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2024-11-09

【弁護士が解説】2025年4月・10月施行、育児介護休業法改正のポイントをわかりやすく解説!

2024年5月24日、「育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法」が国会で可決・成立しました。

 

施行は2025年4月と10月に段階的に進められる予定です。今回は施行に先立ち、改正法のポイントについて解説します。

育児介護休業法改正の概要について

ここでは育児介護休業法改正の概要について解説します。

改正の目的

前述のとおり、2024年5月24日に「育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法」の改正が国会で可決しました。なお、今回の改正は、男女問わず労働者が仕事と育児・介護を両立できるよう支援することを目的としています。

公布日と施行日

育児・介護休業法改正の公布日は、2024年5月31日でした。施行日は2段階に分かれており、おおむね2025年4月1日から施行されますが、「働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設」ならびに「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮」は、2025年10月1日からの施行が予定されています。

今回の法改正のポイントは、以下の3点となります。

  1. 1.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
  2. 2.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
  3. 3.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化など

次章から各ポイントについて解説していきます。

ポイント1:子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

こちらについては、以下の改正が行われました。

  1. 1.働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設
  2. 2.残業免除の対象範囲拡大
  3. 3.子の看護休暇の拡大
  4. 4.3歳未満の子を育てる労働者においては、努力義務の対象にテレワークを追加
  5. 5.仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化

①働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設

事業主には、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対し、職場のニーズに応じた柔軟な働き方を選択し、実現できるよう措置を講じることが義務付けられました。

具体的には、以下の5つの中から事業主が2つ以上選択することが必要です。

  • ・始業時刻の変更
  • ・テレワーク
  • ・短時間勤務
  • ・新たな休暇の付与
  • ・その他、働きながら子を養育しやすくするための措置

また、これらの措置について対象労働者への個別の周知および意向確認も義務付けられています。

②残業免除の対象拡大

これまでは、3歳未満の子を養育する労働者に限り、原則として事業主に対する請求により残業が免除されていました。法改正により、対象が小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大されました。

③子の看護休暇の拡大

看護休暇が拡大され、負傷や疾病にかかった子の世話などを行うための休暇がより利用しやすくなりました。

具体的には、以下のとおりです。

  • ・感染症に伴う学級閉鎖や子の行事(※入園および入学式、卒園式も含む)に参加する場合も取得可能
  • ・対象となる子が小学校就学前から小学校3年生修了時までに延長
  • ・週の所定労働日数が2日を超える勤続6カ月未満の労働者も取得対象(※従来は週の所定労働日数に関係なく勤続6カ月未満の労働者は対象外)

④3歳未満の子を育てる労働者につき、テレワークを努力義務化

事業主には、3歳未満の子を養育する労働者が育児休業を取得していない場合、テレワーク(在宅勤務など)の措置を講じることが新たに努力義務として求められています。ただし、これは努力義務であり、措置を講じなくても罰則は適用されません。

⑤仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化

労働者が事業主に対して妊娠・出産などの報告を受けた場合、事業主は労働者に対して、仕事と育児の両立に関する個別の意向を聴取し、その意向に配慮することが義務付けられました。

ポイント2:育児休業の取得状況の公表義務の拡大および次世代育成支援対策の推進・強化

こちらの改正は、以下の3点です。

  1. 1.育児休業取得の公表義務の拡大
  2. 2.行動計画策定時における状況把握・数値目標設定の義務付け
  3. 3.次世代育成支援対策推進法の有効期限延長

以下、詳細について解説します。

①育児休業取得の公表義務の拡大

改正前は、常時雇用する労働者の数が1,000人を超える事業主に、毎年1回のペースで育児休業の取得状況を公表する義務が課されていました。改正法の施行により、この対象が拡大され、常時雇用する労働者が300人を超える事業主にも公表義務が適用されます。

②行動計画策定時における状況把握・数値目標設定の義務付け

今回の法改正には、次世代育成支援対策推進法の改正も含まれています。この改正により、さらなる育児休業の取得促進を目指して、従業員数100人以上の事業主に対し、行動計画策定時に育児休業の取得状況などを把握し、数値目標を設定することが義務付けられました。なお、従業員100人に満たない企業は、努力義務の対象です。

③次世代育成支援対策推進法の有効期限延長

次世代育成支援対策推進法は、当初2025年3月31日までの有効期限とされていましたが、延長され、2035年3月31日まで有効となりました。

ポイント3:介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

「介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等」の具体的な改正は、以下の3点です。詳細について解説していきましょう。

  1. 1.両立支援制度~個別周知・意向確認の義務化
  2. 2.介護休暇の対象範囲拡大
  3. 3.家族を介護する労働者について、テレワークを努力義務化

①両立支援制度~個別周知・意向確認の義務化

改正法では、介護休業制度や仕事と介護の両立支援制度の周知・浸透および利用促進を図るため、事業主に以下の事項が義務付けられます。

  • ・労働者が家族の介護に直面した連絡を受けた場合、介護休業の制度や両立支援制度などにつき、個別の周知と意向確認を行う
  • ・40歳に達した労働者などに対して、介護休業の制度や両立支援制度に関する早期の情報提供を促す
  • ・介護休業の申請が円滑に行われるようにするため、労働者に対する研修の実施や相談体制の整備など、雇用環境整備の措置を講ずる

②介護休暇の対象範囲拡大

「介護休暇」とは、要介護状態にある家族の世話を行うための休暇です。対象家族のいずれかが要介護状態であれば、1年度あたり5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで介護休暇を取得できます。

従来は労使協定により、勤続6カ月未満の労働者を取得対象外としていましたが、今回の法改正により、その制限が撤廃されました。これにより、入社して間もない労働者も介護休暇を取得できるようになりました。

なお、介護休暇の対象家族は、以下のとおり、定義されています。

  • ・配偶者
  • ・父母
  • ・配偶者の父母
  • ・子
  • ・祖父母
  • ・兄弟姉妹
  • ・孫

③家族を介護する労働者について、テレワークを努力義務化

事業主には、要介護状態にある家族を介護する労働者が介護休業を取得していない場合、テレワーク(在宅勤務など)の措置を講じる努力義務が新たに課されました。努力義務であるため、措置を講じなくても罰則はありませんが、介護離職を防止するために、事業主が積極的にテレワークの導入を進めることが期待されます。

最後に

今回の法改正は、少子化対策や介護離職の防止を目的に行われ、事業主に対してさまざまな義務が課されました。事業主としては、改正により義務化される内容を正確に把握し、自社の制度や社内規程を見直す必要があります。

また、新たな制度やルールを労働者に周知し、育児や介護を担う労働者に適切な配慮ができるよう、社内研修などを実施することも検討しなくてはなりません。労働者が安心して仕事と育児・介護を両立できる環境を整え、離職を防ぐためにも、この法改正が各事業所で適切に履行されることが期待されます。

寺林智栄

NTS総合弁護士法人札幌事務所 
所長弁護士

2007年弁護士登録。2013年ころからウェブサイト上で法律記事のライティングを始める。ヤフートピックスで1位獲得複数回あり。弁護士としての業務経験をもとに、現在も多様な分野の法律問題について執筆活動を継続している。