介護職の給料
2022-09-05
介護職は本当に低収入?将来性は?収入をアップする方法を解説
近年、介護業界は人手不足が著しく、団塊の世代が高齢者になる2025年を前に深刻な課題となっています。その要因のひとつに、介護の仕事は「低賃金」というイメージが強いことが挙げられます。超高齢社会に突入した日本では、介護への需要が高まっていることは間違いありません。そこで今回は、介護士の給料はイメージ通り、本当に低いのか、介護職の収入について調べてみました。また、地域や年齢、性別ごとに給料の違いを確認し、給料アップの方法や将来性などについても検証します。
介護士の給料はどのくらい?施設形態や事業所の対応によって大きな幅
厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」で集計されている数字をもとに、さまざまな角度から介護職の給料を見てみましょう。
まず、介護従事者等の平均給与額は、月給315,640円で、年収に換算すると350万円前後ということになります。これは月給制、常勤している職員が対象の平均額で、年収は賞与などを推定・加算した額です。
同じく厚生労働省がまとめている「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、日本人全体の月収平均値は約27万円となっており、平均値だけ比較すると介護従事者の年収は決して低いわけではないことがわかります。
しかし、資格の有無をはじめ、勤務する施設の形態・雇用形態・施設や事業所の所在地域などによって、同じ介護職でも給料の差があります。
処遇改善加算、特定処遇改善加算の取得による差
介護職の給料の基本になるのは、利用者にサービスを提供した事業者に対して支払われる介護報酬です。処遇改善加算は2012年、特定処遇改善加算は2019年より、介護職の待遇向上を目的に創設されました。
処遇改善加算を取得している事業所は全体の94.1%で、職員の平均額は316,610円、特定処遇改善加算も取得している事業所は72.8%で、職員の平均額は323,190円です。2つの制度とも未取得の事業所の平均額は286,850円です。
「処遇改善加算」とは、相当する賃金改善を実施している事業者に対して、介護報酬に加算した額が提供される制度です。この制度を取得した事業所の職員には、処遇改善加算手当として支払われます。
「特定処遇改善加算」は、経験や技能のある職員に対する処遇改善を後押しする制度で、同じく制度を取得している事業所の職員には、一定の条件をクリアすると、これまでより高額の給料が支払われます。
勤続年数に応じた収入の上昇
ここから先は94.1%の事業所が取得している処遇改善加算に勤務した場合の給料を例に紹介していきます。はじめに勤続年数に応じて、給料はどのぐらいの割合で上昇していくのかを見てみましょう。5年ごとに、次のような平均上昇額になっています。
期間 | 月収入 |
---|---|
1年(勤続1年~1年11カ月) | 277,350円 |
5年(勤続5年~5年11カ月) | 309,610円 |
10年(勤続10年~10年11カ月) | 318,980円 |
15年(勤続15年~15年11カ月) | 339,230円 |
20年以上 | 378,010円 |
サービスの種類別で給料は変わる
ひと口に「介護」といっても、さまざまな形態の事業所があり、利用者に応じて多様なサービスを提供しています。サービスに応じて仕事の内容も変わるため、給料も大きく異なってきます。
例えば、介護老人福祉施設などは、要介護度が高い利用者が多く、夜勤があるため手当がつく場合もあり、収入は平均より高くなる傾向にあります。
サービス種類 | 平均給与 |
---|---|
介護老人福祉施設(特養) | 345,590円 |
介護老人保健施設(老健) | 338,390円 |
介護療養型医療施設 | 287,070円 |
介護医療院 | 307,550円 |
訪問介護事業所 | 314,590円 |
通所介護事業所(デイサービス) | 278,180円 |
通所リハビリテーション事業所 | 297,980円 |
特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム) | 319,760円 |
小規模多機能型居宅介護 | 289,520円 |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 291,460円 |
経営主体によって異なる待遇
介護施設の経営主体もさまざまあり、待遇にも差が出ています。介護老人福祉施設の経営主体による平均額の違いは次の通りです。
経営主体 | 平均給与 |
---|---|
地方公共団体 | 358,850円 |
社会福祉協議会 | 302,370円 |
社会福祉法人 | 330,880円 |
医療法人 | 313,670円 |
営利法人 | 302,530円 |
その他 | 313,590円 |
地域によって大きい収入の格差
地域によって収入の格差が大きいことも、介護職のひとつの特徴かもしれません。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、全都道府県のうち介護職の年収が高いのは次の3都県です。
高い | 低い | ||||
---|---|---|---|---|---|
順位 | 都道府県 | 年収 | 順位 | 都道府県 | 年収 |
1 | 東京都 | 約401万円 | 1 | 青森県 | 約270万円 |
2 | 山梨県 | 約390万円 | 2 | 佐賀県 | 約284万円 |
3 | 神奈川県 | 約389万円 | 3 | 山形県 | 約294万円 |
こうして見ると地域格差がかなり大きいことがわかります。
資格を取得して収入アップ!
介護職に就きながら給料アップを図ることは可能です。資格を取得することも、その方法のひとつです。
介護の現場で活かせる資格には「介護福祉士」や「介護支援専門員(ケアマネージャー)」などがあります。そのほかにも相談援助の専門家として認められる「社会福祉士」、介護職で必要な基礎的な知識や技術を身につけるための資格「介護職員初任者研修」、その上位資格であり、介護福祉士などを取得するための要件にもなっている「実務者研修」などの資格があります。
資格の取得は、給料をアップさせる「王道」といえるでしょう。採用条件として資格や実務経験を不問にしている事業所も多くありますが、高い給料はあまり期待できません。一方、資格を取得していれば、資格手当の支給や、基本給のアップが望めます。資格を取得して働くことで仕事にも幅が増えるため、やりがいにもつながるでしょう。
福利厚生のひとつとして資格取得の支援制度を用意している事業所もあります。無資格で就職する場合は、資格取得を支援する事業所を選ぶと負担なく資格が取得できます。
また、2024年4月以降、介護福祉士は介護における一定の知識と技能を有していることを証明する国家資格になります。介護支援専門員は、介護が必要な人が適切な介護保険サービスを受けられるよう、ケアプランを作成したり、サービスを提供したりする事業者との調整を担います。ケアマネージャーという呼ばれ方が一般的で、介護の現場に不可欠な存在です。
上記の資格を取得すると、次のような月収になります。
資格 | 平均給与 |
---|---|
介護福祉士 | 328,720円 |
社会福祉士 | 363,480円 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 362,290円 |
実務者研修 | 307,330円 |
介護職員初任者研修 | 300,510円 |
将来的な給与アップの見通し
介護職の給与は介護報酬のため、収入の改善は、ほぼ国に委ねられているということになります。
冒頭でもご紹介した通り、処遇改善加算と特定処遇改善加算は、まさに介護職の収入改善のために国が始めた制度です。
また今年、令和4年2月から「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」がスタートしました。一定条件を満たした事業所に対して、職員1人あたり月額9,000円相当の交付金を出すという内容です。実施期間は9月までですが、10月以降は臨時の報酬改定が行われ、同様の措置が継続される見通しです。
こうした動きを見ていると、今後も介護職の待遇改善は検討されていくと思われます。しかし、今よりも介護職の専門性が求められ、さらに好待遇になることが理想的といえるでしょう。
まとめ
介護職の給料は、年々増加傾向にありますが、サービスの種類や経営主体によって大きく異なります。介護職として資格の取得や役職・リーダーなどになることで、給料アップは期待できるでしょう。
今後、ますます高齢化は加速し、2042年にはピークを迎えるといわれていますが、年々、介護職員の数は減少傾向にあり、人材が確保できずに事業を継続できない事業所もあります。介護サービスがなくなると、介護するご家族の方々が仕事に行けない、休めないといった問題が発生し、生活にも支障をきたす可能性があります。介護職の人手不足は、当事者だけでなく、社会全体の問題でもあるため、介護職員の数はむしろ増やすことが社会の課題にもなってきます。
そのためにも、介護職を担う人たちの給与は、その業務内容と責任に見合うものが提供されることが望まれます。