介護情報メディア ケアケア 一般介護向けコラム 介護サービス・制度 【こんな基準があった】要介護認定の判定基準や申請方法を解説

介護サービス・制度

2023-05-24

【こんな基準があった】要介護認定の判定基準や申請方法を解説

要介護認定では、基準によって、それぞれの身体状況に応じた区分わけがおこなわれます。

 

要介護や要支援は、どのような基準で分類されるのか疑問に思う方もいるでしょう。

 

要介護認定を検討する場合は、どのような判定基準があるのか把握しておくことが重要です。

 

この記事では、要介護度の判定基準や、要介護認定の流れを紹介します。

 

要介護認定の通知を受けた後の対応も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

要介護認定とは

要介護認定は、生活に必要な機能の低減によって日常的にサポートが必要な方が、介護を受けるための制度です。

要介護度には、自立のほかに7段階のレベルがあり、身体機能や判断能力などの状態によって区分されます。

以下で詳しく確認してみましょう。

要介護と要支援の2種類がある

介護認定には、主に要介護と要支援の2種類があります。

要支援2段階、要介護5段階の全部で7段階です。

日々の暮らしに必要な能力が低減するほど、区分レベルが上がります。

主に、要支援に区分されるのは、身の回りの必要最低限のことを、自身でできる方です。

一方で、要介護の場合では、心身機能の低減からさまざまな介助を必要とします。

介護保険サービスが利用可能

要介護認定が下りると、さまざまな介護が受けられるようになります。

介護保険証を持っているだけでは、介護保険は適用されません。

介護支援を検討する場合は、まず要介護認定を受けましょう。

主な介護(予防)サービスは、以下のとおりです。

サービス名サービス例
要支援介護予防サービス訪問サービス・通所サービス・短期入所サービスなど
要介護介護サービス訪問サービス・通所サービス・施設介護・住宅リフォーム・福祉用具など

要支援の方が利用できるのは「介護予防サービス」になります。生活機能の維持向上が目的です。要支援の場合は、特養や老健などの施設は利用できません。

要介護の場合は、訪問や通所のほか施設サービスなどを利用できます。利用者が、できる限り自身の力で生活できるように、サポート・支援するのが目的です。

自立と7段階の要介護度

介護区分には、自立のほかに7段階の区分があります。

また、要支援と要介護では、受けられるサービスが異なるため、事前に把握しておくことが大切です。

それぞれの心身状態に、どのような特徴があるのか確認してみましょう。

自立

自立は、日々の暮らしにおいてサポートが不要な状態を表します。

そのため、自立と判定された場合は、介護サービスを利用できません。

一方で、自治体によっては、現在の健康状態を維持することを目的とした、予防サービスを利用できる場合があります。

自立状態でサポートが必要な場合は、各市区町村の役所へ相談してみましょう。

要支援1・2

日々の暮らしに必要な動作を自分でおこなえる方で、一部サポートが必要な場合は、要支援にカテゴライズされます。

暮らしに必要な動作とは、食事や歯磨き、洗顔などの身体への負担が少ないものです。

一方で、階段の昇降など、負荷が大きい一部の動作ではサポートが受けられます。

要支援の方が、要介護にならないように予防・改善するのが、介護予防の目的です。

要介護1〜5

要介護には5つの段階があり、日々の暮らしにおいて、さまざまな介護が必要な方が対象です。

要支援と比較して、身体的な機能のほか、判断機能の低下が見られるようになります。

在宅介護の場合では、家族への負担が増加するほか、状況によっては終日の介護が必要になることも少なくありません。

介護度が軽度なうちは、心身機能が低下しないように予防していくことが重要です。

要介護認定の基準

介護度を判定する基準は、全国で統一されています。

どういった基準で介護度が決定されるか、事前に理解しておくことが大切です。

これから、介護度の判定基準や介護度ごとの人口分布を紹介します。

それぞれ以下で確認してみましょう。

要介護認定等基準時間による判定

判定基準は、審査する人によって不統一ではいけません。

そこで用いられるのが、「要介護認定等基準時間」です。

食事や洗濯、入浴、医療行為の補助など、規定の内容に必要な介護時間数ごとに、介護度が割り当てられます。

介護度ごとの必要な時間数は、以下のとおりです。

要介護度介護に必要な時間
要支援125分以上32分未満・またはこれに相当すると認められる状態
要支援2
要介護1
32分以上50分未満・またはこれに相当すると認められる状態
要介護250分以上70分未満・またはこれに相当すると認められる状態
要介護370分以上90分未満・またはこれに相当すると認められる状態
要介護490分以上110分未満・またはこれに相当すると認められる状態
要介護5110分以上・またはこれに相当すると認められる状態

要支援から要介護になる基準

要支援と要介護では、利用できるサービスに違いがあります。

2つを分ける基準には、どのような内容があるのか事前に把握しておくことが大切です。

主な項目として判断機能の状態と、心身の安定度が挙げられます。

それぞれ以下で確認してみましょう。

認知機能の状態

要支援と要支援を線引きする基準として、判断力や認知力が重要なポイントです。

思考力・判断力の低下や認知症によって、誰かのサポートが必要と判断される場合は、要介護になる可能性があります。

一方で、認知症と診断された場合でも、要支援と判定される場合があることを覚えておきましょう。

「昨日食べた物が思い出せない・曜日を忘れる」などの軽度の症状の場合は、要支援にカテゴリーされる可能性があります。

心身状態の安定度

身体機能の低下により、サポートが必要な機会が増えると予想される場合は、要介護に判定される可能性があります。

一方で、心身の状態が安定していて、身の回りのことを1人でできると予想される場合は、要支援になる可能性が高いです。

要介護度の判定は、さまざまな要因を考慮して決定されます。判断基準の参考として覚えておくとよいでしょう。

要介護度別の分布

要介護認定を受けている方の、介護度別の人口分布を見てみましょう。

以下の表が、男女別の人口分布です。

要支援1要支援2要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
男性310,205277,022471,525406,674300,725251,310160,888
女性662,634676,185942,973760,530611,318609,887424,029
合計972,839953,2071,414,4981,167,204912,043861,197584,917

また、高齢になるほど要介護度2以上を占める割合も増加する傾向です。

要介護認定を受けるには?

これから、要介護認定を受ける方法を紹介します。

申請時に必要な物や、申請場所を以下で確認してみましょう。

申請に必要な物

要介護申請の際に必要になる物は、以下のとおりです。

・申請書
・介護保険保険者
・健康保険証(40~64歳の方のみ)
・マイナンバーカード

申請書は、各市区町村の役所でもらうか、公式サイトからダウンロードが可能です。

65歳未満の場合、要介護認定を受けた後に、介護保険証が交付されます。40~64歳の場合は、要介護の申請時に健康保険証を持参しましょう。

要介護を受ける際に、費用はかかりません。その他、わからないことがある場合は、各市区町村の役所へ問い合わせてみましょう

申請場所

申請は、介護を必要としている方の住所がある、市区町村の役所でおこないます。

要介護・要支援ともに申請は、各市区町村の役所です。

要介護認定の担当窓口がわからない場合は、総合案内や最寄り窓口の職員に確認しましょう。

本人による申請が困難な場合

何かしらの事情で本人による申請が困難な場合は、代理人による申請手続きが可能です。

家族や親戚に頼れない場合は、以下の方法で申請できます。

成年後見人による申請
地域包括支援センター
居宅介護支援事業者
介護保険施設(入居者の場合)

入院中の場合は、病院のスタッフがサポートしてくれるケースもあります。

その他、郵送での申請が可能な場合があるため、状況に応じて事前に確認しておくとよいでしょう。

要介護認定の流れ

これから、要介護認定の申請をした後の流れを紹介します。

要介護が認定されるまでの、主な流れは以下のとおりです。

要介護認定の流れ

訪問調査

訪問調査では、認定調査員が本人の自宅へ訪問し、心身状況の聴き取りや確認をおこないます。

訪問調査でおこなわれる、聴き取り調査の主な内容は、以下のとおりです。

・身体機能
・生活機能
・認知機能
・行動障害
・社会への適応性
・そのほか、現在の状況について
など

正しい判定をしてもらうためにも、日常の困りごとや、本人の普段の様子を正確に伝えるようにしましょう。

そのため、訪問調査時は家族が同席するほか、日頃から日常生活の様子を記録しておくことが重要です。

医師の意見書

訪問調査の後は、主治医の意見書が作成されます。

意見書の作成依頼は、各市区町村の職員がおこなうため、本人による申請は必要ありません。

普段、受診する機会が少なく主治医がいない場合は、役所から指定された病院で受診をおこないます。

主治医の意見書は、要介護認定が下りた後の更新時にも必要になるため、定期的に受診するようにしましょう。

一次・二次判定

要介護度を判定するために、一次判定二次判定がおこなわれます。

判定の基準は、全国統一でなくてはいけません。そのため、コンピューターを使用した判定がおこなわれます。

聴き取り調査と主治医による意見書の内容をもとに、過去の統計から「要介護認定等基準時間」が割り出されます。

介護認定等基準時間で算出される時間は、実際の介護にかかる時間とは異なるため、注意しましょう。

一次判定の結果と意見書の内容から、介護認定審査会が二次判定をおこない、介護度を決定します。

要介護認定の結果通知後

審査会によって介護度が決定された後、自宅に結果が郵送されます。

通常、要介護認定の申請から、結果通知が届くまでの期間は1〜2か月ほどです。

これから、通知の結果に納得がいかない場合や、認定を受けた後の流れを紹介します。

以下で確認してみましょう。

要介護認定の結果に不服がある場合

認定結果に納得がいかないケースも考えられます。

不服がある場合は、各市区町村の担当窓口や地域包括センターへ相談しましょう。要介護認定の判定結果の理由を教えてもらえます。

理由を聞いた上で納得いかない場合は、各都道府県の介護保険審査会に対して不服申し立てが可能です。

不服申し立てをおこなう場合は、結果通知を受けてから60日以内におこないましょう。

その他、区分変更申請による方法もあります。本人の状態が変化した際に、再度区分判定をおこなうためのものです。

不服申し立てや、区分変更の申請をおこなったとしても、必ず結果が変わるわけではない点を留意しておきましょう。

要介護認定の有効期限

要介護認定には有効期限があります。

有効期限が切れると、介護サービスの利用ができなくなるため、忘れずにおこないましょう。

有効期限は、新規申請の場合で6か月、更新の場合は12か月です。

本人の状態が安定していて、急な状態変化が見込まれない場合は、最大48か月になるケースもあります。

有効期限最終日から、60日前までの期間に手続きが可能です。更新時には、再度訪問調査による区分判定がおこなわれます。

要介護度の判定基準は全国統一

この記事では、要介護度の判定基準や認定までの流れを解説しました。

介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。

それぞれの状態や希望に合うサービスを利用するためにも、訪問調査では普段の状態を正確に伝えることが重要です。

要介護認定の手続き内容や、判定結果に疑問がある場合は、各市区町村の窓口に相談してみましょう。

大岩保英

理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

理学療法士として10年以上の臨床経験あり。一般病院・総合病院の勤務経験を経て、現在は整形外科クリニックに勤務。本業と並行し、ライターとして執筆活動や編集者も行う。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)を取得し、オンラインサロンでお金や投資関連の情報発信・相談業務も行っている。