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介護サービス・制度

2023-01-17

介護保険サービスには何がある?利用条件や種類を詳しく解説

「介護保険サービスにはどんなものがある?」「サービスの利用条件は?」など疑問に思う方もいるでしょう。

 

介護保険サービスを利用する際には、利用条件やサービス内容について理解しておくことが大切です。

 

そこで本記事では、介護保険サービスの利用条件やサービスの種類などを紹介します。

 

介護保険について知りたい方や、これから介護保険を申請する方は、ぜひ参考にしてください。

介護保険サービスとは?

介護保険サービスとは、要介護認定を受けた方が、サービス費用の一部を負担しながら介護サービスが受けられる制度です。

ここでは、介護保険の利用条件と自己負担金について解説します。

利用条件

介護保険サービスを利用できるのは、要介護認定の申請をして「要支援1・2」または「要介護1〜5」のいずれかの認定を受けた人に限られます。

また、要介護認定を受けるためには、65歳以上もしくは、40〜64歳の医療保険加入者で、特定疾病(16種の定められた疾病)の診断を受けている必要があります。

自己負担と支給限度額

要介護(要支援)認定を受けると、所得に応じて1〜3割の自己負担で介護保険サービスが利用できます。

しかし、介護保険サービスは無制限に利用できるものではありません。自宅などで介護サービスを利用する場合は、要介護度別に1か月に利用可能な上限額が決められています。

このことを「区分限度支給額」(以下、支給限度額)と言い、支給限度額の範囲内で希望する介護サービスを組み合わせて利用可能です。

なお、支給限度額の上限を超えて介護サービスを利用した場合は、超過分を全額、利用者が負担することになります。

1か月あたりの支給限度額と自己負担額は次のとおりです。

要介護度利用限度額自己負担額
要支援15,320円5,032円
要支援2105,310円10,531円
要介護1167,650円16,765円
要介護2197,050円19,705円
要介護327,480円27,048円
要介護4309,380円30,938円
要介護5362,170円36,217円

介護保険サービス利用までの流れ

ここでは、要介護認定の申請からサービス利用までの流れとポイントについて確認していきましょう。

【介護サービス利用までの流れ】

1.要介護認定の申請
2.認定調査主治医意見書
3.判定
4.認定通知
5.ケアプラン作成
6.サービス利用開始

順番に解説します。

1.要介護認定の申請

要介護認定の申請は、本人または家族などが市区町村の窓口や地域包括支援センターでおこないます。

申請時に必要なものは介護保険証(65歳未満は医療保険証)と申請書です。申請書は役所の窓口または、市区町村のホームページからダウンロードできます。

2.認定調査・主治医意見書

申請すると、本人の状態を調べるために市区町村の調査員が申請者のもとを訪問して、認定調査をおこないます。

また、介護認定に必要な資料となる「主治医意見書」は市区町村が本人のかかりつけの医師に依頼するため、特に行動することはありません。かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受ける必要があります。

3.判定

コンピュータによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定がおこなわれます。介護認定審査会は、保健・医療・福祉に関する学識経験者で構成され、特記事項などを参考に要介護度を判断します。

4.認定通知

認定結果は、申請から30日以内に自宅に郵送されます。届いたら「認定通知書」と「保険者証」から、要介護区分(非該当・要支援1または2・要介護1〜5のいずれか)を確認しましょう。

区分によって利用できるサービスや利用限度額などが異なります。

要介護区分利用できるサービス
非該当(自立)市区町村の介護予防事業
(※市区町村によって異なる)
要支援1・2介護予防サービス
要介護1〜5介護サービス

5.ケアプラン作成

要支援・要介護と認定された人は、ケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、利用するサービスの種類や利用回数などを決めていきます。

ケアプランを作成する担当のケアマネージャーは、介護度や利用するサービスによって異なります。

要介護区分担当ケアマネージャー
要支援1・2地域包括支援センター
※居宅介護支援事業所
要介護1〜5居宅介護支援事業所

要支援者は「地域包括支援センター」、要介護者は「居宅介護支援事業所」のケアマネージャーが担当してケアプランを作成します。

ただし、要支援者は地域包括支援センターから委託を受けた居宅介護支援事業所が担当する場合もあります。

また、介護施設へ入居する場合は、施設のケアマネージャーがケアプランを担当する場合がほとんどです。(施設ケアマネージャーがいない施設もあります)

6.介護サービスの利用

ケアマネージャーが作成したケアプランの原案は、介護サービスを提供する事業所とサービス担当者会議を開催して内容を検討します。

その後、最終的なケアプランが作成され、利用者や各事業所に交付し、契約をおこなった後に介護サービスが利用できます。

利用できるサービスは、原則ケアプランに記載された内容のみです。

介護保険サービスの種類

ここでは、介護保険で受けられるサービスを「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」と大きく3つの種類に分けて紹介します。

居宅サービス

居宅サービスは、自宅で生活する人が利用できるサービスです。

主に自宅で受けられる「訪問系サービス」、事業所や施設を利用して受ける「通所系サービス」、「短期入所サービス」、「介護環境を整えるサービス」の4つの種類に分けられます。

訪問系サービス

1.訪問介護
自宅にヘルパーが訪問して、身体介護生活援助などのサービスを提供します。

2.訪問入浴
自宅の浴槽では入浴が難しい高齢者に対して、組み立て式浴槽を利用者宅へ持ち込み、ヘルパーや看護師が入浴の介助をおこないます。

3.訪問看護
病院や訪問看護ステーションから看護師や理学療法士、作業療法士などが自宅を訪問し、療養上の介護や診療の補助をおこないます。

4.訪問リハビリテーション
病院や介護老人保健施設などから理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問して、リハビリテーションをおこないます。

通所系サービス

1.通所介護(デイサービス)
日帰りで事業所に通い、入浴や食事などの介護とレクリエーションなどのサービスを受けられます。自宅から事業所までは車で送迎してもらえます。

2.通所リハビリ(デイケア)
事業所へ通い専門的なリハビリテーションが受けられるサービスです。デイサービスと同様に食事や入浴、送迎サービスも提供されます。利用するには医師の指示書が必要です。

短期入所サービス(ショートステイ)

1.短期入所生活介護
介護施設に短期間入所して、必要な介護やレクリエーションが受けられるサービスです。

2.短期入所療養介護
介護老人保健施設などに短期間入所して、医療面の管理やリハビリテーションが受けられるサービスです。

介護環境を整えるサービス

1.福祉用具貸与
介護ベッドや車いすなど13種類の福祉用具を介護保険でレンタルできるサービスです。要介護度によってレンタルできない用具もあります。

2.特定福祉用具販売
トイレや入浴用品など直接身体が触れる福祉用具は、レンタルではなく購入対象となり、介護保険が適用されます。

購入費用は年間10万円を上限に、かかった費用の1~3割を利用者が負担します。毎年4月1日を起算日とし、3月31日までの間で10万円が上限です。

施設サービス

施設サービスとは、施設に入居して受ける介護サービスを指します。

心身の状態や症状によって一人暮らしが困難になった人や、家族による在宅介護の限界などが理由で入居される方が多い傾向です。

施設サービスには、さまざまな種類があるため、いくつか紹介します。

特別養護老人ホーム

終身の利用を前提とした生活施設です。入浴や食事、排泄の介護・レクリエーション・健康管理などのサービスが受けられます。

医療よりも介護に重点を置いたケアをおこなっています。原則、要介護3以上の人が入居対象です。

介護老人保健施設

リハビリテーションをおこない、在宅復帰を目指す施設です。必要なリハビリテーションから、入浴・食事・排泄などの介護が受けられます。

在宅復帰に力を入れている施設のため、基本的に終身までの利用ができない施設がほとんどです。

介護医療院

病院の長期療養の機能と生活施設としての役割をあわせ持つ施設です。

慢性期の医療や看取りケアと、入浴・食事・排泄などの介護サービスを一体的に受けられます。 医療依存度の高い重度の要介護者の利用が多い傾向です。

地域密着型サービス

地域密着型サービスは、2005年からスタートしたサービスです。高齢者が住み慣れた地域で継続して生活が送れるようにサービスが提供されています。

原則として、施設や事業所と同じ住所に住む高齢者が利用対象です。地域密着型サービスには、主に次のようなサービスがあります。

小規模多機能型居宅介護

定額の費用で「通い」「訪問」「泊まり」と3つの機能を柔軟に組み合わせて利用するサービスです。

サービスの違いによって担当者が変わることがないため、なじみの関係がつくりやすく認知症の方に効果的なサービスです。

看護小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護のサービス(通い・訪問・泊まり)に訪問看護を加えたサービスです。

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

認知症の高齢者が対象の施設です。5〜9人の小グループ(ユニット)に分かれて生活します。役割を分担して、共同生活を送るためのサービスが受けられます。

施設スタッフと一緒に、共同で調理や買い物などをおこなうことで、認知症の進行予防や症状の緩和に効果があります。

まとめ

介護保険のサービスを利用するには、要介護認定を申請し、要介護度の認定を受ける必要があります。

介護保険で利用できるサービスにはさまざまな種類があり、利用する本人や家族の状況に合わせて必要なサービスを選択することが可能です。

ただし、介護保険で受けられるサービスには上限額の設定があるため、必要なサービスを組み合わせて利用する必要があります。

家族に介護が必要となった時に、手続きの流れや介護サービスの種類などをあらかじめ知っておくと、いざというときでも役に立ちます。

この記事を参考に、介護保険サービスの利用を検討してみてください。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。