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介護資格・スキルアップ

2023-12-15

作業療法士が取得して役立つ資格は?キャリアアップのコツも解説

「作業療法士がキャリアアップするにはどのような資格を取得すればよいだろう」と思ったことはありませんか?
日々の業務だけでは得られるスキルが限られるため、新しく何か勉強したいと思う方もいるでしょう。

 

取得すれば臨床に生かせる資格やキャリアチェンジに役立つ資格など、作業療法士におすすめの資格はいくつかあります。

 

この記事では、作業療法士のキャリアプランや取得して役立つ資格などを解説しています。キャリアアップを考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

作業療法士のキャリアプラン

作業療法士は患者様の日常生活動作・応用的動作のリハビリを行う専門職です。作業療法士のキャリアは目指すものや自分自身のスキルにより多岐にわたります。自分の興味や能力、そして将来のビジョンに合わせてどのようなキャリアを描きたいか考えてみましょう。

専門性がより高い作業療法士を目指す

作業療法士としての専門性を高めれば、より質の高いリハビリを提供できます。

各疾患に対して作業療法の知識を深めることはもちろんのこと、「認定作業療法士」や「専門作業療法士」といった資格の取得も可能です。「認定作業療法士」や「専門作業療法士」はより専門的な知識や技術を持つ証として、患者様や医療スタッフから信頼を得られるでしょう。

いずれの資格も一定の実務経験や研修、症例報告などが必要ですが、専門的なケアを必要とする患者様のニーズに応え、より高度で効果的なリハビリを提供するための資格といえます。

資格取得までの過程は、作業療法士としての知識を広げ、多様なニーズに応えられるスキルが身につくことでしょう。

幅広い領域に対応できる作業療法士を目指す

幅広い領域の知識と技術を身につけるキャリアプランもあります。例えば、作業療法士の養成過程では呼吸器や循環器のカリキュラムが薄いため、病院や施設での実務経験、研修の受講や資格を取得することで、スキルアップにつながるでしょう。

臨床に役立つ知識が身につき、さまざまな領域に対応できる作業療法士を目指せます。

関連資格を取得してキャリアチェンジを図る

作業療法士として培ってきた知識やスキルは、ほかの職種でも生かせます。

キャリアチェンジの代表例といえばケアマネージャーです。ケアマネージャーは、ケアプラン     を作成し、利用者の生活を支援する介護保険のスペシャリストです。作業療法士ならではの視点や知識が役立つことも多いでしょう。

また、スポーツ系の資格を取得してパーソナルトレーナーなどにキャリアチェンジするケースもあります。

作業療法士の教育に携わる

臨床やほかの職種として仕事をする以外に、教育に携わるという選択肢もあります。

臨床での経験を後進の育成に役立てたいと考える方に向いているキャリアプランです。

一定期間の臨床経験を経て養成校の教員となるケースや、大学院に進学して研究の傍ら臨床をこなしつつ教育に携わるケース、各種研修の講師として活動するケースなどがあります。

管理職を目指す

リハビリテーション科 科長などの管理職・ジェネラリストを目指すのもキャリアプランのひとつです。

管理職となる場合、リハビリ業務と並行してスタッフの管理業務を行うケースと、リハビリは行わずマネジメントのみ行うケースがあります。組織の中でリーダーシップを発揮したい人に向いているキャリアプランです。

管理職になるには同じ職場に長く勤めるほか、管理職の求人に応募する方法もあります。いずれにせよ、幅広い知見や資格、コミュニケーション能力が求められるほか、診療報酬制度やマネジメント能力が必要です。

作業療法士のキャリアアップのためにすべきこと

作業療法士としてキャリアアップを目指す場合、経験や知識の深化だけでなく、資格の取得や研修の受講を積極的に行いましょう。キャリアに応じたおすすめの自己研鑽方法を以下にまとめました。

経験年数が浅いなら〜知識と技術の向上〜

新卒や経験年数が浅い作業療法士は、基本的な知識と技術の習得に焦点を当てることを優先しましょう。日々の臨床で多くの患者様との対話や治療を通して、基盤となるスキルを身につけましょう。もちろん研修やセミナーへの参加も有効です。

また、定期的な勉強会が開催されている、先輩からのフィードバックがしっかり得られるなど教育体制が充実している職場に転職するのもひとつの選択肢といえます。

実務経験を数年積んだら〜各種資格の取得〜

実務経験を数年積み重ねたら、次のステップとして各種資格を取得することをおすすめします。例えば、呼吸療法認定士や心臓リハビリテーション指導士といった資格は、作業療法士のスキルアップに役立つでしょう。一部の資格は疾患別リハビリテーションの施設基準にも影響するため、職場によっては資格の取得に手当てが出る場合もあります。

多くの関連資格の取得には、一定以上の臨床経験が必要条件とされます。そのため、日頃の実務と並行しながら資格の勉強をするとよいでしょう。

さらに専門性を高めたいなら〜専門作業療法士の取得〜

さらに作業療法士としての専門性を高めたいと考えたら、作業療法士協会の認定作業療法士、次に専門作業療法士を取得するのがおすすめです。

特に専門作業療法士は、認知症・手外科・高次脳機能障害など11の専門分野に分かれています。

専門作業療法士は、2023年11月1日時点では全国で151名しかおらず、取得すればその分野のトップクラスの地位を確立できます。現状、取得しても収入アップにはつながりにくい状況ですが、キャリアの中期〜後期において専門性を一段と高めたい場合は取得を検討するとよいでしょう。

作業療法士のキャリアアップにおすすめの資格や研修

作業療法士としてキャリアアップしたい場合、特定の資格取得や研修の参加は非常に有効です。以下で、おすすめの資格や研修を紹介します。

呼吸療法認定士

呼吸療法認定士は、3学会合同呼吸療法士認定委員会が創立した認定資格です。国家資格ではないものの、職場によっては呼吸器リハビリテーションの施設基準に必要な資格となります。

人工呼吸器などによる呼吸療法や血液ガス、呼吸リハビリなどの知識が必要であり、講習を受けたのち試験に合格すると資格を取得できます。また、高齢者にはCOPDなど何らかの呼吸器疾患のある患者様も多いため、呼吸リハビリをメインに行う病院や施設でなくても臨床で役立つ資格です。

心臓リハビリテーション指導士

心臓リハビリテーション指導士は、日本心臓リハビリテーション学会が創設した資格です。こちらも国家資格ではありませんが、心大血管リハビリテーションの施設基準に必要な資格となる場合があります。

取得すれば、心臓手術後や冠動脈疾患患者様などのリハビリテーション、心疾患の予防に専門家として携わり、心身の健康をサポートができます。

ただし、受験資格に心臓リハビリテーション指導の実地経験1年以上、もしくは研修制度による受験資格認定証の交付が必要で、職場や住んでいる地域によってはややハードルが上がるかもしれません。

がんのリハビリテーション研修

がんのリハビリテーション研修では、がん患者様のQOL(生活の質)を向上させるためのリハビリテーション技術や知識を得られます。がんのリハビリテーションにおける施設基準として必要な研修です。

作業療法士の養成過程ではあまり学べなかった、がんの周術期・化学療法中・治療後の身体的精神的な問題を解決するアプローチを包括的に学べます。

医療団体などが主催する研修を約2日間受講すれば研修修了となるため、比較的ハードルが低いといえます。ただし、リハビリ職のみでなく、医師や看護師とチームで受講する必要があるため、職場によっては受講が難しいかもしれません。

認定・専門作業療法士

認定・専門作業療法士は作業療法士協会(以下、協会)が認定する資格です。

認定作業療法士は協会が主催する研修を多数受講し、症例報告を行い認められれば取得できます。

専門作業療法士は認定作業療法士のうち、11の専門分野(福祉用具・認知症・手外科・特別支援教育など)のいずれかで高度かつ専門的な実践能力を有するものが認定される制度です。専門分野の基礎研修・応用研修・研究開発のカリキュラムを修了して認定審査に合格すれば取得できます。

作業療法士のキャリアチェンジにおすすめの資格

作業療法士の経験や知識は、ほかの領域や職種でも役立つ場合があります。なかでもキャリアチェンジを考えている方には、以下の資格が特におすすめです。これらの資格を取得することで、新たな分野での活躍が期待できます。

ケアマネージャー(介護支援専門員)

介護の専門性を高めたいなら、ケアマネージャー(介護支援専門員)がおすすめです。ケアマネージャーは高齢者や障がい者の日常生活支援の計画を立てる専門職で、作業療法士として5年の実務経験があれば受験できます。

作業療法士の持つリハビリテーションやADLなどの知識は、ケアプランの作成などに役立つため、キャリアチェンジに適した資格です。また、在宅の利用者と関わるため、福祉住環境コーディネーターも併せて取得するとよりよいアドバイスができるでしょう。

パーソナルトレーナーの資格

スポーツ関連の仕事に興味があるなら、パーソナルトレーナーの資格がおすすめです。関連資格は多数あるため、入口となる資格を以下で紹介します。

  • NESTA -PFT:アメリカの認定団体から多くの公認を受けている有名な資格のひとつ。トレーニングの知識はもちろん、ビジネススキルについても問われます。
  • NSCA-CPT:上記の資格と同様にアメリカで認定を多く受けている資格です。一般の方だけでなく疾患のある方や妊婦、高齢者など幅広い対象のトレーニングの知識が求められます。

いずれの資格も大手パーソナルジムの入社時に必要とされる場合があります。作業療法士がトレーナーの資格を取得すれば、臨床経験で培った知識を生かしたプログラムの提供やアドバイスが可能となるでしょう。

柔道整復師などの国家資格

作業療法士・理学療法士は保険診療を伴う開業ができません(整体院・サロンなどは開業可能)。そのため、独立開業したいと思ったら、柔道整復師・鍼灸師(はり師きゅう師)などの国家資格が必要となります。

柔道整復師は骨折や脱臼、打撲といった怪我などの治療、鍼灸師は”はり”や”きゅう”を使った治療を行う専門家です。いずれの場合も専門学校に通い国家試験に合格する必要があるため、再度入学しなければならず取得のハードルは高くなります。一部夜間部の学校もあるため、働きながらの取得を目指すのであればそちらを検討するとよいかもしれません。

作業療法士がキャリアアップするコツ

作業療法士としてのキャリアアップを目指すには、ただ日々の業務をこなすだけでは不十分です。さらなる飛躍を望むなら、以下のポイントを意識して行動しましょう。

将来どんな働き方をしたいか明確にする

まずは、自分自身のキャリアビジョンを明確に持つことが大切です。

将来どのような職場(急性期・回復期・維持期)・領域(身体障がい・精神科など)で、どのような働き方をしたいのかを改めて考えてみることをおすすめします。

例えば、専門的な知識を深めて臨床でスペシャリストとして活躍したい、今の職場で管理職に昇進したいなど、自分の目標を明確に設定することで、キャリアアップのためにやるべきことも見えてくるはずです。

転職も視野に入れる

今いる職場でスキルが身につかない、将来携わりたい業務と異なる状況があれば転職するのもキャリアアップには有効です。

どのような病院・施設で働くかで経験できる疾患や教育制度も大きく異なります。収入面だけでなくスキルの面で見ても、さまざまな職場を経験することで養われるため、転職はデメリットだけではありません。

まとめ

作業療法士のキャリアプランは多岐にわたるため、早めに明確なビジョンを持つことをおすすめします。専門性を深める路線から、幅広い分野への挑戦、さらには教育や管理職を目指すなど、選択肢はさまざまです。

また、キャリアアップやキャリアチェンジにより取得すべき資格も異なります。自身の興味や適性に合わせて働き方を考えてみましょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。