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介護業界の給料と年収

2023-05-16

理学療法士の年収は?他職種との比較や年収の推移、年収アップを実現する方法まで解説!

医療だけでなく介護分野でも活躍する理学療法士は人気が高い職業の1つです。将来は理学療法士になりたいけれど、実際に働くことを考えると年収が心配……そんな方も多いのではないでしょうか。

 

今回は理学療法士の年収はどれくらいなのか、他職種と比較してどうなのか、もっと年収アップしたい場合は?など、理学療法士の年収に関する気になるポイントを詳しくご紹介します。

理学療法士の平均年収

リハビリの専門職として医療・介護の現場で活躍する理学療法士超高齢社会の日本では非常に需要が高い職業ですが、実際の平均年収はどのくらいなのでしょうか。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の平均年収は約426.5万円となっています。平均月収は29.6万円、さらに年間賞与(ボーナス)は平均で71.3万円とされています。(※)データは理学療法士のほか、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む。

平均年収を性別でみると下記の表のとおりになります。

平均給与平均年間賞与平均年収
男性29.4万円74.9万円427.7万円
女性27.4万円67.1万円395.9万円

※データは理学療法士のほかに作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む。

平均年収は男性が約32万円、高いことがわかります。女性は結婚・出産・介護などにより、退職するケースが多いことが、男性の年収が高い理由の1つでしょう。

ちなみに所得者全体の平均年収は443万円となっており、比較すると理学療法士はやや低めという結果に。理学療法士は平均年齢が若い(勤続年数が少ない)ことがその差につながっているのではないかといわれています。

続いては施設規模別の平均年収(※)も見てみましょう。厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると下記のとおりになっています。

従業員数平均給与平均年間賞与平均年収
10~99人29.4万円60.8万円413.6万円
100~999人29.1万円69.9万円419.1万円
1,000人以上31.4万円85.5万円462.3万円

(※)データは理学療法士のほか、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む。

勤務する医療・介護施設の規模が大きいほど年収が上がる傾向があります。これは規模が大きくなるほど理学療法士が担当する患者さんが増えること、対応する症例も多くなることが理由と考えられます。

理学療法士の年収について概要をご説明しましたが、医療・介護に関わる他職種との年収の差も気になるところです。続いては他職種との違いについて見ていきましょう。

医療・介護の他職種との平均年収の比較

医師や看護師、介護支援専門員(ケアマネージャー)、介護職員などの職種と比べて、理学療法士の年収はどれくらいなのでしょうか。厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに、表にまとめました。

職種平均年収
医師1378.3万円
薬剤師580.5万円
看護師498.6万円
保健師480.7万円
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士426.5万円
介護支援専門員(ケアマネージャー)409.7万円
介護職員(医療・福祉施設など)352.8万円

他の医療職と比べると低め、介護職と比べるとやや高めといえるでしょう。
医療・介護職におけるおおよその位置づけがわかったところで、次は理学療法士の年収の推移についてご紹介します。

理学療法士の年収の推移

理学療法士の年齢別の平均収入を、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考にまとめました。

平均給与平均年間賞与
(ボーナス)
平均年収
20~24歳24.5万円35.2万円329.2万円
25~29歳26.3万円63.5万円379.1万円
30~34歳28.8万円69.4万円415.0万円
35~39歳30.2万円75.7万円438.1万円
40~44歳33.2万円88.8万円487.2万円
45~49歳35.3万円91.8万円515.4万円
50~54歳36.6万円100.5万円539.7万円
55~59歳38.1万円117.3万円574.5万円
60~64歳35.2万円57.3万円479.7万円
65~69歳25.8万円47.3万円356.9万円
70歳~27.2万円3.2万円329.6万円

理学療法士の年収が大きく上がるのは20代半ば~後半にかけて、そして40代ということがわかります。20代半ば~後半はリーダーなどの役職につくことが多く、40代は管理職としてステップアップするケースが多いことが理由と思われます。50代で年収のピークを迎え、後は緩やかに下降しています。

ここまで理学療法士の年収の現状や特徴を見てきましたが、年収をもっと増やすにはどうしたらよいのでしょうか。次は理学療法士が年収をアップする方法について解説します。

理学療法士が年収アップする方法

所得者全体やほかの医療職に比べるとやや低い理学療法士の年収ですが、年収を増やす方法はいくつかあります。詳しくご紹介しましょう。

管理職などの役職を目指す

転職、独立をせず同じ職場で年収アップしたいなら、管理職を目指しましょう。役職手当がつけば月収が増え、年収アップにつながります。

管理職の仕事内容は業務や人事労務の管理、人材育成まで多岐にわたります。理学療法士は高い専門性を有するスペシャリストですが、管理職を目指すなら部下のマネジメントや教育も担当できるジェネラリストでなければなりません。また他職種の連携も管理職の大切な仕事です。

例えば、40代で管理職になるには、20代後半~30代前半くらいからリハビリの専門性を高めると共に、マネジメントやコミュニケーションなどの能力も身につけておく必要があります。さらに、それらの能力があることを上司や経営層にアピールすることも欠かせません。

働いている職場の居心地がよい、福利厚生がしっかりしている、やりがいがあるなど、長くいてもいいと思える環境なら、腰をすえて取り組んでみてはいかがでしょうか。

資格を取得する

新たに医療・介護系の資格を取得するのも、年収を増やすために有効です。職場によっては資格手当を出してくれるため、その対象となっている資格があれば狙い目です。

理学療法士としてのスキル・知識を磨きたいなら、認定理学療法士専門理学療法士の資格がおすすめです。認定理学療法士は理学療法士の資質向上や職能的水準を引き上げることを目的とした資格で、研究能力が必要です。

資格手当の対象としている施設もありますが、もし勤務先の施設で対象外でも転職の際に有利になるというメリットがあります。認定理学療法士資格があれば高い専門性をアピールできますし、まだ取得者が少ない現在、ほかの理学療法士との差別化につながります。

また専門理学療法士は専門分野の知識を深めた人が取得できる資格です。認定理学療法士資格を取得した後で目指す上位資格になります。

介護・福祉系に近い資格取得を狙うなら、鍼灸師や柔道整復師などもおすすめです。さまざまな資格を組み合わせて年収を増やしていきましょう。

給料の高い他の職場に転職する

思い切って転職にチャレンジするのも年収アップを実現する方法の1つです。昇進や資格取得と異なり、スピーディーに年収アップにつながる可能性が高いことがメリットです。

保険点数により給料が決まっているので、賞与(ボーナス)の多い職場に転職するのがおすすめです。賞与は規模の大きい施設ほど多くなる傾向にあるので、その点も考慮して転職活動を進めてください。

転職を検討するなら転職サイトや人材サービス、知人・友人の紹介などを利用する方法が一般的です。また訪問リハビリテーション施設へ転職する方法もあります。訪問リハビリには手当がつくため年収アップにつながります。

国は「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で暮らせるよう支援する」ことを目的に地域包括ケアを進めています。

そのため訪問リハビリへのニーズは今後さらに高まることが予想され、転職先も増えていくはずです。

教員を目指す

理学療法士養成校の教員の収入は、医療機関や介護施設などに勤務する理学療法士(常勤)より収入が高い傾向があります。年収アップを狙うなら、養成校の教員も視野に入れておきましょう。

養成校の専任教員になる条件は「理学療法士として5年以上、業務に従事した者で厚生労働省が指定した専任教員養成講習会を修了している」「大学または大学院において4単位以上の教育に関する科目を履修して卒業した者で理学療法士、作業療法士として5年または3年以上業務に従事している」の2つです。

教育に興味がある方におすすめですが、求人は転職サイトなどにあまり掲載されず、多くは紹介で決まるようです。そのため、同業種間である程度の人脈がある方が有利でしょう。

副業をする

理学療法士としてのスキルを活かし、副業をして収入を増やす方法もあります。例えば訪問介護やデイサービスなどで、非常勤のアルバイトをしてみるのはいかがでしょうか。新たな知識や視野の獲得につながるため、副業として収入を得つつ本業のスキルアップも期待できます。

あるいはジムやスポーツクラブなどでトレーナーにチャレンジしてみては。利用者の指導はもちろん、スポーツ施設で行われる講座の講師として関わる可能性もあります。

また学んだ知識を活かし、ライターとして記事作成をしたり、監修者としてライターが書いた記事をチェックしたりする副業もあります。空いた時間に自宅でできるため、融通が利きやすい副業といえます。トレーニングやエクササイズなどの記事は需要が高く、意外な収入になるかもしれません。

副業をする場合は、まず勤務先で副業が認められているかどうかの確認を。また副業に熱を入れ過ぎて、本業に影響を及ぼさないように注意してください。

理学療法士が年収を上げる方法はある!

理学療法士の年収の現状や、年収を上げる方法についてご紹介しました。理学療法士が年収を上げる方法はさまざまですが、ご自身に最も適した方法はどれなのかを見極め、計画性をもって取り組むことが肝心です。

不景気や新型コロナウイルス感染拡大などの影響で、経済的に不安なニュースが多い昨今ですが、真剣に取り組めば年収を上げる方法は見つかります。年収アップは難しいと諦めず、まず最も取り組みやすい方法から試してみるのもいいでしょう。

加藤 真太郎

理学療法士
臨床実習指導者講習会修了

理学療法士として8年間、回復期病院で勤務。その後は養成校で専任教員をしながら、週1回は病院勤務を継続している。臨床と教育現場を経験している数少ない理学療法士である。
理学療法学科の専任教員を本業としながら、ライターとしても活動し記事の執筆をしている。筋トレ・ジムの紹介ブログも運営中。