介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護職のお悩み 【作業療法士の実習は大変?】実習内容やつらいと言われる理由と乗り切るポイントを紹介します

介護職のお悩み

投稿日:
2023-04-12

更新日:
2026-08-12

【作業療法士の実習は大変?】実習内容やつらいと言われる理由と乗り切るポイントを紹介します

作業療法士(OT)になるための臨床実習(以下、実習)では、学校での授業では得られない知識や経験を積める一方、初めての経験に戸惑い、つらいと感じる方もいるでしょう。
 
本記事では、作業療法士になるための実習内容と、つらいと言われている実習を乗り越えるためのポイントについてご紹介します。

作業療法士に実習は必要?

作業療法士になるためには、養成校での臨床実習の経験が必要です。必要な実習時間数は合計810時間と定められています。また、WFOT認定校(※1)の場合、世界基準で合計1,000時間以上の実習時間が求められます。

(※1)WFOT認定校:WFOT(正式名称:World Federation of Occupational Therapists、世界作業療法士連盟)とは、作業療法士の国際的な団体。WFOT認定校は、国内外で作業療法士として活動するために一定の教育基準を満たしていると認められた養成校。

作業療法士の実習内容は、大きく分けて以下の4種類です。

・見学実習
・評価実習
・総合実習
・地域実習

ここではそれぞれの実習内容を確認してみましょう。

参考
厚生労働省|理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインの一部改正について(医政発0914第2号)

臨床実習の種類

作業療法士の実習内容は、以下のとおりです。

実習の種類 対象年次 内容
見学実習 1年次 医療機関や介護施設で、作業療法士の役割や、他職種との連携、利用者とのコミュニケーションについて見学や体験を通して習得する
評価実習 2年次または3年次 医療機関や介護施設で、対象者に検査や測定などの「評価」や情報収集を行い、対象者の生活上の問題点を考え、目標を踏まえたリハビリの計画を立てる
総合実習 最終学年
(3年次または4年次)
評価結果から作成したリハビリの計画に沿って、指導者のもとで対象者のリハビリを実施し、必要に応じて再評価や目標・計画の見直しを図る
地域実習 学校ごとに対象年次が異なる デイサービスや訪問リハビリテーション施設にて、地域に住む高齢者の作業療法について学ぶ

1年次から3年次(または4年次)を通して、授業で学んだ内容を実際の現場で経験できるカリキュラムが用意されています。

また、実習で学んだ内容を発表する機会もあるため、自分自身の学びを振り返るだけでなく、他の学生と学びや知見を共有することもできます。

各実習のスケジュール・期間

各実習のスケジュールや期間について、ある3年制養成校の一例を用いてご紹介します。

実習の種類 実施時期 期間
見学実習 1年生後期 1週間
評価実習 2年生後期 3週間
総合実習 3年生前期 8週間の実習を2回
地域実習 3年生後期 1週間

実習スケジュールは、3年制・4年制といった修業年限や各養成校のカリキュラムによって異なります。例えば、評価実習を2回行うケースもあれば、総合実習を1回のみとするなど、その組み方は多様です。

作業療法士の実習先を解説

作業療法士の実習先には、以下のような施設があります。

・病院

病院は、最も実習先となる機会が多い施設です。実習先となる病院には、大学病院や総合病院、回復期リハビリテーション病棟を備えた病院などがあります。怪我や病気で入院した患者さんに対し、身体機能の維持・向上や自宅への退院を目標とした作業療法を実施します。

・介護老人保健施設

介護老人保健施設は、リハビリを通じて自宅復帰を目指す高齢者が入所する施設で、病院と自宅の中間施設として位置付けられています。

・精神科病院

統合失調症や躁うつ病、認知症などの精神疾患のある患者さんに対して、作業療法を実施し、日常生活技能の向上や社会参加の促進を支援します。

・療育センター

発達障がいや脳性麻痺などのある子どもに対して、発達支援や日常生活動作(※2)の訓練を行うための施設です。療育センターは病院に比べて施設数が少ないため、実習の受け入れ先も限られています。

(※2)食事や着替え、入浴といった日常生活での基本的な動作を指す。

・通所リハビリ

利用者さんができる限り自宅で自立した日常生活を送れるよう、日帰りでリハビリテーションを提供する施設です。

実習前の準備

実習前には事前準備の一環としてOSCE(※3)を実施している学校もあります。OSCEでは評価や治療の技術に加え、患者さんへの声かけや接し方、身体の動かし方など、作業療法士としての関わり方やコミュニケーション能力も評価されます。

(※3)OSCE:Objective Structured Clinical Examinationの略称。客観的臨床能力試験のことを指す。

実習前にOSCEを実施することで、学生自身も現時点でできている点や不十分な点を明確に把握できるため、実習前の準備として役立つでしょう。

作業療法士になるために必要な臨床実習の内容とは?

作業療法士になるために必要な実習は、2020年度のカリキュラム改正に伴い、取得すべき単位数や学習時間の内訳(内容)がより明確に定義されました。

具体的には、実習の単位数が従来の18単位から22単位へと拡充され、より実践的な学びが重視される内容となっています。

また、実習で1単位を取得するために必要な学習時間が40〜45時間と定められました。この時間には、実習先での活動時間に加え、帰宅後のレポート作成などの自主学習も含まれます。このように、自宅での学習時間の基準を明示することで、過度なレポート課題による学生の負担を軽減し、より効率的に学べる仕組みへと改められています。

参考
厚生労働省|理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改正概要

作業療法士の実習がつらいと言われている理由とは

作業療法士の実習がつらいと聞いたことがある方もいるかと思いますが、実際のところ、どのような理由があるのでしょうか。例えば、レポートの提出に追われることや、バイザー(臨床実習指導者)との関係に悩むことなどが挙げられます。

この章では、「作業療法士の実習がつらい」と言われている理由について、具体的に紹介します。

実習課題やレポートの量が多い

作業療法士の実習カリキュラムは、2020年4月に変更されました。それまでは、担当した患者さんに関する実習課題やレポート作成が重視されていたため、帰宅後に身体の状態や治療計画などをまとめる症例レポートの作成は、学生にとって大きな負担となっていました。

カリキュラムの変更後、実習課題やレポートは減少傾向にあるものの、変更前の過密なカリキュラムを経験した方の中には、「実習課題やレポートの量が本当に多かった」と振り返る方も少なくありません。

参考
厚生労働省|理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改正概要

バイザーや周囲との人間関係に悩まされる

実習では、初めての環境や立場に戸惑い、自分の未熟さを痛感して落ち込むこともあるでしょう。さらに、バイザーの指導が厳しかったり、相性が合わなかったりすると、精神的な負担が大きくなります。

実習生という立場で「スタッフや患者さんからどう評価されているのかが気になる」といったプレッシャーを感じやすく、それがストレスの要因になる場合も少なくありません。

加えて、慣れない環境のもとで、周囲と関係性を築く必要があることも、学生にとっては大きな負担です。このように、実習先でのコミュニケーションの取り方に悩む実習生も見られます。

環境に起因するストレス

作業療法士の実習先は、自宅や学校の近くの病院や施設とは限りません。中には、縁もゆかりもない地域で実習に励む学生もいます。そのため、普段とは異なる環境に適応できず、ストレスを抱えるケースも見られます。親元から離れ、一人暮らしをする学生の中には、慣れない生活環境によって体調を崩してしまう方もいるでしょう。

また、実習先は常に緊張感が伴う医療現場であるため、精神的な負担を感じる学生も少なくありません。

評価へのプレッシャーが大きい

実習では、バイザーからの評価が成績や単位取得に大きく影響するため、「失敗できない」「迷惑をかけたらどうしよう」というプレッシャーを感じる学生も見られます。

また、実習を経験して初めて、自分の行動が患者さんの生活に直接影響を与えるという現実を突きつけられ、不安や緊張が一気に高まるケースも見られます。

作業療法士の実習を乗り切るコツ

リハビリ養成校における指定規則の改正により、従来と比べて実習での負担軽減が重視されていますが、学生にとっては初めての経験が重なるため、乗り越えるべきことがいくつかあります。

本章では、実習を前向きに乗り越えるためのコツをいくつかご紹介します。

バイザーに悩みを相談する

実習で悩みがある場合は、まずはバイザーに相談するようにしましょう。

近年、バイザーとして実習指導を行うには4年以上の実務経験に加え、指定の研修会を修了していることが求められています。研修会では、実習の進め方や学生の特性、学生向けの対応方法、ハラスメント防止対策などについて、講義やグループワークを通じて学んでいます。

もし指導が厳しいと感じた場合でも、その背景には学生の成長を願うなどの意図があるとされています。お互いに良好な関係を築くためにも、バイザーへの相談は大切です。

実習先に同じ学校の卒業生やバイザーがいる場合は、親身になって相談に乗ってもらえることもあります。同じ学校出身の先輩がいれば、先輩を頼るのも1つの方法です。

実習で患者さんと接する機会を設ける

作業療法士の実習では、患者さんから元気をもらえる場面にも巡り合うことがあります。特に患者さんからの「ありがとう」という言葉は、実習に対するモチベーション維持にもつながります。実習中の学生と会話をしていくうちに、リハビリへの意欲につながったという声もあるそうです。

患者さんとの関わりは、普段の授業では得られない知識やスキルを身につける貴重な機会です。作業療法士としての接遇や対応力を磨く場にもなるため、「将来の自分のため」という意識を持って、前向きに取り組んでみましょう。

しっかりと事前準備を行う

実習には事前準備が必要です。実習に関連する資料や参考書などを用意しておきましょう。実習が始まると、バイザーとのフィードバックの時間に翌日の予定も確認します。例えば、翌日に関節可動域測定を行う予定があったとしましょう。その場合、前日に角度計の準備や測り方の再確認、角度制限の原因確認、測定までの一連の流れをシミュレーションしておくと安心です。

作業療法士の教育制度の変更点

一般社団法人日本作業療法士協会(以下、日本作業療法士協会)は2025年4月より、作業療法士のステップアップを支援する「生涯教育制度」を見直し、新たに「生涯学修制度」を設けました。近年、実習生の負担軽減や指導の質を高めるため、学生向けカリキュラムだけでなく「指導者(バイザー)側を育成する制度」も大きく見直されています。

本章では、生涯学修制度の内容や、新たな制度である登録作業療法士についてご紹介します。

「生涯教育制度」から「生涯学修制度」へ

作業療法士は、生涯にわたって自己研鑽を続けることが求められる国家資格です。日本作業療法士協会は、会員の専門性向上のために「生涯教育制度」を設けていましたが、より主体的に学びやすい仕組みへと見直しを行い、2025年4月に「生涯学修制度」という名称へと変更されました。学びを自発的に継続できるよう「教育」から「学修」という言葉に置き換えています。

生涯学修制度では、これまでの生涯教育制度の内容を引き継ぎつつ、「登録作業療法士」という新たな制度が設けられました。この制度では、臨床現場での実地経験や、現場に即した座学・演習のほか、eラーニングの活用によって、会員が学びやすい環境を提供しています。

また、バイザーを養成するための臨床実習指導者講習会の受講も、登録作業療法士となるための必須条件となりました。 

登録作業療法士取得までの期間と内容

登録作業療法士制度は、標準的な作業療法プロセスに基づいて実践する能力があると認定される制度です。取得に際しては、日本作業療法士協会および各都道府県作業療法士会への入会が前提となります。

また、作業療法士の資格取得後には、約2年間の前期研修と約3年間の後期研修を受講する必要があり、おおよそ5年かかります。

登録作業療法士制度の内容は以下のとおりです。

研修・要件 受講期間・時期 内容
前期研修 おおむね2年間 ・各講義(eラーニング)
・実地経験(職場における実践)
後期研修 おおむね3年間 ・各講義、演習
・実地経験(職場における実践)
MTDLP(※4)
基礎研修
5年間の研修期間中 ・生活行為向上マネジメントの基礎を修了するのが必須要件
臨床実習指導者講習会 (主に後期研修中) 以下のいずれかを修了
・厚生労働省指定の臨床実習指導者講習会
・理学療法士作業療法士言語聴覚士養成施設教員等講習会
・日本作業療法士協会主催の中級・上級研修を受講のうえ、作業療法士臨床実習指導者研修

補足1:前期研修の2年間と後期研修の3年間の受講期間は、日本作業療法士協会の会員歴として、それぞれ「通算2年」または「通算3年」としてカウントされる

補足2:会員歴の計算は、入会月に関係なくカウントされるため、4月に入会しても、年度末の3月に入会しても、同じ「会員歴1年」の扱いとなる

(※4)MTDLP:Management Tool for Daily Life Performanceの略称で、「生活行為向上マネジメント」とも呼ばれる。日常生活動作を評価し、自立支援へとつなげるための管理手法。

参考
一般社団法人日本作業療法士協会|登録作業療法士になるための要件 

「つらい」と感じても大丈夫。作業療法士の実習は「未来のなりたい自分」を育てる場

作業療法士の実習では、壁にぶつかったり、つらいと感じることも少なくありません。しかし、それ以上に得られる知識や経験は、将来の糧となります。目の前のことにとらわれすぎず、長い目で見て「成長につながる」と前向きな姿勢で取り組むことも大切です。

本記事で紹介した実習を乗り越えるコツを参考に、積極的に実習へ臨んでみてはいかがでしょうか。実習を重ねることで、作業療法士としての将来像がより明確にイメージできるようになります。

コラム記事執筆者

椎野 みいの
作業療法士/福祉住環境コーディネーター/福祉用具プランナー/認定心理士
2010年に作業療法士免許取得。回復期病院、介護老人保健施設、リハビリ専門学校の教員を経て、現在は特別養護老人ホームにて機能訓練指導官として従事。作業療法士として働きながら、医療介護系のライターやディレクター、オンライン秘書としても活動中。中学生・小学生姉妹の子育ても楽しむママライター。