介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 介護資格・スキルアップ 言語聴覚士に向かない人ってどんな人?適性がなくても大丈夫?そんな疑問を解説

介護資格・スキルアップ

2023-05-01

言語聴覚士に向かない人ってどんな人?適性がなくても大丈夫?そんな疑問を解説

言語聴覚士を目指す方の中には、「自分は言語聴覚士に向かないかも?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
今回は言語聴覚士に求められる適性や必要な能力、向かない人・向いている人の特徴について紹介します。言語聴覚士の適性や必要な能力を知ると、言語聴覚士になるためのモチベーションアップにもなります。言語聴覚士を目指す方はぜひ参考にしてください。

言語聴覚士に求められる適性と必要な能力とは

言語聴覚士は「話す・聞く・食べる」などの動作に関する訓練のプロです。専門的な知識やスキルに加え、対象者に寄り添う思いやりの心も求められます。ここでは言語聴覚士に求められる適性と必要な能力について見ていきましょう。

コミュニケーション力

言語聴覚士の仕事に欠かせないのがコミュニケーション力です。リハビリの効果は、対象者としっかりコミュニケーションが取れるか否かで大きく変わるといっていいでしょう。また、コミュニケーション力は、対象者の家族に病状やリハビリの進み具合を伝える際にも必要です。

コミュニケーション力がある人というと、「自ら人に話しかけていく積極的な人」というイメージもあるのではないでしょうか。しかし言語聴覚士に求められるコミュニケーション力はむしろ対象者に寄り添い、その人を理解しようとする姿勢です。その上で、言うべきことはきちんと伝える力も必要になります。

協調性

チームで支援をおこなう際、言語聴覚士は医師や看護師、理学療法士や作業療法士、介護スタッフなど、他職種のスタッフと連携しながらリハビリを進めていきます。その際に必要になるのが協調性です。

例えば、対象者に関する情報共有でも、事実だけを一方的に述べるのではなく、互いの役割を理解した上で必要な情報を伝え、チームとして仕事に取り組む姿勢が求められます。それぞれが専門分野の知識と技術を活かしつつ、協力して治療を進めていくことで、適切かつスムーズなリハビリがおこなえます。

観察力

対象者は年齢や障害の原因や程度まで様々。それぞれの対象者に最適なリハビリをおこなうためには、対象者の小さな変化も見逃さない観察力が必要です。

また、言語聴覚士の対象者は言葉で自分の思いを伝えづらい人が多いため、表情や態度から本人の状態をくみ取ることが求められます

対象者を注意深く観察しどんな訓練や支援が必要なのか、今はどんなことを感じているのかを推測することで、相手に寄り添ったサポートが可能になります。

向上心

新しい知識やスキルを得るため、常に向上心を持つことも言語聴覚士に欠かせない要素です。言語聴覚士の仕事と深く結びついている脳科学や生命科学、認知科学などの分野では日々情報がアップデートされています。言語聴覚士にはそれらを積極的に吸収し、リハビリに取り入れていく柔軟性が求められます。

例えば、言語聴覚士向けの勉強会に参加したり、関連書籍を読んだりして新たな知識の吸収に努める姿勢が大切です。現場での施術とそれらの知識を組み合わせればスキルアップにもつながります。

根気強さ

懸命にリハビリをおこなっているにも関わらず、対象者の障害の改善が進まなかったり、後退してしまったりすることもあります。そんな状況でも言語聴覚士は焦らず、根気強く対応しなければなりません。

リハビリで期待する効果が表れない時は、言語聴覚士以上に対象者が落胆しているはずです。言語聴覚士の焦りやいら立ちが対象者に伝わると、精神的な負担をかけかねないため注意しましょう。

共感力

共感力とは相手の考えや意見を推測したり、相手の感情に寄り添ったりする力のことです。言語聴覚士にとって共感力はぜひ持っておきたい力のひとつ。障害によって辛い思いをしていたり、自分の気持ちをスムーズに伝えられなかったりして、ストレスを感じている対象者の視点に立った対応が必要になるでしょう。

対象者から信頼されるのは、その思いに寄り添える言語聴覚士です。相手に共感できず、自分の意見を押し付けてくる言語聴覚士に対しては、対象者も心を開きにくいでしょう。

続いては、言語聴覚士に向いていない人の特徴について解説します。「向いていない人」について知ることで、言語聴覚士に必要な要素がよりわかりやすくなるので、ぜひ参考にしてください。

言語聴覚士に向いていない人

ここでは「言語聴覚士に向いていない」と思われる人の特徴について解説します。これから言語聴覚士を目指す人はもちろん、現役の言語聴覚士として勤務している方も振り返って確認してみてください。

コミュニケーションが苦手な人

言語聴覚士にとって最も大切な能力といえるのがコミュニケーション力です。リハビリで効果を上げるために必須のコミュニケーションが苦手となると、言語聴覚士として活躍するのはやや厳しいでしょう。

ただ、言語聴覚士に求められるのは「人と話すのが好き」「おしゃべりが上手」という表面的なことではありません。障害によって言葉の理解・表現が困難になった対象者や、自閉症のように他人の気持ち・状況の理解が難しい人に対して、その思いをくみ取り理解しようとする姿勢こそ、言語聴覚士にとって必要なコミュニケーションです。

すぐに達成感や結果がほしい人

適切なリハビリをおこなっても、障害や病気の改善・回復には時間を要するものです。また、対象者によってはゆっくりリハビリを進めた方がよいケースもあり、年齢や体調によっては積み重ねてきたリハビリの効果がふりだしに戻ることすらあります。

冷静に現状を分析して改善点を探り、腰をすえて対象者と向き合う覚悟が求められます。

相手より自分のペースを優先したい人

言語聴覚士をはじめすべての医療職に必須といえるのが、対象者に合わせてリハビリや治療にあたる姿勢です。対象者の回復状態や体調、心理状態に寄り添うことが求められます。そのため自分のペースを優先してリハビリを進めたい人には向いていないでしょう。

次は言語聴覚士に向いている人について詳しく見ていきます。

言語聴覚士に向いている人

高い専門性を持ち、人と密に関わる言語聴覚士に向いている人について見ていきましょう。

コミュニケーションを取るのが好き

適性として最も重要なのは人とのコミュニケーションが負担にならないことです。言語聴覚士に必要なのは、対象者の言語化しにくい感情や状況、伝えにくい本心などを引き出す、あるいは推測するためのコミュニケーション力です。

もし自分の意見や思いと異なっていたとしても、否定せずに受け止める心構えで対象者と接すれば、徐々にコミュニケーションが取れるようになっていくでしょう。

観察力に優れている

観察力が優れている人の特徴は、まず日常的に人や周囲の様子をよく見て覚えていること。例えば対象者と接する時に、その人の癖や特徴、普段の様子をしっかり記憶しています。

その記憶から外れた反応や態度をした時に「いつもと違う。この変化はどこからきているのか?」というセンサーが働くのです。また観察力がある人は多角的な視点で物事を見て、柔軟に物事を考えられる点も特徴です。

「観察力がない」と悩んでいる人は、まず人や周囲に興味を持ち、情報収集を心がけるとよいでしょう。手軽にできる練習には外出中にどんな広告が多いのか、コンビニでよく売れている商品は?などを意識すること。すぐにできることから始めていきましょう。

粘り強い

粘り強さは言語聴覚士にとって大きな武器になります。ここでいう粘り強さとは、問題を発見して対処法を考え、試行錯誤しながら解決まで諦めず努力を続けていけることです。リハビリは計画したとおりに進むことは珍しく、トライ&エラーが当たり前。そのため、言語聴覚士の仕事にとっては欠かせない力です。

しかし、結果が見えないのにただ頑張って続けるのは、粘り強さとはいいません。つらいことに耐えるだけでなく、目標とする結果にこだわりつつ動くことこそ真の粘り強さといえるでしょう。目的意識を持って自ら考え、途中で投げ出さずに行動しましょう。

向上心がある

言語聴覚士はリハビリの専門知識・技術に加えて、コミュニケーションスキルや関連する他分野への理解などを身につける必要があります。そういった点から、向上心を持って勉強を続けられる人でないと言語聴覚士は務まらないでしょう。

常に向上心を持つのは簡単ではありませんが、絶対に達成したい目標があれば向上心を保ちやすくなります。

次は言語聴覚士の適性に文系・理系の違いは関係があるのかどうかについてご説明します。

言語聴覚士に文系・理系は関係ある?

言語聴覚士は医療系の国家資格なので、「文系は言語聴覚士に向かないのでは?」と不安に思っている人もいるでしょう。しかし、結論からいえば文系・理系のどちらでも問題はありません。

言語聴覚士の養成校では生理学・解剖学などの理系科目と、言語学や臨床心理学などの文系科目を共に学びます。文系・理系にこだわらず医学から言語学、心理学まで幅広く学んで生かせる点が、言語聴覚士という仕事の面白いところです。

実際に養成校や大学では文系・理系の学生が混在していること、文系出身の言語聴覚士も多いことからも、理系でなければ難しいという事実はないといます。「文系か理系」よりも、必要な分野について興味を持ち、学び続けられるかどうかが重要であるといえるでしょう。

言語聴覚士は適性より探求心・向上心が重要

言語聴覚士に必要な適性や能力、向かない人・向いている人などについて紹介しました。適性や能力はあるに越したことはありませんが、すべてを備えていなければ言語聴覚士になれないというわけではありません。

言語聴覚士として活躍するためには、適性・能力以上によりよい技術や新たな知識を身につけようとする探求心・向上心が重要です。もし「自分はここが足りない」と思う要素があれば、努力して足りない部分を学び、伸ばす努力ができれば問題ありません。

ぜひ、言語聴覚士を目指してみてはいかがでしょうか。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。