介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護資格・スキルアップ ケアマネージャーが不足している3つの理由|ケアマネージャーの今後はどうなる?

介護資格・スキルアップ

2023-06-29

ケアマネージャーが不足している3つの理由|ケアマネージャーの今後はどうなる?

ケアマネージャーは、介護保険サービスを利用する際に必要なケアプランを作成し、高齢者の生活を支える重要な役割を担っています。

 

しかし、「ケアマネージャーが不足しているらしい」という噂も耳にするため「今後、仕事はどうなるの?」と気になっているのではないでしょうか?

 

今回は、ケアマネージャーが不足している理由を3つ紹介しています。対策やケアマネージャーの今後についても解説していきましょう。

ケアマネージャーが不足しているのはなぜ?3つの理由

ケアマネージャーが不足している理由は次の3つが考えられます。

・ケアマネージャーの資格取得が難しい
・ケアマネージャーの更新が大変
・主任ケアマネージャーになるのに時間がかかる

次項から、解説します。

ケアマネージャーの資格取得が難しい

まず、ケアマネージャー(介護支援専門員)の資格取得が難しいことが挙げられます。

そもそも、ケアマネージャー(介護支援専門員実務研修受講試験)の受験資格が厳しく、指定された国家資格を保有する人が対象です。

加えて、保有国家資格の実務経験5年以上かつ、従事期間が900日必要です。

以前は、無資格でも実務経験10年以上あれば受験資格が得られたことを考えると、受験できる人が限られているのがわかるでしょう。

ケアマネージャー試験は、実務研修を受講するための試験です。受験合格後は、都道府県が指定する施設で87時間の実務研修が受けられます。実務研修は、講義と演習を含め、16日程度必要です(※東京都の場合)。

ケアマネージャーの質の向上を目的にした、ケアマネージャー試験の受験資格の厳格化が、ケアマネージャーの人手不足の原因になっています。

ケアマネージャーの資格の更新が大変

ケアマネージャーの資格を取得しても、5年ごとの更新が大変だと言われています。

更新の際には、就業6か月後に56時間の研修(専門研修Ⅰ)と就業後3年以上かつ、専門研修Ⅰを終了した人は、32時間の研修(専門研修Ⅱ)を受ける必要があります(東京都の場合)。

資格取得後は、実務をしている人としていない人とでは研修内容が異なり、5年ごとに更新が必要です。

実務研修の初回は、講習に88時間必要ですが、2回目以降は32時間の講習時間で済みます。

業務時間の合間に研修時間を作るため、業務時間が足りないと感じる人もいるでしょう。

また、ケアマネージャーとして働いていない人は、更新研修を受けないまま失効している場合もあります。

失効してしまった場合でも、54時間の研修を受け「介護支援専門員証」を再発行すれば働けますが、手続きが複雑なためそのままになっているようです。

主任ケアマネージャーになるのに時間がかかる

最後に、ケアマネージャーの上位資格になる「主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)」の取得に時間がかかることも挙げられます。

令和9年3月31日までは経過措置が取られていますが、居宅介護事業者の管理者には、主任ケアマネージャーの配置が必須です。

そのほか、ケアマネージャーの指導や育成・経営管理・運営など、責任のある仕事にも携われます。

しかし、主任ケアマネージャーになるためには、ケアマネージャーとして通算5年以上の実務経験がある人や主任ケアマネージャーに準ずるものとして、都道府県が認める人も受講資格が得られます。研修は、講義と演習を含む70時間の研修が必要です。

介護福祉士から主任ケアマネージャーを目指す場合、最低10年かかるでしょう。事業所に配置が必要になるものの、資格取得に時間がかかるため、人手不足が懸念されています。

ケアマネージャーの現状

高齢化が進む現代社会では、ケアマネージャーの需要は増加傾向にあります。しかし、適切な人数が確保されているのでしょうか。

また、ケアマネージャーは専門的な知識やスキルが求められ、高齢者の生活を支える重要な役割をしています。

そこで、ケアマネージャーの人員や待遇から、ケアマネージャーの現状を解説していきます。

ケアマネージャーの受験者数と合格率

まずは、ケアマネージャーの受験者数と合格率から、ケアマネージャーの人数をみてみましょう。

受験年度受験者数合格者合格率
第23回(令和2年度)46,415 人8,200 人17.7 %
第24回(令和3年度)54,290 人12,662 人23.3 %
第25回(令和4年度)54,406 人10,328 人19.0 %

(参考:第25回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について

ケアマネージャーの合格率は令和3年度にいったん上昇したものの、令和4年度には従来通りの合格率に戻っており、平均20%前後です。そのため、全体的にケアマネージャーのなり手が少なく、人手不足となっています。

国家資格である介護福祉士の令和4年の合格率は84.3%、看護師の令和4年度の合格率は90.8%であることから、ほかの福祉系資格と比較しても難易度の高い資格です。

ケアマネージャーの待遇と給料

ケアマネージャーは、ほかの福祉系の職種と比較すると夜勤をすることはありません。ただし、家族や利用者の状況によっては、休日や夜間に活動することがあります。そのため、事業所によってはシフト制を取り入れています。

身体介護がないため、年齢を問わず働けるところはケアマネージャーの利点の1つです。厚生労働省の調べによると、令和5年5月時点のケアマネージャーの平均年収は405.8万円です。

施設介護員の年収は362.9万円となっており比較的年収は高めですが、業務範囲の広さと責任の重さを考えると、やりがいがあるものの疲れ切ってしまう人もいるでしょう。

介護関連職種対象に支給されていた処遇改善加算が令和4年の法改正で、介護職員に限定されました。事業所によって裁量は異なりますが、今後ケアマネージャーにも支給されることに期待したいところです。

ケアマネージャーの高齢化も進んでいる

現在ケアマネージャーとして活躍している人の年齢は、40代までが約56%、50代が29%あり、60代以上のケアマネージャーを含めると約44%の人が50代以上です。

そのため、ケアマネージャーの高齢化率も高いことがうかがえます。

ケアマネージャーの平均年齢が51.6歳となっており、介護保険サービスニーズが高まる一方で、ケアマネージャーの高齢化も進んでいることがわかるでしょう。

現在のケアマネージャーが退職すると、今よりもケアマネージャー不足が予想されるため、若い人の担い手が急務となっています。

ケアマネージャーは大変?やりがいとは

ケアマネージャーの仕事は、ケアプランを作成するほか、利用者や家族から介護相談や各種手続きの代行、モニタリングをおこなうなど、多岐にわたります。

ケアマネージャーの書類作成は、利用者の記録や報告など、円滑な連携をおこなうために欠かせません。

施設職員と利用者の間に立って調整するため、大変な仕事だと感じる人もいるでしょう。

しかし自分が立てたケアプランによって、利用者の生活の質を上げられ、直接感謝されることもあり、喜びややりがいを経験できる仕事です。

さまざまな分野の専門職と関わり、幅広い知識も求められるため、自己研鑽が必要です。

主任ケアマネージャーになれば、ケアマネージャーの育成や事業所の運営にも関われるため、キャリアアップも目指せるでしょう。

ケアマネージャーに向かない人とは

ケアマネージャーは、利用者主体のケアプランを作成する必要があるため、自己主張が強い人は向いていません。高齢者は心身の変化が激しく、柔軟な対応が求められるでしょう。

しかし、ときには業務外の要求をされるため、ダメなものはハッキリと断る態度も必要です。

ケアマネージャーはさまざまな人と関わるうえに、相談や説明業務をする機会も多いため、コミュニケーション能力が必要です。

人付き合いが苦手な人は、ケアマネージャーには向いていないかもしれません。

ケアマネージャーの今後はどうなる?

今後、高齢化社会が進むにつれ、介護保険サービスの利用者の増加が予測されます。

ケアプランの作成にAIの導入が検討されているため「ケアマネージャーは不要になるのでは?」という心配の声も聞こえてきます。

しかし、今はまだ補助的役割の段階です。ケアマネージャーの仕事は、個人に合ったケアプランを作成し、利用者に寄り添った介護サービスを提案します。

ですから、今すぐAIによってケアマネージャーの仕事がなくなる心配はないでしょう。

さらに、主任ケアマネージャーの需要も高まることから、キャリアアップを目標にケアマネージャーを目指してみるのもよいでしょう。

ケアマネージャーの人手が不足しているからこそ、AIやITツールをうまく活用して業務効率化を図ることも大切です。

ケアマネージャー不足の原因と対策とは?

主任ケアマネージャーとして相談実績が20年以上あるAさんに、ケアマネージャー不足の原因や対策を伺っています。

ケアマネージャー不足を感じることはありますか?

はい。感じています。ケアマネージャーは、業務量と給料面が釣り合わないと感じている人が多いようです。ほとんどのケアマネージャーは、やりがいを持って業務に取り組んでくれていますが、事業所によっては努力してもなかなか給料として反映されないからでしょう。

多くの人は一生懸命仕事に取り組んでいます。しかし、なかには燃え尽きてしまい、ケアマネージャーの仕事を辞めてしまう人を何人もみてきました。

また、コロナウイルスが蔓延してからは、元気な高齢者も自宅で過ごす時間が増えました。そのため、利用者の意欲や体力が低下し、介護保険サービスの申請者や要介護者が増加しています。

しかし、新規を取りたくてもケアマネージャーの手がいっぱいで断られることも多く、ケアマネージャー不足を感じています。
 

何か対策はしていましたか?

ケアマネージャー不足の対策としては、あまり大きなことはできませんでしたが、パソコン技術を維持しようと努力していました。

よく使用する言葉を辞書登録することや書類のひな形を作成しておくなど、少しでも業務効率化を図れるようにしています。

ケアマネージャーの今後を心配する声もありますが、私は、ケアマネージャーの未来は明るいと思っています。資格があれば就職や転職する間口が広くなるため、自分に合った事業所が選べるでしょう。

また、主任ケアマネージャーになればフリーランスになることも可能です。パソコンがあれば始められるため、通勤時間を短縮することや業務効率化にも手を付けやすいでしょう。

ケアマネージャーが不足している分、需要が高い!将来性のある資格

ケアマネージャーが不足している理由は、資格取得が難しいことや資格の維持が大変であることです。加えて、ケアマネージャーの高齢化も課題の1つになっており、若者の人材確保も大切です。

ケアマネージャーの受験者数は多いものの、合格率は平均20%前後であるため、ケアマネージャーの資格取得者が少なくなっています。

今後も介護保険サービスの利用者の増加が予測できるでしょう。ケアマネージャー1人でできる業務には限度があるため、時間管理や業務効率化をすることで、負担を軽減することも大切です。

ケアマネージャーは、高齢者の生活を支える重要な仕事です。キャリアアップも目指せるため、自分の望む職場や業務の選択肢も増えるでしょう。

大岩保英

理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

理学療法士として10年以上の臨床経験あり。一般病院・総合病院の勤務経験を経て、現在は整形外科クリニックに勤務。本業と並行し、ライターとして執筆活動や編集者も行う。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)を取得し、オンラインサロンでお金や投資関連の情報発信・相談業務も行っている。