府県を確認
首都圏の茨城県が含まれてはいるものの、東京都など平均賃金が高い都市部は上位にはランクインされていません。特徴的なのは、滋賀県や秋田県などの地方の県が上位を占めている点です。
2023年度の内閣府の調査によると、秋田県の高齢化率は県内人口の39%と全国で最も高く、医療や介護サービスの需要増加が課題として挙げられています。
こうした背景から、秋田県では高齢者の生活機能を支える作業療法士の確保が、今後ますます重要になると考えられるでしょう。実際、医療・介護現場では、慢性的な人材不足が課題となっているため、年収水準を含む待遇改善の必要性が求められています。
参考:内閣府|令和6年版高齢社会白書(全体版) 4 地域別に見た高齢化
続いて、作業療法士の平均年収が低い3県は以下の通りです。
| 作業療法士の平均年収 下位3県 | 平均年収 |
|---|---|
| 熊本県 | 388万7,900円 |
| 青森県 | 388万200円 |
| 長崎県 | 373万4,300円 |
下位3県の表にはありませんが、下位4位・5位には、大分県や宮崎県が入っており、九州地方4県が下位を占めているのがわかります。日本の地域別最低賃金を見ても九州地方は特に最低賃金が低い傾向があり、こうした最低賃金の低さが作業療法士の平均年収に影響している可能性が考えられます。
【年代別】平均年収統計
年代別の平均年収は以下のとおりです。
年代別で見ると、55~59歳の年収が584万5,562円と最も高い傾向にありました。
| 年齢 | 平均年収 |
|---|---|
| 20~24歳 | 338万8,787円 |
| 25~29歳 | 387万3,325円 |
| 30~34歳 | 417万3,287円 |
| 35~39歳 | 452万5,275円 |
| 40~44歳 | 474万575円 |
| 45~49歳 | 513万4,650円 |
| 50~54歳 | 515万1,737円 |
| 55~59歳 | 584万5,562円 |
| 60~64歳 | 539万2,562円 |
出典:e-Stat|賃金構造基本統計調査令和2年以降 賃金構造基本統計調査7 一般_職種(特掲)_性、年齢階級別DB をもとに作成
※男/女計/企業規模/年齢階級_基本/理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視覚訓練士/2023年を選択
【男女別】平均年収統計
作業療法士の男女別の平均年収は以下のとおりです(2023年)。男女の平均年収を比較すると、女性の方が約36万円低い結果となりました。
| 男性 | 女性 |
|---|---|
| 436万7,400円 | 399万700円 |
出典:e-Stat|令和5年賃金構造基本統計調査 より「所定内給与額」12か月分に「年間賞与その他特記別給与額」を足したものを筆者で算出
2023年度の日本作業療法士協会会員統計資料によると、作業療法士の男女の割合は、会員の6割が女性、4割が男性と女性がやや多い傾向にあります。
その一方で、女性の作業療法士の年収が、男性と比べて低い背景として、結婚・出産・育児といったライフイベントを機に、働き方を変えるというケースが挙げられます。例えば、家庭との両立を図るため、正社員からパート勤務への変更や離職を選ぶケースも少なくありません。そのため、結果的にキャリアや収入に影響が生じることが考えられます。
参考:日本作業療法士協会|2023 年度日本作業療法士協会会員統計資料
作業療法士に関連する職業の平均年収は?
作業療法士に関連する医療系職種の平均年収(2024年度)を以下にまとめました。
| 薬剤師 | 577万8,700円 |
| 看護師 | 508万1,700円 |
| 診療放射線技師 | 536万9,700円 |
| 臨床検査技師 | 508万4,900円 |
| 保健師 | 451万500円 |
出典:e-Stat|賃金構造基本統計調査令和2年以降 一般_都道府県別_職種(特掲)DB | 統計表・グラフ表政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査1 一般_職種(小分類)DB をもとに作成
※男女計/職種(小分類)/薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、保健師/2023年を選択
作業療法士の平均年収は約432万円で、これらの職種と比較すると、やや低い水準です。薬剤師との年収差は、約145万円となります。
作業療法士の年収をアップさせるコツ

年収が緩やかに上がったとしても、短期間で大幅な収入アップにつながるケースは少ないのが現状です。ここでは、作業療法士の年収を上げるためのコツをご紹介します。
作業療法士に付随する資格を身につける
作業療法士として、スキルアップにつながる資格を取得するのもおすすめです。作業療法士は常に自己研鑽を求められる職種という特性上、生涯教育制度も充実しています。
中でも、日本作業療法士協会が認定する資格である「認定作業療法士」や「専門作業療法士」は、作業療法士として一定の水準に達している証にもなるでしょう。実際に、これらの資格を持つ方に、研修の講師や論文の査読(※)を依頼することもあります。
ほかにも、作業療法士のキャリアを生かして介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取る方も少なくありません。職場によっては、資格取得後に「資格手当」として付与されるケースもあります。
(※)学術雑誌などに寄せられた原稿について、内容を確認し、誤りの有無や掲載の可否について判断や意見を示すこと。
独立開業を目指す
近年では、起業を選択する作業療法士も出てきています。例えば、高齢者のデイサービスや訪問看護ステーション、発達障害のある子ども対象の放課後デイサービスなどの起業事例があります。
また、医療保険や介護保険に頼らない、「自費リハビリ事業」を始める方もいます。自費リハビリは、保険制度の制約を受けずに幅広いサービスを提供できるため、利用者の多様なニーズに応えやすく、収益性も高いとされています。
管理職を目指す
現職で管理職を目指すことも、収入アップにつながる場合があります。同じ職場での勤務年数が長くなるほど、役職に就くチャンスにも恵まれるでしょう。作業療法士としての専門性や後輩指導などのスキルに磨きをかけることで、上司から評価され、昇格につながる可能性もあります。
副業・パラレルキャリアに挑戦する
パラレルキャリアとは、本業とは別の活動に並行して取り組むことを指します。作業療法士の中にも副業やパラレルキャリアを始める方もいます。
例えば、休日に本業とは異なる施設や異業種でアルバイトをしたり、副業でWebライターや動画編集などを始めたりと、作業療法士以外の分野で収入を得ているケースも見られます。
近年では、副業に理解を示す職場も出てきていますが、情報漏洩の観点から副業を禁止している職場もあるため、副業に取り組む際は注意が必要です。
ITとAIのスキルを高め、差別化を図る
ITやAIの急速な発展に伴い、多くの職業が将来的になくなるといわれている中で、作業療法士はAIに代替できない職業といわれています。作業療法の対象は病気や障がいを持った方であり、病気や障がいの種類や程度、対象者を取り巻く環境などは個々で異なるため、一人ひとりの目標に沿ったリハビリが求められるからです。
一方で、書類作成やリハビリのプランを練るには、ITやAIを活用すると業務効率化を図ることが期待できます。例えば、電子カルテやリハビリ支援ソフトの操作、Excelなどを用いたデータ管理、AIを活用したリハビリプログラムの作成や運動解析、転倒リスク予測の知識は、現場で重宝されるスキルです。これらのスキルを習得し、実践することで、他の作業療法士との差別化ができるため、昇給にもつながる可能性があります。
参照:J-stage|桑江豊,リハビリテーションにおける生成AI活用の最前線,理学療法の科学と研究,Vol.16,No1,2025
作業療法士として、自分らしく「働ける未来」を思い描こう
作業療法士として培った経験や専門知識は、これからの人生のあらゆる場面で生かせる大きな財産となります。「年収アップ」は単なる数字ではなく、キャリアの幅を広げる大切な一歩です。作業療法士に付随した資格取得や新しい挑戦、副業など、多様な選択肢があります。
本記事を参考に、後悔のない人生を送るため、自分の価値を信じて行動し、「自分らしく働ける未来」を思い描き、実現できるよう挑戦してみませんか。
※本記事で掲載している年収などに関する数値は、2025年10月1日時点の情報となっています。