介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 資格・就職・転職 現役ケアマネにインタビュー! ケアマネージャーのリアルな悩みと対処法(後編)

資格・就職・転職

2023-04-21

現役ケアマネにインタビュー! ケアマネージャーのリアルな悩みと対処法(後編)

インタビュー後編は、現役ケアマネージャーとして働くTさんに、ケアマネージャーのリアルな悩みや課題について伺います。

現役ケアマネージャーにインタビュー

ケアマネージャーのTさん

ケアマネージャーの資格を取得する際、大変だった点はありますか?

ケアマネージャーの資格を取るには、介護支援専門員実務研修受講試験を合格した後に、長時間の実務研修を受ける必要があります。資格取得の費用や研修のための時間を確保するのはやはり大変でした。

私の場合は当時働いていた会社が資格取得に理解があり、研修の日は休みも取れて、わりとスムーズに資格を取ることができましたが、やはり仕事と勉強の両立は大変です。

私はテキストを購入して勉強しましたが、専門講座を受講している仲間もいました。仕事が忙しくて勉強の時間がなかなか取れない人は専門講座の受講を検討してみるのもいいかもしれません。

―ケアプランを作成する上での難しさや心がけていることを教えてください。

やはり、利用者さんご本人の想いと家族の想いが一致しない場合や、必要なサービスとご本人の気持ちが乖離している時のケアプラン作成は難しいですね。

そういった場合、言い回し1つでご本人が受け止めやすくなったり、拒絶の気持ちが芽生えたりするので、言葉をどうリフレーミングするか、しっかり考えるようにしています。

それから、ケアプランを作成する際、利用可能な介護保険サービスをパズルのピースのように当てはめがちですが、介護保険のサービスを利用したせいで家族との関わりが薄くなり、関係性が壊れてしまうこともあるので注意が必要です。

私は、介護保険サービスありきで考えず、ご本人を取り巻く環境や人を見つめて、ご家族や地域の力など保険外のインフォーマルサービスも取り入れながらプランを練るように心がけています。

―ケアマネージャーとして働く中で感じる難しさはどういったところでしょうか?

大きく3つあるかな、と思います。

1つめは人間関係ですね。ケアマネージャーの仕事は感情労働と言われており、利用者さん、ご家族、スタッフ、関係機関の皆様方など、さまざまな人と接する『人対人』の仕事です。それぞれ違った関係性があり、そこがケアマネージャーとしての楽しみでもあるのですが、複雑で悩ましく、一番苦労しているところでもあります。

―人間関係を円滑にするために行っている工夫や対処法はありますか?

利用者さんと接する上での工夫としては、別居家族との関係性をおろそかにしないようにしています。

ケアプランの作成やモニタリング業務を行う上で、どうしてもご本人と同居家族ばかりに目が向きがちですが、別居家族との関係性をおろそかにしてしまうと、思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。そういったトラブル回避のためにも、別居家族と顔の繋がる関係性を心がけ、もし遠方であれば電話をするなど、できるだけ連絡を取るように心がけています。

全般的な人間関係では、相手の目を見て話すことと話し方に注意を払っています。私はどちらかというと硬い言葉遣いになりがちなので、相手に距離を感じさせないように硬くなりすぎず、だからといって上から目線の言い方にならないように心がけています。

それから、人間関係を円滑にするためには自分が元気でいることも重要です。私の場合は、友人と飲みに行くなど介護職以外の人と関わってリフレッシュするようにしています。自分に合ったリフレッシュ方法を見つけてリフレッシュすることは大切かな、と思います。

―2つめのケアマネージャーとして働く中での難しさは何でしょうか。

2つめは、研修の多さです。ケアマネージャーの資格維持には研修の受講が欠かせません。介護の制度改正が3年ごとに行われることもあり、高齢介護を取り巻く環境は目まぐるしく変化します。その変化に対応するため、ケアマネージャーは常に研修や勉強を必要とされます。

大変ですが、現場に没頭しすぎて学びがおろそかになると、自分自身が取り残されるだけでなく、利用者さんが不利益を被ることになるため、変化に合わせた研修や勉強はケアマネージャーにとって重要なことだと感じています。

―3つめのケアマネージャーとしての難しさや対処法について教えてください。

3つめは、さまざまなサービス機関と連携を図るための関係性の構築と情報収集についてです。

これは1つめの人間関係とも重複しますが、私は多種職との連携を円滑にするためには顔と顔の繋がった関係性が一番大切だと考えており、顔と顔が繋がれる関係性を地域で作れるように今年度から取り組んでいます。

具体的には、ケアマネージャー間でも情報交換ができる場として、ケアマネージャーカフェを作ったり、また、私自身が社会福祉協議会の委員会のメンバーになったり、医療関係者と連携が取れるような会に参加したりして、さまざまな職種の方からお話を聞き、情報を収集するように努めています。

ケアマネージャーのTさん

―ケアマネージャーとして仕事を続ける中で、見えてきた課題や問題点などはありますか?

ケアマネージャーのグレーな業務は、今後の大きな課題ではないかと考えています。

実は、ケアマネージャーの業務の中には、本来ケアマネージャーの業務ではないのに、介護保険を回すためにケアマネージャーが行っているグレーなサービスや業務がたくさんあります。

例えば、コロナ禍の介護サービスでは、コロナの感染が心配でヘルパーさんが来てくれずに食事を頼めない利用者さんのために、多くのケアマネージャーがお弁当を届けていました。こういった書面化されていない隙間のサービスというのは多数あり、その隙間をケアマネージャーが埋めることで介護保険が回っている事実についてはあまり知られていません。

このようなグレーな業務についてもきっちり書面に起こし、しかるべきところに上げて、ちゃんと評価される仕組みができれば、ケアマネージャーのモチベーションも上がりますし処遇の改善にも繋がるのではないかと考えています。私自身、そういった仕組みを作るための活動を積極的に行っていきたいと考えています。

―今後のキャリアアップや目標について教えてください。

キャリアアップに関しては、ケアマネージャーの上級資格である主任介護支援専門員の資格を取得して一段落しているので、今後は介護のスペシャリストになるために、社会福祉士と精神保健福祉士の資格を取得したいと考えています。

将来的な高齢介護の仕事では、さまざまな問題を包括的に、または、ワンストップに対応することが求められると思います。社会福祉士は社会保障制度全般を網羅する資格と考えているので、資格取得を通して将来の高齢介護の時代に対応できるスキルを身につけていきたいと思っています。

また、現在の超高齢社会では、認知症と精神障害を併発する高齢者が増加傾向にあります。そういった高齢者の対応を医療と連携して取り組んでいくために、精神保健福祉士の資格も必要かなと考え、資格取得を目指しています。

仕事面では、積極的に地域づくりに参画し、地域資源の発掘や創出を担っていきたいですね。

―これからケアマネージャーを目指す方にアドバイスをお願いします。

ケアマネージャーの仕事は、個人事業主のように1人で動くことも多いですが、自分よがりにならず、多職種連携してチームとして対応できるといいかなと思います。

1人で抱え込みすぎるとメンタルをやられてしまうので、チームと協力しあい、時にはチームを頼って仕事を進めていってください。

また、ケアプラン作成には、介護保険サービスだけでなく地域の資源にも目を向けて、インフォーマルサポートも反映させながらプランニングする力が必要です。そのためには地域を知ることも大切だと思います。

頑張ってください。

ケアマネージャーTさん

Tさん、ありがとうございました!

まとめ

主任ケアマネージャーとして、長年ケアマネージャー業務に従事するTさんから見たリアルな仕事上の悩みや対処法は、実践で役立つノウハウやヒントが詰まっています。

ぜひ参考にしてみてくださいね。