ビジネスケアラー
2023-10-06
【ビジネスケアラー】介護と仕事の両立に必要な支援とは
仕事と介護の両立に苦悩を抱えている人は少なくありません。
ビジネスケアラーとしての役割に限界を感じても、職場に相談できずに悩む方もいるでしょう。
仕事と介護を両立するビジネスケアラーを支援するには、周囲の理解が必要不可欠です。この記事では、ビジネスケアラーが抱える問題と支援の必要性を解説します。
加速するビジネスケアラー問題と向き合っていくためにも、ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスケアラーの現状
ビジネスケアラーを支援するには、現状を理解しておくことが重要です。
これから、ビジネスケアラーの現状や問題点を解説します。それぞれ確認してみましょう。
ビジネスケアラーの定義
ビジネスケアラーは、仕事と介護を両立する方を指す言葉です。
経済産業省では、ビジネスケアラーの定義を「介護をする有業者のうち、仕事を主にする者」としています。
2020年時点のビジネスケアラーの人口は、約262万人です。
家族介護をおこなう方の約4割が、仕事と介護を両立している計算です。この割合は、ビジネスケアラー以外の方にとっても、他人事ではない数字といえるでしょう。
ビジネスケアラーは増加傾向
2023年現在、ビジネスケアラーは増加傾向にあります。
その人口は、2025年には300万人を突破し、2030年には318万人に到達する推計です。
ビジネスケアラー増加の背景には、晩婚化による親の高齢化や、共働きによる生活スタイルの変化など、さまざまな要因があります。
ビジネスケアラーの増加が与える影響は、社会全体でも見過ごせない問題です。今後も増え続けるビジネスケアラーに対して、サポートや支援体制の整備が急務とされています。
ビジネスケアラーが抱える問題
ビジネスケアラーの中には、さまざまな問題や悩みを抱える方が少なくありません。
仕事と介護の両立による時間の不足や、体力的な問題に悩む方も多い傾向です。つらい現状がある場合でも、周囲に相談できずに抱え込んでしまうケースも多く見受けられます。
そのほか、ビジネスケアラーの問題は、経済にも大きな影響を与えています。ビジネスケアラーの増加による経済損失は、2030年に9兆円にまで迫る見通しです。
こうした問題を解決するためには、企業や国全体で考えていかなければなりません。
ビジネスケアラーに必要な支援
加速するビジネスケアラーの問題に対処するためには、支援の必要性を理解しておかなければいけません。
これから、ビジネスケアラーに対しての支援状況と重要性を解説します。それぞれ確認してみましょう。
ビジネスケアラーへの支援の重要性
ビジネスケアラーによる労働力の低下が経済に及ぼす影響は、無視できない問題となっています。
経済産業省の推計を見ると、9兆円にも及ぶ経済損失のうち、介護離職による損失額はおよそ1兆円です。残りのほとんどが、仕事と介護の両立による、生産性の低下が起因となっています。
仕事と介護の両立による損失額の大きさから、ビジネスケアラーへの支援の重要性がわかるでしょう。
ビジネスケアラーへの支援内容
悩みや負担を抱えるビジネスケアラーに対して、企業はさまざまな取り組みをおこなっています。
法定措置に加えて、介護休暇や時短勤務などを採用している企業も少なくありません。一部の企業では、従業員のための介護セミナーや、相談窓口を設けている場合もあります。
そのほか、フレックスタイムやテレワークなど、柔軟な働き方に対応するケースも増えました。最近では、相談しやすい環境作りに取り組むことが企業に求められているのです。
ビジネスケアラーへの支援状況
現在、ビジネスケアラーに対して、さまざまな支援が実施されていますが、同時に課題も存在しています。
経済産業省のMETI Journalによると、ある企業において介護制度を利用している職員は、わずか4%ほどというデータがあります。
(参考:経済産業省「METI Journal」)
仕事に対する責任感や自身の評価を気にして制度を活用できないケースも少なくありません。
支援制度は存在するものの、必要な方に対して適切に届いていないのが実情です。
ビジネスケアラーへの支援方法
ビジネスケアラーをサポートするには、周囲の協力が必要不可欠です。
サポートを有効に活用するには、社会全体で考えていかなければなりません。
これから、ビジネスケアラーへの支援方法を紹介します。それぞれ確認してみましょう。
介護に必要な知識獲得の機会提供
ビジネスケアラーを支援するためには、日頃から介護情報に触れておく必要があります。
介護と関係のない職場に務める場合、介護情報に触れる機会があまりないかもしれません。そのほか、介護が必要なご家族がいない場合は、介護に興味関心がわかない方もいるでしょう。
そのため、会社や企業内でも介護について考える機会を作っておくことが重要です。利用できる制度の共有や、介護の知識に触れる機会を検討してみるとよいでしょう。
ビジネスケアラーが利用できる制度の拡充
現在では、家族介護が必要なビジネスケアラーに対して、サポートを提供する企業が増えています。
介護休暇の取得サポートや、フレックス制度の導入など、柔軟に対応する職場も珍しくなくなりました。一方で、これらの制度を活用するビジネスケアラーが少ないのも事実です。
ビジネスケアラーへの支援拡充とあわせて、より利用しやすい環境作りが求められます。
ビジネスケアラー同士のコミュニティ構築
職場の上司や同僚に家族介護の状況を相談できず、悩むビジネスケアラーは少なくありません。
育児などの悩みと比較して、介護の悩みにネガティブなイメージを持つ方もいるでしょう。
こうした問題を解決するためには、同じ悩みを抱えるビジネスケアラー同士のコミュニティが役立ちます。
ビジネスケアラーの本音や実情など、悩みをシェアできるコミュニティの存在は重要です。
ビジネスケアラーと職場の関係性の充足
企業や会社でビジネスケアラーを支援するには、職員との信頼関係が必要不可欠です。
介護の悩みを相談しやすい環境を作るには、日頃からコミュニケーションを深めておかなければいけません。
とくに、親が高齢になる40代以上の職員に対しては、家族介護や家庭状況の把握も重要です。
必要に応じて、個別ミーティングの機会を用意するのもよいでしょう。
ビジネスケアラーへの支援を効果的に進めるには?
仕事と介護の両立に悩んでいる場合でも、制度を利用できないビジネスケアラーは多いです。
ビジネスケアラーを適切に支援していくためには、考えなければいけない課題があります。
これから、支援を効果的に進めるための方法を紹介します。それぞれ確認してみましょう。
介護リテラシーの向上
介護に関する悩みを相談する場合は、聞く側にも介護リテラシーが必要です。
ビジネスケアラーの悩みをくみ取り、直面する問題に対処するためには、介護について学んでおかなければいけません。
ビジネスケアラーを適切な方法で支援するためには、日頃から介護リテラシーの向上を心がけましょう。
ビジネスケアラーの現状やニーズの把握
ビジネスケアラーを支援していくためには、彼らの悩みや状況を周知しておかなければなりません。
アンケートや聞き取り調査、相談窓口などを通じて、情報収集が必要です。職場では、普段から困りごとをシェアする機会を作るとよいでしょう。
ビジネスケアラーが抱える問題や悩みなどを正しく理解することで、適切な支援が提供できます。
持続可能なサポートシステムの構築
ビジネスケアラーの問題は、すぐに解決できるものではありません。
増加するビジネスケアラーを支援するためには、持続的にサポートできる仕組みが必要です。
一過性の対応ではなく、継続的な支援システムを構築するには、日頃から支援について考えなければいけません。
今後も、ビジネスケアラーの抱える問題やニーズに柔軟に対応し、改善し続ける必要があります。
長期的な計画設計
企業にとって、ビジネスケアラーの問題は長期的な課題です。
企業でビジネスケアラーへの支援計画を立てる場合は、長いスパンで考える必要があります。
新しく企画を立ち上げる場合は、あらかじめチーム内で介護について検討する時間を設けるとよいでしょう。
ビジネスケアラーが発生した際の対応や業務のサポートなどを確認し、計画が予定通りに進まない場合は、適宜内容を見直すことも重要です。
ビジネスケアラー支援の今後について
今後数年にわたって、ビジネスケアラーへの支援について考えていかなければいけません。
ビジネスケアラーが与える経済への影響は大きく、2030年には9兆円もの損失が見込まれています。
2016年には「介護離職ゼロ」に向けた政策によって、それまで急増していた介護離職者の数は落ち着きを見せました。
しかし、経済損失額の約9割が、現役のビジネスケアラーによるもので、まだまだ改善が必要と考えられます。
今後は、国だけではなく企業が主体となり、ビジネスケアラーを支援していく必要があるでしょう。
まとめ
この記事では、ビジネスケアラーの現状や問題点、支援の重要性を解説しました。
今後も増え続けるビジネスケアラーを支援していくためには、周囲の協力が必要不可欠です。日頃から介護情報に触れる機会や、知識をインプットする時間を確保するとよいでしょう。
ビジネスケアラーの方や、職場にビジネスケアラーがいる場合は、ぜひこの記事を参考に、介護と仕事の両立について考えてみてください。