介護サービス・制度
2024-11-27
介護保険で利用できる福祉用具とは?種類やレンタルと購入の違いを解説(2024年4月制度改定)
福祉用具は、利用者の生活の質を高め、介護者の負担を軽減するために欠かせないものです。福祉用具を活用し自分でできることが増えれば、生活の質の向上や生きがいにもつながります。
一方、2024年4月1日から、福祉用具の一部にレンタルと購入の選択制が導入され、利用方法について「よくわからない」と「何が変わるの?」と不安に感じる方もいるでしょう。
本記事では、介護保険が使える福祉用具の種類や利用の流れ、選択制の詳細について解説しています。
福祉用具の役割
福祉用具は、要介護者が快適で安全な生活を送るため、または機能訓練のために使用する用具のことです。主に要介護者の身体的な負担を軽減し、生活の質を向上させることを目的としています。移動や排泄・入浴の補助など、さまざまな種類があり、介護保険で利用可能です。
また、福祉用具の主な役割として、要介護者の自立を促進することと、介護する家族の身体的・精神的負担を軽減することが挙げられます。
福祉用具には購入とレンタル(貸与)がある
福祉用具は、利用者の身体の状態や用具の種類によって区別されています。介護保険を利用する場合、福祉用具のほとんどはレンタル(貸与)可能です。ただし、ポータブルトイレや入浴用いすなど、直接、身体や排泄物に触れる用具については、購入費を介護給付の対象とし、レンタルは対象外となっています。
2024年4月1日から、一部の福祉用具に貸与と販売の選択制が導入されました。日常的に使用する福祉用具、歩行器や杖については、レンタルよりも費用を抑えながら長期的な利用ができます。
介護保険を使用して福祉用具をレンタル・購入できる対象者は、基本要介護2〜5の方です。ただし、要介護1以下の方でも、厚生労働省が定めた要件に該当する方や市区町村の判断により、給付が認められる場合があります。
介護用品との違い
福祉用具と介護用品は、使用目的によって区別されます。福祉用具の場合、要介護者の日常生活の支援や機能訓練を目的としており、使用範囲や用具が定められたものです。
一方、介護用品は明確な定義はなく、介護全般に使用する物品も含みます。たとえば、おむつやおしり拭き・介護用歯ブラシなど日常的な消耗品や生活用品も含まれ、これらは介護保険の適用外です。
また、介護用品はドラッグストアやホームセンターで購入できますが、福祉用具を介護保険で購入する場合、市区町村の指定事業者からの購入が必要です。
福祉用具をレンタル・購入する方法
福祉用具をレンタル・購入する際は、ケアマネージャーまたは福祉用具専門相談員に相談しましょう。福祉用具専門相談員は、利用者に適した用具を提案し、正しい利用方法をアドバイスする専門家です。
インターネットやカタログからでも福祉用具をレンタルや購入できる商品もありますが、介護保険適用外の商品も掲載されているので注意が必要です。福祉用具は使用法を誤ると、利用者の身体の負担を増やしたり、状態を悪化させたりすることも考えられるため、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員と話し合いながら、慎重に選ぶことが大切です。
介護保険でレンタル・購入できる福祉用具の種類
介護保険でレンタルできる対象種目は、次の13種類です。
【福祉用具レンタル】
- ・車いす
- ・車いす付属品
- ・床ずれ防止用具
- ・手すり
- ・認知症老人徘徊感知機器
- ・移動用リフト(※つり具部分を除く)
- ・特殊寝台
- ・特殊寝台付属品
- ・体位変換器
- ・自動排泄処理装置
- ・スロープ
- ・歩行補助つえ
- ・歩行器
レンタルできない福祉用具は「特定福祉用具」と呼ばれており、購入することで使用できます。特定福祉用具は次の3種類です。
【特定福祉用具】
- ・腰掛便座(ポータブルトイレ)
- ・排泄予測支援機器
- ・簡易浴槽
2024年4月からレンタルと購入が選択できるようになった福祉用具は、次の4種類です。
【選択制の福祉用具】
- ・固定用スロープ
- ・歩行器(※歩行車は除外)
- ・単点杖(※松葉杖は除外)
- ・多点杖
選択制が導入された福祉用具には、比較的手頃な価格で購入できるものも多く、長期的に使用する場合には、利用負担が軽くなる可能性もあります。ただし、それぞれメリットとデメリットがあるため、状況に応じた選択が必要です。
介護度別:利用できる福祉用具一覧
次の表は、レンタル・購入できる福祉用具を介護度別にまとめたものです。
対象となる福祉用具 | 要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
車いす(車いす付属品) | - | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
特殊寝台(介護用ベッド)および特殊寝台付属品 | - | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
体位変換器 | - | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
床ずれ防止用具 | - | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
移動用リフト(つり具の部分を除く) | - | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
認知症老人徘徊感知機器 | - | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
手すり | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
歩行器 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
スロープ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
歩行補助つえ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
自動排泄処理装置 | - | - | - | - | - | ○ | ○ |
要支援1・2、要介護1の福祉用具貸与については、介護保険給付の対象外です。ただし、要介護認定の基本調査結果や市区町村の判断の判断により、例外的に介護保険が給付されるケースもあります。
要支援1・2、要介護1の軽度者が対象外となる福祉用具は次の6つです。
- ・車いす(車いす付属品を含む)
- ・特殊寝台(特殊寝台付属品を含む)
- ・床ずれ防止用具(体位変換器)
- ・認知症老人徘徊感知機器
- ・移動用リフト(つり具の部分を除く)
- ・自動排泄処理装置
また、自動排泄処理装置については、要介護2・3の方でも給付の対象外です。
福祉用具の貸与・購入にかかる費用
福祉用具のレンタルにかかる費用は、介護保険を利用する場合、所得に応じて1~3割です。福祉用具を貸与する際には、支給限度額の範囲内に納める必要があります。他の介護サービスを利用していると介護保険の単位数が不足する可能性があるため、支給限度額の範囲内でどのサービスを利用するか、ケアマネージャーと計画的に検討しましょう。
特定福祉用具を購入する際の支払い方法には「償還払い」と「受領委任払い」の2種類があります。
償還払いとは、利用者が最初に全額負担し、購入後に申請することで購入費用の7~9割が払い戻しされる支払い方法です。
一方、受領委任払いは利用者が自己負担額のみを支払い、残りを市区町村が福祉用具事業者に支払います。この支払い方法では、利用者が立替することはありません。
どちらの支払い方法も購入費用の7~9割が支給されるため、多くの方は1~3割の自己負担で済みます。ただし、1年間で使用できる限度額は10万円までとなっており、上限を超えた場合は全額自己負担となるため、注意が必要です。
2024年から福祉用具のレンタルと購入の選択制になった
先述のとおり、2024年4月から、福祉用具のレンタルと購入の選択制が導入され、利用者の使用頻度や目的に応じた福祉用具選択の幅が増えました。
選択制になった背景
選択制を導入する背景には「介護サービスの向上」や「自立介護・重度化予防」が挙げられます。
今回選択できるようになった福祉用具は要介護度の軽度者も利用できることを想定し、レンタルだけでなく販売するべきだという声が上がりました。
福祉用具を3年以上使用している利用者には、要支援1・2、要介護1の割合が高く、半数以上の方が身体機能の低下がなく、同じ福祉用具を使い続けています。福祉用具のレンタルには「貸与にかかる給付金」のほか、「ケアプラン作成時のケアマネジメントにかかる給付金」に費用が割かれており、購入する場合と比べて約40万円以上の費用がかかるとされています。
購入に関して「利用者負担が大きくなるのではないか」という声もありますが、実際の購入費用は全体の1~3割程度に設定されており、費用を抑えて購入することが可能です。
購入が選択できる福祉用具
次の表は、選択できる福祉用具をまとめたものです。
福祉用具 | 詳細 |
---|---|
スロープ | スロープのうち、段差の解消に使用できる持ち運びができないものに限る |
歩行器 | ・脚先がすべてゴムの形状のもので、固定式または交互式歩行器(タイヤつきを除く) ・歩行車(シルバーカー)は除く |
歩行補助つえ | ・カナディアン ・クラッチ ・ロフストランド・クラッチ ・プラットホームクラッチ ・多点杖(松葉杖を除く) |
福祉用具の購入後は、福祉用具専門相談員が正しい使い方やメンテナンスの実施・使用状況を確認するよう求められています。
モニタリングの時点で購入かレンタルを継続するかを選択し、必要に応じて貸与から購入へ変更することが可能です。購入を決定した時点で指定福祉用具販売事業者と個別に契約し、引き続き利用を続けられます。
ただし、購入後は個人所有の用品となるため、ケアマネージャーの管轄外です。そのため、安心して使えないと思う方もいます。このような懸念は、選択制の今後の課題といえるでしょう。
福祉用具の利用の流れ
福祉用具の利用まで、次のような流れで手続きします。
- 1.ケアマネージャーに相談
- 2.福祉用具を選ぶ
- 3.福祉用具貸与・販売計画の作成
- 4.家族と本人への説明と同意
- 5.計画を利用者とケアマネージャーに交付
- 6.利用開始
- 7.モニタリング・メンテナンス
福祉用具を利用する際は、まずはケアマネージャーまたは地域包括支援センターに相談しましょう。
福祉用具専門相談員は利用者の状況や、家族の介護負担が軽減できるように適切な福祉用具を選定します。選択制対象の福祉用具を利用するときは、選択制の詳細について確認が必要です。使用する福祉用具の貸与期間と購入するかどうかを検討しましょう。
ただし、特定福祉用具を購入した場合は、福祉用具専門相談員による販売後メンテナンスの義務付けはありません。修理や不具合があれば利用者から依頼し、点検してもらいましょう。
介護保険範囲内の福祉用具なら費用を軽減できる
福祉用具は、利用者の自立を助け、介護者の負担を軽減する重要な役割があります。介護保険が使える福祉用具を購入・レンタルすれば、自己負担する費用を抑えて利用可能です。
福祉用具を利用したいときは、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員と相談しながら、最適な福祉用具を選びましょう。
2024年から一部の福祉用具で選択制が導入され、個別のニーズに沿った利用ができるようになりました。ケアマネージャーや福祉用具専門相談員と相談し、身体状況に合わせた福祉用具を選びましょう。