介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 資格・就職・転職 【介護福祉士実務者研修とは?】取得までの流れやメリットを紹介します!

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2023-03-13

【介護福祉士実務者研修とは?】取得までの流れやメリットを紹介します!

介護職に関心がある方や資格取得を目指す方の中には、介護福祉士実務者研修に興味を持つ方もいるでしょう。
介護職の資格には「介護福祉士」「介護福祉士実務者研修」「介護職員初任者研修」があり、それぞれ取得内容が異なります。
 
本記事では介護福祉士実務者研修について説明し、介護福祉士・介護職員初任者研修との違いを紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

介護福祉士実務者研修とは

介護福祉士実務者研修は、介護スキルの向上につながる研修であり、資格の名称です。この研修では介護に関する専門的な知識やさまざまな技術を学びます。

2013年にホームヘルパーの資格が廃止され、ホームヘルパー1級は介護福祉士実務者研修、2級は介護職員初任者研修に変更されました。

介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上位資格であり、介護福祉士(国家資格)を取得するために必須の資格・研修です。

以下でそれぞれ詳しく確認してみましょう。

介護福祉士実務者研修の内容

介護福祉士実務者研修を修了後、対応できる実務が増えます。主な内容は以下のとおりです。

喀痰吸引
経管栄養(※条件あり)
サービス提供責任者

実務者研修修了後に喀痰(かくたん)吸引などの実地研修を受講すると「たんの吸引」や、「経管栄養」による食事介助が可能になります。

(※)たんの吸引や経管栄養といった医療行為をおこなう場合は、事業所の届出や医師や看護師の指導が必要です。

そのほか、実務者研修を修了すると訪問介護事業所でサービス提供責任者としての業務が可能になります。

介護職員初任者研修との違い

介護職員初任者研修の上位資格である介護福祉士実務者研修では、初任者研修よりも高度な知識・スキルを求められます。

介護福祉士(国家資格)を目指す場合、介護福祉士実務者研修の修了が必要です。初任者研修修了のみでは介護福祉士試験を受験できません。

そのほか、初任者研修と実務者研修ではカリキュラムの内容や受講時間が異なります。無資格・未経験の場合、初任者研修で合計130時間、実務者研修では合計450時間の受講が必要です。

介護福祉士との違い

介護福祉士と実務者研修の大きな違いは、資格の分類にあります。介護福祉士は国家資格ですが、実務者研修は国家資格ではなく厚生労働省認定資格です。

実務者研修には特別な受講条件はなく、誰でも研修を受けられます。一方、介護福祉士を取得するには国家試験に合格しているのが前提です。

介護福祉士国家試験を受験するには「実務者研修修了」と「実務経験3年以上」が必要です。そのため、介護福祉士は実務者研修よりも資格の取得ハードルが高くなります。

介護福祉士実務者研修を受けられる人

介護福祉士実務者研修の資格を取得するには、研修カリキュラムの修了が必要です。実務者研修には受講条件を設けていないため、無資格でも受講できます。一方で、初任者研修に比べ、内容がより深く、かつ受講時間も長いため、介護未経験の方は負担を感じるかもしれません。

介護の学習に不安を抱いている方や、実務者研修から始めることに迷いがある方は、まずは介護職員初任者研修からの受講を検討するのも選択肢の1つです。

介護福祉士実務者研修を取得するメリット

介護福祉士実務者研修を受講することで専門知識やスキルが身につきます。ここでは、実務者研修を取得する主なメリットについて解説します。

国家資格の受験資格が与えられる

実務者研修を修了する最大のメリットは、介護分野で唯一の国家資格「介護福祉士」の受験資格を得られる点です。働きながら資格取得を目指す「実務経験ルート」では、「3年以上の実務経験」に加えて、実務者研修の修了が必須条件です。介護の基礎から医療的ケアまで幅広く学ぶため、研修内容がそのまま国家試験の対策につながります。

転職などのキャリアやスキルアップに有利

実務者研修を修了していると、介護の専門的な知識や技術を持つ証明となり、転職活動を有利に進められます。資格手当がつく事業所もあるため、厚生労働省の調査では無資格者より月収が約3万円高いというデータも示されています。即戦力として評価されるため、好待遇の求人に応募しやすくなる点も大きな魅力です。応募先の選択肢が広がるだけでなく、責任あるポジションでの採用も期待できるでしょう。

サービス提供責任者を目指すことができる

実務者研修を修了すると、訪問介護事業所に配置が義務付けられている「サービス提供責任者」になるための要件を満たせます。

サービス提供責任者は、ケアマネジャーとの連携や訪問介護計画書の作成、ヘルパーへの指示・指導など、事業所の中核としての役割を担っています。現場の介護業務に加えてマネジメントの視点も養われ、キャリアアップはもちろん、資格手当などによる給与アップも期待できる、やりがいのある仕事です。

さまざまな医療現場で知識や技術を生かせる

実務者研修では、介護の専門知識に加え「喀痰吸引」や「経管栄養」といった医療行為の基礎を学びます。高齢化に伴い、介護現場でも医療的ケアのニーズは年々高まっています。研修修了後、勤務する事業所で実地研修をクリアすれば、これらのケアも実施可能となり、対応できる業務の幅が広がります。利用者さんの急な体調変化への対応力が高まるため、看護師やその他職種との連携が確実にできるようになるでしょう。

介護福祉士実務者研修カリキュラムの概要

介護福祉士実務者研修を取得するには、研修カリキュラムをすべて修了する必要があります。ここでは、介護福祉士実務者研修の難易度や取得にかかる期間、費用、学習内容を以下で確認してみましょう。

介護福祉士実務者研修の難易度

介護福祉士実務者研修の難易度は、それほど高くないといわれています。スクールによっては修了試験を実施している場合もありますが、あくまで授業内容を確認するためのものです。追試制度も整っているため、安心して学習できます。地道に取り組めば、ほぼ確実に修了でき、資格取得することができます。

ただし、学習内容は初任者研修より専門的な内容となっているため、特に介護未経験の方は、基礎からじっくり学ぶ姿勢が大切です。

介護福祉士実務者研修取得までにかかる期間

無資格から実務者研修の取得・修了を目指す場合、450時間のカリキュラム受講が必要です。受講期間の目安は、一般的なスクールで約6か月とされています。

特定の資格を保有している場合は、受講科目が一部免除になるため修了までの期間が短縮も可能です。

実務者研修取得までの期間・スケジュールは、スクールやコースごとに異なります。いくつか候補を用意して比較検討してみるとよいでしょう。

介護福祉士実務者研修の学習内容

介護福祉士実務者研修カリキュラムでは、介護に必要な知識を20科目(計450時間)学びます。初任者研修を修了している場合は、一部の科目(130時間分)が免除対象です。

実務者研修カリキュラムの内容を以下で確認してみましょう。

科目名研修時間(時間)科目名研修時間(時間)
(※)人間の尊厳と自立5介護過程Ⅲ45
(※)社会の理解Ⅰ5発達と老化の理解Ⅰ10
社会の理解Ⅱ30発達と老化の理解Ⅱ20
(※)介護の基本Ⅰ10(※)認知症の理解Ⅰ10
介護の基本Ⅱ20認知症の理解Ⅱ20
コミュニケーション技術20(※)障がいの理解Ⅰ10
(※)生活支援技術Ⅰ20障がいの理解Ⅱ20
(※)生活支援技術Ⅱ30(※)こころとからだのしくみⅠ20
(※)介護過程Ⅰ20こころとからだのしくみⅡ60

(※初任者研修修了の場合は免除)


そのほかの資格も免除対象になる場合があるため、スクールに確認をしましょう。

介護福祉士実務者研修取得にかかる費用

実務者研修取得にかかる費用は、地域や受講時期、スクールによってさまざまです。資格を保有している場合は、受講内容が一部免除になるため費用が割引される場合もあります。

実務者研修講座・スクールごとの費用例を以下で確認してみましょう。

【所持資格】三幸福祉カレッジカイゴジョブアカデミーニチイ未来ケアカレッジ
介護職員基礎研修記載なし33,000円57,627円33,000円~
ホームヘルパー1級84,700円55,000円73,333円53,900円~
ホームヘルパー2級109,670円90,200円110,000円59,950円~
初任者研修109,670円90,200円110,000円59,950円~
無資格142,670円110,000円176,000円103,950円

(※2025年7月29日時点の情報、金額は税込みで表示)

時期やキャンペーンの有無などにより料金が異なる場合があるため、スクールの公式ホームページで確認してみましょう。

介護福祉士実務者研修に試験はある?

介護福祉士実務者研修では、試験を実施する義務はありません。しかし、スクールによっては理解度の確認のための試験を設けている場合があります。実務者研修は、介護職員に必要な知識・スキルを学ぶためのものです。しっかりと学んでいれば、研修を無事に修了できるでしょう。

実務者研修のスクール選びのポイント

実務者研修のスクールは、費用だけで決めず以下の点にも注意して選ぶことが大切です。

● 働きながらでも通える立地であるか
● 自分のスケジュールに合っているか
● 欠席時の授業の振り替えはあるか
● 質問などのサポート体制は整っているか

受講料は、教育訓練給付金などの公的制度やキャンペーンを確認し、負担を抑える工夫も考えましょう。

介護福祉士実務者研修は仕事と両立できる?

結論として、仕事を続けながら実務者研修を修了することは可能です。多くのスクールが、自宅で学ぶ「通信教育」と、実技を学ぶ「通学(スクーリング)」を組み合わせたコースを用意しているため、自分のペースで学習を進められます。

通学が必要な科目も、週末や夜間に開講しているコースを選べば、平日の仕事への影響を最小限にとどめられます。「通信のみ」では修了できませんが、生活リズムに合うスクールを選ぶことで、無理なく両立できるでしょう。

介護福祉士実務者研修取得までの流れ

実務者研修の受講は、スクール探しから始まります。ここでは、通信教育での資格取得までの具体的なステップを解説します。

スクールを探す

まずは自分に合ったスクールを探しましょう。スクールの一括資料請求サイトやハローワークなどを活用して情報を集め、複数のスクールを比較検討することが大切です。前の章で解説した「スクール選びのポイント」を参考に、費用、通いやすさ、サポート体制などを総合的に見て、納得のいくスクールを選びましょう。

受講開始前の準備をする

受講するスクールを決めたら、申し込み手続きに進みます。介護職員初任者研修などの資格を持っている場合は、証明書のコピーの提出が必要です。受講科目が一部免除され、期間と費用を抑えられます。手続きが完了すると、テキストなどの教材一式が自宅に届き、まずは通信課題による自宅での学習から研修がスタートします。

研修を受講する

研修は、自宅での課題学習と教室に通うスクーリング(通学)を組み合わせて進めます。スクーリングでは、介護計画の立て方を学ぶ「介護過程Ⅲ」や、「医療的ケア」の演習など、1人では学べない実技やグループワークが中心です。無資格者の場合、全カリキュラム(450時間)の修了には約6か月かかるのが一般的です。

以下に、実務者研修から介護福祉士を受験する場合のスケジュール例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

時期内容
1~2月実務者研修スクール選び・申し込み
2~3月実務者研修受講スタート
4~10月実務者研修講義(授業)・自宅学習
8~9月介護福祉士試験の申し込み
11~12月介護福祉士受験勉強、模擬試験
1月介護福祉士試験
3月介護福祉士合格発表・介護福祉士登録

上記例を参考に、自身の状況に合わせたスケジュールを組んでみましょう。

介護福祉士実務者研修講座選びのポイント

介護福祉士実務者研修を受講する際は、受講時期の検討とスクール選びが重要です。実務者研修取得後すぐに介護福祉士試験を目指す場合は、試験日までの期間を考慮して予定を立てましょう。計画的にプランを組んでおくことで、効率よく学習を進められます。

受講時期やスクール選択のポイントを以下で確認してみましょう。

受講時期を決めるポイント

実務者研修の受講時期を決めるポイントは以下の2つです。

●国家試験に間に合うようにする
●国家試験受験までの期間を空けすぎない

実務者研修取得後すぐに介護福祉士を受験する場合、受験日程の確認が重要です。実務者研修修了には6か月程度かかるため、計画的にスケジュールを組みましょう。

また、実務者研修修了から介護福祉士試験までの期間を空けすぎないことも重要です。実務者研修で学んだ内容を覚えているうちに受験することで、効率よく試験勉強が進められます。介護福祉士試験は毎年1月に実施されるため、早めにスケジュールを調整しておきましょう。

介護福祉士実務者研修を受けるときの注意点

実務者研修の受講を決める際には、知っておくべき注意点があります。スムーズな資格取得のために、以下の点を確認しておきましょう。

研修の修了には、自宅学習での課題提出と、実技を学ぶスクーリング(通学)の全日程出席が必要です。どちらかができていないと修了できないため、計画的に自己管理すること求められます。

特に介護未経験から挑戦する方の場合、専門的な学習内容に苦労することもあります。不安がある方は、まず基礎を学べる介護職員初任者研修からのステップアップも有効な選択肢です。

最後に、研修で学ぶ「医療的ケア」は、修了後すぐに実施できるわけではありません。実際に現場で行うには、別途、職場で実地研修などを修了する必要がある点も覚えておきましょう。

まとめ:介護福祉士実務者研修はメリットが多い資格

この記事では、介護福祉士実務者研修の特徴や取得方法を紹介しました。実務者研修は、介護の専門的な知識が学べるだけでなく、介護福祉士国家試験の受験資格が得られたり、サービス提供責任者を目指せたりと、キャリアアップにつながるといったメリットの多い資格です。

資格取得までに約6か月と一定の期間がかかるため、早めに計画を立てることが重要です。受講を検討する際は費用だけで判断せず、ご自身のライフスタイルに合ったスクール・コースを選びましょう。

また、受講費用は公的な制度を有効活用して軽減できる場合があります。「教育訓練給付金」や自治体の「実務者研修受講資金貸付制度」、スクール独自の割引キャンペーンなど、利用できる制度をぜひ確認してみてください。

<コラム執筆担当者>

さとひろ
ケアマネジャー/生活相談員/介護福祉士/社会福祉士/衛生管理者/介護福祉士技術講習会講師/ヘルパー2級(当時)研修講師/介護認定審査会委員
特別養護老人ホームで社会福祉士、ケアマネジャー、介護職員として20年以上勤務。2022年からライターとしての活動をはじめ、介護・福祉に関する記事を中心に、執筆・監修などを行っている。