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介護業界の常識

2022-11-15

ストレスチェックで原因がわかる!介護職のおすすめストレス解消法

介護職は仕事のハードさから、ストレスを感じることも多いのではないでしょうか?実際にストレスで休職・退職する介護職員も多いため、従業員が50人以上の介護事業所は、年に1回のストレスチェックが義務付けられています。
この記事では介護職のストレスとチェックシートの内容、おすすめのストレス解消法を詳しくご紹介します。「ちょっとつらいかも…」と感じている介護職の人はもちろん、「自分は大丈夫」と思っている方も、一度チェックシートを体験して、自分の状態を把握しておくと良いでしょう。

介護職のストレスチェックとは

介護職を含めたすべての職種で働く人に対し、2015年から厚生労働省は労働安全衛生法に基づいて、従業員のストレスを調査する制度を義務化しました。その内容についてご紹介します。

ストレスチェックの詳細

具体的には、従業員がストレスに関する質問シートに回答し、各自のストレス度合いや心身の状態を調べるものです。
50人以上の従業員がいる事業所で、年に1回の実施が義務付けられています。「従業員」には正社員だけでなくパートタイマーも含まれますが、派遣社員の方は派遣元の事業所に実施義務があります。
下記の基準に該当する方が対象となるので確認しておきましょう。

・無期雇用契約の従業員、またはこれまでの契約期間が1年以上あり、今後1年以上の雇用が見込まれる従業員であること
・1週間の労働時間数が、職場(同種の業務に従事する従業員)の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること

ちなみに従業員が50人以下の事業所については、義務ではありませんが努力義務とされています。

ストレスチェックが義務化された背景

ストレスチェックが義務化された背景には、1984年に日本で初めて過労自殺が労災認定されたことにさかのぼります。もともと日本は海外に比べ、働き盛りといわれる年代の自殺率が高いという事実もあり、近年では精神障害に関する労災請求件数が増加傾向にあることから、企業に対し従業員のメンタルヘルスへの配慮が強く求められるようになりました。

介護職がストレスチェックを受ける意味とメリット

冒頭でもお伝えしたように、介護職は働く上でのストレスが高いといわれる職種です。現在、介護職の平均年齢は令和元年の時点で42歳、さらに上の年代も多くなっています。
この年代の方は仕事に対する責任感が強く、ストレスを抱えていても「まだ大丈夫」と無理をしがちな傾向があります。
自分でも気づかないうちに、ストレスが理由で心身の健康を損なう恐れがあるため、ストレスを自覚している介護職の方はもちろん「私には関係ない」と思っている方も含め、すべての職員がストレスチェックを受ける意味があるのです。
定期的にストレスチェックを受けることで、疾病の早期発見・早期対応につながります。他人事と決めつけず、自分の心身の状態を意識するように注意しましょう。

ここからは、ストレスチェックの内容と流れについてより詳しく説明していきます。

介護職のストレスチェックの内容と流れ

実際におこなわれるストレスチェックでは、どんな質問をされるのか、その内容について詳しく見ていきましょう。

ストレスチェックの項目

実はストレスチェックで使用する質問票は指定されていません。ただし、下記の項目を必ず含まなければならないというルールがあります。

・ストレスの原因に関する質問項目
・ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
・労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目
多くの事業所・企業は厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用しています。

厚生労働省から出ている「職業性ストレス簡易調査票」は次の通りです。

職業性ストレス簡易調査票(57項目)
あなたの仕事についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付けてください。そうだまあそうだやや違う違う
1非常にたくさんの仕事をしなければならない1234
2時間内に仕事が処理しきれない1234
3一生懸命働かなければならない1234
4かなり注意を集中する必要がある1234
5高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ1234
6勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない1234
7からだを大変よく使う仕事だ1234
8自分のペースで仕事ができる1234
9自分で仕事の順番・やり方を決めることができる1234
10職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる1234
11自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない1234
12私の部署内で意見のくい違いがある1234
13私の部署と他の部署とはうまが合わない1234
14私の職場の雰囲気は友好的である1234
15私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない1234
16仕事の内容は自分にあっている1234
17働きがいのある仕事だ1234
最近1 か月間のあなたの状態についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付けてください。ほどんどなかったときどきあったしばしばあったほとんどいつもあった
1活気がわいてくる1234
2元気がいっぱいだ1234
3生き生きする1234
4怒りを感じる1234
5内心腹立たしい1234
6イライラしている1234
7ひどく疲れた1234
8へとへとだ1234
9だるい1234
10気がはりつめている1234
11不安だ1234
12落着かない1234
13ゆううつだ1234
14何をするのも面倒だ1234
15物事に集中できない1234
16気分が晴れない1234
17仕事が手につかない1234
18悲しいと感じる1234
19めまいがする1234
20体のふしぶしが痛む1234
21頭が重かったり頭痛がする1234
22首筋や肩がこる1234
23腰が痛い1234
24目が疲れる1234
25動悸や息切れがする1234
26胃腸の具合が悪い1234
27食欲がない1234
28便秘や下痢をする1234
29よく眠れない1234
あなたの周りの方々についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付けてください。
次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?非常に多少かなり全くない
1上司1234
2職場の同僚1234
3配偶者、家族、友人等1234
あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?非常に多少かなり全くない
4上司1234
5職場の同僚1234
6配偶者、家族、友人等1234
あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?非常に多少かなり全くない
7上司1234
8職場の同僚1234
9配偶者、家族、友人等1234
満足度について満足まあ満足やや不満足不満足
1仕事に満足だ1234
2家庭生活に満足だ1234

基本的に、ストレス度は回答の合計点数を基準に判定されます。判定結果は下記のような形式で、回答者本人に通知されます。

ストレスチェック結果のイメージ

※「ストレスチェック制度 導入マニュアル」/厚生労働省より引用

職業性ストレス簡易調査票(57項目)の回答を合計点数で判断する場合、下記の条件を満たすと高ストレス者と認定されます。

・Bの合計点数が77点以上である
・質問領域AとCの合算の合計点数が76点以上であり、かつ質問領域Bの合計点数が63点以上であること

上記の計算方法以外に、「素点換算表」を使う方法もあります。こちらは計算方法が複雑になっています。詳しくは厚生労働省の【数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法】をご確認ください。

ストレスチェックの流れ

介護職をはじめ、対象となる事業所・企業でおこなわれるストレスチェックについて、回答者の立場から見た流れを確認していきましょう。

1.質問票の配布・記入に対応する

事業所・企業から配布される質問票に回答・提出します。

2.質問票をもとに、医師・保健師など専門家がストレスチェック

医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士などの中から認定された実施者が、各従業員のストレス状況を確認・評価。高いストレスを感じていると思われる従業員は「高ストレス者」と判定されます。

3.結果が通知される

高ストレス者には、医師との面談の案内が通知されます。本人が希望する場合は面談がおこなわれます。

4.就業上の措置が必要かどうかの判断

面談およびストレスチェックの内容から、就業上の措置が必要かを検討します。就業上の措置について、具体的には下記のような対応があります。

・労働時間の短縮や時間外労働の制限
・労働負荷の制限
・就業場所または部署の変更、夜勤業務の減少

次に,介護職は実際にどのようなストレスを感じているのか、そのストレスを解決する方法について確認していきましょう。

介護職が感じているストレスとその要因・解決法

ここでは介護職が受けやすいストレスの種類と、その解決法を紹介します。

介護職のストレス1:労働に対して待遇が見合わない

介護職は非常に多忙かつ負担の大きい仕事ですが、それに見合った給与や待遇とは思えないという現場の声が多くあります。残業が多かったり休みが取りにくかったりする中で、待遇に対する不満がストレスになる場合もあるでしょう。前向きにがんばろうとしても、そういったストレスがあるとやる気が出ないのも無理はありません。

介護職のストレス2:人手不足で業務が回せない

高齢化は進む一方ですが、働き手が圧倒的に足りていないのが日本の現状です。介護職員が足りないと感じている事業所がほとんどで、1人あたりの業務量が多いと負担も大きく、休憩や休みを取りにくくなります。
採用活動をおこなっても応募が少ない、あるいは入職してもすぐに辞めてしまうなど、人材確保と定着に頭を悩ませている介護事業所も多いです。このような状況は、短期的なら我慢できても長期間続くと大きなストレスにつながります。

介護職のストレス3:職場の人間関係が悪い

介護職は上司や先輩職員、同僚などと過ごす時間が長く、協力し合いながら仕事を進める必要がある仕事です。決まった人と毎日、密に触れ合わなければならない状況で、人間関係がギスギスしていると、精神的につらいでしょう。悪い雰囲気の中で働くと、ストレスが蓄積し疲弊してしまう場合もあります

介護職のストレス4:体力的な負担が大きい

介護職は体力を使う仕事です。ベッドからの移乗やトイレ介助では利用者を持ちあげることもあります。入浴介助は暑い中、汗だくになりながら何人もの利用者を担当するため、さらに大変です。多くの介護職が腰痛や肩こりに悩まされているのも現状です。
さらに夜勤や早朝勤務などがあると生活リズムが乱れやすく、心身の負担はさらに大きくなるでしょう。

介護職のストレス5:合わない利用者がいる

利用者とそのご家族を含む人間関係もまた、介護職にとって大きなストレスです。理不尽な理由で利用者から文句を言われたり、ご家族からクレームを受けたりした経験をもつ 方も多いのではないでしょうか。しかし、いくら納得がいかなくても利用者やそのご家族を相手に、感情的になることはできません。自分の感情を抑える場面が多いほど、ストレスが溜まっていくので精神的に疲れてしまう人も多いでしょう。

介護職が感じるストレスを解決するには?

介護職がストレスを感じる場面は多いですが、じっと耐えているだけでは健康を損なう恐れもあります。どのような解決法があるか確認していきましょう。

誰かに相談してみる

まずは、信頼できる家族や友人に相談してみると良いでしょう。自分の頭だけでストレスについて考えていると、「嫌だ」「つらい」というネガティブな気持ちがぐるぐると回るだけで、具体的な解決策が出てこないことがあります。
誰かに話すためには、自分の考えを整理してまとめなければならないため、自然と客観的に事実をとらえることができます。客観的に考えると冷静になりやすいため、解決策を思いつく確率が高くなります。また、相談した相手から新しい視点や、具体的なアドバイスをもらえるかもしれません。

自分の努力で改善可能なストレスか、考えてみる

待遇改善のためにキャリアアップしたり、利用者への接し方を変えたりするなど、自分の努力で改善できるストレスの原因なら、解決に向けて働きかけてみるのも良いでしょう。しかし、ストレスの原因が、人間関係や事業所と方針が合わないなどの場合は、他の人の協力が必要です。自分だけでストレスの原因を解決できない場合は、無理に解決しようとせず、ストレスによるダメージをうまく受け流す方向に振り切るのも方法のひとつです。

ストレスを感じにくい職場への転職を考える

自分だけの努力ではどうしようもできないストレスなら、転職する方法もあります。その際に注意したいことは、「嫌だ!」という気持ちだけで転職を決めないようにすることです。
悩まされているストレスについてよく考え、次の職場では同じ状況にならないよう慎重に決める必要があります。もし人間関係が原因のストレスで転職したいなら、職場見学の際に事業所内のスタッフの雰囲気や、面接官の対応もしっかりチェックしてください。

おすすめのストレス解消法

ストレスの原因を解決することと同じくらい、受けたストレスを解消することは心身の健康にとって重要です。手軽に取り入れられるストレス解消法を紹介します。

体を動かす

ストレスを発散するには軽い有酸素運動が効果的といわれています。体が温まり軽く汗をかく程度の運動を毎日20分程度おこないましょう。野外でのウォーキングなどがおすすめですが、室内でのヨガも効果的です。ストレス解消が目的の場合はあまり長い時間を取らなくてもいいので、無理をせず運動後に心地よさを感じるくらいで問題ありません。

しっかり睡眠を摂る

睡眠は体の休息と同時に、ホルモンバランスの変化や乱れた自律神経を整える効果もあります。自律神経の働きが整うとストレス耐性が向上するメリットも期待できます。逆に睡眠不足が続くと、ストレスを受けやすい体を作ってしまうので、意識して睡眠を摂りましょう。
ストレスで眠れないという方はアロマテラピーを試してみると良いかもしれません。ラベンダーやオレンジ、ベルガモットなどの香りはリラックス効果が高いといわれているので、寝室に置くと良いでしょう。

気分転換する

趣味や旅行を楽しむ、お笑いの動画を見て思い切り笑う、泣ける映画を観て泣いてみるなど、気分転換することもストレス解消におすすめです。
着なくなった洋服や溜まっている雑誌など、不要な物を処分するのも良いでしょう。見た目がすっきりして、成果が目に見えやすいのでストレス解消に役立ちます。

まとめ

今回は介護職の方にもぜひ受けていただきたい「ストレスチェック」、介護職が感じやすいストレス、さらにそれらのストレスの解決法・解消法についてご紹介しました。
人はストレスを感じると感情や体調、行動にその弊害が現れることがあります。介護職のストレスは現場でのミスにつながってしまう恐れも。
ストレスを感じている自覚がある方はもちろん、「自分は大丈夫」と思っている方も過信せず、年に一度はストレスチェックでご自身の心身の健康を確認してみてください。
もし働いている事業所がストレスチェックを義務付けられていない場合は、インターネットに無料でストレスのセルフチェックができるサービスもあるので、利用してみてはいかがでしょうか。

渡口 将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。