介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 資格・就職・転職 リハビリ専門職である作業療法士とは?資格や仕事内容についてご紹介します。

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2023-03-30

リハビリ専門職である作業療法士とは?資格や仕事内容についてご紹介します。

リハビリ専門職である作業療法士ってどんな仕事なのでしょうか?資格や仕事内容、1日のスケジュールや給与面についてもわかりやすくご紹介します。この記事を読めば、作業療法士について理解できるので、作業療法士を目指す方はぜひ最後までご覧ください。

作業療法士ってどんな仕事?

作業療法士とは、リハビリテーションの分野における専門職の1つです。英語では「Occupational Therapist」といい、日本においては「OT」と略されます。そのリハビリ専門職である作業療法士とはどんな仕事をしているのでしょうか?「作業療法」って何をするのでしょうか?作業療法士の仕事について紹介します。

「作業療法」って?

「作業療法」と聞いても、パッとイメージしにくいですよね。
簡単に説明すると「作業療法」とは、心身の障害のある方に対して、その治療手段としてさまざまな「作業」を用いる療法です。その「作業」とは、食べたり入浴したり、家事や仕事、余暇活動など、人の日常生活にかかわるすべての諸活動を「作業」と呼んでいます。

「作業療法」は、怪我や病気など、何らかの理由で作業(=活動)がうまくいかなくなった患者さまが、日常生活で行う活動(作業)を通じて、身体的、精神的、社会的な機能回復を促す治療方法です。

作業療法士は、身体だけでなく精神面に対しても作業を用いてアプローチします。患者さまが自分らしく生き生きとした生活を送ることができるように、さまざまな作業を通して心と体を支えていく職業です。

作業療法士と理学療法士の違いは?

医療や介護領域で需要が高まっている理学療法士と作業療法士。2つの職種は似たものとしてとらえられることが多いですが、リハビリテーションの内容や目的、働く場所にも異なる特徴があります。それぞれの特徴を紹介します。

理学療法士

理学療法士とは、怪我や病気などで身体が思うように動けなくなった患者さまに対して、怪我や病気の影響を受けた筋肉、骨、神経系の機能を評価し、リハビリテーションや運動療法などを用いて、患者さまの身体的な機能を回復するように努めます。

例えば、筋肉や関節の柔軟性を回復させたり、身体的な痛みや不快感を軽減したりすることを目的としています。
理学療法士のリハビリテーションの具体例は下記になります。

・平行棒を使った歩行練習
・ベッドから起き上がる練習
・筋肉や関節を動かすための運動療法
・マッサージや電気刺激などを使った物理療法

現在では、高齢者が増えたことから機能の回復はもちろん、健康を維持したり、症状の悪化を予防したりすることなどを目的として理学療法をされる方も多くなりました。

働く場所としては、病院やクリニックなどの医療機関、福祉施設、リハビリテーション施設やスポーツ・フィットネス関連施設など、さまざまな場所で活躍しています。

理学療法士になるには、養成校で3年以上学び、必要な知識や技術を身につけ、国家試験に合格することが必要です。養成校では、一般教養科目、専門基礎科目、専門科目、臨床実習の4種類があり、実技やグループで課題に取り組む授業があります。

理学療法士Physical Therapist (PT)
仕事内容・「立つ」、「座る」、「起き上がる」、「歩く」などの基本動作能力の練習
・筋肉や関節を動かす運動療法や電気刺激などの物理療法
働く場所病院やクリニックなどの医療機関、福祉施設、リハビリテーション施設、スポーツ・フィットネス関連施設など

作業療法士

作業療法士は、日常生活動作(ADL)や作業(仕事、趣味、家事など)に必要な機能を回復することに重点を置いています。

彼らは、認知、感覚、身体的な機能、そして精神的な健康など、患者さまの総合的な能力を評価し、機能回復を促進するための運動、認知、感覚、精神的な治療を提供します。「その人らしい」生活の獲得を目指す仕事です。
作業療法士の具体的なリハビリテーションは下記になります。

・食事の練習
・入浴の練習
・着替えの練習
・料理の練習

働く場所としては、病院やクリニックなどの医療機関、福祉施設、リハビリテーション施設や児童発達支援センター、特別支援学校などでも活躍するのが特徴です。

作業療法士になるには、理学療法士と同様に、養成校で3年以上学び、必要な知識や技術を身につけ、国家試験に合格することが必要です。養成校では、一般教養科目、専門基礎科目、専門科目、臨床実習の4種類があり、実技やグループで課題に取り組む授業があります。

作業療法士Occupational Therapist(OT)
仕事内容・運動や感覚、精神、認知といった心身機能の訓練
・食事やトイレ、家事などの日常で必要となる応用的な動作の練習
・地域活動への参加、就学や就労などの支援
働く場所病院やクリニックなどの医療機関、福祉施設、リハビリテーション施設や児童発達支援センター、特別支援学校など

作業療法士を目指す方法

作業療法士になるには、どうすればいいのでしょうか?
作業療法士は国家資格です。まずは養成校に入学し、そこで勉強や実習をこなし、卒業することで、国家試験の受験資格が得られます。養成校がどのくらいあるか、どんな勉強をするのか、作業療法士を目指す方に、作業療法士になるまでをわかりやすく説明します。

養成校での勉強と国家試験の受験が必要!

作業療法士になるためには国家試験に合格しなければなりません。受験するためには、作業療法学科など養成課程のある大学や短大、都道府県知事が指定する作業療法士養成施設で3年以上、必要な知識と技能を習得する必要があります。

それらの知識をつけ、臨床実習もこなし、学校養成施設の卒業が認められると、国家試験の受験資格が得られます。

国家試験の合格率は?

作業療法士試験の合格率はどのくらいなのでしょうか?国家試験の日程や受験科目なども紹介します。学校養成施設を卒業することで、国家試験の受験資格が得られます。1年に1度、2月ごろに行われる国家試験に合格することで、作業療法士の国家資格を取得することができます。令和4年度の試験概要は以下のとおりです。

試験期日令和5年2月19日(日)
試験地北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、沖縄県
試験内容筆記試験
・一般問題(解剖学、生理学、運動学、病理学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学、作業療法)
・実地問題(運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学、作業療法)
合格発表令和5年3月23日(木) 午後2時
厚生労働省ホームページに資格・試験情報ページに受験番号を掲載して発表する
合格率87.3%
(2020年2月 第55回作業療法士国家試験結果)

「作業療法士国家試験の施行」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/sagyouryouhoushi/

作業療法士の仕事内容は?

作業療法士は、基本的な動作能力、応用的な動作能力、社会の中に適応する能力まで、3つの能力を維持・改善し、「その人らしい」生活の獲得を目標にして、患者さまが自分らしい生活を送るのをサポートします。

基本的動作能力運動、感覚・知覚、精神、認知機能
応用的動作能力食事やトイレ、家事など、日常生活で必要とされる活動
社会的適応能力地域活動への参加、就労・就学、趣味活動など

対象となる領域によって作業療法士の仕事内容は異なりますが、それぞれの能力改善・維持のために、作業療法士は、対象者の身体・精神機能、おかれている環境、本人のニーズなどに応じて作業療法を行っていくという考え方は変わりません。

作業療法士の就職先について

作業療法の中でも「身体障害領域」「精神障害領域」「発達障害領域」「老年期障害領域」に分かれており、働く場所も多岐にわたります。

主な就職先は、病院やクリニック、老人保健施設、デイケア、障害者施設、児童福祉施設、就労支援事業施設、特別支援学校などで、就職率は100%です。

作業療法士の1日のスケジュール

1日の仕事や求められる役割は、施設形態や職場によって異なります。同じ作業療法士でも就職先によって、1日のスケジュールは異なります。以下に例を挙げますので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。

<身体障害領域の病院で働くAさんの場合>


6:00 起床
8:00 出勤
8:30 朝礼・連絡事項や申し送りなど
9:00 入院患者のリハビリ(1人60分×2人)
11:00 通所の利用者のリハビリ(1人20分×3人)
12:00 休憩
13:00 通所の利用者のリハビリ(1人20分×3人)
14:00 入院患者のリハビリ(1人60分×3人)
17:00 カルテ記載や勉強会など
19:00 帰宅、夕食
20:00 自由時間
23:00 就寝


<訪問看護で働くBさんの場合>


6:00 起床
8:00 出勤
9:00 訪問、リハビリ(1人40~60分)
12:00 休憩
13:00 訪問、リハビリ(1人40~60分、1日に6件~7件ほど)
18:00 勉強会など
20:00 帰宅、夕食
21:00 自由時間
23:00 就寝


作業療法士の給与面について

作業療法士の給与面は、就職先や雇用形態で異なりますが、平均的な給与面や年収をご紹介します。

作業療法士の正社員の平均年収は約357万円で、日本の平均年収より低い傾向にあります。月給で換算すると30万円、アルバイト・パートや派遣社員では平均時給はそれぞれ1,269円、1,396円となっています。

地域別で比較すると、 平均年収が高い地域は関東で、その中でも東京都が402万円と高い水準になっています。 最も給与水準の低い都道府県は302万円の島根県で、勤務先や経験・求められるスキルによっても大きな差があると見受けられます。

まとめ

リハビリ専門職である作業療法士の資格や仕事内容、1日のスケジュールや給与面、理学療法士との違いについてご紹介しました。

作業療法士は、基本的な動作能力、応用的な動作能力、社会の中に適応する能力の3つの能力を維持・改善し、「その人らしい」生活の獲得を目指す仕事です。その人の生活方法を一緒に考え、習得を支援し、その人の生活の実現に関わる仕事です。

作業療法士のやりがいは、患者さまの身体機能や日常生活が改善した際の喜びや、「ありがとう」の言葉をいただけることです。病気になり障害が残るということは、患者さまの心の葛藤もあり、悩むことも多いですし、患者さまが望む目標まで到達できないこともあります。ですが、病院を退院してからも元気に過ごしていただけることは嬉しいことです。

上野紳也

介護福祉士
福祉用具専門相談員
初任者研修講師

介護職歴13年以上の現役介護士。ショートステイのユニットリーダーやデイサービスの相談員を経験。現在は、リハビリデイの相談員兼管理者として勤務。介護の悩みを解決したり、介護の役立つ情報を発信するブログを運営中。