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2023-03-24
現役ケアマネにインタビュー!ケアマネージャーのリアルな仕事とやりがい(後編)
インタビュー後編は、Sさんが大阪府豊中市と取り組んでいる介護予防ケアマネジメント『豊中はつらつ教室』の活動内容や、地域包括支援センターの仕事について伺います。
前編はこちらから
介護予防ケアマネジメントとは
介護予防ケアマネジメントは「要支援」認定を受けた人と総合事業対象者が、要介護状態にならないようにサポートを行い、要介護状態になった場合は状態の悪化をできる限り防ぐことを目的としています。
介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センターが直接もしくは委託を受けた居宅介護支援事業所が運営します。ケアマネージャー、特に、主任ケアマネージャーは地域包括支援センターで必要とされる貴重な人材とされています。
『豊中はつらつ教室』について
通所訪問型短期集中サービス『豊中はつらつ教室』は、要支援1、2の認定を受けた方と、事業対象者向けのサービスです。
対象者が日常生活の困りごとを解決するために、リハビリ専門職が短期かつ集中的に関わることで、生活課題を明確にし、生活行為や自己管理力の改善・向上を目指しています。
期間は週1回3か月。利用料は無料です。
『豊中はつらつ教室』利用の流れ
対象者は、近くの地域包括支援センターか市役所へ相談し、利用前訪問を受けます。利用前訪問ではリハビリ専門職が同行し、現在の困りごとに対し、自立支援の観点からの助言を行い、それも参考にして担当ケアマネージャーがケアプランを作成します。目標達成に向けて通所と自宅でのセルフケアを開始し、終了前に担当者が自宅訪問し、効果や目標達成度の確認を行います。
―『豊中はつらつ教室』でAさんの担当を教えてください。
「サービスの利用前訪問と利用中のモニタリングと終了前訪問です。利用前訪問では、対象者さんのお宅に伺い困りごとを聞いて、3か月間のケアプランを作成します。終了前訪問では通所の成果を持続していくために、今後どうしていくかなどを話し合います」
―居宅ケアマネの自宅訪問と違いはあるのでしょうか?
「違いは理学療法士又は作業療法士さんというリハビリ専門職と一緒に対象者さんのご自宅を訪問し自立支援の観点からの助言をしてもらえる点です。利用前訪問ではリハビリ専門職が同行し、どのようなサービスが利用者さんの困りごと改善や自立を支援することに繋がるかどうかの助言をしてくれます。
結果は市からケアマネージャーに報告され、はつらつ教室が適応する対象者さんに対してケアプランを作成する仕組みです。(対象者さんの身体機能や生活背景等から別のサービスを提案されることもあります。)
終了前訪問では、はつらつ教室通所中、利用者さんを担当していたリハビリ専門職が同行して、これまでの成果について評価してくれます」
―理学療法士との利用者訪問で、何か感じたことはありますか?
「説得力の違いを感じました。リハビリのスペシャリストである理学療法士の助言があると、利用者さんが納得して次のスタンスを選びやすいですね。終了前訪問では自分を担当してくれた先生がきちんと評価をくれるため、利用者さんの自信に繋がり、卒業後の話し合いにも意欲的です。とても素晴らしいことだなと感じました」
―このサービスで、ケアマネージャーの視点から取り組んだ活動はありますか?
「『豊中はつらつ教室』の本格的な始動が令和4年からということもありますが、対象者の多くがサービスを知らない状況でした。そこで、コロナ前までデイサービスを利用していた方で、コロナが心配で送迎車に乗りたくないという理由でデイサービスに来なくなった人たちに対して、豊中はつらつ教室を紹介しました」
―みなさんの反応はどうでしたか?
「『豊中はつらつ教室』でも送迎車はありますが、市の事業だと利用者さんの安心感が違います。3か月間という決められた期間で無料なので『市の事業だし、それなら行ってみようかな』と、みなさん通ってくれました。通所で前向きになれたと喜んでいただけました」
―市の活動を通して新たな発見などはありましたか?
「要支援1、2の方では、デイサービスの必要性がある方でも自分はまだ必要ないと利用に繋がらない場合があります。そういった方でも、市がやっている無料のサービスというのは敷居が低く、利用しやすいようです。
通所してみて、実際に自分の体調に変化が起こり、それを専門家に評価されると、本人の自信ややる気がアップし、自分自身で介護予防の取り組みを身に付けることができる点が有効だと思いました。
さらに、豊中はつらつ教室卒業後は、デイサービスなどの利用に前向きになって頂けました。非常に良いサービスなので、今後も市や関連事業所と連携して取り組んでいきたいと考えています」
―他にも、市や地域包括支援センターで活動されていることはありますか?
「主任ケアマネージャーとして地域包括支援センターの会議に参加し、事例検討の助言をしています。また、昨年から月に1度、集合住宅のコミュニティルームで喫茶ボランティアをしている人たちに向けて、自分が地域の方に相談を受けた時に困らないよう、介護保険の講話を始めました」
―喫茶ボランティアの人たちに介護の講話を始めたきっかけは何かあるのでしょうか?
「最初はコミュニティルームのカフェスペースを借りて月に1回、1時間の無料介護相談をしていたんですが、全然相談者が来なかったんですね(笑)。毎回、ボランティアの人たちと談話してコーヒーを飲んで帰るかたちだったので、それならボランティアの方に介護について知ってもらおうと思いつきました。
みなさん、介護の話に少しずつですが興味を持って頂けたので、介護保険や市が行っているサービスなどをイメージしやすいように説明しています」
―介護のお話は口頭説明では理解が難しいように思うのですが、テキストなどは用意しているのでしょうか?
「毎年豊中市が作成している介護の無料冊子をテキストにしています。介護保険や地域で受けられるサービスまで、介護で知りたい情報が網羅してあるので一冊持っていると便利な冊子です。市役所などに設置されていますが、普及率が低いのでこの冊子を広めていきたいという気持ちもありテキストにしています」
―喫茶ボランティアの方たちに介護の講話をする意味や目的は何でしょうか?
「喫茶ボランティアの方たちは地域住民です。地域の人に、こういう介護の困りごとは、ここに相談したらいいんだなという知識を身に付けてもらうことで、介護の初動が迅速になると期待しています。介護保険サービスは、地域包括支援センターの職員やケアマネがケアプランを作らなければ受けられません。ですが、残念ながら支援が必要にもかかわらず、気づいてもらえていない人がいます。
そういった人たちを地域の方が発見し我々に繋いでもらうことができたら、よりスムーズに介護の支援やサービスを受けられると考えています」
―喫茶ボランティアの人たちから、どのような感想が上がっていますか?
「ためになると好評をいただいて、今年度も続けることになりました。また、活動を他の地域包括支援センターにも報告したところ高評価だったので、他の地域でもこういった活動を広げていきたいと考えています」
―最後に、ケアマネージャーを目指している人に、アドバイスをお願いします。
「ケアマネージャーの仕事は給与アップに繋がるという認識を持っている人もいると思います。しかし、待遇面でいうと、介護職員の処遇改善加算によって年々現場の職員さんの給与がベースアップしているため、夜勤手当等をつけるとケアマネージャーより現場職員の方が、給料が高い場合もあります。
ですが、ケアマネージャーは非常にやりがいを感じることの多い仕事です。利用者さんのお宅にお邪魔して、人生の大先輩の生き方や考え方に触れることができ、人としての幅も広がります。
また、利用者さんの亡くなるところに立ち会わせてもらい、ご家族から心からの感謝の言葉を頂けることもあります。他の仕事では得られない貴重な経験とやりがいがあり、この仕事をしていて良かったと純粋に思う瞬間がたくさんあります。
その反面、ケアマネージャーの業務は孤独な仕事でもあります。膨大な業務を1人でこなす必要があり、最初は多くのケアマネージャーが働くような事務所に就職して、先輩たちからアドバイスを貰いながら仕事をこなしていく方が続けやすいかなと思います。
大変ですがとてもやりがいのある仕事です。ぜひ、挑戦してみてください」
Aさん、ありがとうございました。
まとめ
現役ケアマネージャーからお話を聞くことで、インターネットや本では知り得ない、リアルなケアマネージャーの仕事ややりがいが見えてきます。
ぜひ参考にしてみてくださいね。