ビジネスケアラー
2024-11-19
介護休業給付金制度とは?支給対象者や条件をわかりやすく解説
日本では少子高齢化が進行しており、親の介護を理由に退職する方も少なくありません。こうした状況を踏まえ、介護離職を防ぐために設けられたのが介護休業制度です。この制度では、介護のために仕事を休んでいる間、収入が途絶えないように支援するための仕組みとなっています。
しかし、「どんな人が支給対象になるのか」「申請手続きはどうすればいい?」と疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。
本記事では、介護休業給付金の支給対象や金額、申請に必要なポイントをわかりやすく解説します。
いつ自分が家族の介護をする立場になるかわかりません。事前に制度を理解し、安心して介護と仕事を両立できる準備をしておきましょう。
介護休業給付金制度について
介護休業給付金制度とは、ご家族の介護を目的として介護休業を取得した労働者に対し、休業期間中の収入を補助する制度です。こちらの制度を活用することで、介護休業期間中の収入がなくなるのを防げるため、経済的な負担を軽減できます。
介護休業給付金について、以下のポイントを確認していきましょう。
- ・対象者
- ・支給条件
- ・支給される期間
- ・介護休業と介護休暇の違い
介護休業期間が終了すれば会社に復帰できるため、収入や再雇用などの不安も軽減されるでしょう。
対象者
介護休業給付金を受け取るためには、雇用保険の被保険者であることが必要です。介護休業開始前の2年間のうち、被保険者として12か月(※)以上勤務していることが必要です。なお、賃金支払い基礎日数が11日以上勤務した月、または80時間以上働いた月を1か月と換算します。
パートや契約社員の方も条件を満たせば対象になりますが、日雇い労働者や有期雇用者は雇用期間などの条件によっては対象外となる場合があるため注意が必要です。
(※)介護休業の開始日前日から1か月ごとに区切った期間で、賃金支払いの基礎となる日数が11日ある月を1か月とみなす
支給条件
介護休業給付金は、介護休業を取得した方が対象です。介護が必要なご家族の範囲は、以下のとおりです。
【対象となる介護が必要な家族】配偶者(事実婚を含む)・父母(養父母を含む)・子ども(養子を含む)・配偶者の父母(養父母を含む)・祖父母・兄弟姉妹・孫 |
介護休業期間を会社に申請した時点で、会社から介護休業給付金の手続きがされることが一般的です。また、介護休業を取得後に手続きをするため、介護休業期間中に給付金を受け取ることはできません。
介護休業制度の取得条件は、次の記事でも解説しています。介護休業給付金を受け取るために必要な制度ですので、ぜひご覧ください。
介護と仕事の両立ができる介護休業制度とは?対象者や取得条件などわかりやすく解説
支給される期間
介護休業給付金は、介護休業が開始した日から1か月(30日)ごとに計算される「支給単位期間」に基づいて計算されます。1回の介護休業は93日まで取得でき、最大で3回に分けて取得可能です。
例えば、1回の休業期間を4月1日から5月31日までの61日間を取得する場合、次に9月1日から10月2日までの32日間を2回目の介護休業として取得できます。
介護休業給付金の支給額は、介護休業前の賃金に基づき計算されます。原則、介護休業前の賃金の67%が給付額です。計算方法は次のとおりとなります。
【支給額の計算方法】
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×67% |
例えば、1か月に20万円程度の賃金がある人の支給額は、約13.4万円です。
介護休業前賃金の日額の計算は、介護休業開始前の6か月間の総支給額(保険料などが控除前の金額)を180で割ります。具体的には、次のような計算方法です。
【支給期間が支給単位期間(職場復帰による休業終了も含む)場合】
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数(暦の日数)×67% |
例えば、1か月の賃金が約30万円とすると、休業開始時賃金の日額は約1万円になり、介護休業で25日間休んだ場合、支給額は約16.7万円です。仮に38日間使用した場合には、約25.4万円支給されます。
介護休業と介護休暇の違い
介護休業は最大で93日間仕事を休める制度であり、1人の要介護者に対して一度のみ利用可能です。一方、介護休暇は短期間の休みを取得する制度です。対象家族1人に対して1年間で5日間取得できます。介護休暇は1日単位、場合によっては時間単位の取得も可能です。介護休暇は1年ごとに更新されるため、5日分使い切ったとしても、翌年には再度5日間利用できます。
介護休業給付金を受け取る際のポイント
介護休業給付金を受け取るためには、次の3つのポイントを押さえておく必要があります。
- ・2週間未満の介護休業の場合でも受け取れる
- ・1人の要介護者に対して複数人の介護者でも給付される
- ・複数の要介護者がいる場合でも受け取れる
それぞれのケースについて解説します。
2週間未満の介護休業の場合でも給付される
介護休業取得要件には、以下のとおり定義されています。
負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態にある家族(次のいずれかに限る)を、介護するための休業であること。 |
しかし、「常時介護を必要とする状態」というのは、介護休業の取得期間を指しているのでなく、対象となるご家族の状態のことです。給付条件が満たされていれば、仮に10日間だけの介護休業に対する介護休業給付金が受け取れます。
介護サービスの利用や周囲の人の協力が得られる場合は、介護休暇で済む場合もあるため、職場やご家族と相談しながら介護計画を立てることが大切です。
1人の要介護者に対して複数人の介護者でも給付される
同じ対象者を介護するために、複数の人が介護休業を取得する場合、それぞれの人が給付要件を満たせば給付金が支給されます。
例えば、祖父の介護に対して、自分のほかに配偶者と兄弟姉妹がそれぞれ3か月ずつ介護休業を取得可能です。仮に自分とほかの介護者で介護休業期間が重なったとしても、それぞれ取得した介護休業期間分の給付金を受け取れます。
複数の要介護者がいる場合でも受け取れる
家庭内に複数の要介護者がいる場合、それぞれに対して介護休業を取得し、介護休業給付金の申請ができます。例えば、祖父が要介護となったあとに、祖母の介護が必要になった場合でも、申請すれば給付金の受給が可能です。
状況に応じた柔軟な使い方が可能ですが、ケースごとに手続きが必要となる点に注意しましょう。
介護休業給付金がもらえないケース
介護休業給付金は、介護をするご家族にとって心強い制度ですが、支給されないケースもあります。給付金の減額や受け取りできないケースは以下のとおりです。
- ・介護休業の期間中に仕事をした場合、給付額が減額される可能性がある
- ・退職を予定している場合は受け取れない
- ・他の制度で給付金を受け取っている場合は支給されない
それでは、一つずつ確認しておきましょう。
介護休業の期間中に仕事をした場合は減額される
介護休業中に仕事をした場合、介護休業給付金は減額される場合があります。賃金の額に応じて、介護休業給付金の割合が調整されるからです。
例えば、仕事先からの賃金が休業開始時の月額賃金の13%以下の場合、一般的な計算と同様に、「支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算されます。
一方、支払われた賃金が、休業開始時の賃金月額の14%以上80%未満の場合は、次のような計算方法です。
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×80%-仕事で得た賃金 |
また、支払われた賃金が80%を超えた場合、介護休業給付金は支払われません。
退職を予定している場合は受け取れない
介護休業給付金は、介護休業が終了後に復職することを前提とした制度です。そのため、休業前から退職が決まっている場合、介護休業給付金は支給されません。
他の制度で給付金を受け取っている場合は支給されない
介護休業以外にも、産前産後休業や育児休業など、ほかの給付制度を利用している場合、介護休業給付金は支給されません。
介護休業給付金を受け取るためには、現在利用している休業制度の給付金を中止する必要があります。ただし、取得のタイミングをずらすことで、両方の給付金を受け取れる場合もあります。育児と介護のダブルケアが必要になった場合には、取得時期を調整することで経済面の不安が軽減されるでしょう。
介護休業給付金の申請方法
介護休業給付金は、会社や事業所が申請するため、自分で手続きすることは基本的にありません。自分で申請したい方は、事業所の所在地が管轄しているハローワークで手続き可能です。ここでは、申請に必要な書類や支給方法について解説します。
必要書類
介護休業給付金を申請するには、次の書類が必要です。
- ・介護休業給付金支給申請書
- ・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- ・介護休業申出書
- ・本人とご家族の続柄・性別・生年月日などが確認できる公的書類
- ・介護休業の開始日と終了日が確認できる書類
- ・(介護休業中に就業していた場合)期間中に支払われた賃金が確認できる書類
「介護休業給付金支給申請書」は、ハローワークへ足を運ぶか、インターネットでダウンロードする二つの手段があります。介護休業を分割して取得する際は、その都度申請書が必要です。介護休業を取得する際は、個人番号が必要となるため、介護者と要介護者のマイナンバーカードを準備しておきましょう。
なお、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書は、ダウンロードできないため、ハローワークで入手する必要があります。
支給方法
介護休業給付金給付申請書などの手続きは、介護休業の終了日の翌日から起算して2か月を超えた日の月末までが期限です。
手続きが完了すると、支給の可否が決定され、認められた場合は支給額の決定通知書が郵送されます。給付金は支給決定後、約1週間で申請書に記載した金融機関の口座に振り込まれます。
介護休業給付金を活用して仕事と介護を両立させよう
介護休業給付金は、介護離職の軽減を目的に設けられた制度で、介護休業で発生する経済的負担を軽減する重要な役割があります。
万が一、複数人の介護が必要になった場合でも、要件を満たせば、それぞれの対象者に対して給付金が受け取れる点は大きなメリットです。
介護が必要になったときの備えとして、介護休業給付金の制度を理解することが大切です。事前に職場やハローワークなどで必要な手続きや条件を確認し、仕事と介護を無理なく両立させられるよう、準備しておきましょう。