介護情報メディア ケアケア 一般介護向けコラム 介護の基礎知識 【こども食堂の役割】SDGsとの関連性と今後の課題

介護の基礎知識

2024-02-23

【こども食堂の役割】SDGsとの関連性と今後の課題

昨今、耳にする機会が多くなった「SDGs」ですが、その意味や目的、内容が分からない方も多いのではないでしょうか。

 

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの頭文字を取ったもので「持続可能な開発目標」を意味します。
(参考:外務省「SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform」)

 

全部で17項目の目標があり、こども食堂の理念と関連する内容も含みます。そのため、こども食堂ではSDGsの理解が欠かせません。

 

この記事では、こども食堂の役割やSDGsとの関連性を紹介します。

 

SDGsの観点から見るこども食堂の取り組みや問題点、今後の課題についても解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

こども食堂とSDGsの関連性

SDGsは、具体的には2030年までに「持続可能な内容で、より住みやすい世界を目指そう」という内容になっています。

耳にする機会が増えた「SDGs」ですが、こども食堂にも関連する内容が含まれています。

これから、全17項目あるSDGsの目標の中から、こども食堂に関連性のある内容を4つ紹介します。それぞれ確認してみましょう。

【SDGs①】貧困をなくそう

SDGsの1番目の目標は「貧困をなくそう」です。

2030年までに“極めて”貧しい人たちをなくし、貧しい人の数を全体の半分にすることを目標としています。

こども食堂は、貧困などの理由で満足な食事が食べられないこどもに対して、栄養のある食事を提供する目的で始まりました。

こども食堂の運営理念が、SDGs①の貧困問題に対しての取り組みと深い関連性があることが分かります。

【SDGs②】飢餓をゼロに

SDGsの目標の2番目が「飢餓をゼロに」です。

世界中には、災害や貧困などの理由から、明日の食べ物にも困っている方が大勢います。2022年の調査では、重度の食糧不安に悩む方の数が世界の7人に1人(9億人)にも及ぶことが分かりました。

(参考:WFP「世界の飢餓人口=国連報告書」

SDGs②では、こうした食糧不足や栄養不足に悩む方をなくすことが目標です。

①の「貧困をなくそう」と同様に、②の「飢餓をゼロに」の取り組みも、こども食堂の役割と共通する内容になっています。

【SDGs③】すべての人に健康と福祉を

SDGsの3番目の目標は「すべての人に健康と福祉を」です。

世界には、風邪や肺炎などの病気にかかった際に、治療が受けられずに悩むこどもが大勢います。SDGs③は、こうした人を減らすことが目標です。

治療を受けられるこどもを増やすと同時に、栄養面からの予防や、健康改善にも取り組んでいかなければいけません。

こども食堂もまた、栄養不足を減らし、すべてのこどもに満足のいく食事を提供することが目標です。

【SDGs⑪】住み続けられるまちづくりを

SDGsの11番目の目標が「住み続けられるまちづくりを」です。

世界には、安心して暮らせる家がなくて困っている方がたくさんいます。2030年までに、こうした人たちが安心して暮らせるようにすることが目標です。

昨今の日本でも、さまざまな事情から、孤独感や不安を抱えているこどもがいます。こども食堂は、このような悩みを抱えるこどもたちの居場所としての役割も担っています。

こどもたちが安心して暮らせるまちを作るためにも、こども食堂の存在は重要です。

こども食堂の概要

こども食堂は、栄養バランスに配慮された料理が低価格で食べられる地域密着型の食堂です。

こどもだけではなく保護者や地域の方など、どなたでも利用できます。食堂によっては条件付きで食事を無料提供するなど、運営方針はさまざまです。

こども食堂のほか「みんな食堂」や「地域食堂」などの名称で活動している場合もあります。まずは、こども食堂が誕生した背景やその役割について確認してみましょう。

こども食堂の役割

こども食堂の役割は、ただ食事を提供するだけではありません。

時代やライフスタイルの変化によって、1人で食事をするこどもは増加傾向です。こども食堂は、孤食に悩むこどもにとって、誰かと一緒に食事ができる貴重な機会になっています。

そのほか、こどもだけではなく親同士や地域住民などが、憩いの場として利用しているケースも珍しくありません。

一人暮らしの高齢者や、兄妹がいないこどもなど、1人で過ごす時間が多い方の居場所としても活用されています。

こども食堂には、ただ食事ができる場所としてだけではなく、さまざまな思いや希望が込められているのです。

こども食堂の主な運営元

こども食堂の主な運営元は、NPO法人や社会福祉法人、民間団体などです。

そのほかにも、自治体や協同組合、個人などが連携を取りながら運営を行うケースもあります。

なお、こども食堂を開催する際、特別な資格や免許は必要ありません。運営費や会場、人員などの確保ができれば、どなたでも出店できます。

一方で、安心してこども食堂を利用してもらうためには、適切な衛生管理が必要不可欠です。

こども食堂が生まれた背景

初めてこども食堂が誕生したのは、2012年のことです。

東京都にある「気まぐれ八百屋だんだん」の活動がきっかけで始まりました。さまざまな事情から、バランスのよい食事を食べる機会が少ないこどものために始まった活動です。

なお、こども食堂の活動が広まる以前にも、類似の取り組みは行われていました。例えば、児童館での料理体験や食事会、自治体による会食イベントなどがあげられます。

その後、テレビで紹介されたのをきっかけに、全国的にこども食堂の活動が知られるようになりました。

こども食堂のメリット

こども食堂には、一般的な食事処にはないさまざまな魅力があります。

こども食堂の主なメリットは以下の3つです。それぞれ確認してみましょう。

孤独を感じるこどもたちの居場所づくり

こども食堂は、孤独に悩むこどもたちの居場所としての役割も担っています。

昔と比較して、現代では共働きも一般的になりました。また、少子化や一人っ子世帯の増加にともなって、1人で過ごすこどもは増加傾向です。

さらに、ライフスタイルの変化によって、こども同士が直接会って遊ぶ機会も少なくなりました。このように、さまざまな要因から孤独感を抱えているこどもは珍しくありません。

親と過ごす時間が少ないこどもや兄妹がいないこどもなど、1人の時間が多いこどもたちにとって、こども食堂は貴重な居場所づくりになっているのです。

安価で手料理が食べられる

こども食堂の魅力は、栄養バランスに配慮された料理が安価な料金で食べられることです。

一般的なこども食堂では、料金を500円未満に設定するケースが多くあります。さらに、こどもに対しては値引きや無料で食事提供する場合もあります。

無料で提供する場合は、お店の手伝いを条件にするなど食堂によって工夫はさまざまです。

インスタント食品で済ませる機会が多い現代人にとって、誰かの手料理を安い料金で食べられるこども食堂は、今後も重宝されるでしょう。

誰かと一緒に食事ができる

時代とともに、家族構成や生活環境は大きく変化しました。

とくに、核家族化の進行によって多世代で暮らす家庭は減少傾向にあり、大人数での食事の機会も少なくなっています。

日頃、少人数や1人での食事に慣れているこどもにとって、ご家族以外の誰かと食事ができるこども食堂は、貴重な共食の場になっています。

普段は関わりがない世代の方や、地域住民と交流するきっかけが作れるのも、こども食堂の魅力です。

SDGsの観点から見るこども食堂への取り組み

SDGsの取り組みとこども食堂の運営理念には、深い関連性があります。

SDGsの本質は「持続可能な開発目標」です。地球上で生活していく上で考えなければいけないことや、安心して暮らせる世界を作るにはどうすればよいかを示した内容になっています。

こども食堂の取り組みは、安心して住み続けられるまちづくりにつながっており、SDGsの目標とも共通していることが分かるでしょう。

この目標を達成するためには、企業や自治体、地域住民一人ひとりの協力が必要不可欠です。

SDGsの観点から考えるこども食堂の問題点

SDGsの目標や理念と関連性が多いこども食堂ですが、安定して運営できる仕組みが確保できずに経営困難になるケースが少なくありません。

一般的に、こども食堂は営利目的で運営されておらず、安価や無料で食事を提供しています。そのため、運営資金の調達に悩む食堂が多い傾向です。

そのほか、十分な人員が確保できず、人手に苦悩するケースも珍しくありません。スタッフをボランティアに頼っている食堂は多くあります。

持続的にこども食堂を運営するためには、人員や資金をどのように確保していくか、事前に検討しなければいけません。

【SDGs】こども食堂の今後について

こども食堂の安定的な運営を考える上で、国や自治体、地域住民などの連携は必要不可欠です。

企業や個人のみの活動では、人員や資金面に限界があります。これらの問題を解決するには、国や自治体による支援制度のほか、個人によるボランティアや食材寄付なども重要です。

一方で、せっかくこども食堂を開催しても、思ったように利用してもらえない事例もあがっています。その要因として、感染症による懸念やこども食堂自体が認知されていないことがあげられます。

今後、これらの課題に取り組むためには、地域住民や周囲の人が一丸となってサポートしていける環境が必要です。

まとめ

この記事では、こども食堂の役割やSDGsとの関連性について解説しました。

SDGsの理念には、こども食堂の取り組みと関連の深い内容が含まれています。貧困や飢餓に悩むこどもをなくし、安心して暮らせるまちを作るのがSDGsとこども食堂の共通目標です。

昨今では、さまざまな事情や要因から孤独に悩むこどもが少なくありません。こども食堂は、こうした悩みを抱えるこどもの貴重な居場所にもなっています。

今後、SDGsの観点からも、こども食堂の役割や取り組みはより重要なものになっていくでしょう。

こども食堂に興味がある方は、居住区の活動をチェックしてみてください。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。