介護情報メディア ケアケア ケアラー向けコラム ビジネスケアラー 介護と仕事の両立ができる介護休業制度とは?対象者や取得条件などわかりやすく解説

ビジネスケアラー

2024-07-24

介護と仕事の両立ができる介護休業制度とは?対象者や取得条件などわかりやすく解説

高齢社会の日本では、今後、多くの家庭で介護が必要となるケースが増加すると予測されます。介護は肉体的にも精神的にも負担が大きく、特に働きながら介護をするビジネスケアラーにとって、仕事との両立が課題となっているのです。

 

本記事では、介護休業制度の対象者や内容・具体的な手続き方法について解説します。介護休業制度を正しく理解し、必要なときに活用できるように備えておきましょう。

介護休業とは

介護休業は、介護が必要なご家族がいる従業員の負担を軽減し、仕事と介護を両立するために設けられた法律に基づく制度です。

詳しくは、次の内容を見ていきましょう。

  • ・対象となるご家族の範囲
  • ・介護休業の対象者
  • ・介護休暇との違い

まずは、どのような人が対象となるのか、解説します。

対象となるご家族の範囲

介護休業の対象となるご家族は、次のとおりです。

  • ・配偶者(事実婚を含む)
  • ・父母
  • ・子(養子を含む)
  • ・祖父母
  • ・兄弟姉妹
  • ・孫
  • ・配偶者の父母(義父母)

ご家族の範囲には、事実上の婚姻関係の配偶者とその父母も含まれ、子の範囲は、養子を含む法律上の親子関係のある子のみが該当します。

介護休業の対象者

介護休業は、要介護状態の対象のご家族を持つ、その介護をする労働者が使える制度です。要介護状態とは、負傷、疾病または身体上・精神上の障がいにより、2週間以上の期間、介護が必要な状態を指します。

なお、介護休業の対象者は、正社員だけでなくパートやアルバイトの方も含まれます。有期雇用されている場合、介護休業の取得予定日から93日を越えており、その時点から6か月を経過する期間に、契約の更新が明らかになっている必要があります。

また、雇用期間の有無にかかわらず、労使協定を締結している場合、次の方は介護休業を取得できません。

  • ・入社1年未満
  • ・介護休業の申請から93日以内に雇用期間が終了する
  • ・1週間の所定労働日数が2日以下

日雇い労働者の方は介護休業の取得の対象外です。会社によって対象者や就業規則が異なるため、職場で確認しておきましょう。

介護休暇との違い

介護休暇は、対象となる要介護状態のご家族を介護するために、短期間の休みを取得できる制度です。次の表は、介護休業との違いをまとめたものです。

介護休業介護休暇
取得期間対象家族1人につき、通算93日まで

※3回まで分割取得可能
・1日または、半日単位で取得可能
・時間単位で取得可能
・対象家族が1人の場合:年間5日取得可能
・対象家族が2人以上の場合:年間10日取得可能
目的家族の介護・世話のため短期間の介護(準備)のため
給付金介護休業給付金の受給可能
※雇用保険加入者のみ
給付金制度なし

介護休暇は介護休業と比べて取得期間が短いため、介護保険サービスの手続きや通院時に適しています。また、介護休暇は年次有給休暇には含まれません。

介護休業は、2週間以上の長期にわたって介護が必要な場合に取得できるため、介護に必要な期間によって制度を使い分けるとよいでしょう。

介護休業制度が使える条件とは

介護休業制度を取得するためには、条件があります。

  • ・取得期間
  • ・取得に関する注意点
  • ・介護休業の手続き方法

上記の内容を把握し、スムーズに制度を利用できるようにしておきましょう。

取得期間

介護休業は、原則として対象となるご家族1人につき、通算93日まで取得でき、分割して利用も可能です。

例えば、1か月間の介護休業を取得し、その後仕事に復帰して数か月後に再び1か月間介護休業を取得するといった柔軟な使い方もできます。介護休業は長期介護を見据え、介護と仕事を両立するための準備期間といえるでしょう。

休業期間中に、市町村の窓口に相談し、介護サービスや地域サービスを利用できるのか検討することが大切です。また、家庭内の役割分担を決めておき、介護負担が偏り過ぎないように話し合いましょう。

取得に関する注意点

介護休業を取得する場合は、2週間前に職場への申告が必要です。職場によっては、介護対象のご家族が要介護状態である証明書を求められます。

ただし、証明書類は医師の診断書や介護認定の結果など、会社によって異なるため、求められる提出可能な書類を準備しておきましょう。

介護休業は、原則として利用開始日の前日までであれば、いつでも撤回可能です。ただし、連続して2回介護休業の申し出を撤回した場合、同じ対象ご家族については、それ以降の申し出は否認されることがあります。(会社には否認する権利がある)

また、介護休業の開始後に、介護対象のご家族が亡くなったり、介護が必要な状態でなくなったりした場合は、休業期間中でも終了となります。

介護休業の手続き方法

介護休業を取得する際の手続きは、以下の流れで行います。

  1. 1.会社に相談
  2. 2.介護休業申請書の提出
  3. 3.会社から書面などで通知
  4. 4.取得予定日から介護休業開始

まず直属の上司や人事担当者に介護休業を取得したい旨を相談します。希望日に休業できるようにするためには、2週間前には書面などで申請しましょう。

申請書は、会社で用意されている場合もあるため、指定された書式で申請します。書式が指定されていない場合、次のような内容が必要です。

  • ・申請日
  • ・氏名などの基本情報
  • ・対象ご家族の氏名・続柄
  • ・対象ご家族が介護状態である証明
  • ・休業開始日および、介護休業日数

申請書の様式が決まっていない方は、厚生労働省ホームページでダウンロードすることも可能です。なお、申請については書面でやりとりするだけでなく、会社側が了承すれば、FAXや電子メールでも申請ができる場合があるので、連絡ツールも確認しておきましょう。

提出後、会社からは1週間以内に介護休業開始予定日および、介護休業終了予定日などを記載した通知書が作成されます。

介護休業の手続きをスムーズに進めるためにも、早めに会社に相談し、必要な書類を確認しておきましょう。

雇用保険の被保険者は介護給付金が支給される

介護休業を取得すると、一定の条件を満たした雇用保険の保険者には、介護給付金が支給されます。介護給付金は、介護休業期間中の収入を補うためのものです。

支給金額

給付金の計算方法は以下のとおりです。

介護休業給付の1支給単位期間の給付額
開業開始時賃金日額×支給日数×67%

例えば、平均20万円の賃金がある場合、1か月の支給額は約13万円となる計算です。給付金は最大93日間まで支給されます。

支給条件

介護給付金は、介護休業開始前2年間のうち、12か月以上雇用保険に加入している必要があります。

また、介護休業中に11日以上就労している場合や介護給付金の80%以上の賃金が支払われている場合は、減額または0円になります。

雇用期間がある場合、介護休業開始予定日から起算して、93日経過する日から6か月間経過するまで、契約が満了していない方が対象です。

申請方法

介護休業給付金の申請は原則、事業主を通して手続きします。ただし、介護給付対象者が希望する場合は、本人が申請手続きすることも可能です。

申請は、職場の所在地が管轄するハローワークで行います。会社から発行される、介護休業給付金支給申請書やタイムカード・出勤簿・会社に提出した介護休業申出書などが必要です。まずは、職場・ハローワークで相談・確認しておきましょう。

介護休業制度に関するよくある質問

ここでは、介護休業制度に関するよくある質問を紹介します。

質問1:要介護者が入院中でも取得できますか?

要介護者が入院した場合でも、介護休業を取得できます。入院前後のサポートや退院後の準備などに介護が必要な状況が想定されるためです。

ただし、入院期間中は介護の負担が軽減される可能性もあるため、取得申請の段階で会社と相談し、休業期間を調整するとよいでしょう。

質問2:介護対象の家族がうつ病でも介護休業が使用できますか?

対象のご家族がうつ状態であっても、取得できます。取得要件は、介護保険認定の要介護2以上、もしくは以下の表のうち、Ⅱが2つ以上またはⅢが1つ以上で、その状態を継続(2週間以上)していることが条件です。

項目  状態
110分間の座位保持1人でできる支えてもらえばできるできない
25分以上の歩行
※座ったり停止したりしない
何かにつかまればできる
3移乗
※ベッドと車椅子に乗り移るといった動作
一部介助・見守りが必要全面介助が必要
4水分・食事
5排泄
6衣類の着脱
7意思伝達できるときどきできないできない
8外出すると戻れないないときどきあるほとんど毎回ある
9物を壊す・衣類を破る行為ほとんど毎日ある※自分や他人を傷つける行為もときどきある
10周囲の者の対応が必要なほど物忘れをするほとんど毎日ある
11薬の内服1人でできる一部介助・見守りが必要全面介助が必要
12日常の意思決定できる本人に関する重要な意思決定はできないほとんどできない

出典:常時介護を必要とする状態に関する判断基準|厚生労働省 を基に表作成

※1人でできる状態とは、福祉用具を使用する場合も含まれます。

※見守りは、常時付き添いや声かけといった指示が必要な状態です。

質問3:介護休業を延長した場合、介護給付も受け取れますか?

介護休業給付金は、原則として93日間の介護休業期間中に支給されるものです。そのため、介護休業を延長した場合は、受け取れません

ただし、会社によっては、独自の取り決めで延長分の給付金を支給している場合もあるため、会社に確認してみましょう。

仕事と介護の両立支援制度における配慮

介護休業を含む両立支援制度には、次の内容が含まれます。

  • ・介護休業
  • ・介護休暇
  • ・短時間勤務の措置
  • ・所定外労働の制限
  • ・時間外労働の制限
  • ・深夜業の制限

両立支援制度と介護保険サービスをうまく組み合わせれば、介護しながら働けるため、介護離職を防げます。

また、両立支援制度の利用を理由に、解雇や雇い止め、降格などの不利益な扱いはできない定めのため、権利として相談しましょう。

制度をうまく活用して仕事と介護を両立しよう

介護休業制度は、介護が必要なご家族を持つ労働者が、安心して仕事を続けるための制度です。介護休業制度を理解していれば、ご家族の介護が必要となったとき、安心して仕事と介護を両立できます。

仕事と介護の両立で悩んでいる場合は、1人で抱え込まずに、まずは会社や自治体の窓口に相談してみてください。介護は、ご家族との大切な時間を過ごす貴重な機会でもあります。制度をうまく活用し、仕事と介護の両立を目指しましょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。