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2023-06-01
【インタビュー】現役の理学療法士に訊く、リアルな仕事内容や働く上で心がけてることとは(後編)
インタビューの後半では、現役の理学療法士として働くOさんに、理学療法士のリアルな悩みや働く上で心がけていることについて伺います。
現役の理学療法士にインタビュー
ー理学療法士になるまでの苦労について、教えてください。
学生時代に関しては、理学療法士だけでなく看護師さんとかも感じるところだと思うのですが…、実習がとにかく大変でした。
なによりもまず、患者さんと初めて接することになるので、その部分でコミュニケーションをどう取るかといったところにすごく苦戦しましたね。相手の性格を理解しなければならないのはもちろん、どういった悩みを抱えていて、なにから解消していきたいのか、ニーズを掴むまでに時間がかかってしまい…。
それから、実習は社会性を学ぶ場でもあるので、学生時代にはそこまで求められなかった社会性が重視されることもあって、基本的なマナーをひたすら学ぶのもなかなか辛かったですね。
ーなるほど、学生の時に求められなかった部分が求められるということですね。
そうですね。それから、実習でやることが多すぎて思うように寝れない、睡眠時間が取れないのも大変でした。いろんなことを限られた時間内でやらなければならないので、実習生の間は本当に忙しかったです。
ただ、最近は世の中の流れが私の頃と少し変わってきていて、学生に負担をかけないようにしましょうといった方向になっているんですね。そういったこともあり、今の学生さんたちは実習の負担が軽くなっている一方、もしかしたら臨床に出てからの方が苦労するかもしれないです。
ーありがとうございます。そうした経験もある中で、特につらかったという経験はありますか。
学生時代に関していえば実習中はもちろん、私の場合は初めての一人暮らしだったこともあって、知らない土地での生活に慣れるまでが大変でした。現場に出てからでいうと、初めて就職した先がすごくコミュニケーションが取りづらい職場だったように思います。
私をはじめ、理学療法士が所属していた部署の雰囲気はそれほど悪くなかったものの、看護師やほかの医療職の方がいる部署との人間関係を築くことがなかなか大変でした。ただ、これは職場によって違う部分だとも思っていて、一般病院から総合病院に移ってからはわりと話しやすい人が多く、ほとんどストレスを感じることはなかったです。
ー理学療法士を目指して勉強していた頃と、実際に働き始めてからの意識の違いのようなものがあれば教えてください。
学生時代はどうしても、理学療法士という資格を取ることがゴールになってしまいますよね。一方で、職場で働くようになってからは、そこからスタートといいますか、座学だけではわからなかった部分が求められるようになります。国家試験の知識もより実践的にブラッシュアップさせないと、臨床で役に立たないなんてこともありました。
それから、やはりコミュニケーション能力はとても大切だと感じました。実習中もコミュニケーションを学ぶ機会がありましたが、就職してからすぐに即戦力になれるかというと難しいところかなと。
ーいま、現役の理学療法士としてお仕事をする中で感じる難しさや悩みはどんなことがあるでしょうか。
例えば、いまの病院では外来の患者さんに対して20分のリハビリをしているのですが、20分の中で相手のニーズを把握し、適切な治療を選択していく過程が非常に難しいなと感じますね。耳が遠い、理解力が乏しいといった患者さんもいらっしゃるので、そうした中でもできるかぎりの要望を聞き出さなければならないといいますか。
ーそうした状況下で、心がけていることはありますか。
そうですね。基本的なことではありますが、できるだけ専門用語を使わずにわかりやすく伝えることを心がけています。相手に聞こえやすい声量で話して、相手の目を見て話すといったことももちろん大切ですね。あとは日々接する中で自然と患者さんの性格も把握できるので、患者さんごとに適した対応を意識しています。
ー理学療法士として働く中で見えてきた課題や、問題点があれば教えてください。
業界としての課題でいうと、介護保険であれ、医療保険であれ、理学療法士が得られる診療報酬は基本的に一律なんですよ。だから、病院勤務で1年目がひと月に稼ぐお金と13年目で稼ぐお金は一緒(一律)になるんですよね。
たとえば運動器リハビリでいえば、20分あたり185点と決まっていて。処方箋と同じような扱いで出来高ではないので、たとえば私のように15年目の理学療法士がやっても、1年目の理学療法士がやっても発生するお金は変わらないんです。
そのため、キャリアアップが難しいといいますが、評価を実感しにくいといったところがあるのかなと思います。頑張りたい人が頑張っているのに評価されないという側面もあれば、そんなに頑張らなくても…といったところもありますよね。
そういったこともあって、こうした設定自体が変わったらいいなと感じることがあります。たとえば、リハビリを通じて症状が改善されたら時間に関係なく、といったように実力と結果に応じて得られる報酬が変化するのもいいのかなと。とはいえ、一律であることによって守られている人がいるのも事実なので、現実はそう簡単ではないのかなとも思います。
ーありがとうございます。最後に、いま理学療法士を目指して勉強中の方にアドバイスがあれば一言お願いします。
理学療法士は人と関わる仕事ということもあって、人と話すのが好きで、人の役に立つことにやりがいを感じる人であれば向いているかなと思います。勉強が若干苦手で知識面に不安があったとしても、その部分については理学療法士として現場に出てから十分にカバーできるので。
とはいえ、私自身あまり人と話すのが得意なタイプではなかったんですね。こんな自分が理学療法士になれるのだろうかと考えたこともありました。でも実際、理学療法士になって「あ!意外とできるじゃん」と思うことも多く、やってみたらやれるというパターンもあるかなと思います。
理学療法士を目指している方はぜひ、頑張ってください。
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Oさん、ありがとうございました!
まとめ
理学療法士として10年以上、業務に従事するOさんから見たリアルな仕事上の悩みや対処法は、実践で役立つノウハウやヒントが詰まっています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。