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2024-09-18
現役理学療法士に聞いたキャリアアップのコツとは?|ケアトーク〜介護の声を聞く〜 Vol.1
理学療法士は、怪我や病気などで身体が不自由になった場合、身体機能の改善をサポートする職業です。理学療法士となってまだ日が浅い方が、病院やクリニックでキャリアをスタートさせる中で、どのようにキャリアを積んでいくか知りたいという方も少なくないでしょう。
そこで、現役理学療法士のAさんに、理学療法士を目指したきっかけや苦労したこと、キャリアアップについてうかがいました。
理学療法士とは?
理学療法士とは、怪我や病気などで身体が不自由になった方やその予備軍の方に対してリハビリテーションや運動のアドバイスを行う専門職です。
具体的な仕事は、起きる・立つ・歩くなどの身体の基本的な動作能力を改善または維持するために、運動療法や物理療法(温熱や電気などの物理的な治療手段)を用いて自立した生活を送れるように支援することです。
また、理学療法士は病院でキャリアをスタートさせる方がほとんどで、日本理学療法士協会に所属している理学療法士の6割以上が病院に在籍しています。
さらに、管理職を目指す方や認定資格を取得する方、訪問や施設など環境を変える方、知識を生かして別分野へ転職するなど、キャリアアップの選択肢は多様です。
現役理学療法士にインタビュー
地元に貢献したいという強い想いを持って理学療法士になったAさん。理学療法士を目指したきっかけや働いてみて感じた苦労、キャリアアップを目指した際の具体的な行動など、さまざまな角度からお話をうかがいました。
ー理学療法士を目指したきっかけをお聞かせください。
私自身、運動部に所属していたこともあり、身体を動かすことが好きだったので、身体に関する仕事に興味を持っていたんです。たまたま身内に病気を抱えている人が多くいて、「役に立ちたい、何かしてあげたい」という想いがありました。そんな時に、親の知り合いの看護師から理学療法士という職業を教えてもらい、目指してみようと思いました。また、運動をしていた私にとって、理学療法士はスポーツの分野に強みがあるという点も魅力に感じたポイントでしたね。
ー他の医療系の職業ではなく、理学療法士を選んだ理由は何ですか?
看護師は注射や採血が怖いと思っていたのと、作業療法士は手先を使うことが多いイメージを抱いていたこともあり、理学療法士以外の医療系の仕事は考えていませんでした。
ー現在の職場を選んだ決め手は?
地元の人々に育てられたという恩があったので、関東の理学療法士の学校を卒業したら地元に帰って働きたい、お役に立ちたいと思い、今の職場を選んだのです。
今、在籍している病院は、私が住んでいる地域で中核病院とリハビリテーション施設としての役割を担っています。どのスタッフも勉強熱心で、研修会や技術的な勉強会に積極的に参加したり、自分たちで学びの場を設けたりするので、私もそういった環境で学びを深めています。
ー働いてみて大変だったことはありますか?
新人や2年目くらいのときは、先輩と自分を比較してしまい、劣等感を抱くことがありました。先輩が担当すると患者さんは回復するのに、自分が担当につくと患者さんがあまり良くならない…。そのことで、患者さんから「あの人はできているのに、あなたは何でできないの?」と直接クレームを言われて、落ち込んでしまい、家に帰ってから泣いたこともあります。
他にも、認知症の患者さんから暴言や暴力を受けることもありました。一度、病室に行くのが少し遅れてしまったことがあり、患者さんから突然拳を振り上げられて怒られたことがあります。そのときは本当に怖かったですね。
ーそういった場合はどのように対処しますか?
経験を積むにつれて、患者さんのパターンがわかるようになったので、対応力が身についてきたと思います。例えば、暴言を吐いたり、暴力的な態度を取ったりする患者さんに対しては、話を聞き流しながら、適切なタイミングでリハビリにお誘いできるようになりました。ただ、あまりにも状況がひどい場合は深追いをせず、私が一度、お部屋を退出してから心を落ち着かせ、出直して対応できるようになりましたね。
ー働いてみてうれしかったことはありますか?
月並みですが、患者さんから感謝の言葉をいただいたときです。「あなたのおかげで良くなった」「やっぱりリハビリをしてもらうと違う」などと言っていただけると、モチベーションアップにつながります。
また、最初は立つのもままならなかった患者さんが、数ヶ月後には歩いて自宅に帰れるようになったことがありました。患者さんやご家族も喜んでいただき、私もそういった瞬間に立ち会えたので、本当にうれしかったですね。
ー素敵な経験ですね。長く勤めているとキャリアプランについて考える機会が増えると思いますが、どのような悩みを感じることが多いですか?
私自身、今の職場でこれ以上スキルアップできるかどうか悩んでいます。長く勤めているからこそ、理学療法士としての成長に限界を感じることがあります。また、結婚や出産などのライフステージの変化もあって、働き方自体を変えていきたいという想いも出てきました。家族や子どものことを考えなくてはならないので、仕事と家庭のバランスをどのようにして取るか非常に悩ましいところですね。
私自身、30代半ばを迎えていますし、「キャリアの転換をするなら今かな…」と思うこともあります。それだけではなく、数年前から「私はこれからも理学療法士としてしか働けないのか…」という疑問を感じるようになり、新しいことにチャレンジしてみたいという気持ちが強くなってきたんです。特にコロナ禍のあらゆる制限によって閉塞感を覚えたときに、もっと柔軟に働ける方法はないかと考えるようになりました。
ーキャリアについて相談できる人や場所はありますか?
身近な方でいうと職場の同僚や先輩に相談することがあります。また、家族、特に母親に相談するのですが、「やってみればいいんじゃない」と励ましてくれています。
相談できる場としては、オンラインでのつながりも増えてきました。医療×ライターのような活動をしている方々とも接する機会が増え、そういった方々にキャリアの相談をすることもあります。また、育休期間中に自治体主催の在宅ワークセミナーに参加し、ライターや動画編集者など、多様な働き方について知れたのも大きかったですね。
ー職場はキャリアチェンジについて相談しやすい環境ですか?
私の職場は、キャリアチェンジに関して、あまり相談しやすい環境ではありません。立地が田舎ということもあり、キャリアチェンジにまつわる考え方がまだ浸透していません。副業よりも理学療法士としての専門性を高めることを重視する風潮が強いので、キャリアチェンジに関しては、こっそりと進めている状況ですね。
ーキャリアアップやキャリアチェンジのために、実際に行動していることはありますか?
まず、ライターを目指すためにライティングの講座を受講しました。その後、今まで知らなかったクラウドソーシングを使って仕事を受注したり、SNSでの発信を始めたりしています。
理学療法士としてキャリアアップを目指していたときも、チャンスがあれば逃さないようにしていました。例えば、治療技術を磨くための勉強会があれば積極的に参加して自ら学んでいく姿勢を持ち続けています。「なりたい自分」に近づくには、自分から行動しなければなりません。
ー理学療法士とライターを兼任することは大変じゃないですか?
実際のところ、まとまった時間を取りづらいことや、本業で疲れてしまい体力が続かないことが多いですね。寝かしつけのタイミングで子どもと一緒に寝てしまうこともありますし、やりたいことがあってもそこに追いつけない自分にジレンマを感じることもあります。独身の頃はまだ若かったこともあり、多少無理はできましたが、今は家族や子どもがいるので、生活のことを考えながら両立する必要があります。一方で、実際に家族や子どもが原動力になって頑張れているのも事実です。
ー理学療法士とライターを両立するコツはありますか?
一番大切なのは家族の理解だと思います。「こういうふうにやっていきたい」という考えをきちんと説明し、ビジョンを共有することが大切です。理解してもらえると、フォローしてもらえますからね。
また、時間の使い方も工夫しています。ライターの仕事を朝早く起きてやったり、夜遅くまでやったり、仕事の合間を使ったりと、執筆できる時間を見つけて作業しています。正直、締め切り直前に集中して頑張るタイプなので、時間のやりくりに苦労はしていますが、最近は納期の1週間前に自分で期限を設定するなど、少しずつ改善を試みています。まだ、時間のやりくりは完璧ではありませんが、少しずつ良い習慣を身につけていきたいですね。
ー最後に、キャリアアップに悩んでいる方へメッセージをお願いします。
悩むこと自体、「気づき」があるという観点ではいいことだと思いますし、現状に満足せず何か変えようとする問題意識を持つ姿勢があることは素晴らしいことです。ただ、悩んでいるだけでなく、視野を広げてみるのも良いかと思います。
理学療法士の資格を取ったなら、その領域を突き詰めた方がいいという考え方がある一方、理学療法士の資格は、あくまでも「自分」を表す要素の一部分にすぎません。それ以外の分野でも仕事をしたり、スキルを身につけたりすると、新しい可能性が見えてくるかもしれません。
実際に行動してみないとわからないこともたくさんあります。大切なのは、少しずつ自分のペースで進めていき、自分の可能性を信じて、一歩ずつ前に進むことだと思います。
ーありがとうございました。やりがいを感じながらもキャリアアップに悩み、日々努力されている姿勢がよく伝わってきました。
まとめ
現役の理学療法士からお話をうかがうことで、理学療法士としての苦労ややりがい、キャリアアップの悩みなどが理解できました。今後、理学療法士を目指したいと思っている方は、今回の記事をぜひ参考にしてみてくださいね。