介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護資格・スキルアップ 介護の仕事を覚える3つのポイント!「覚えられない」を改善するコツとは?

介護資格・スキルアップ

2022-10-18

介護の仕事を覚える3つのポイント!「覚えられない」を改善するコツとは?

未経験から介護職にチャレンジしたけれど、なかなか介護の仕事を覚えられないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。利用者に寄り添い、介助や自立の支援を行う介護職は、大きなやりがいと同時に覚えることも多い重要な仕事です。介護の仕事を覚えるためにご自身で努力することも大切ですが、周囲とコミュニケーションを取りつつ、先輩やリーダーに質問して確実にスキルを身につけていくことも欠かせません。一日も早く介護の仕事を覚えたい!と考えている方に、介護の仕事を覚えやすくするポイントや工夫についてご紹介します。

ポイント1:業務に優先順位をつけて覚える

介護の仕事を覚えるためには、まず業務の中で優先順位をつけ、重要なものから覚えていくことが重要です。

利用者の特徴や注意すべき点
②業務全体の流れ
③一つひとつの作業
というようにつけていきましょう。

優先順位を付けたら、それぞれの業務で以下の点を心がけて覚えていきます。

①利用者の特徴や注意すべき点

利用者の特徴は、名前や顔とセットで覚えると良いでしょう。外見で記憶に残りやすい点、食べ物の好き嫌いやアレルギー、ベッドから車椅子への移乗や食事・入浴・排せつ介助などの際に注意すべきことなどをそれぞれの利用者と紐づけていきます。
利用者が多い場合は一度に全員を覚えようとせず、1日3~5人程度を覚えていくのが良いでしょう。「1日〇名、10日で全員を覚える」など自分なりの目標を決め、ゲーム感覚で覚えていくことがコツです。また、食事やおやつの時に、利用者の座席が決まっている場合は座席表を作り、利用者の特徴を書き込むこともポイントです。

②業務全体の流れ

介護の仕事を効率的に覚えるために重要なことは、目の前の作業だけにとらわれず、業務全体の内容を理解することです。それができれば、一つひとつの作業について、どのような意味があるのかがわかるようになります。
例えば、利用者の排せつの時間や排せつ物の量を記録することを例に考えてみましょう。作業としては「排せつの時間や量を記録しておく」という、非常にシンプルなものです。しかし「なぜこの作業が必要なのか?」という点で考えると、「排せつ時間や量から利用者の体調変化に気づいたり、利用者の排せつリズムをつかんだりするデータとして有用だから」という大きな目的がわかります。つまり作業が必要になる背景を知れば、うっかり忘れたりルーチンワークとしてメモするだけになったりという事態にはなりにくく、作業の流れを覚えやすいのです。

③一つひとつの作業

最後に覚えるのが「一つひとつの作業」です。業務全体の流れを理解した後なら覚えやすくなっているはずです。前後に何の関係もない作業を10個覚えるのは大変ですが、「〇〇だから□□する」という因果関係がわかっていれば、覚えることはそれほど難しくないものです。

介護の仕事を覚えられない人にありがちなのが、「失敗せず完璧に仕事をしなければ」と自分を追い込んでしまうことです。人間である以上、どれだけ注意しても失敗をゼロにすることは難しいものです。ハードルを自分で上げ過ぎないようにすることが大切です。ただし、同じ失敗を何度も繰り返さないように心掛けることは欠かせません。

ポイント2:メモを取る癖をつける

仕事を覚える上でメモを取ることは常識ですが、「メモ=覚えるためだけに必要」ととらえないようにしましょう。なぜなら、介護の仕事においてメモを活用することは、スキルアップや自分の成長にもつながるからです。正しく取ったメモを上手に活用すれば、後から見直して復習したり、苦手な業務の確認ができたりと、あなただけの最高の参考書になります。
ここからは、上手なメモの取り方についてご紹介します。

①タイトル、日付と時間を記入する

「そんな当たり前のことを今さら?」と思われる方も多いでしょう。しかし仕事が立て込んで慌てていたり、上司や先輩から急に指示を受けたりした時に、つい忘れがちなポイントではないでしょうか。
利用者の健康と安全への配慮が欠かせない介護職にとって、日付や時間は特に重要で、介護記録を書く際にも欠かせない要素です。
急に指示をされて日付や時間を書く暇さえなかった場合は、せめて指示を書き終わったらすぐに記入する習慣をつけると良いでしょう。「後でまとめて書けば大丈夫」と思っていると、意外に忘れてしまうことも多いので注意が必要です。

②重要度に応じて色分けする

例えば4色ペンを使って、重要なポイントは赤、疑問は青、自分なりに気づいた点・思いついたアイデアは緑、それ以外の本文は黒など、色分けをすると内容がひと目でわかります。特に自分なりに気づいた点を忘れずメモしておけば、介護記録を作成する際に「書くことがない」と困らずに済みます。

③適切な余白を取る

その場でしかメモできない内容もあれば、後で見直して初めて気づくポイントもあります。ページに適切な余白を残しておけば、後日、気づいた重要なポイントを書き込めます。また、各業務についてさらに理解を深めるきっかけにもなります。また覚えられなかったことやできなかったことだけをメモから抜き出し、ノートにまとめると自分の弱点を可視化できておすすめです。

ポイント3:わからないことは質問する

初心者の間は、わからないことは上司・先輩に確認しましょう。自分で調べると時間がかかる上に、間違った方法で覚えてしまう恐れもあります。ここでは上司・先輩への上手な質問の仕方やポイントについて紹介します。

上司・先輩に質問する時の3つのポイント

①質問はあらかじめ、わかりやすく簡潔にまとめておく

介護職員が苦手な業務としてよく挙げられる介護記録を例に考えてみましょう。苦手といっても「長い時間がかかってしまい他の業務を圧迫する」というものから、「そもそも何を書いたらいいのかわからない」というものまで、要因はさまざまです。なぜ介護記録が苦手なのか、どういった点を質問したいのかを整理せずに「介護記録が苦手なんですが、どうしたらいいですか?」と聞いても、質問された側も具体的な内容がわからず困ってしまうのではないでしょうか。
質問をする時には、問題や困ったことの結論から話しましょう。結論から明確に話し、どうすべきか質問すると相手にも伝わりやすくなります。
「すごく時間がかかってしまうので、効率アップする方法が知りたい」というところまでかみ砕くことができれば、質問された人も「ケースごとにテンプレートを作ってみたら?」など、効果的な返答がもらえるはずです。

②質問のタイミングをはかる

先輩や上司が忙しそうな時を避けるのは大前提ですが、質問をしようと思っている人が次のような状態の時に質問するのは避けた方がよいでしょう。

・作業中
・シフトが終わり退勤するタイミング
・電話を切った直後(話の内容をまとめる方が多いため)
・苛立っていそうな時

しかし、常に忙しそうにしている相手に対しては質問しづらいと思います。そんな時はまず「業務のことで質問させていただきたいのですが、ご都合が良い時にお時間いただけませんか」と、手短にお願いしておきましょう。そうすると相手から声をかけてもらえますし、万一、相手が忘れてしまった場合でも「失礼します。先程お願いした件なのですが」と声をかけやすくなります。

③教えてもらった後のお礼を忘れない

自分の時間を割いて質問に答えてくれた上司・先輩に対してお礼を言うのは当然ですが、さらに「教えていただいた内容を実行してみたら、こんな風にうまくいきました」「利用者が喜んでくれました」などの報告をしましょう。
質問に答えた人は、「どうなったかな?」と経過や結果を気にしているものです。報告があれば「よかった」と安心してもらえるだけでなく、信頼関係ができて次回からも質問しやすくなるという効果が望めるでしょう。

デジタルの力で仕事をスムーズにする方法も!

ここまでは「介護の仕事を覚えられない」という悩みに対して、自分でどう頑張っていくかにポイントを絞って紹介してきました。個人の頑張りだけでは限界があるので、全体的な業務の効率化やメンバー間の情報共有が大切です。
業務の効率化や情報共有にはIT技術が役立ちますが、介護業界は他業種よりデジタル化が遅れているといわれています。その理由として以下の4つが挙げられます。

・デジタルに強い人材の不足
・介護職の高齢化でデジタルに苦手意識を持っている人が多い
・コストがかかる
・IT化の遅れがスムーズな介護を難しくし、スタッフの負担を増やしている

ここからは少し視点を変え、よりよい仕事を行うためにデジタルの力を借りる方法について紹介します。
近年は介護業界のデジタル化を後押しするため、介護職をサポートする「介護アプリ」が多くリリースされています。それらを中心に、多くの他業種が活用している業務管理アプリ「Notion」、「Trello」などについてもご紹介していきます。
まず、介護アプリを活用するメリットを挙げてみましょう。

業務効率化が図れる

アプリ活用による最大のメリットは、入力が手軽になる、記録の確認が素早くできるなど、効率的に事務作業を行える点です。介護の現場では利用者の対応以外に、介護記録の作成をはじめとする事務作業が多くあります。それらを手作業で行っている介護現場では多くの時間をその作業にとられ、肝心の介護業務を圧迫しているという現実があります。業務の負担軽減に役立つのが介護アプリの活用です。

●介護職同士の連絡・連携がスムーズになる

事業所・施設の介護職全員がアプリをインストールすれば、素早く手軽に情報共有できるだけでなく、リアルタイムで連絡を取り合うことも可能になります。多くの介護職にとってメリットがありますが、特に訪問介護では、介護職が1人で業務を行うことが多いため、遅延なく情報共有・連絡ができることは大きなメリットです。

●無料あるいは低コストで導入できるアプリもある

介護アプリの導入にあたって気になるのはやはりコストです。有料の介護アプリも多いですが、なかには無料で利用できるものや、低コストで導入できるものなど、さまざまなタイプがあります。まずは経費を考えて試してみると良いでしょう。

代表的な介護アプリ

【ケア記録アプリ】
利用料金:iPad1台につき5,000円/月
介護現場スタッフ向けに開発された、iPadを使用する介護記録アプリです。パソコン操作が苦手な方でも使いやすい設計で、幅広い年代の方におすすめです。
【カイポケ】
利用料金:サービス種別によって変動(通所介護の場合、25,000円/月)
請求業務から営業支援まで、介護業務の多くをサポートしています。スマートフォンと連携できて便利ですが、機能が多岐にわたる分、ある程度のITリテラシーが必要です。
【まもる君クラウド】
利用料金:サービス種別によって変動(居宅介護支援の場合、7,800円/月)
介護請求や売上管理など介護業務に必要な機能が豊富に揃っており、クラウドを利用するため初期費用が必要ありません。機能が豊富なため一定のITスキルが求められます。

多くの業種で人気の業務効率化アプリ

・Notion(ノーション)
IT系の仕事をしている方から一般の会社員・主婦・学生まで多くの層から人気を集めるプロジェクト管理ツールです。日々のタスク管理やToDoリストとしても利用でき、クラウドでデータ管理され、マルチデバイスに対応します。また無料プランが用意されています。

・Trello(トレロ)
初めてでも直感的に使用できるプロジェクト管理ツールで、タスクをボードに貼り付け、完了したら次のボードへ移動させます。作成したタスクリストを自由にドラッグし、進捗状況がひと目でわかることが特徴のツールです。無料で使えるプランもあり、特に少人数制でのプロジェクト管理に優れています。

まとめ

「介護の仕事が覚えられない」と悩んでいる方に伝えたいのは、介護は奥が深く覚えるべきこともたくさんある重要な仕事ということです。最初からすべてを理解・習得しようと焦らず、一つひとつを確実に積み重ねていくことが大切です。そのためにメモをうまく活用したり、上司・先輩にスムーズに質問をして疑問を解決したり、職場のデジタル化に取り組んだりしながら問題を解決し、介護の仕事を覚えていきましょう。失敗は成功へのステップと捉えて、恐れずに挑戦していくことが重要です。今回の記事を参考にぜひ頑張ってみてください。

渡口 将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながら、ライター活動をおこなっており、記事の執筆や本の出版をしている。