介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護業界の給料と年収 作業療法士(OT)の給料とは?安いと言われる理由と年収を上げる方法を解説

介護業界の給料と年収

2023-09-29

作業療法士(OT)の給料とは?安いと言われる理由と年収を上げる方法を解説

作業療法士は、病気や怪我で心身に障がいを抱える方の日常生活や社会生活の復帰を支援する職業です。
作業療法士を目指している方の中には、給料が安いという話を耳にした方もいるのではないでしょうか。

 

この記事では、作業療法士の平均年収を他業種と比較して解説しています。

 

作業療法士の給料が安いと言われる理由や年収を上げる方法も合わせて紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

作業療法士の給料は安い?平均年収を紹介

厚生労働省の調べによると、作業療法士の平均年収は、約430.7万円です。

日本の一般労働者(正社員)の平均月収は約31.1万円となっており、年収は約374.1万円です。(この年収は、一般労働者の平均月収を12か月分かけた数字で、賞与はないものとして算出しています。)

世代別に見た平均年収は以下の通りです。

作業療法士は一般労働者と比べると給料が高めだといえるでしょう。

約316.5万円作業療法士(OT)の平均年収一般労働者の平均年収
25歳から29歳約392万円約281.8万円
30歳から39歳約438万円約356.1万円
40歳から49歳約508万円約409.7万円
50歳から59歳約542.5万円約440.8万円
60歳以上約464万円約316.5万円

(参考:job tag|厚生労働省/令和4年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

どちらも年齢が上がるごとに年収も増加し、60歳以上になると徐々に年収は下がってきます。

全世代においても、作業療法士は一般労働者と比べると給料が高めだといえるでしょう。

作業療法士と医療・介護職との給料の比較

次は、作業療法士以外の医療職や介護職との給料比較です。

職種平均年収
作業療法士(OT)約430.7万円
理学療法士(PT)約430.7万円
言語聴覚士(ST)約430.7万円
看護師約508.1万円
施設介護員(介護福祉士)約362.9万円
介護支援専門員(ケアマネージャー)約405.8万円

(参考:job tag|厚生労働省

表の平均月収は、平均年収を12か月で割ったもので賞与は含みません。

作業療法士と同じリハビリテーション職の、理学療法士や言語聴覚士とは同じ平均年収・平均月収です。

一方、看護師の平均年収は508.1万円、平均月収は約42.3万円です。作業療法士と比べると年収で約78万円、月収で約7万円も看護師の方が高くなっています。

また、介護職では、施設介護員の平均年収は約362.9万円、平均月収で30.2万円です。作業療法士は、介護職より年収で約68万円、月収で約6万円高いことがわかります。

作業療法士の給料が安いと言われる3つの理由

作業療法士は国家資格を保有しているのにも関わらず、給料が安いと言われることがあります。考えられる理由は、次の3点です。

・日勤帯のみの勤務で手当てが出ない

・制度による報酬に限りがある

・キャリアアップしにくい

次から、解説していきます。

日勤帯のみの勤務で手当てが出ない

作業療法士は日中の勤務が多く、残業時間はほとんどありません。

一般的に8時から18時の間で勤務することが多く、夜勤や緊急対応も少ない傾向です。

医療機関や介護施設で働く場合、1日の業務スケジュールが決まっており、基本的にリハビリテーションは夜間におこないません。

回復期リハビリテーションでは、患者さんの食事や排泄など起床時の様子を見るための早朝出勤はあっても、夜間に仕事をすることはないでしょう。

このように作業療法士は、日勤帯のみの安定した働き方ができる一方で、夜間手当や残業手当が少ないため、給料が安くなると考えられます。

制度による報酬に限りがある

以下の表は、厚生労働省が発表しているデータをもとに、過去3年間の作業療法士の受験人数と合格者の人数をまとめたものです。

受験者数合格者数合格率
第58回
(令和5年)
5,719人4,793人83.8%
第57回
(令和4年)
5,723人4,608人80.5%
第56回
(令和3年)
5,549人4,510人81.3%

(参考:第58回/第57回/第56回理学療法士国家試験及び作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省

作業療法士は、毎年約6,000人が受験しており、合格率は平均81.8%です。

比較的合格率が高く、有資格者が毎年増加していることがわかります。

作業療法士がおもに働く場所は、医療機関や介護施設などが多く、近年では高齢化や生活習慣病の増加により、作業療法士の需要が高まっています。

しかし、医療機関や介護施設では、それぞれの保険制度による報酬が定められているため、事業所の収入には限りがあるのです。

限られた報酬の中で、人件費を捻出するため給料を高く設定するのは難しい傾向です。

キャリアアップしにくい

作業療法士がキャリアアップする方法には、リーダーや役職に就くことが挙げられます。

しかし、作業療法士が所属するリハビリテーションの部署で、役職に就ける人数は限られています。

介護施設では、そもそもリハビリテーション職の人数が少ないため、大規模の事業所や医療機関でなければ役職に就けるチャンスは少ないと考えられるでしょう。 

また、役職に就くためには勤続年数や経験年数が必要です。

勤続年数が多いほど年収も上がる可能性は高いですが、役職に就くまでには時間がかかることを留意しておかなくてはなりません。

作業療法士の給料を上げる方法はあるの?

作業療法士の給料を上げるためには、次の4つの方法があります。

・資格を取得する

・給料の高い職場に転職する

・キャリアアップを目指す

・副業をする

それぞれ、解説していきます。

資格を取得する

医療は日々進歩しており、作業療法士もそれに合わせて勉強が必要です。

作業療法士が、上位資格として目指すものには、「認定作業療法士」や「専門作業療法士」などがあります。

認定作業療法士とは「一般社団法人日本作業療法士協会」主催の認定資格です。

認定作業療法士になるためには、以下の要件を満たす必要があります。

・一般社団法人日本作業療法士協会主催の認定作業療法士取得共通研修2講座の受講を修了する

・認定作業療法士取得選択研修 2講座の受講を修了する

・事例報告を3例提出する

また、特定の分野において専門的な知識と技術を有する作業療法士の資格として、専門作業療法士があります。

専門作業療法士とは、認定作業療法士の方のうち、専門性の高い作業療法の実践能力や課題解決能力を持つ作業療法士のことです。

上位資格を取得すれば作業療法士としての評価が得られるため、給与アップの可能性があります。

このほかにも、医療・福祉に関連する資格は多数存在あり、職場によってはそれらの資格を取得することにより、資格手当が加算される場合もあるでしょう。

給料の高い職場に転職する

資格を取るほかにも、給料の高い施設に転職する方法もあります。作業療法士として経験を積んでから転職すれば、給与を上げられる場合もあるでしょう。

作業療法士が活躍する就職先は、医療機関や介護施設のほか、児童福祉施設や障がい者施設などさまざまです。

高齢者の増加とともに介護施設も増えているため、求人も多くあります。それぞれを比較し、より高い給料の就職先を探すのも1つの方法です。

また、作業療法士以外にも資格があるなら、資格手当として給料が上がるかもしれません。

キャリアアップする

作業療法士が給料を上げるためには専門性を発揮する以外にも、経験年数を積んでキャリアアップする方法もあります。

作業療法士は、医師や看護師・介護職員など、さまざまな人とコミュニケーションを取りながらチームで共同する職種です。

そのチーム内でリーダーシップを発揮できれば、キャリアアップの可能性が高くなるでしょう。

キャリアアップできるポストは少ないかもしれませんが、専門性やリーダーシップを発揮することで昇進し、役職手当で給料を上げられるかもしれません。

副業をする

作業療法士は夜勤がなく残業も少ないため、本業の終了後や休日を生かして副業をすることも可能です。

しかし、事業所によっては、副業を禁止している場合があるため、就業規則や上司への確認が必要です。

世間では副業や兼業が進められており、在宅でできる仕事も増加しています。

さまざまな仕事があるため、本業に支障が出ない程度に副業を始めてみるのも1つの方法です。

作業療法士の将来性

作業療法士は年々需要が上がっており将来は明るいと考えられます。

日本は高齢化が進んでいるため、高齢者の健康や生活の維持が求められています。

作業療法士は身体的な障がいだけではなく、精神面に対しても支援できる職種です。

また、高齢者だけでなく、事故や疾患・手術後のリハビリテーションが必要な方もいます。

さまざまな世代にリハビリテーションを実施する作業療法士は、今後も必要性が高まるでしょう。

まとめ

今回は、作業療法士の給料について紹介しました。

作業療法士は、一般的な年収と比較すると給料は高めですが、同じ医療職である看護師よりは少ない傾向です。

基本的には日中のスケジュールが決まっており、残業や夜勤はほとんどないため、作業療法士の給料は少ないと考えられています。

しかし、夜勤がない分、生活のリズムが取りやすく、負担が少ないため長く働き続けやすいとも考えられるでしょう。

また、経験を積み上位資格を取得すれば、年収が上がる可能性もあります。
作業療法士は、今後さらに活躍が期待される人気の職種です。一律して給料の底上げの可能性もあるため、ぜひ作業療法士を目指してみてはいかがでしょうか。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。