介護情報メディア ケアケア ヤングケアラー支援情報 【社会の課題】ヤングケアラーとは?その実情と課題、解決方法を解説

【社会の課題】ヤングケアラーとは?その実情と課題、解決方法を解説

現代の社会問題としてメディアでも取り上げられることが多くなってきた「ヤングケアラー」。ヤングケアラーという言葉を聞いたことはあるものの、具体的な実情や問題点についてよく分かっていないという方も多いのではないでしょうか?今回は、ヤングケアラーの実情と課題について解説しながら、ヤングケアラーの予防と解決方法を解説します。

ヤングケアラーとは?

ヤングケアラーとは、日常的に家族の世話などの主たる担い手になってしまっている18歳未満の子どもを指します。

厚生労働省の「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(令和2年度)」(調査は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が実施)によると、ヤングケアラーに該当すると思われる子どもの有無について学校に聞いたところ、「いる」という認識が中学校で 46.6%、全日制高校で 49.8%となっています。

一方で、「家族内のことで問題が表に出にくく、実態の把握が難しい」と回答した学校は、中学校 で87.7%、全日制高校で 81.9%にのぼっており、表面化していないヤングケアラーも多くいると考えられています。

ヤングケアラーは、どのような問題を抱えているのでしょうか。はじめに、ヤングケアラーの実情について見ていきましょう。

参考:「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月

家事・育児・介護の担い手になっている

ヤングケアラーと呼ばれる人は、親や親族が障害や病気によって、買い物・料理・掃除・洗濯などができず、学校に通いながら家事を一手に引き受けているケースが多く見られます。

また家事だけでなく、兄弟の世話をしなければならないヤングケアラーや、家族のなかに重度の認知症高齢者がいる場合、目を離すと徘徊する危険性もあることから、つねに見守らなければならないというヤングケアラーもいます。

通訳の担い手になっている

家族のなかに、⽇本語がうまく話せない方や言語障害のある方がいる場合、外部との意思疎通が図れないため、子どもが通訳としての役割を担っているケースもあります。

労働の担い手になっている

親や親族が、障害や病気などさまざまな理由で働けない、もしくは働かないために、家計を支える目的で、子どもが労働をしなくてはいけない状況もあります。

看病の担い手になっている

家族のなかに、アルコール依存症・薬物依存症などの問題を抱えている方や、難病や精神疾患のある方、介護を必要としている方がいる場合、適切なサービスを使わず、子どもが見守りや身の回りの世話、看病などを担っているケースもあります。

ヤングケアラーの問題点とは

子どもが家事や家族の世話を担うことは、「当たり前だ」と思われる方もいるかもしれません。もちろん、家族で協力し合って生活していく姿は大切です。しかし、「お手伝い」の域を超えた、年齢に見合わない重い責任や役割を担うヤングケアラーには、さまざまな悩みや問題が生じます。

厚生労働省の「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」に記載のある事例も交えながら、ヤングケアラーはどのような問題を抱えているのか、見てみましょう。

学業や進学に影響が出る

もっとも大きな問題は、家事や家族の世話に追われ、学業に充てる時間を取れないケースです。

例えば、ある中学生は、母親がうつ状態となり、家事や兄弟の世話ができていないことを見かねて、本人が対応するように。その結果、夜中に勉強をするようになり、十分な睡眠がとれなくなりました。しかし、実情を把握できていない父親から、成績が下がったことを厳しく叱責されて心理的なストレスを抱え、自傷行為に至ってしまったという事例が報告されています。

このように、ヤングケアラーとなることで、遅刻、早退、欠席、成績の低下が生じ、進学もあきらめざるを得ない状況になる可能性があります。

相談できる人がいない

子どもが家事をするのが当たり前と考え、外部の支援や介入を拒否する家庭もあります。また、家のことをしないと暴力的な叱られ方をしているヤングケアラーもいるようです。そのため、ヤングケアラーが、家族のみならず、ほかの人に相談できる環境がないという状況に陥ります。

また、ほかの家庭の状況を知らず、現状が当たり前と思い込み、相談しようとすら思っていないヤングケアラーもいます。その結果、ヤングケアラーの孤立を助長し、状況をより深刻にしてしまう可能性もあります。

就職への影響が出る

学業に影響があれば、進学や就職先の選択肢も狭まってしまいます。

ヤングケアラーのなかには、小学生の頃から、精神が不安定な母親の愚痴を、毎日長時間聞きながら、家事(掃除、洗濯、食事の用意、弁当作りなど)を担っているケースもあります。その結果、自分がいないと家族を支えられないといった誤った責任感が生まれ、共依存関係に陥り、仕事の範囲を狭めてしまう可能性もあるでしょう。

さらに年相応以上の家事や世話をしているにも関わらず、叱責されると、自己肯定感も低くなるため、就職活動において自己アピールができないなどの影響も考えられます。

友人関係への影響が出る

ヤングケアラーは、家事や家族の世話に追われ、自分の時間を作ることが難しいため、友人と交流する時間を十分に作ることができません。さらに、学校を休みがちになってしまうと友人との距離感が生じてしまい、ますます自分について話せない状態に陥ります。また、家庭事情が複雑であれば、人には相談しにくく、友人に話せないというヤングケアラーもいます。

ヤングケアラーの予防と解決方法

こうした多くの悩みを抱えるヤングケアラーの問題を解決するためには、どうすればよいのでしょうか。ヤングケアラーを生まないために、またヤングケアラーの負荷を少しでも軽減するための方法をご紹介します。

介護保険を活用する

将来、介護が必要になる可能性は誰しもあります。言い換えれば、何も備えていなければ、自分の子どもがヤングケアラーになってしまう可能性もあり得ます。

「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(令和2年度)」によると、高齢者のケアを行っているヤングケアラーは、祖母3.5%、祖父1.8%です。しかし、ヤングケアラーのすべてが顕在化していないことを考慮すると、実際はもっと多いことも予想されます。

また、介護サービス(ヘルパーなど)の利用割合はわずか2割程度にとどまっています。介護保険サービスを一部利用できている状況がうかがえるものの、全体的にみれば介護サービスはあまり利用されていないのが実情です。

万が一の場合に備え、親として子どもたちの負担を少しでも軽減する方法として、公的介護保険制度や介護保険があります。

例えば、ヤングケアラーの家庭では、収入が十分に得られず、生活困窮に陥っているケースも少なくありません。子どもが経済的に家族を支えることは難しく、精神的、肉体的な問題に加え、経済面でも負担がかかってしまう可能性があります。

こうした状況を少しでも回避するために、介護保険を検討することもヤングケアラーを生まないひとつの予防策になります。

地域包括支援センターに相談する

ヤングケアラーの家庭が抱える問題は、ひとり親・生活困窮・親の精神疾患や、病気・高齢者介護など多岐にわたります。自らがヤングケアラーであると認識して、誰かに相談したいと思っても、相談窓口がわからないだけでなく、「相談したら相手を悩ませるのではないか」「バカにされるのではないか」という不安を抱えるヤングケアラーも多くいます。

ヤングケアラーの状況がより深刻化するのを防ぐためには、関係機関が連携を図り、まずは家庭の事情で悩む子どもたちが相談できる環境を整えることが必要です。

ヤングケアラーの不安を解消し、手助けする公的機関として、介護や精神障害などにも対応する地域包括支援センターがあります。地域包括支援センターは、介護保険法に基づく地域包括ケアシステムの中核的な機構を担う施設で、高齢者の課題解決のみならず、ヤングケアラーも安心して相談できる場所です。

ヤングケアラーが悩みを個々で抱え込まず、社会から取り残されないためにも、周りの大人が潜在的なサインに気付いて手を差し伸べてあげることが必要です。その上で、もしも周囲にヤングケアラーで悩んでいる可能性がある子どもがいたら、地域包括支援センターの存在を知らせるなど、寄り添ってあげることが大切です。

ヤングケアラーの今後

ヤングケアラーは、自らがヤングケアラーであると認識できていない場合もあります。「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(令和2年度)」によると、平日1日あたり7時間以上、家族の世話をしている人の3割以上が「特に大変さは感じていない」と回答しています。つまり、ヤングケアラーとしての生活が当たり前になってしまい、自覚できていないケースもあるのです。

こうした潜在化しているヤングケアラーを支援するためには、ヤングケアラーについての周知活動を行い、本人が気付けるきっかけを作る必要があります。

例えば、高齢者や障害者を支える介護関連の方や施設では、支援計画を作成したり検討したりする際に、対象者のなかに子どもの有無を確認してみるのもよいでしょう。子どもがいる場合にはヤングケアラー化していないか観察したり、目配りしたりすることで問題の顕在化を図れる可能性もあります。

 

現実的に、家庭の事情に踏み込むのは、問題が顕在化しない間は難しいかもしれません。しかし、多様化してきている家庭環境のなかに潜んでいる課題を発見するためには、周囲の大人が、子どもが出す小さなサインに気付こうとする意識を持つことが求められます。専門性や組織、団体の垣根を超えて学校や関係機関が連携を図り、ヤングケアラーの問題解決に取り組むことが、状況の深刻化を未然に防ぐことにつながるのです。

まとめ

日頃、子どもたちと接しているなかでちょっとした違和感のなかに、ヤングケアラーの問題点が隠れている可能性もあります。支援の垣根を取り払い、その小さなサインを見逃さずに、関連機関との連携を図ることこそ、ヤングケアラーの問題解決につながっていきます。

介護が必要になることは、すべての人に起こりうる問題です。大変なのは、本人だけでなく、子どもたちも大きな影響を受けます。子どもたちが自分たちの人生を生きることができるようにするためにも、周囲の大人がまずは実情を知り、目配りすることが大切な一歩になるのです。

渡口 将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながら、ライター活動をおこなっており、記事の執筆や本の出版をしている。