介護情報メディア ケアケア ケアラー向けコラム ビジネスケアラー 迫る2025年問題とは?ビジネスケアラーに起こる影響や対応について解説

ビジネスケアラー

2024-03-01

迫る2025年問題とは?ビジネスケアラーに起こる影響や対応について解説

2025年問題とは、2025年に団塊の世代(1947〜1949年生まれの人々)が75歳以上の後期高齢者に突入し、それに伴い生産年齢(15~64歳までの人)が減少するため、介護問題や社会福祉問題・労働力不足などが起きることです。

 

また、介護が必要な高齢者の増加も予測されるため、働きながら介護をする「ビジネスケアラー」の増加も考えられるでしょう。

 

本記事では、仕事や介護の両立ができる制度や介護離職を防ぐための企業の取り組みを解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

2025年問題とは

2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、65歳以上の高齢者が人口の約3割を占め、医療や介護が必要になる人が増加する問題です。

厚生労働省の調査によると、2012年の75歳以上の高齢者人口は1,519万人で、2025年には2,179万人となっています。

高齢者の増加により、年金や医療・介護などの社会保障費が増大し、現役世代の社会保障費負担の増加も課題の1つです。

一方、20歳から64歳の人口は7,412万人から6,559万人まで減少しており、労働力不足や経済成長に影響が出ることが予想できるでしょう。

2030年も日本の人口は減少し続け、経済活動の低下や社会保障制度の負担が増加も問題です。

そのため、2025年に向けて高齢者の医療費負担の見直しや医療・介護業界の人材不足の解消・ICT技術の導入なども進められています。

また、2040年には団塊世代の子どもが65歳以上になり、高齢化率がピークに達します。その影響から、地方の過疎化と介護人材の不足や医療の維持が懸念されているのです。

2025年問題がビジネスケアラーにどのような影響を及ぼすのか

2025年問題が近づいてくると、ビジネスケアラーが直面する課題はさらに深刻化すると考えられます。

具体的な問題は以下のとおりです。次の項目から、詳しく解説します。

※ケアケアではビジネスケアラーを「介護をする有業者のうち、仕事を主にするもの」と定義しています。ビジネスケアラーについてより詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

【ビジネスケアラー】介護と仕事の両立に必要な支援とは>>

ビジネスケアラーの負担

ビジネスケアラーが直面する負担は、単に介護業務の時間と労力だけではありません。

40代以降の働き盛りであるビジネスケアラーは、介護を理由に仕事を制限することで、自身のキャリアや職場内の居場所に不安を抱えている方も多い傾向です。

さらに、中小企業では人員に余裕がなく、一人ひとりにかかる負担が大きいため、周囲に対して「迷惑をかけている」と感じる方も少なくありません。

そのため、介護と仕事を両立できる制度を知っていても「介護は家族で行うもの」という考えが根強く、ビジネスケアラーは介護に関する悩みを他人に相談しにくい状況があります。

また、ビジネスケアラー自身が、介護保険制度介護サービス・両立支援制度そのものを知らないケースもあります。

ビジネスケアラーの負担が重くなれば、日常生活に影響を及ぼすリスクもあるでしょう。

そのため、ビジネスケアラーの負担を軽減するために、仕事と介護を両立できるような環境を整えることが求められています。

介護離職

ビジネスケアラーは、日中の仕事に加えて家庭では介護をしており、介護の負担が大きくなると、仕事との両立は精神的にも身体的にも辛くなります。

そのため、最終的に介護離職を選択するケースも少なくありません。

しかし、介護を理由に職場を離れると、収入源が失われ、家計に大きな打撃を与えます。介護に関わる経済的負担と合わせると、家計は厳しいに状態に陥るでしょう。

このようなケースでは、満足のいく介護環境が作れず、精神的にも望ましくない状況になります。

また、介護離職はビジネスケアラーだけでなく、企業や社会全体にも及びます。

例えば、従業員の介護離職が進んだ場合、特に中小企業では新たな人材確保が難しくなり、業務の継続性や生産性に影響が出ることもあるでしょう。

企業が介護離職を防ぐためには、柔軟な勤務体制の導入やテレワークの推進・介護休暇制度の拡充など、仕事と介護を両立できる環境を整備し、従業員がこれらの制度を気兼ねなく利用できる環境を作ることが重要です。

また、従業員が制度をうまく使えるように、相談窓口を設置することも重要になります。

介護離職をしないために使用できる制度

介護離職をしないためには、以下のような制度があります。

介護休業制度

・介護休暇制度

・介護保険制度

・介護休業給付金の支給

これらの制度を活用することで、仕事と介護のバランスを取りながら、安心して生活を送れるでしょう。次から詳しく解説します。

介護休業制度・介護休暇制度

介護休業制度は介護のために一定期間、仕事を休める制度です。取得するには通算93日までで、3回を上限としています。

一方、介護休暇制度は短期間の休暇を取得し、介護に充てられる制度です。

年間に取得できる日数は、介護が必要なご家族1人につき年間5日間、介護が必要なご家族が二人以上いる場合は年間10日までとなります。介護休暇制度は、有給休暇とは別に1日単位または時間単位で取得可能です。

これらの制度は、従業員の申請で取得できるため、まずは職場に相談してみるとよいでしょう。

ほかにも、短時間労働や時差出勤・在宅勤務制度など、会社独自で取り組んでいる企業もあります。介護休業については、都道府県の労働局で相談することも可能です。

介護保険制度

介護保険制度は、介護認定を受けた方が介護サービスを受けられる制度です。

介護保険サービスには、訪問介護やデイサービス・ショートステイなどの在宅介護サービスと特別養護老人ホームなどの入所施設があります。

介護サービスを利用し、1人の時間を確保できれば、介護の負担も軽減され、仕事と介護のバランスが取りやすくなるでしょう。

ほかにも、自治体による配食サービス安否確認サービス・介護保険外サービスなどもあり、地域住民の協力を求めることも可能です。

介護保険サービスを利用したいときは、まず市町村の窓口や地域包括支援センターへ相談しましょう。

介護休業給付金の支給

介護休業給付金は、雇用保険に加入している保険者が介護休業制度を使用した場合、休業開始時の賃金から約67%が支給されます。

そのため、介護のために仕事を休んでも一定の収入を確保できるでしょう。ただし、介護休業給付金の支給を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。

具体的な要件や支給額は、雇用保険の加入状況や休業期間によって異なります。仕事と介護を両立するためには、前もって社内で使える制度やサービスを知っているかどうかも重要です。

介護サービスについては、要介護者本人の同意が必要になるため、早めに話し合いをしてお互いが納得した上で手続きをしましょう。

実際に企業が行っている支援策・事例

企業は仕事と介護の両立支援マニュアルに沿った対策を行っており、さまざまな成功事例があります。

先に紹介したような制度を利用できるだけでなく、企業では社内の実態調査や仕事と介護の両立制度の周知、介護の準備を意識させることが大切です。

ここでは、実際に企業で行われている支援策や事例を3つ紹介します。

■ケース1:株式会社はなまる|セミナー開催で介護理解に効果

■ケース2:コマツ(株式会社小松製作所)|専門家による個別相談会が好評

■ケース3:ミニメイド・サービス株式会社|介護に直面しても長く働ける職場環境に

このような取り組みは、従業員の満足度の向上や離職率の低下、企業のイメージ向上だけでなく、社会全体の課題解決にもつながるでしょう。

ケース1:株式会社はなまる|セミナー開催で介護理解に効果

「株式会社はなまる」は、セルフ式讃岐うどんなどのファーストフード店の経営および、フランチャイズ店舗への経営指導などをしている企業です。

実施内容として、まず社内アンケートを実施し、介護の状況や社員の意識調査を行い、約2割の従業員が介護経験者または、予備軍であることがわかりました。

また「セミナーや勉強会に参加したいか」という質問では、約5割の従業員が「参加したい」と回答するなど、参加意欲が高いことも明らかになっています。

介護者が退社後にお酒を飲みながら話ができる「ケアバル」を開催し、社員同士の介護の悩みや苦労の共有ができる場を作っています。

株式会社はなまるで開催されたセミナーは、介護への理解を促進する上で効果的が高く、第1回セミナー後のアンケートでは、約9割の人が「良かった」「介護への具体的なイメージが持てた」「恐怖心が和らいだ」という声があげられました。

さらに、セミナーの回数を重ね、従業員の介護への理解が深まっているようです。

ケース2:コマツ(株式会社小松製作所)|専門家による個別相談会が好評

コマツは、建設の産業機械などを取り扱う企業です。コマツの介護・育児の両立に関する取り組みとしては、介護の専門家への個別相談会を月2回実施しています。

従業員の中には、育児と介護のダブルケアに悩んでいるケースもみられたため、ダブルケアに関する支援の対応もしていく方針です。

個別相談会の実施から「早期相談でき、離職を思いとどまった」という声があり、効果が出ていると考えられます。

さらに相談会の参加者は、開始当初と比較して約3倍となっており、従業員の関心も高くなっているといえるでしょう。

ケース3:ミニメイド・サービス株式会社|介護に直面しても長く働ける職場環境に

ミニメイド・サービス株式会社は家事代行サービスを提供している企業で、従業員の約9割が女性です。

現在、40~50代を中心としたパートスタッフが多く、介護の悩みに直面しています。

育児や介護があっても働き続けられる職場環境を整えるため、毎年自由記述式のアンケートを実施しています。

ミニメイド・サービス株式会社では、このアンケートがきっかけで、有給休暇を1時間単位で取得することが可能となりました。

この有給制度は、介護サービスの申し込みやデイサービスの送り出し後の出社に使用されています。

また、外部相談窓口「もしもし相談室」を設置、介護や育児・金銭面など、それぞれの専門家に無料で相談できます。

若い年代の社員にも介護に関する制度が整っていることへの安心感を持ってもらい、働きやすい職場としての認識が高まっています。

2025年問題に備えて、介護離職を減らせるような職場環境を整えることが重要

2025年には団塊の世代が後期高齢者に突入することで、その子ども世代のビジネスケアラーの増加が予想されます。

2025年問題を乗り越えるためには、企業側がビジネスケアラーの負担を理解し、支援することが不可欠です。

今後も日本では人材不足が予想され、介護離職で働ける人が減少することは、企業にとっても大きな影響を受けるでしょう。

そのため、多様な勤務体制・介護休暇制度・社内研修など、さまざまな施策を導入することが大切です。

誰しもビジネスケアラーになる可能性があります。気軽に相談でき、お互いに協力し合える職場環境を目指しましょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。