資格・就職・転職
2024-07-10
【理学療法士の仕事と将来性】医療現場を支える専門職から多様なキャリアへ
高齢化社会が進む一方で、高齢者の数がピークを迎えたあとは「理学療法士の将来性はなくなるのでは…」と不安に感じる方もいるでしょう。
理学療法士は、専門職としてのスペシャリストを目指したり、医療分野以外に活躍できる場があったりと、選択次第では明るい将来が待っているかもしれません。
この記事では、理学療法士の仕事内容や今後の需要、キャリアアップについて解説しています。最後までご覧いただければ、理学療法士としてのキャリアアップや将来の不安を解消できます。ぜひ、参考にしてみてください。
理学療法士の仕事と役割
理学療法士の将来性を理解するために、仕事内容と医療現場における役割について見ていきましょう。
理学療法士の仕事内容
理学療法士は、病気や怪我で身体機能が低下した方に対して、リハビリを行い、自立した生活を送れるように支援する専門職です。
具体的には、関節の可動域拡大や筋力向上などを目的とした徒手療法や、起き上がりや立ち上がり、歩行などの基本的動作の改善を図るための運動療法などを行います。
対象者の目標や生活環境など一人ひとりの状態に合わせて、リハビリ計画を立案しています。また、身体機能の回復だけではなく、社会復帰またはスポーツ復帰など、生活の質までを考えてサポートするのです。
理学療法士は専門的な知識や技術を生かして、対象者の人生に関わる仕事をしています。
医療現場における理学療法士の役割
医療現場における理学療法士の役割は「対象者の身体機能の改善・維持」「多職種と連携して日常生活自立度の向上」です。
役割を達成するためには、対象者の身体機能を適切に評価できなければなりません。「どこの筋力が低下しているのか」や「どの関節が硬いのか」「バランス能力はどうなのか」など、さまざまな評価を行います。
評価結果から、目標を達成するための問題点を考え、リハビリ計画を立案します。
また、問題点を医師や看護師、介護士など多職種と情報共有し、より最適な治療・生活をサポートすることが役割です。
これからの理学療法士に求められていること
これからの理学療法士は、病気や怪我に対してリハビリを行うだけではなく「病気にならない」「怪我をしない」「転ばない」など健康予防分野での活躍が求められます。
そのため、労働環境や作業条件などの改善を支援する「産業保健分野」においても、運動や生活指導を行う活動機会が徐々に増えるでしょう。
健康予防や産業保健分野において、理学療法士が活躍できる理由は「筋肉や関節、動作の専門家」でもあるからです。また、動作や姿勢評価の知識もあるため、適切なアドバイスや運動指導も行えます。
健康志向の高まりにより、運動不足による身体機能の低下・怪我の予防・高齢者の健康維持・企業で働く従業員の健康改善など、さまざまな分野で理学療法士の知識や技術が求められていくでしょう。
理学療法士の今後の需要
高齢化社会では理学療法士の需要は増加しますが、今後の日本人口推移や年間の理学療法士の輩出人数から考えると「需要と供給」のバランスが崩れる可能性があります。
2020年時点の75歳以上の高齢者数は1,860万人、2040年は2,227万人、2070年は2,180万人です。2040年までは高齢者数は増加しますが、その後は徐々に減少し総人口は2040年で、1億1,284万人になるとされています。
理学療法士は年間1万人程度が輩出されている状況です。
しかし、今後の高齢者や総人口の減少と年間1万人程度の理学療法士の輩出が続くと、需要と供給のバランスが崩れ、飽和状態になる可能性も考えられます。
理学療法士の持っている知識や技術は幅広い分野で生かせるため、高齢者のリハビリだけではなく、幅広い分野での活躍を視野に入れておく必要があるでしょう。
理学療法士の年代別で見る年収
理学療法士の年収は年齢が上がれば増額する傾向ですが、他職種と比較しても決して高いとはいえないでしょう。
理学療法士の年収 | 看護師の年収 | 臨床検査技師の年収 | 介護職員の年収 | |
---|---|---|---|---|
25〜29歳 | 291万円 | 353万円 | 300万円 | 276万円 |
35〜39歳 | 349万円 | 379万円 | 338万円 | 296万円 |
45〜49歳 | 359万円 | 438万円 | 397万円 | 292万円 |
55〜59歳 | 475万円 | 460万円 | 510万円 | 269万円 |
参考:令和4年度賃金構造基本統計調査(企業規模1,000人以上の給与額)
表の年収は、病院や施設に勤務している職員の年収です。理学療法士の知識・技術を生かして独立開業すれば高年収も夢ではありません。
整体院を開業したり、パーソナルトレーナーとして独立したりしている理学療法士もいます。目先の年収だけではなく、将来的に安定した収入を得られる職業なのかも考えておくといいでしょう。
理学療法士の将来性
理学療法士は医療現場以外でも活躍できるため「将来性はある」と言っていいでしょう。
しかし、「高齢者のリハビリ」とイメージを持っている方は、将来安定しないと思われるかもしれません。
理学療法士の将来性を理解するためには以下の2つが大切です。
・理学療法士は多様な専門分野で活躍できる
・医療現場以外でも活躍の場がある
それぞれ解説します。
理学療法士は多様な専門分野で活躍できる
理学療法士の専門分野の一部を紹介します。
・脳卒中
・運動器
・スポーツ
・発達障害
・介護予防
・健康増進
このほかにもさまざまな専門分野があり、医療分野からスポーツ・介護分野・健康増進など幅広い分野で専門性を発揮できます。
脳卒中のように主に高齢者が対象となる分野から、発達障害のように小児に関わるリハビリまで年齢層も幅広く対応可能です。
また、スポーツ分野ではスポーツでの障害予防やパフォーマンスの向上などを目的に高校の部活動からプロチームまで、活躍している方がいます。
このようにさまざまな分野で活躍できるため、将来を見据えて需要が増える分野の経験や勉強をしていれば、将来も安心できるでしょう。
医療現場以外でも活躍の場がある
理学療法士は病院や介護施設以外に、一般企業への就職という道もあります。
一般企業への就職では、介護用品や医療機器、リハビリ用品などの製品開発や営業などさまざまです。病院や施設で働いているときに感じた「もう少し幅の広い車椅子があればいいのに」「ベッドの頭や足の高さが記憶できる機能があればいいのに」などの経験が生かせます。
ほかにも、フィットネスジムでパーソナルトレーナーとして仕事をしている方もいます。
医療や介護現場以外にも、経験や知識などを生かした転職も可能なため、広い視野を持っておくと理学療法士としての可能性を高められるでしょう。
理学療法士としてのキャリアアップ
理学療法士としてのキャリアアップを考えている場合は、以下のケースがあります。
・専門性を高めスペシャリストになる
・アスリートのサポートをするトレーナーになる
・独立開業し経営者になる
それぞれ解説します。
専門性を高めスペシャリストになる
理学療法士はより専門性を高めることで、その分野のスペシャリストになれます。
例えば「足底板」と言われるものがあります。これは靴の中敷きにゴムのパッドを貼ることで姿勢や歩容などが改善できる手技で、すべての理学療法士が行えるわけではありません。その分野を学んだ理学療法士だからできる内容です。
ほかにも理学療法士には専門性を高めて、差別化を図れる手技が多くあります。希少価値の高いスペシャリストになることで、安定した将来性や高収入を得られる可能性も高くなるでしょう。
アスリートのサポートをするトレーナーになる
病院やクリニックによっては、スポーツチームのサポートをしている場合があります。このような場所で経験を積めば、プロスポーツチームやスポーツクラブなどでトレーナーとして活躍可能です。
スポーツ分野でキャリアアップを目指す場合は、トレーナー経験を積める場所に就職する必要があります。理学療法士の専門性だけでは、トレーナーとして活躍することは難しいため、アスリートのサポートをするために必要な知識や経験を積む必要があります。
さまざまな知識や経験を積むことで、理学療法士としてだけではなく、培ってきた知識や技術を生かしたキャリアアップも可能です。
独立開業し経営者になる
理学療法士は「リハビリ」を行う施設の開業はできませんが、整体院やフィットネスジムなどの開業は可能です。
リハビリは医師の指示の基に行われる医療行為であるため、独立しても「リハビリをします」とはいえません。
しかし、理学療法士として培ってきた知識・技術を活用すること自体は違法ではありません。そのため「整体院」や「フィットネスジム」などを経営している理学療法士も多い傾向です。
理学療法士としての将来性は医療現場だけではない
理学療法士は、医療・介護現場だけではなく、スポーツや健康、予防分野などでも活躍できます。
日本の人口減少が予測されている中で、理学療法士としての将来性に不安を持っている方も多いでしょう。しかし、活躍できる分野や対象となる方の年齢層の広さを理解すれば不安は解消されるはずです。
また、理学療法士は病院や施設で雇われるだけではなく、独立しフリーランスになったり、開業して活躍したりする選択肢もあります。
将来性を考え、行動すれば理学療法士として明るい未来が待っています。人の役に立つ仕事をしたいという方にとって、理学療法士は魅力的な選択肢といえるでしょう。