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地域の介護支援

2024-03-29

こども食堂の利用方法とは?|食育や学習支援が叶う居場所づくりに貢献 

こども食堂は、地域住民や自治体が主体となり、子どもたちに無料または低価格で食事を提供するコミュニティの場です。「こども」と名前はついていますが、子どもから高齢者まで誰でも利用できることが多く、食を通してさまざまなニーズに応えています。

 

しかし現状では、「こども食堂」という名前は知っているけれど、実際に利用したことのない人が多いようです。

 

そこで今回は、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ 広報・ファンドレイジング統括補佐の江副真文さんに、こども食堂の現状や利用方法などについて伺いました。

こども食堂の現状について教えてください。 

こども食堂は、さまざまな理由で孤立している地域の子どもたちのために何かできないかと、2012年に東京から活動が始まったといわれています。その活動に賛同する人たちが徐々に増えていき、11年が経った現在では、こども食堂は全国9,000箇所以上が確認されています。これは、全国の公立中学校の数とほぼ同数です。 

むすびえでは、より多くの子どもたちが利用できるように、こども食堂の数を全国の公立小学校の数と同じ約19,000箇所に増やすことを目指しています。 

こども食堂はどのような場所ですか? 

こども食堂と聞くと、多くの人は貧困の状況にある子どもたちにご飯を提供する場所とイメージするかもしれません。しかし、それだけではありません。 

もちろん貧困対策といった側面もありますが、こども食堂は、地域コミュニティの場として誰もが利用できる多世代交流の場所となっています。 

誰もが利用できるということですが、私のような大人が利用してもよいのでしょうか? 

もちろんです。 

こども食堂は、子どもたちが無料または低額でご飯が食べられ、1人でも安心して通える居場所ということが前提ですが、実際には小さな子どもから高齢者まで誰でも利用できるこども食堂が多いのです。むしろ子どもたちが地域の多世代と交流できる場として、大人の皆さんにもぜひ利用していただきたいです。 

今は防犯など、さまざまな課題もあり、地域内での交流が難しい社会になっています。こども食堂では、食事をしに行くついでに、そこにいるいろいろな方と交流ができ、大人たちも配膳や食事のついでに「最近どう?」と話しかけるなど、自然な流れでつながり合えると思います。 

こども食堂を利用する方法について教えてください。 

まずは近くにどんなこども食堂があるのかを調べて、足を運んでみてください。ただし、開催場所が小さな公民館や自宅というところもあり、食事を提供できる数にも限りがあるため、事前予約が必要なところもあります。まずは、利用したいこども食堂に問い合わせてみるのもよいと思います。 

こども食堂に来られる方はどのような方が多いですか? 

小学校の近くにあるこども食堂では、放課後にランドセルを持ったまま小学生たちが遊びに来ていたり、中学校の近くでは中学生の利用者が多かったりします。土日開催のこども食堂では、親子の利用者も見られます。 

最近は、保育園の中やコンビニ、老人ホームといった場所でこども食堂を開催しているところもあり、開催場所によって利用者層も異なります。こども食堂には統一のルールがないので、こども食堂の数だけ特徴があり、来る方もさまざまです。 

こども食堂に「来てほしい子」はいますか? 

いわゆる「居場所がない」と感じているような方にとって、こども食堂はとても安心・安全に感じて利用できる場所だと思いますが、前述のようにこども食堂の数だけさまざまな居場所がありますので、地域のいろんな人たちに利用してもらいたいですね。 

こども食堂を支援する中で、心がけていることはありますか? 

むすびえは、今年で活動6年目に突入し、皆さまからのご寄付をもとに日々模索しながらさまざまな形でこども食堂への支援活動が行えるようになりました。

だからこそ、私たちは中間支援団体であることをしっかり認識し、こども食堂を運営している現場の皆さんへのリスペクトを忘れず、現場が本当に求めている支援を届けられるように心がけています。 

アレルギーを持っている子どもに、どのように対応していますか? 

アレルギーや食中毒の対応に関しては、なかなかハードルが高い部分があります。飲食店を営業するには調理師免許や食品衛生管理者などの資格が必要ですが、こども食堂は原則任意の活動なので、そういったルールがありません。

今のところ、現場の皆さんが地元の保健所と相談しながら独学で学んでいるような形になっています。

アレルギーメニューに関しても、事前予約制のこども食堂では、予約時にアレルギーの有無を確認して配慮するところもありますが、基本的に寄付された食材を利用してメニューを考えているので、個々のアレルギーに対応したメニューを出すことは難しいのが現状です。 

アレルギーや食中毒に関して、むすびえが取り組んでいることはありますか? 

こども食堂がもうすぐ1万箇所を超える中、食中毒やそのほか食の問題は、私たちも対策が必要な問題として捉えています。そこで、2024年度から「こども食堂 安心・安全向上プラットフォーム」という取り組みを予定しており、2023年から実験的に始動しています。昨年は、食品衛生に詳しい専門家を招いた無料の食品衛生セミナーをこども食堂の運営者や関係者向けに開催しました。 

また、万が一食中毒や食の事故が起きてしまった時にカバーできる保険加入費の補助も考えています。安心・安全なこども食堂運営のために、これからもさまざまな支援や取り組みを行っていきたいと考えています。 

今後こども食堂をどのような場所にしたいですか? 

こども食堂が9,000箇所にまで広がり続けていく中で、こども食堂のやり方も9,000通りあるのではないかと思うぐらい、この活動には多様性溢れる価値があると思っています。 

その上で、老人ホームの中でこども食堂を開催するなど介護・福祉の観点でも手伝えることは多いかなと考えており、お年寄りが子どもたちと交流できる場の提供や、近年深刻化するヤングケアラーの問題としても、介護者と一緒にこども食堂に来ることで、その場にいる人たちみんなで支え合えるようなつながりを作っていくような取り組みがすでにあります。 

こども食堂は、多くの社会問題を解決できるポテンシャルを秘めていそうですね。 

そのとおりです。最近では、能登半島の地震の際、普段こども食堂に関わられている皆さんがスピーディな行動で、被災した翌日に学校で炊き出しや物資提供などの支援活動を始めていました。

こども食堂はある種防災拠点だと指摘する方もおり、今後防災に関連付けたこども食堂のあり方も広がっていくのではないかと考えております。 

最後にメッセージをお願いします。 

現在、私たちは、こども食堂を「あっちにもこっちにも」ある社会を目指し、日々活動を行っています。 

皆さんも、ぜひ実際にこども食堂を利用してもらい、食事利用に限らずお手伝いやご寄付なども含め、こども食堂との距離を縮めてもらえたら嬉しいなと思います。 

―江副さん、ありがとうございました。

 

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ 
広報・ファンドレイジング統括補佐
江副真文