介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護業界の常識 介護職のストレス、原因と対処法は?転職時に良い施設を見分けるコツも紹介!

介護業界の常識

2022-10-25

介護職のストレス、原因と対処法は?転職時に良い施設を見分けるコツも紹介!

介護職はやりがいがある反面、さまざまなストレスに悩まされることも多い仕事です。しかし、ストレスを自分1人で抱え込んでしまうと、メンタルにダメージを受けてしまうリスクもあります。ストレスをため込まず介護職の仕事を続けるには、限界が来る前に誰かに相談する、上手に気分転換をするなどの対処が必要です。今回は、介護職にまつわるストレスの原因や対処法について解説します。また、ストレスを感じにくい良い施設の選び方や、転職のためのポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

介護職のストレスの原因

介護職は仕事のさまざまな場面でストレスを感じることが多い職業ですが、何がストレスの原因になっているのか、ケース別にみていきましょう。

人間関係:職員同士・利用者・利用者の家族など

介護職は業務中、絶えず誰かと一緒に動いているといっても過言ではありません。

例えば
・職員同士や利用者と気が合わない
・介護観やケアのやり方について先輩と意見が分かれた
・利用者の家族から苦情やクレームを言われる
など、人間関係にストレスを感じることも多いでしょう。

人手不足による負担が大きい

超高齢化で要介護の高齢者が増える一方で、労働人口は年々減少しているため、介護業界は慢性的な人手不足に苦しんでいます。そのため、現場を担う介護職の負担が増大していることも、ストレスの大きな一因になります。

給与に不満がある

介護職の給与の低さは、これまでに何度も指摘されてきました。国が2012年に運用をスタートした「介護職員処遇改善加算」制度で、以前より改善したといわれる介護職の給与ですが、給与の改善がなされていないのが現状です。介護職員は、対価を得ていないと不満を抱えているようです。

職場の理念や運営方針と合わない

自分の介護観や希望する働き方が会社と合わない場合も大きなストレスとなります。例えば「利用者のペースに合わせ、丁寧なケアをしたい」と望んでいても、人出が少なく効率化を最優先する施設で働いていれば実現は難しいといえます。納得できない理念の下で自分を抑えて介護職を続けるのは、精神的に大きな負担です。

キャリアプランを立てにくい

介護職は、将来に向けたキャリアプランを立てにくいこともストレスの原因の1つです。その理由として挙げられるのが、評価基準が曖昧だったり、適切な人事評価制度が設けられていなかったりする施設が少なくないことです。「がんばっているのに評価してもらえない」「将来の見通しが立てられない」などの不安がストレスの原因になっている恐れもあります。

これらのストレスを少しでも改善・軽減するにはどうしたらよいのでしょうか。次章では介護職が抱えるストレスの対処法についてみていきます。

介護職のストレスの対処法

ストレスを感じないに越したことはありませんが、実現はなかなか難しいものです。今感じているストレスを少しでも軽くする、あるいはうまく付き合っていく方法や考え方を少し変えて対処してみましょう。

ストレスの原因は何かを確かめる

自分が感じているストレスがどこからきているのか、原因を確かめてみましょう。おすすめの方法は感じていることを紙に書き出してみることです。悩みを頭の中から出してしまうことで、客観的に状況を考えることができます。

ストレスの原因がつかめたら、自分の努力で解決できること(人間関係の改善や業務への取り組み方)なのか、自分ではどうしようもないこと(施設の運営方針や人手不足など)なのかをはっきりさせます。自分で変えられる課題なら、努力をしてみましょう。できない場合は受け流すか、うまく共存するなどの対応をとりましょう。

誰かに悩みを聞いてもらう

ストレスや悩み、つらさは1人で抱え込むよりも、相談するほうが良い結果になりやすいです。話した相手から解決に役立つ意見やアイデアをもらえるかもしれません。また、話しているうちに内容が整理されて、解決策を見つけられることもあります。もし解決策が見つからなくても、誰かに話すことですっきりした気持ちになれるはずです。

価値観の違いを受け入れる

利用者への対応の仕方や働き方、介護観などは人それぞれです。介護職は年齢層も経験も多様な人が集まりやすいため、余計に差を感じやすいかもしれません。しかし、自分と異なる価値観すべてに反発していては、ストレスがひどくなる一方です。自分ではどうすることもできない問題と割り切り、「そんな考え方をする人もいるんだ」と受け流すことも、ストレスをため込まないことにつながります。

職場環境の見直しをする

人手不足による多忙や非効率な業務の進め方などにストレスを感じているなら、上司に職場環境の改善を訴えてみるのも1つの方法です。

ストレスを発散する(気分転換をする)

例えば、音楽鑑賞やアロマセラピー、散歩やストレッチ、ヨガなどで体を動かす、お笑いの動画やバラエティ番組で思い切り笑うなどの行動は、ストレス発散になります。手芸や料理などの趣味に打ち込むこともおすすめです。

生活リズムを整える

不規則な生活は神経伝達物質(セロトニン)の分泌に支障をきたし、うつ病などになりやすいといわれています。ストレスに負けにくい体をつくるためには、毎日決まった時間に寝起きする、栄養バランスの良い食事を三食食べるなど、生活リズムを整えることを意識しましょう。

毎日同じリズムで生活するのが困難な夜勤対応の介護職は、たとえ短時間でも夜勤中に仮眠をとりましょう。公益社団法人日本看護協会によれば、深夜3時から早朝6時の間に仮眠をすると良質な睡眠がとれるといわれています。夜勤中の1時間の仮眠は、夜勤前の3時間の仮眠とほぼ同じ効果があるという研究結果も出ているため、できるだけ仮眠をとるようにしましょう。

転職を検討する

職場が原因でストレスを感じている場合、転職するという選択肢を検討しましょう。他の職業に就こうと思い詰めていた介護職員が、自分に合う施設に転職したことで介護の仕事を続けられたという話もあります。ただし、転職活動を行う前に自分が最も大切にしたいことは何か、どんな条件で働きたいのか、理解しておくことが重要です。今の職場が嫌だからという理由だけで転職を繰り返すと、職場を転々とするジョブホッパーになりかねません。

介護職で転職を成功させるポイント・注意点

ここからは、転職を考えている方に向けて、介護職で転職を成功させるポイントや注意点についてご説明します。

ストレスが多そうな施設を避ける

ストレスが多そうな職場は、求人情報や施設見学、面接などで見分けることができます。転職活動を行う際は、ここでご紹介する項目に当てはまっていないかどうかをしっかり確認してください。

求人情報や派遣・人材紹介サイトなどで継続的に求人をかけている施設は要注意です。採用してもすぐに人が辞めてしまう、離職率の高い職場と考えられます。待遇や人間関係に問題があるかもしれないので、口コミなどで確認するとよいでしょう。

給与が相場と違いすぎる(安すぎる、または高すぎる)

施設の規模や事業内容、あるいは介護職の業務内容によって給与はさまざまですが、いわゆる「相場」に対し非常に低い、あるいは高い施設は注意してください。安いなら経営が思わしくないか、介護職を軽視している職場かもしれません。反対に高すぎる給与を提示する施設にも注意が必要です。休みがとりにくい、シフト外に呼び出されるなど、高いだけの理由が隠れている場合があります。

未経験でも採用などアピールしている

介護業界は慢性的な人手不足に悩んでいるため、とにかく人材を確保しようと「未経験OK」を強く打ち出す施設も珍しくありません。介護職は初めてという方が応募する場合は、未経験者を一から育てられる環境が整えられた施設なのか、とにかく今すぐ人手が必要な施設なのか、見極める必要があります。また、教育制度は待遇などの条件をしっかり調べておきましょう。

見学時の見分け方

スタッフ間の雰囲気が悪い

施設を見学する際には、対応してくれる職員だけでなく、他の業務対応中の介護職もよく見ておきましょう。介護職に笑顔が少なかったり、職員同士の連携が良くなかったりする施設は、人間関係に何らかの問題があると考えられます。客観的に人間関係が悪いと感じる施設は避けたほうがよいでしょう。

掃除が行き届いていない

施設内は掃除が行き届いているか、物が散らかっていないか、悪臭や不衛生な部分はないかなども、押さえておきたいチェックポイントです。掃除が適当なのは職員のモチベーションが低い、あるいは人手が足りず掃除に手が回らないのかもしれません。また、物が散らかったままになっている場合は、「利用者がつまずいて転倒する危険性を考慮できていない=リスク管理できていない」いう恐れも。悪臭や不衛生については、利用者の健康に配慮が行き届いていないといえます。迷ったときは「自分が介護職としてここで働く場合、ストレスを感じないか」を自問してみてください。

面接時の見分け方

面接官の態度が悪い

面接官は、施設内で役職者が行うことが多いため、振る舞いや言動を細かく見て、どのような人物かを判断しましょう。一緒に働く仲間になるかもしれない求職者に対し、高圧的な態度やぞんざいな対応をする場合は、職員になってもおそらく同じように接してくることが予想できます。面接者の言動に違和感を覚えたら、返事はいったん保留にしましょう。

求人情報と異なる労働条件を提示される

面接時に、求人内容や見学時の説明とは異なる労働条件を提示してくる施設も存在します。ご自身が気にならない程度の内容ならまだいいですが、給与や待遇などを変えてくる施設は信頼できないため、転職先の選択肢から外しておくほうが賢明です。

採用決定が異常に早い

もしあなたの希望の条件やスタッフとの相性など、その施設とぴったりマッチしたとしても、最終面接でもないのにその場で内定を出してくる施設には注意してください。「人が足りないので明日からでも仕事に入らせたい」「すぐ離職されるかもしれないから、入れそうな介護職はいったん内定を出しておこう」という本音が隠れている恐れがあります。その場では保留し、決定は持ち帰ると伝えても問題ありません。

まとめ

介護職は大きなやりがいがある反面、さまざまなストレスを感じやすい職種でもあります。ストレスを感じている介護職の方は、1人で抱え込まずに周囲の人に相談することも考えてみましょう。自分に合ったストレス対処法も見つけながら、それでも働き続けるのがどうしても無理だと思ったら、思い切って職場を変えてみるのも1つの方法です。転職する際には、今回ご紹介したストレスの多そうな施設は避け、ご自身が納得できる職場を見つけてください。

渡口 将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。