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介護サービス・制度

2024-06-14

こども食堂を支える支援金制度とは?自治体と地域の連携の重要性

近年、日本社会における貧困問題が深刻化し、「子どもの貧困」につながっています。

 

こども食堂は、経済的な理由や家庭で孤立している子どもたちに対して、無料または低額で食事を提供する場や居場所づくりを担っています。

 

しかし、子どもを対象とした支援では、多くの支援金が必要です。

 

この記事では、こども食堂を含めた子ども対象の支援金制度や具体的な事例を紹介します。

 

こども食堂は、貧困問題の解決だけでなく、地域コミュニティの活性化にも役立ちます。子どもたちだけではなく、地域全体の課題として注目してみましょう。

こども食堂の重要性と地域の役割

こども食堂は、経済的・家庭環境を理由に十分な食事ができない子どもたちに、温かい食事を無料または低価格で提供しています。

子どもたちの中には、ひとり親や共働きで家に帰っても1人きりで、孤独を感じているケースが多くあります。

こども食堂は、子どもたちが地域社会の一員として受け入れられる場所です。異なる世代の地域住民と交流することで、大人とのつながりも持てるでしょう。

こども食堂には、単に食事を提供する場所以上の意味があり、子どもたちに健康的な食生活や人間関係の大切さを教える貴重な機会の場にもなります。

また、食事の準備や後片付けに参加することで、協調性や責任感・自立心を身に付けられるでしょう。

こども食堂は、地域の実情に合わせた柔軟な運営も行われ、地域住民の参加によって、直接的な食事提供だけではなく、地域全体の福祉の向上にもなると考えられています。

地域住民と自治体・地域の企業が連携し、こども食堂の運営に協力することは、子どもたちが安全で健康的な成長をする上で非常に重要です。

子どもを対象とした支援金制度とは

子どもを対象とした支援金制度には、主に次の2つがあります。

・こどもの生活・学習支援事業

・ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業

それぞれ解説します。

こどもの生活・学習支援事業

こどもの生活・学習支援事業は、ひとり親家庭や貧困家庭などの子どもに対し、基本的な生活習慣の習得や学習支援・食事の提供を行い、生活の質向上を目的としています。

こどもの生活・学習支援事業では、子どもへの食事提供にかかる費用や関連機関との連携体制の整備にかかる費用が補助されます。

次の表は、補助単価をまとめたものです。

内容補助単価
食事の提供1事業所あたり3,500千円
連携体制整備1実施主体あたり453千円
生活指導・学習支援・事務費:1事業所あたり2,746千円

・事業費(集合型):1事業所あたり4,898千円
(週2日以下の開催の場合・実施日数により異なる)

・事業費(アウトリーチ型):1回の訪問が1日の場合10,420円/回(半日以内の場合6,700円)

・実施準備経費1事業所あたり:改修費等4,000千円/礼金及び賃借料(実施前月分)600千円

(参考:こどもの生活・学習支援事業|こども家庭庁

こどもの生活・学習支援事業では、地域の実情に合わせた整備が求められており、多くは自治体や地域のNPO(非営利団体)・教育機関などが連携して実施しています。地域によって、提供される支援の内容や規模に偏りがある点が課題です。

また、事業の対象者や支援内容・申請方法なども、自治体によって異なります。詳しい内容を知りたい方は、各自治体に問い合わせてみてください。

ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業

ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業は、こども食堂やこども宅食・フードパントリーなどを実施する事業者を対象としており、行政と支援団体をつなぐ「中間支援法人」を支援するものです。中間支援団体が、こども食堂の事業者を対象に募集をかけ、選定された事業者を決定します。

こども食堂は主に自治体や非営利団体(NPO)や地域ボランティア団体などが実施しており、中間支援法人に申請して助成対象者が決定(採択事業)します。支援金は自治体の連携を要件としており、350万円が上限です。

事業を通して、子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりと十分な栄養を取り、健康的に成長することが期待できるでしょう。

次からは、こども食堂の支援団体や自治体の取り組みの実例を紹介します。

こども食堂の支援団体や自治体の取り組み実例

こども食堂は、子どもたちに安心しておいしい食事が食べられる場所を提供し、地域社会とつながる役割があります。支援団体や自治体は、こども食堂の定着・拡大を期待しており、さまざまな取り組み事例が報告されています。

ケース1:鳥取県の取り組み|鳥取市地域食堂ネットワーク

ケース2:大阪府の取り組み|子ども食堂おける食の支援事業

ケース3:NPO法人全国こども食堂支援センター「むすびえ」

上記、3つの団体が行った取り組みの事例を紹介します。

ケース1:鳥取県の取り組み|鳥取市地域食堂ネットワーク

鳥取市地域食堂ネットワークは、地域住民に健康的な食材を提供しており、子どもから大人まで利用可能です。地域住民が集まり、さまざまな年齢層の人と交流できる居場所づくりを目的としています。

地域食堂ネットワークでは、地域住民からの農産物や食料寄付を受け、こども食堂や地域食堂に分配しています。

また、物資の支援だけでなく、ボランティアとして参加可能です。子どもたちと料理をしたり勉強を教えたりして、ともに支え合う地域づくりが期待されています。

2015年に鳥取市のこども食堂のモデルとなり、2016年には4カ所だったこども食堂が現在は約29カ所に増加しています。(※2024年3月時点)

ケース2:大阪府の取り組み|子ども食堂における食の支援事業

大阪府の「子ども食堂における食の支援事業」は、府内のこども食堂運営者を対象に、食品セットを毎月1回配布する取り組みをしています。

食品の内容は、米やレトルト食品・調味料などで、約20種類の食材をセットにして配布しています。取り組みのおかげで、栄養バランスの取れた食事提供や、運営者の食材調達にかかる負担を軽減できているのです。

配布される食材セットは、こども食堂を利用する子どもの人数によって異なります。また、コロナ対策として居場所の提供を中止し、子どもや保護者に食材を配布していたこともありました。

ケース3:NPO法人全国こども食堂支援センター「むすびえ」

NPO法人全国こども食堂支援センター「むすびえ」は、全国各地で子どもたちの居場所と食事を提供する「こども食堂」の支援を目的としています。

むすびえの主な支援は次の3つです。

・地域ネットワーク支援事業

・企業団体との共同事業

・調査・研究事業

中間支援団体が活動しやすくなるように、運営者向けの研修やセミナーを開催し、情報提供や人材育成を実施しており、またこども食堂に関する調査研究を行い、実態や課題を明らかにしています。

2023年度には全国に約9,132カ所のこども食堂が運営されており、全国の小中学校の合計数である9,296カ所とほぼ同数の件数です。(参考:NPO法人全国こども食堂支援センター「むすびえ」公式ホームページ

こども食堂の助成金を受けるには?

こども食堂を運営するには初期費用や維持費が必要です。寄付や賛助会員費用などで資金を集める方法もありますが、助成金を申請すれば運営の負担も軽くなるでしょう。

助成金を受けるためには、市町村の窓口や中間支援法人への申請が必要です。助成金額の対象者・申請方法などの詳細は、自治体や中間支援法人によって異なります。

助成金の申請は必要書類の提出が求められ、各申請書類には定められた様式があります。申請期間が設けられているため、早めに情報収集をして余裕のある日程で申請するようにしましょう。

こども食堂を運営するには、特別な資格は必要ありません。はじめは地域の公民館や個人の家を利用して始めるケースもあります。

こども食堂を始めるには、地域住民や市町村への相談も必要です。子どもや福祉の必要な情報やアドバイスが得られるでしょう。

こども食堂を支えるためには

助成金の受け取りだけでなく、個人や団体が寄付やボランティア活動を通じて貢献することも可能です。

例えば、寄付金や物資の支援なら、こども食堂を支援する団体やこども食堂の運営先に送付できます。支援の際は受け入れ可能な物資を確認し、寄付金の使途について開示している団体を選ぶとよいでしょう。

ボランティア活動には、食事の準備や後片付け・子どもたちとの交流など、さまざまな形で活躍できます。ボランティアには、定期的な参加が求められる場合もありますが、自分のスケジュールやできることを考慮し、無理のない範囲で取り組むことが大切です。

小さな支援でも積み重なれば、子どもたちの笑顔と健康な未来を支えられます。

まとめ:こども食堂の支援金は運営の安定化に不可欠

こども食堂は子どもたちの食事や健康・居場所づくりとして重要な役割があります。

多くは民間団体が運営しており、事業を安定させるためには支援金制度は必要不可欠です。

支援金や助成金を受けるためには、申請が必要なため、自治体や民間団体に相談するとよいでしょう。

こども食堂の運営に寄付金や物資を支援することも可能です。ボランティア活動でも、運営と地域の子どもたちを支えられるため、自分のできることから支援していくとよいでしょう。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。