介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護資格・スキルアップ 作業療法士の役割とは?他のリハビリ職種とは何が違うのかをわかりやすく解説

介護資格・スキルアップ

2024-01-05

作業療法士の役割とは?他のリハビリ職種とは何が違うのかをわかりやすく解説

「作業療法士にはどのような役割があるの?」「ほかのリハビリ職との違いは何?」このような疑問はありませんか?
リハビリテーション(以下リハビリ)で、作業療法士はどのような役割を持っているのか、わからない方も多いでしょう。リハビリにはさまざまな職種が関わっているため、それぞれの役割を理解するのは難しいかもしれません。

 

この記事では、リハビリ分野の中で作業療法士がどのような役割を持っているのか、それぞれの資格や対象となる障がいごとに解説しています。

 

作業療法士に興味を持っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

作業療法士の役割とは?

作業療法士は、ただ身体が動くようになるためだけのリハビリをしているわけではありません。「その人らしく」社会の中で生き生きと生活できるように支援する役割を担っています。

その人が「これまでどのような生活をしてきたのか」「何を生きがいにしていたのか」などを理解し、どのような支援が必要なのかを考え、リハビリを行います。

リハビリの中で担っている具体的な役割は、以下のとおりです。

  • ・心身機能の改善・維持
  • ・日常生活動作(食事や入浴など)の改善・維持
  • ・社会参加の促進(仕事や地域活動など)
  • ・生活環境の調整(住宅改修の提案、補助具の導入など)

上記内容は作業療法士が担っている役割の一部であり、働いている分野や対象者によって異なる場合があります。

作業療法士の仕事内容

作業療法士の仕事内容は、基本的な身体機能・精神症状の改善から、生活環境の調整など多岐にわたります。

その中でも、作業療法士は食事や入浴などの日常生活動作の練習や仕事に必要な動作の練習など「その人らしさ」を大切にしたリハビリを行っています。

また、作業療法士は身体機能面だけではなく、認知症統合失調症による精神障がいに対してもリハビリが可能です。作業活動やレクリエーションなどを通じて、日常生活動作や社会生活に必要な技能の回復を目指します。

作業療法士とほかのリハビリ職種との違いを解説

リハビリ職種は作業療法士以外に、理学療法士や言語聴覚士があります。それぞれの職種の違いについて以下の表にまとめました。

作業療法士
理学療法士言語聴覚士
主なリハビリ内容食事や入浴などの日常生活動作、仕事や趣味などの社会適応能力の維持と改善立つ・歩くなどの基本的な動作の維持と改善言葉によるコミュニケーション能力、嚥下(飲み込み)機能の維持・改善
リハビリの目的その人らしい生活の獲得基本的な動作能力の改善コミュニケーション能力や食べる機能の改善
ほかのリハビリ職にはない特徴身体機能だけではなく、精神症状を対象としたリハビリも可能身体機能面に対するリハビリがほかの職種よりも強いコミュニケーション能力、嚥下機能に対するリハビリを専門としている
名称の略称OTPTST

言語聴覚士との違いはわかりやすいですが、作業療法士と理学療法士は少し難しいかもしれません。詳しく違いが知りたい方は、以下の記事もおすすめです。

筆者から見る理学療法士と作業療法士との違い

現役の理学療法士である筆者が、実際に作業療法士と一緒に働いていて感じる違いについてお話します。

病院や対象となる患者さんによっても異なりますが、筆者の勤務している病院では、1人の患者さんに対して理学療法士と作業療法士がそれぞれ担当につきます。

作業療法士は、その人らしい生活を獲得するためには「どのような動作の獲得が必要なのか」「余暇時間をどのように過ごしてもらうのか」を考えてリハビリメニューを考えるケースが多いです。

また、日常生活の中でさまざまな道具を使う場面が多く、道具の特性に合わせたリハビリを考えます。

一方、理学療法士は身体機能に着目し、筋力やバランス感覚の獲得を目指します。

作業療法士の働いている分野

作業療法士の働いている分野は、以下のとおりです。それぞれの分野で作業療法士の役割が異なります。

  • ・身体障がい分野
  • ・精神障がい分野
  • ・老年期障がい分野
  • ・発達障がい分野

順番に見ていきましょう。

身体障がい分野

身体障がい分野では、骨折や脳血管障がいなどの疾病により、手や足に不自由が生じてしまった方に対してリハビリを行います。

対象となる病気や怪我は多岐にわたるため、幅広い知識が必要です。

精神障がい分野

精神障がい分野では、身体機能の改善や精神症状の緩和を目的としたリハビリを行っています。精神症状の影響により、活動量や身体機能が低下する場合があるため、心身機能に対してリハビリが必要になる分野です。

老年期障がい分野

加齢に伴う病気や筋力低下、身体の柔軟性など、日常生活に支障をきたしていることに対してリハビリを行います。また、その人ならではの考えや趣味を大切にして、充実した生活を送れるようにすることも老年期障がい分野においては大切です。

発達障がい分野

発達障がいの発達段階や生活環境の課題を整理して、関わり方を工夫し、身体機能に対してリハビリを行います。

対象の多くは子どもであり、ほかの分野とは異なる発達障がいに関する幅広い知識が必要となります。

作業療法士が働いている場所

作業療法士が働いている場所は、以下のとおりです。

  • ・病院・クリニック
  • ・介護施設
  • ・通所リハビリテーション
  • ・訪問リハビリテーション
  • ・児童福祉施設

それぞれの特徴を解説します。

病院・クリニック

身体や精神に障がいがある方に対して、心身機能の改善や在宅復帰、社会復帰などを目標としたリハビリを行います。病院やクリニックでは、在宅復帰や社会復帰を目標としたリハビリをする場合が多いため、患者さんの生活環境や社会状況などを把握する必要があります。

介護施設

介護施設に入所している方の多くは高齢者であり、要介護状態の方がほとんどです。そのため、施設生活における日常生活動作の改善や維持、余暇活動の支援を目的としたリハビリを行っている場合もあります。

在宅復帰を目標としている場合は、生活環境や社会状況をふまえたリハビリを行っています。

通所リハビリテーション

身体や精神に障がいがあっても、在宅生活を継続できるように、日常生活動作の改善や維持を目的としたリハビリを行います。

訪問リハビリテーション

利用者さんの自宅に訪問し、実際の生活環境で、必要な動作の練習や住宅改修(手すりの設置や段差の解消など)の提案などを行います。

児童福祉施設

発達障がいのある子どもに対して、日常生活動作・遊び・学習・運動などの発達を促します。発達障がいはそれぞれの子どもによって発達の状況や成長が異なります。それぞれの子どものニーズに合わせたリハビリが必要です。

作業療法士の活躍の場は病院や介護施設以外にもある

作業療法士は、病院や福祉施設以外でも「養成校」や「企業」でも活躍している方がいます。

具体的にどのような仕事をしているのかを紹介します。

養成校

作業療法士の中には、大学や専門学校などの養成校で教員として働いている人もいます。

病院や施設などで臨床経験を積んだあとに、学生に対して知識や経験を伝え、学びを提供する働き方です。

ただし、養成校の教員になるためには、国家資格を有しているだけではなく「5年以上の実務経験」や「教育学に関する科目の単位を取得していること」などの条件をクリアしている必要があります。

企業

リハビリ機器や福祉用具などを扱うリハビリ関連企業や労働環境の改善、職員の健康づくりのサポートなど、さまざまな活躍の方法があります。

作業療法士は具体的にどのようなリハビリをしているのか

作業療法士は、以下のような障がいがある方に対してリハビリを行っています。

  • ・身体障がいがある方
  • ・精神障がいのある方
  • ・発達障がいがある方
  • ・認知症がある方

それぞれの障がいで具体的なリハビリ内容を解説します。

身体障がいがある方

身体障がいがある方には、身体機能を評価したうえで、筋力強化や可動域訓練、日常生活動作の練習などを行います。

精神障がいのある方

身体障がいがある方と同様の内容に加えて、精神障がいの評価を行いそれぞれの患者さんの精神症状に合わせた関わり方を考えてリハビリを行います。

発達障がいがある方

発達障がいのある方には、身体だけではなく、認知・学習面におけるサポートも必要です。そのため、作業療法士は身体機能に対するリハビリ以外にも、工作やゲーム、集団での遊びなどを通じて、認知・学習面に対してのサポートを行う場合もあります。

認知症がある方

実際に生活する場所を想定し、問題となる点を把握したうえで、それぞれの患者さんの有している認知機能を最大限生かした日常生活を維持できるようなリハビリを行います。

必要に応じて、ご家族に関わり方や介助指導を行うこともあります。

作業療法士になるためにはどうすればいいのか

作業療法士になるためには、養成校で3年または4年かけて専門知識や技術を学ばなければいけません。

養成校を卒業することで、国家試験の受験資格が得られます。毎年2月に行われる国家試験に合格することで「作業療法士の国家資格」を取得できます。

ちなみに、2023年の国家試験の合格率は84%でした。簡単な試験というわけではありませんが、しっかりと勉強をすれば合格できる試験です。

作業療法士の国家試験について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

まとめ:作業療法士はさまざまな役割があり多分野で活躍できる

作業療法士は、同じリハビリ職種の理学療法士や言語聴覚士とは違った役割があり「その人らしさ」を大切にしたリハビリを行っています。そのため、リハビリ内容は日常生活動作や社会適応能力に、焦点を当てたリハビリがメインです。

理学療法士は身体機能へのリハビリを主に行っていますが、作業療法士は身体機能だけではなく、精神機能や認知機能に対しての支援もできます。

作業療法士は、精神領域での病院やクリニック、発達障がいのある子どもをサポートする児童福祉施設、福祉用具を扱うような企業、養成校の教員など、さまざまな場所で活躍できる資格です。

作業療法士に魅力を感じた方は、ぜひ目指してみてください。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。